ギ酸による酵母発酵の抑制

当社ではリキッドフィーディングという液状のエサを扱っています。液状飼料はさまざまなメリットがありますが、欠点もあります。あまり知られていないのですが、実は酵母発酵しやすいというのも欠点の1つです。

そもそも酵母とはなんでしょうか。ウィキペディアによると、真核微生物で細胞壁を持ち、出芽によって増えるものをさす、とあります。単細胞の真菌であり、アルコール発酵を行う種類が含まれています。

酵母は好気的な環境では通常の呼吸を行いますが、嫌気的な環境では糖を基質としてアルコール発酵を行います。この際、二酸化炭素を放出します。パンが膨らむのはこの二酸化炭素の作用です。酵母は糖は資化できますが、デンプンなどの多糖類は資化できません。このため、日本酒では最初に麹をつかい米のデンプンを糖化させ、それから酵母発酵を行います。ビールでは麦芽の糖化酵素を使い、デンプンを糖化させ酵母発酵を行います。

当社の製造しているリキッドフィードは原料に糖質がたくさん含まれています。シロップや砂糖など糖のそのものも多く含まれています。また、ジャガイモの皮も原料として利用しており、ハンドリングを良くするため糖化酵素を利用してデンプンを分解しています。

さらにリキッドフィードは保存性をよくするために、酸素の入らないように密閉状態で保管します。このように条件が揃っているため、リキッドフィードではかなり酵母発酵が発生しやすい状態にあります。

酵母発酵が起こると、含まれている糖がアルコールと二酸化炭素に変化します。つまり、有機物の一部が二酸化炭素として放出されてしまい、エネルギーのロスが発生します。その量はすさまじく、固形分の10%以上がロスすることもあります。

もう一つの重大な問題は発泡です。二酸化炭素の放出により発泡がおき、タンクなどからのあふれが発生しやすくなります。あふれるだけならいいのですが、発酵によりガスが発生し圧力が高まったため、当社ではタンクを何個か壊しています。

当社ではリキッドフィードにギ酸を添加しています。これはpHを低下させることにより保存性を向上させることが第一の目的ですが、ギ酸を添加することにより酵母発酵を抑制することができます。ギ酸には静菌作用があるため、酵母やカビの増殖を抑制することができるわけです。この前文献を見ていて知ったのですが、同じpHであっても有機酸の種類によりかなり静菌作用に差が出ます。酢酸やクエン酸では代わりにならないのです。

しかし、微生物というのはコントロールが本当に難しいです。エサを作るときも、杜氏になった気分で仕事していますw