少子化と経済成長

最近会うかたから「ブログ楽しみにしています」と言われることがよくあります。なかなか更新できず申し訳なく思います。

最近も書類作成と新規案件の対応に追われており多忙な日々を過ごしています。忙しい理由の一つに採用活動もあります。中小零細企業では社長自らが採用活動に携わるため、どうしも負担が大きくなります。当社が新卒採用するようになってから6年ほど経過しました。当初は採用活動のやり方もよくわからない状態からのスタートでしたが、現在は毎年優秀な新入社員が入社してくれるようになりました。来年も3名の新卒者が入社予定です。

新卒採用に取り組む理由の一つに、少子化の進行があります。私は昭和48年生まれで第二次ベビーブーム世代で出生数が211万人ですが、昨年の出生数は81万人しかありません。生産年齢人口の急激な減少は間違いなく人手不足に繋がります。また、昨今の円安で外国人労働者の採用が難しくなっています。現在300万人近くの外国人がいるわけですが、当然ながら円安になると相対的な賃金が減少し、日本で働くメリットが少なくなります。以前は技能実習生は中国人が多かったですが、相対的な賃金メリットが少なくなったため現在はベトナムやミャンマーの方が多くなっています。しかし、そういった賃金が低い国の人も日本以外で働く選択肢もある以上、いつまでも人材確保できるかは微妙です。このままいくと「人手が足りなく仕事ができない」という会社が続出するものと思います。

総務省ホームページより

他方、現在の消費低迷の原因の一つとして生産年齢人口の減少があります。以前、経済セミナーで日本の高度経済成長の要因として、急激な生産年齢人口の増加(=人口ボーナス)が大きな要因であるという話を聞き衝撃を受けました。急激な若年層の増加は消費の増加に繋がり、経済成長をもたらします。逆に言うと、人口増加だけで経済成長してきた社会は人口減少時代では成長しないということになります。実際、生産年齢人口の推移を見ると、日本の経済成長とよく合致していることがわかります。そして、生産年齢人口が減りだした96年が一つのターニングポイントとして、「失われた20年」(30年になりそうですが)が始まっているわけです。

今の経済の低迷は、生産年齢人口が急激に減少しているのにもかかわらず生産年齢人口が増加した高度経済成長時代のやり方をつづけているからではないかと思います。消費する人が減っているのに金融緩和をして資金を供給しても消費が増えるはずはありません。金融緩和により円安になることで企業収益は見かけ上向上しますが、それは未来の借金でドーピングされた収益であり問題の先送りしているに過ぎません。安倍元首相が殺害され、アベノミクスの功罪が改めて総括されていますが、アベノミクスの大きな問題は金融政策に依存し少子化という最も根本的な部分に手がつけられていないという点ではないかと思います。つまり、金融緩和により円安になりグローバル企業中心に企業業績は改善していますが、人口減少でマーケットが縮小する日本には投資が行われず、円安によりドルベースの実質賃金が低下し高齢者人口の増加により社会保険料の負担が増加することでも実質賃金が低下した‥これがこの10年ではないかと思います。
他方、日本の生産性の低さが問題視されていますが、これも為替(と購買力平価)、生産年齢人口の減少が大きな要因であり、生産年齢人口減少を加味すると決して悪い状態ではないという意見もあります。→みずほ総研のレポート
いずれにせよ早晩たちいかなくなる社会保障制度をどうしていくか、所得格差の拡大をどうしていうかを道筋つけなれば少子化に歯止めはかからないでしょう。

中小企業ができることは限られていますが、「人がいない」時代にどう事業を行っていくか難しい舵取りをすることが求められています。当社も若い人材とともにこれからの難局を立ち向かっていきたいと思います。

リキッドフィードの欠点

更新が滞っているうちに、すっかり春が過ぎ初夏になってしまいました。

例年、6月~8月ぐらいは豚肉の市場価格が高くなります。価格が上がるのには養豚生産の季節サイクルが影響しています。
豚は生後半年で出荷され、妊娠期間は4ヶ月弱です。逆算するといま出荷されている豚は1月生まれ、前年の9月頃種付けとなります。夏場は暑さのため母豚のコンディションが悪化し、繁殖成績が悪化します。逆に1月は寒いため、生まれた仔豚が調子を崩しやすくなります。そして、出荷時期は暑いためエサの食下量が低下し、大きくなりにくくなります。それに加え、夏に向けて豚肉需要は旺盛であるため、市場価格が上がります。

今年は特に全国的に6月下旬が猛暑であったため豚のコンディションが悪化しており記録的に出荷が減っています。そのため、豚肉の価格が例年以上に上がっています。

そんな中、当社の関連会社「リンネファーム」の豚「雪乃醸」は順調な出荷を維持できています。出荷頭数が多く相場がいいため、市場からの清算金額を見ると少し驚くほどです。

出荷が順調なのは飼料の嗜好性が安定していることが理由の一つです。雪乃醸はリキッドフィードと呼ばれる液状(おかゆ状)の飼料を給与しています。液状であるため、夏場などでも比較的食下量が落ちにくい傾向にあります。人間も暑いときは水っぽいものが食べたくなるように、豚も暑いときには粉のエサより液体のエサのほうを好みます。

夏場でも嗜好性が安定していることはリキッドフィードのメリットですが、最大のメリットは、様々な食品残さを使用することが容易であるということです。食品残さは高水分のものが多く、乾燥処理にはコストがかかります。液状のまま給与できるのは大きなメリットです。

一方、リキッドフィードにもデメリットはあります。夏場の嗜好性が改善することもある一方、液状であるが故に異常発酵しやすい欠点があります。特に、原料に糖が多い場合や、原料にパン生地や酒粕などの酵母を含むものを使用すると酵母発酵が進み、あふれる事故が起きたり、嗜好性が低下する傾向があります。特に、春と秋は気温が酵母の発酵に適した温度となることもあり、発酵が起きやすい傾向にあります。
この欠点を防ぐためには加熱殺菌が有効です。当社ではリキッドフィードを65℃30分間加熱殺菌しています。現在、肉を含む食品残さを飼料に用いる場合、感染症予防のために90℃1時間の加熱が義務付けられています。しかし、当社では肉を含む原料を用いていないため加熱殺菌は本来不要です。しかし、嗜好性の安定のために加熱殺菌を行っています。もちろん、殺菌温度が高いほうが殺菌は確実に行われますが、加熱に必要なエネルギー使用量が増えたり、粘性が上がる欠点があります。バランスを取って65度で加熱殺菌を行っています。
リキッドフィードには他にもいくつか欠点があります。大きな欠点として、尿量が増えることがあります。尿量が増えると排水処理の管理が大変になったり、堆肥の発酵がうまくいかなくなります。尿量が増えるのは飼料の水分含量が多い分水分摂取量が増えることもありますが、一般的に人間の食べ物は塩分(ナトリウム)が多いことが多く、また野菜などに由来するカリウム含量も多いため尿量が増えます。
また、リキッドフィードは酸性であるため、コンクリートや鉄が腐食することも大きな欠点です。コンクリートは酸性に弱く、コンクリートでできたスノコは防食塗装など行っていないと数年でぼろぼろになります。

ときどき、リキッドフィードは水分をたくさん取るので肉が水っぽくなるという人がいますが、これが技術的には誤っています。リキッドフィードの場合食品残さを使用することが多いですが、大豆油などの油脂を多く含む原料を使用すると豚肉の脂の質が変わり、脂の融点が下がることで「水っぽい」豚肉となってしまいます。逆に言うと、適切な原料を選択すればリキッドフィードも配合飼料も肉質に差は出ません。

このようにメリットとデメリットがありますが、繰り返しになりますがリキッドフィードの最大のメリットは多様な食品残さを使用することが容易である点です。現在、輸入穀物で作られている配合飼料の価格が非常に高騰しています。こんな中、リキッドフィードにより食品残さをうまく利用し飼料価格を抑制することは経営的に大きなメリットがあることは言うまでもありません。また、限りある資源を有効に活用することで、存在意義を確立し地域との共生を図ることができます。今後、社会要請に応える畜産や農業がより一層求められる時代になっていくことと思います。リキッドフィードはそういう時代に合った手法の一つであるかと思います。

再生可能エネルギーの課題

最近、さまざまな資源が高騰をしています。当社が取り扱っている食品、飼料も大変な水準になっています。また、当社もエネルギー価格の上昇にも大きな影響を受けています。そんな中、再生可能エネルギーに注目が集まっています。

当社は直接的には再生可能エネルギーに関する業務を行っていませんが、再生可能エネルギーに関する業務を行っている事業者との取引も多く、再生可能エネルギーに関する知識もついてきました。
農業では太陽光発電の親和性が高く、営農型太陽光発電という制度があります。これは農地で耕作を行いながら発電をするというものです。また、当社が取り組んでいる食品リサイクルの分野では、バイオガス発電が増えています。これは食品廃棄物をメタン発酵させ、発生したメタンガスで発電を行うというものです。
また、バイオマス発電の事業者とも取り組みを行っています。バイオマス発電は木くずなどを燃料としてボイラーで利用し、発電するというものです。

このように再生可能エネルギーは徐々に普及が進んでいますが、その大きな背景として再生エネルギー固定買取制度があります。再生可能エネルギーを利用して発電した電力を一定価格で20年にわたり買取を行うという制度です。この制度は買取価格にインセンティブをつけることで再生エネルギーの普及を促進するという制度であり、その財源は電力料金に付加することで捻出されています。

電気料金の明細を見ると、「再生エネルギー賦課金」という名目で費用が計上されています。このお金をプールしたものが再生エネルギーで発電した電気を買い取る原資となっているわけです。現在は3.45円/kwとなり、通常支払っている電気代の1割程度を占めています。毎月1万円電気代払うと1000円程度の負担になります。このあたり、詳しい制度設計は経済産業省のサイトをご覧下さい。

もともと、この固定買取制度の目的として、再生エネルギーという事業に対し国が20年間価格を保証することで事業の参入を促し再生エネルギーの普及をすすめるというものです。発電の種類によって買取価格が決められており、その価格は毎年見直しされています。太陽光発電ではパネルの値下がりにより10年前の半額以下の価格となっています。
しかし、これまではこの固定買取制度の設定金額が高いため、再生可能エネルギーの発電事業はかなり利益率がよいビジネスとなっていました。例えば太陽光発電では一時期は投資利回り10%以上も可能でした。つまり、1000万円投資して20年間で2000万円以上になります。それで山を切り開いて太陽光パネルを並べるような現場が増えている訳です。その原資はすべて我々の電気代になります。私は山を埋め尽くした太陽光パネルを見るにつけ、本当にこの再生エネルギーの買取価格が妥当なのか疑問に思います。

再生可能エネルギーの買取価格は4兆円程度となり、通常の発電に比べて割高となっている分の3兆円弱が電気料金に上乗せされ全国民の負担となっています。その制度の是非はともかくとして、発電事業に関わっている人以外はほとんどこの制度でお金を負担していることを知らないことは大きな問題だと思います。私は周りの人に「電気料金に上乗せされているのを知っているか」と尋ねるようにしていますが、たいていの人はこの制度を知らずお金を払っていることすら知りません。

これから資源価格が高止まりして再生エネルギーの重要性がますます増しますが、発電のコストが高額な発電が本当に環境負荷が低いのか、個人的には疑問です。LCA(ライフサイクルアセスメント)の算出を行い環境負荷を把握すべきですが、基本的にはコスト≒エネルギーなので本来環境に対し優しいものはコストも低いはずです。そう言う意味で、発電単価が下がって火力発電よりコストが低い今の太陽光発電は環境負荷が低い発電であると言えます。太陽光発電の場合、固定買取価格が下がったため、通常の火力発電よりコストが低くなっています。現在は電気代が高騰しており、太陽光発電は売電するよりも自家消費するほうがお得になってきています。これが本来の姿では無いかと思います。
逆に、いつまでも発電単価が下がらない発電を国民負担により支援し続ける意味があるのか、検討をすべきではないでしょうか。

環境問題に対してどう向き合って政策決定していくかは将来の日本に対し大きな影響を与えますが、世間一般の関心が薄いことに危惧の念を抱きます。環境問題は地球環境のためでもありますが、日々の生活にも関係していることでもあります。毎日の財布とも密接関係する身近な問題として向き合っていくべきでは無いでしょうか。

畑

有機肥料の可能性

資源価格の上昇や食料の需要の高まりに伴い肥料の価格が上がっています。国内の農産物価格は低迷しており、農業の生産現場は厳しい状況に置かれています。
化学肥料の値上がり当面続くか、国際的な需要高で 農家がとれる対策は?

ただ、肥料の原料であるリンとカリは天然鉱物でありその逼迫は数十年前から言われてきたことです。私は20年ほど前のサラリーマン時代に水処理の会社で研究開発に携わっていましたが、その当時からリンの枯渇と排水中に含まれるリンの回収の必要性が叫ばれていました。人口増加と食料生産の増加のトレンドは継続しており、需給のバランスが崩れるのは想定されてきたことなので、厳しい言い方かもしれませんが今になって肥料価格の上昇や肥料原料の逼迫に右往左往するのは先見性に欠けるように感じます。

このような状況のもと、有機肥料に対する注目が上がっています。日本はたくさんの食品、飼料を輸入しています。輸入されている食品や飼料に含まれている窒素、リン、カリの量は非常に多く、元素の物質収支で言うと国内で肥料として必要とされる量を超えています。つまり、理論的には日本は1kgも肥料を輸入しなくても国内の農業で必要な量を確保することができるということです。
逆に言うと、国内の循環資源で賄えるはずの肥料を輸入しているため窒素、リン、カリなどが国内で過剰となり環境負荷を引き起こしているとも言えます。

では、有機肥料をどんどん使用できるかというと簡単な話ではありません。一番の課題はどうやって散布するということです。
有機肥料は化成肥料とくらべ散布量が多くなります。まず、肥料の有効成分の量が大きくことなるため、散布量が多くなります。また化成肥料は粒状になっているものがほとんどで機械散布が容易にできますが、有機肥料は水分を含んでいたり固まり状になっているため、散布に手間がかかるものがほとんどです。たとえば、堆肥はマニアスプレッダーという機械がないと機械散布は難しいです。農業現場は人手不足が著しく、手間が増える有機肥料は敬遠されがちです。

マニアスプレッダ-(デリカ社ホームページより)

また、有機肥料はその名前の通り有機物を含んでいます。有機物が分解することで肥料として効果を発揮するため、肥料の効果がでるまでに時間がかかります。またいつどれぐらい肥料が効果がでるかが気候や土壌などの条件によって変わるため、経験が無いと予測しにくいという欠点もあります。

しかし、有機肥料をうまく使うと化成肥料だけより間違いなく収量が増えます。私は自分の出身大学で行われている肥料の試験のサポートをさせていただいており、毎年試験圃場の収量調査に参加しています。試験結果を見ると、有機肥料を使う方が顕著に収量が増加します。


これは、有機肥料には微量要素や有機炭素が含まれているため、土壌の改良や微量要素の補給効果などにより収量が増えます。また適切な使用により病害虫も減少する傾向を感じます。有機肥料の効果は非常に高いものがあります。
一方、肥料の価格を考えると実は有機肥料はそれほど安価なものではありません。たとえば一般的にホームセンターなどで安価に販売されている鶏糞も有効成分あたりで計算すると化成肥料とそれほど遜色ない価格となってしまいます。これは、有機肥料の方が有効成分含量が低く、実際に効果を発揮する肥料分が少ないため割高になるためです。
鶏糞の場合、通常は窒素が3%程度含まれています。このうち、実際に植物が利用できるのは半分程度ですので、実際は1.5%程度が有効な窒素成分と言うことになり、窒素15%の化成肥料の1/10となります。つまり、鶏糞は化成肥料の1/10の価格でないとコスト削減することができないということになります。ものの値段が安くなると相対的に運賃や容器代コストの比率が高くなり、コストの低減が難しくなります。

これからの時代、資源が安くなる要素はほぼありません。世界人口増加による食料生産の増加に伴い、肥料の使用量も確実に増加していきます。確かに有機肥料を使えない理由はたくさんありますが、できない理由を挙げるよりどうしたら使えるようになるかを考える姿勢が重要だと思います。当社は「資源循環により持続可能な社会実現に貢献する」ことを経営理念に掲げています。これからも微力ながら資源循環のお手伝いをしていきたいと思います。

ベンチャー企業の存続

早いもので2021年も終わろうとしています。年を取ったせいか毎年一年が過ぎるのがどんどん早くなっている気がします。

当社は12月末が決算で、無事17期を終えることができました。未熟な経営者にも関わらず継続できたのはひとえにお取引先やスタッフ、その他関係各位のおかげかと思います。事業を始めたときは本当によちよち歩きだったのですが、いつの間にか17年継続することができました。この頃、「長く続いているんですね」と言われることがあり改めて継続してきたことを認識した次第です。

一般的には新規創業しても事業継続することができず廃業する割合が高いと言われています。まわりの創業した例を見ていると、廃業しているのはいくつかのパターンがあるような気がします。

・経営に対して真摯に取り組んでいない

・市場性を無視した事業分野への参入

・野放図な投資

などにより事業継続できていないケースがよく見られます。

低成長でかつ高度化した現代社会において、新たなマーケットは少なく、ブルーオーシャンはすぐ新規参入者で埋め尽くされてレッドオーシャン化します。既存業者との競争に勝つためには伸びゆくマーケットをターゲットとし、適切に攻めることができなければ既存業者との競合に勝てず事業継続が難しくなっているのかと思います。
世界人口の増加と経済水準の向上により、食料の需給は間違いなく厳しくなります。当社がいままで継続できたのは当社の事業領域が食品リサイクルという伸びゆく分野であり、なおかつ既存業者の技術水準が低く、相対的に当社の技術が強みとして明確化でいたことがあるかと思います。

ビジネスをするにおいて重要なのが顧客ニーズであることは言うまでもありません。ニーズがある分野で事業を行うことが、事業の存在意義につながり事業の継続発展に結びつきます。
当社はこれからも食品リサイクルという分野で事業を行うことで、社会的ニーズに応えていきたいと思います。来年もよろしくお願いします。

堆肥の発酵促進

今年は夏過ぎてから新規案件などで大変忙しく、ブログの更新もすっかり怠っていました。
気づくとすっかり秋も深まってきています。

気温の低下に伴い、堆肥の発酵が悪くなる時期が来ました。食品残さのリサイクル方法は様々なものがありますが、そのうちの一つが堆肥によるリサイクルで飼料化が増えてきてはいますが堆肥によるリサイクルも重要な手法です。
また、家畜の糞尿はそのほとんどが堆肥としてリサイクルが行われています。

 

堆肥は微生物反応なので、外気温が低下すると反応が悪くなります。加えて微生物の呼吸により温度が上がりますので、いっそう堆肥の温度低下が発生します。
当社はエコフィードを取り扱っていますが、堆肥発酵不良の原因の一つとしてエコフィードの利用があります。エコフィードを使用すると家畜糞尿の発酵が悪くなるケースがあります。エコフィードは食品用に加工されたものが原料となりますので、消化吸収がよく粒径が細かいものが多いです。繊維分が少なく消化吸収が良いため、糞尿に混ざる有機物量が減少し、結果として糞のカロリーが下がります。たとえば、豚の場合一般的なトウモロコシ粉砕の飼料を使用した場合、糞をしらべるとトウモロコシの種子の外皮がかなり含まれていますが、エコフィードではそういった部分が含まれなくなります。カロリーが減少するだけでは無く、粒子が細かくなることで糞尿の分離が悪くなって糞の水分が増えることも堆肥発酵には悪影響があります。

そういった堆肥の発酵が悪くなる条件でもカロリー源であるものを添加することで堆肥発酵がすすみます。一般的にはよく白土が使われています。白土とは油脂を精製するときにろ過に使用する珪藻土の残さであり、油脂と珪藻土の混合物です。カロリーが高く発酵促進には有用ですが、固形分が多く堆肥の量が増えてしまうこと、自然発火する事故が多く危険性があることが欠点です。
食品残さの中には高カロリーでハンドリングが良いものがいろいろあります。たとえば当社ではチョコレートのリサイクルを行っています。チョコレートは非常に高カロリーであり、堆肥に入れることとでカロリーが上がり温度が上昇します。基本的に油脂類はカロリーが高いため堆肥の発酵促進に有用ですが、ハンドリングが悪いものが多いためハンドリングがよいチョコレートはよい原料です。
また、製粉工場から発生するダストも取り扱っています。小麦を選別したときに発生するもので小麦、トウモロコシなどの穀物とその破片が混合したもので、こういったものを混合することで通気性が改善され堆肥の発酵が進行します。

 
様々な食品廃棄物を最適な用途に仕向けていく作業はパズルをうまくはめていくようなおもしろさがあります。
適材適所のリサイクルをこれからも進めていきたいと思います。

 

理系人間

雨が続いていますが、豊川は先日より大雨が続いて全国ニュースになったりしました。気候変動が大きくなっているような実感があります。

会社の前の1号線も浸水

基本的に豊川がある東三河地方は冬は温暖で夏は名古屋などに比べると最高気温がそれほどまでに高くなく比較的過ごしやすい地域です。夏場は最高気温が名古屋より3℃ぐらい低い傾向にあります。名古屋が過酷すぎるという説もありますが‥(笑)

と言っても夏場の降水量は多く、じめじめした暑さなのは名古屋と一緒です。学生の頃はエアコンなしでがんばっていましたが、昨今はエアコンなしでは暮らせない体になっています。

エアコンを使ってるときに気になることがあります。時々、部屋が暑いときに早く冷やしたいからかエアコンの設定温度を低くする人がいます。意味が無い行為なので、理系人間的にはとても気になります。

たとえば、設定温度25℃、室温30℃だった場合、エアコンは出力全開になります。徐々に温度が下がってきて25℃に近づいてくると、エアコンは出力を落とします。今のエアコンはインバータ制御をしているので無段階で出力調整ができますので、最初は少し出力を絞り、徐々に出力を落として25℃に近づけていきます。
ここで設定温度を22℃にしたらはやく25℃まで到達するか‥と言うと出力の全開値は一緒なので当初の温度の下がり方は同じになります。厳密にいうと25℃近辺で出力を落とすので、25℃まで到達する時間は若干遅くなりますが25℃近傍まで下がる速さは変わりません。
昨今のエアコンは制御が緻密になっておりセンシング技術も優れているので、温度計を設置すると設定温度に近い値に収束することがよくわかります。逆に、断熱が悪いなどの理由でエアコンの出力全開にしても追いつかない場合、いくら温度設定を下げても温度が下がるわけではありません。

そう言う理屈を考えずに「暑いから温度設定を下げる」という行為には理系人間的にいらだちを覚えます(^^)
何事も理屈でごりごり押すので世間から疎まれることもままありますが、これまでの理系人間的生き様をこれからも貫徹していきたいと思っていますので、生暖かい目で見守りください(笑)

穀物価格の上昇

一般にはあまり話題になっていませんが、飼料価格が大変な勢いで値上がりしています。

配合飼料4700円上げ 原料高騰、円安も 全農7~9月(日本農業新聞)
JA全農は18日、7~9月期の配合飼料供給価格を前期(4~6月)に比べて全国全畜種総平均で1トン当たり4700円値上げすると発表した。値上げは4期連続。飼料原料の国際相場の高騰、海上運賃の上昇、円安が重なった。


配合飼料の主原料はトウモロコシと大豆粕です。どちらもアメリカ産が多く使われており、アメリカの穀物取引市場の相場により価格が形成されます。日本の配合飼料価格は全農が基準となっており、全農の価格を基にして他のメーカーの価格も決められます。
昨年末よりシカゴの先物市場でトウモロコシ価格が暴騰しており、また為替や船賃などの影響も有り飼料価格は半年で3割以上上がっています。

シカゴコーンチャート(豊トラスティ証券サイトより

トウモロコシの先物価格を決める要因は様々なものがありますが、今回の価格上昇の大きな要因は中国の輸入量の増加です。トウモロコシの世界貿易量は1億5千万トン程度で、日本は1600万トンを輸入する世界最大の輸入国でした。しかし、数年前ではほとんど輸入を行っていなかった中国が今年度は2000万トン以上輸入を行って世界最大の輸入国となる見込みです。この急激な輸入増加によりトウモロコシ価格が上昇し、他の穀物にも価格上昇が波及しています。

畜産は畜種問わず生産費のうち飼料価格が占める割合が一番高く、生産費の50%~60%に達する場合もあります。飼料価格が3割上昇すると当然ながら非常に影響は大きく、経営的に厳しい事業者も増えることが予想されます。
突然の価格上昇に戸惑う声も多く聞かれますが、穀物価格の上昇は以前から予想されていました。

 

穀物の需給(農水省サイトより

 

穀物の需要は世界人口の増加や畜産物の消費拡大に伴い増加していますが、これまでは生産量もそれに応じて増加していました。しかし、穀物の生産量増加は耕地面積の拡大ではなく主として単位あたりの収穫量増加により実現されており、その伸びしろには限界があります。トウモロコシの単収は現在180ブッシュエル/エーカー程度で有り、これは1200kg/10a程度です。米の単収が600kg程度なのでいかに単収が多いかわかります。
これまでは肥料などの投入量の増加、遺伝子組換えなども含む作物の品種改良により単位収量が増えてきていますが、これまでのようなペースで増加することは難しくなると予想されています。需要の伸びに生産が追いつかなくなってきて需給バランスが崩れ始めたのが今回の穀物価格高騰のきっかけのように思います。これから数十年のうちにさらに世界人口は現在の1.5倍の100億人になることが想定されていますが、果たして地球で100億人の食料を供給することができるのでしょうか。

アメリカのトウモロコシの単収の推移(農水省サイトより)

当社は食品リサイクルの事業を営んでおり、飼料価格の上昇は短期的なビジネスの視点では追い風になります。しかし、本当に食品の需給が逼迫したとき果たして当社の行なっている食品リサイクルシステムが継続して行えるか、リスクファクターが増えているように感じています。畜産業だけではなく、食料の輸入や流通なども含めた食に関わるあらゆる業界に大きな変革が訪れることは間違いないと思います。

しかし、大多数の人は危機感が薄いように感じます。食の安全保障という基本的な部分のみならず、事業者にとっては継続性についても大きな不確定要素であり、消費者にとっては生活の基盤に関わる問題です。簡単に答えが見つかる訳ではありませんが、方向性を模索することが必要ではないかと強く感じます。

ウイスキー蒸留所のリサイクル

新型コロナウイルスの流行も1年以上経過し、社会全体が疲弊している感じが強くなっています。自分は酒好きなので飲みに行くことができないことにストレスを感じます。
当社は様々な食品副産物をリサイクルしていますが、酒造関係の醸造副産物の仕事も多いため酒の生産量が減っている影響が出ています。業務的な側面からも早く元の社会に戻れることを切に願います。

当社では酒造関係の仕事はビール、日本酒、焼酎などを取扱しています。最近取扱量が急激に増えているのがウイスキーの製造副産物のリサイクルの仕事です。昨今のジャパニーズウイスキーの流行に伴い、国内のウイスキー蒸留所の数が増えています。ウイスキー(モルトウイスキー)の作り方はおおざっぱに言うと以下のようなプロセスです。
1.麦芽を粉砕し、お湯に浸漬します。麦芽中の酵素(アミラーゼ)によりデンプンが糖化します。
2.麦汁をしぼります。
3.麦汁を発酵タンクにいれ、数日程度酵母発酵させます。
4.発酵したもろみをポットスチルと呼ばれる蒸留器で蒸留します。アルコール分を高めるため2回蒸留します。
5.蒸留した液を木樽に詰めて3年以上熟成させます。

詳しくはさまざまなサイトに載っていますのでそちらをご参照ください。
例→サントリーのサイト

このような製造過程で麦芽の粕と蒸留廃液が発生します。大手ウイスキーメーカーでは従来より麦芽(ウイスキー粕)のリサイクルが行われていましたが、小規模な蒸留所では麦芽リサイクルのノウハウが乏しく有効な活用があまり行われていませんでした。当社ではノウハウの蓄積によりウイスキー粕と蒸留廃液のリサイクルを行っており、現在全国の5カ所の蒸留所の現場でリサイクルのお手伝いを行っています。また、新規蒸留所からのお問い合わせも増えており、近日中に数カ所の蒸留所でリサイクルがスタートする見込みです。
麦芽は乳酸発酵させサイレージとして保存し、主に酪農向けの飼料として販売しています。蒸留廃液はタンパク質が豊富で有り、養豚向け飼料および発酵飼料原料として利用しています。

ウイスキー粕飼料化システム

ウイスキーの原料はビールの麦芽と同じものですが、ビールと少し製造工程が異なるため飼料とする際の発酵が上手くいかない傾向にあります。当社は発酵のやり方を試験しノウハウも確立できてきたので先日特許も出願しました。

自分はお酒の中でもウイスキーがかなり好きで、コロナ禍以前はショットバーに行きウイスキーを飲むのが楽しみでした。でも、ウイスキーの作り方について詳しくは知りませんでした。仕事で蒸留所に行きウイスキーの製造方法や原料について詳しく知ることができ、またいろいろなウイスキーを試飲したりと役得を堪能しています。通常は見学できない製造工程も見学できたりもします。
ジャパニーズウイスキーをいろいろ飲み比べると、繊細で奥深いものがあります。また作り手の熱い想いを知り、これからのジャパニーズウイスキーの広がりに期待しています。

オリンピック開催に関するビッグサイト問題

年度末になり、非常に多忙な日々が続いています。補助事業をいくつかやっているのでその報告書作成に追われています。
また、会社のライン改修工事もあり、現場の仕事もいろいろ入っています。

そんな多忙な中、先週は東京ビッグサイトで行われた環境展に3日間出展してきました。
環境展出展はもう10年以上続けています。通常は東ホールという一番広い場所を使い5月に開催されていますが、今回は西ホールで3月に時期をずらしての開催でした。

通常と場所や時期が変更になったのはオリンピックの影響です。オリンピックのプレスセンターとして東ホールを使うために、東ホールが使用できなくなっています。2020年の開催のために2019年から通常の使用ができなくなっており、このため様々なイベントが開催場所や時期の変更を余儀なくされています。
このあたりの問題は様々な記事になっていますが、世間にはあまり知られていないように感じます。

東京ビッグサイトが東京五輪で使えない問題で露呈…イベント会場が少なすぎる実情 https://biz-journal.jp/2020/06/post_160287.html

ビッグサイトはもともと人気があり以前より通年ほぼ空きが無い状態でした。また、日本は経済規模に比べ展示会場が少ないと言われています。「コンパクト五輪」で新しい施設作らないという体面のためにその少ない展示会場をつぶしてオリンピックのために使うのはおかしな話だと思います。
本来でしたら、プレスセンターを新しく作り、オリンピックが終わったら新たな展示会場にする‥というのが常識的なやり方ではないでしょうか。なぜ稼働率が高い施設を使えなくするのか、合理的な理由が説明されていないように思います。

オリンピックは今日3月21日時点の時点で観客を減らして開催されるとの報道がされています。この新型コロナの厳しい状況にもかかわらず開催をめざすのは中止した場合の放映権他の損失が大きいからであり、オリンピックがスポーツや平和の祭典ではなくビジネスが主眼の目的になっていることを端的に現しているように感じます。

今年の環境展は新型コロナの影響と開催時期の変更、規模の縮小が相まって来場者数は少なかったです。
個人的にはオリンピックには恨みつらみがあります。
経済浮揚のためのオリンピックが経済の足を引っ張るのは皮肉な現象ではないでしょうか。

前回の東京オリンピックは経済発展に寄与したと言われています。高度経済成長期の中、社会インフラが未整備だった時期においてはオリンピックを機にインフラ整備を行うことは経済発展にも役立つことがおおいかもしれませんが、インフラが高度に整備されて都市化が進んだ現代の東京で果たして経済効果が高いものだったか、微妙だと思います。長野オリンピックの後、果たして長野経済は振興したでしょうか。大きなイベントで経済成長を促す時代ではなく、地道に国内の科学技術振興と少子化対策をすすめていくことが結果として経済の安定的成長につながると思います。

なんにせよ、来年にはコロナ禍が過ぎ去りオリンピックも終わり平穏な日々がくることを祈っています。