不法投棄と排水処理

もう一ヶ月近く前ですがこんな事件がありました。
——————————–
名糖産業:不良品あめ下水に 不法廃棄の疑いで調査
 あめ「ホールズ」などを製造する名糖産業(名古屋市西区)の名古屋工場(同区)で、不良品のあめの一部を水に溶かして下水道に流していたことが分かった。市廃棄物指導課は28日午前、廃棄物処理法違反の疑いもあるとみて立ち入り調査した。同社は「問題はないと考えていた。市の判断を仰ぎ、今後は産廃業者に処理を委託したい」としている。
 名糖産業によると、包装不良のあめの一部を砕き、網状の袋に入れて釜に投入。水を注いで加熱してあめを溶かし、下水道に流していた。約3年前から1日約数十キロを廃棄していたという。名糖産業は自社製品のあめのほか、東京のキャドバリー・ジャパンのブランド「ホールズ」を製造している。【稲垣衆史】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100728k0000e040075000c.html#

——————————–
「廃棄物処理法違反の疑い」とありますが、私の見解から言うとこれは微妙だと思います。
下水道の放流基準は超過していなかったようなので、こちらの規制には引っかかりません。ので、産業廃棄物処理法に抵触するかが問題です。
アメが産業廃棄物かどうかと言えば産業廃棄物に該当します。(動植物性残さ)ただ、産業廃棄物を下水や排水処理に流すことは珍しくありません。
例えば食品加工業などでは煮汁などの濃厚な廃液がしばしば発生します。廃液は産業廃棄物として処理されることもありますが、下水の放流基準を超過しなかったり排水処理に余裕があれば通常流します。これが問題になることはありません。
当社でも「最近排水処理の負荷が上がり処理が追いつかなくなってきたから今まで排水処理に流していた廃液を産廃として処理して欲しい」という依頼が時々あります。ちなみに、こういう廃液は廃酸または廃アルカリとなります。
今回の理屈で言うと、今までは廃掃法違反だったのかということになります。
固形物を流したからいけなかったのかというと、固形物を排水処理に流しているケースも結構あります。機械の洗浄などでは相当量の固形分が排水処理に流れます。固形分を流していけないなら、下水道放流基準のSS(浮遊物質)はゼロでなければいけないはずです。機械に付着していたアメを洗浄したものは流してよく、包装不良品は不良品は流してダメというのもおかしな話です。
だいたい、下水道ではそんなに細かなとこまでチェックしていないので基準に違反して流していることがよくあります。工場地帯の下水道では相当な重金属が検出されるのですが、これは工場が本来流していけない廃液を流しているからです。また、夜中に濃厚な有機排水を流したりして下水処理場の夜間流入濃度が極端に上がったりすることもあったりします。今回の例では排水基準は超えていなかったので、こういった例に比べれば新聞沙汰にするほどのものでもないようにも思います。
廃掃法自体が非常に曖昧模糊としているので、厳密に解釈するとほとんどの食品工場が違反になってしまいます。例えるなら、今回の問題は速度制限を5kmオーバーして白バイにつかまったようなものでしょう。行政はもうすこし明確な基準を提示して欲しいものです。
ちなみに、当社でもアメのリサイクルを行いますので、お困りの皆様方よろしくお願いいたしますm(_ _)m