養豚における管理会計的手法

今日は滋賀県に出張中です。写真は近江ちゃんぽんなる物です。自分のイメージするちゃんぽんとはやや異なりますが、おいしかったです。

Kimg1383

写真と本文は関係ありません

閑話休題

 

仕事柄養豚農家にお伺いしていろいろとお話を聞くことが多いのですが、この仕事を始め養豚農家さんの話を聞いて「企業経営」という視点から見て感心することがいろいろとあります。その1つは経営状態がいい養豚農家は非常にこまかく数値管理を行っているという点です。

日本では多くの養豚農家は一貫経営、すなわち繁殖-肥育を一体に行っています。一貫経営は管理するべきパラメーターが多いため、緻密に数値を追うことが求められています。
繁殖を行うためには当然母豚(ぼとん)を飼う必要があり、母豚を管理して繁殖させ子豚を産ませます。管理する指標として、1回に出産する頭数、年間の出産回数、生まれてきた子豚の体重、離乳するときの体重などがあります。こう言った数字が最終的に1年間に母豚1頭あたり何頭出荷できるかに影響してきます。母豚1頭あたりの出荷頭数が少ないと言うことは母豚に与える飼料が多く必要となり、母豚を飼う豚舎のスペースも広く必要になります。

また、日本では母豚はたいてい2種類の品種の掛け合わせです。養豚農家によってはこの雑種を自分の農場で交配して生産しているところも多くあります。この場合、2種類の品種を飼育して、母豚の更新頭数に応じた数の豚を育てなければいけません。母豚は適切な産歴で更新しなければいけないため、母豚の育成が適切に行われないと母豚の数が足りなくなったりすることもあります。

このように様々なパラメータが絡み合って養豚生産のコストが決まります。相手が生き物であるのにかかわらず、非常に緻密な原価計算をすることが要求されるわけです。一般の中小企業経営者は案外原価計算に無頓着だったり原価削減目標がなかったりします。養豚農家は経営勉強会などで集まってそれぞれの管理項目を比較したりしますので、一般の中小企業以上に経営を意識しているように見受けられます。

この前ある養豚農家さんとお話ししていたら、「養豚経営でもっとも影響が大きい項目は肥育豚の飼料要求率だ。」という話題になりました。飼料要求率とは体重が増えるのに必要な飼料の量のことです。養豚でもっともコストがかかるのは肥育豚の飼料代です。この要求率は成績がいい農家と悪い農家では1割以上異なります。
たとえば、年間出荷6000頭の農家で飼料要求率が3.0だったとすると、年間の飼料必要量は

6000頭×110kg(出荷体重)×3≒2000トン

となります。要求率が1割異なると200トン飼料必要量が変わる計算であり配合飼料が50円/kgとすると年間の飼料コストは1000万円変わってくるわけです。年間出荷6000頭というのは家族経営規模であり、そんな農家でも年間コストがこれほど変わるというのは耕種農家ではあまり無いケースだと思います。それだけ養豚経営がシビアであると言うこと証拠ではないかと思います。配合設計の重要性がよくわかるかと思います。

養豚経営はとてもシビアな数値管理が求められますが、それだけにとても面白さがあります。当社が販売している飼料もお客様の経営を大きく左右する場合もあり、それだけに慎重に販売することが必要であると感じています。

夕飯のカロリー

ゴールデンウィークもすっかり終わりですが、皆様いかがお過ごしですか。
当社は年中週休二日、祝日は完全出勤という勤務体系です。というわけで、連休は土日のみのお休みでした。
普段は土日も出勤したり家で仕事をしたりすることが多いのですが、今週末は久しぶりにのんびりと過ごしました。

というわけで?週末の夕食を披露します。

Imgp6806

ホタルイカの酢味噌和え。酢味噌は家で作ります。

Imgp6807
春大根と豚肉の煮物

Imgp6808

菜園で取れたてのソラマメ

Imgp6809

そしてビール。上面発酵。

その他にご飯と味噌汁です。というわけで、春を満喫しました。

仕事柄豚肉を食べる機会が多いですが、魚もイカも貝も好きです。普段摂取カロリーが多めになるので、肉を食べない日はカロリーが比較的少なくタンパク質含量が多いイカ、貝は意図して食べるようにしています。、、って言うと、うっとうしい奴と言われてしまいがちですが ^^;
要は高カロリーでなくてもおいしい物はたくさんあると言うことです。この夕飯で800kcalぐらいかな。

 

 

アベノミクスでフォークリフトの購入

いままで使っていたフォークリフトの調子が悪くなってきたので、新しいフォークリフトを購入しました。本当は中古でもよかったのですが、最近中古のフォークリフトは玉不足で欲しいスペックの物がなかったため新車購入となりました。

477085_365517860225368_1060557134_o

購入記念の記念撮影

今回のリフトは購入金額200万円強。毎回のことですが、高い買い物をすると投資回収できるのか心配になります。もちろん投資回収できるという計算はしているのですが。

ところで、リフト購入のための融資を銀行に相談したところ驚くほど好条件の提示がありました。はっきり言ってまだまだ小さい当社のような会社にそういった条件を提示するのは、よほど融資先が不足しているということなんだろうなと妙に感心しました。

銀行は集めた預金を運用することにより利潤を得るわけですが、中小金融機関では株式などリスクの高い運用の比率は低く、貸出金と国債や社債が中心となっています。ところが、ディスクロージャーを見ると企業への貸出先が減ってきています。日本の企業数が減っているわけですから当然と言えば当然ではあります。どうしても国債の運用比率が高まってきているわけです。

アベノミクスにより日本の国債の先行き不透明さがますます増大してきています。国債運用に頼らざる得ない中小金融機関は相当な危機感を持っているのではないかと推察します。おかげで(あくまで)相対的に当社のような中小企業の信用度が増すという皮肉な結果がうまれているように思います。ある意味アベノミクスの恩恵を受けている訳です。

現在の金融政策は非常にリスキーであり、また、小手先の金融政策で景気がよくなるほど簡単な物ではないと個人的には思います。日本の財政破綻による混乱に対しどう対処するのかというのは中小企業にとっては想定できる範囲を超えた事態ではありますが、念頭に置くべき時が来ているような気がしてなりません。

ソラマメから考える無農薬栽培と食料生産

肥料の実験と趣味を兼ねてソラマメを栽培しています。昨年は冬のうちからアブラムシが大量発生し、春になったときにはすっかり株が弱ってまともに収穫できませんでした。

今年度は昨年の反省を生かし、いろいろと試験をしてみました。

まず、移植を行うと植え傷みがおきて初期生育に響くようなので、直播としました。ソラマメの種子は結構高いので余分に播種する直播は割高感がありますが、やむを得ずです。

温暖な東三河ですが、一番寒い時期には氷点下2℃ぐらいまで下がります。霜にやられるとその後の生育に響くようなので、霜よけとして寒冷紗をかけました。
寒冷紗は播種したあと発芽前にかけてありますので、アブラムシよけにもなります。

また、バンカープランツとして大麦を混播しました。大麦にはムギクビレアブラムシというアブラムシが発生します。ムギクビレアブラムシは麦類にしかつきませんが、これが増えると天敵であるヒラタアブやテントウムシが発生します。天敵を貯めておくからバンカー(銀行)という訳です。ソラマメにはマメアブラムシやソラマメヒゲナガアブラムシが発生しますが、これは麦にはつきませんので麦を植えてもソラマメにつくアブラムシが増えることはないのです。

春先に見たら大麦にみっちりとアブラムシがついていましたが、1ヶ月後には全く姿が見えなくなっていました。それだけ天敵が増えたと言うことです。今はソラマメに多少アブラムシがついていますが、この分で行くと大きな被害無く収まりそうです。

Kimg1275



ソラマメが増えるかどうかは環境にも依存しているような気がします。現在の畑はまわりにカラスノエンドウなどのマメ科雑草がたくさん生えており、これが悪さをしているように思います。以前、実家(長久手)の近くの畑でソラマメを作ったときはほとんどアブラムシが発生しませんでした。

というわけで、無農薬でソラマメを栽培してみたのですが、(東三河で無農薬栽培するには)けっこうな手間がかかります。家庭菜園レベルでは採算度外視でも大丈夫ですが、商業ベースでこれができるかというと疑問です。

私はもちろん農薬は少ないにこしたことは無いと思いますし、日本の農薬使用量は多すぎると思います。ただ、無農薬栽培は簡単ではないとも思いますし、できたとしても非常にコストがかかるのは事実です。現代日本では食品の価格が非常に安価になっており、無農薬栽培によるコストアップも許容できる社会環境となっています。でも、世界では多くの人が飢えています。飢えというのは食料生産の問題ではなく、貧富の問題です。日本は豊かなので食糧自給率40%であっても飢えることがないのです。

農薬を使用することにより、安価で安定した食料生産が可能となっています。享保の大飢饉では虫害により西日本の収量は平年の27%に過ぎなかったと伝えられています。
参照:ウキペディア
農薬と化学肥料が70億の人口を支えている訳であり、それを無視した無農薬栽培は金持ちの道楽のような気がしてならないです。

これから世界の食糧事情が悪化し、国内の財政が逼迫して貿易赤字が増大している中、札束で世界中の食品を買い集めるようなことがいつまでもできるとは思えません。農業とは食料生産であり、生命維持に必要な行為であるという基本をわすれてはならないと思います。

補助金の功罪

補助金の報告書類も提出し終わった・・と思いきや、次の補助申請の準備をしています。いつもは大変なので補助年間一件ぐらいにしているのですが、諸般の事情で今年は二件申請です。

補助金をもらっておきながらこんなことを言うのはちょっと問題があるかもしれませんが、補助金ははっきり言って税金の無駄になっているケースが多いです。

 

実際に受けている側から見た問題点を挙げてみると、

 

1.補助金のための書類が非常に多く、無駄な労力がかかる。これは補助の申請側だけの労力ではなく、審査する場合や交付する際にも労力がかかり、行政の仕事を増やしています。数千万円程度の交付金のためにほぼ一人の担当がついたりすることもあり、あきらかに補助額と比べ人件費がかかりすぎていることも多いです。

 

2.当然ながら補助金は申請した人、団体しか受け取ることができません。補助金の申請に手慣れた特定のところだけが何回も受け取ることになりがちです。このため、普遍性に欠けるものとなり、また補助金を受け取るためのコンサルティングなどの仕事を増やすことになります。

 

3.申請時期が短期間である場合が多く、補助を受け取るためにはかなり前から準備が必要となります。また、申請時期に合わせるため事業の計画などをたてにくい原因となります。

 

社会が複雑化している現代社会において補助金や助成金で社会システムを変えるという事はほぼ無理だと思います。

 

 たとえば、当社が事務局をやっている協議会では「エコフィード緊急増産事業」の補助金採択を受けています。これはエコフィードの普及により食糧自給率を向上させることを目標としています。エコフィードの使用量に応じて補助金がもらえる仕組みになっています。

しかし、採択件数が数十件の規模では到底自給率が上がるわけがありません。プールの水をひしゃくですくっているようなものです。

他方、昨今の飼料価格の高騰により当社へのエコフィード関連の問い合わせは非常に増えてきています。このことからもわかるように、社会システムの変革は経済的なインセンティブによるものが一番影響が大きいと言うことです。
配合飼料は税金も投入されている基金により価格が高騰した場合の補填があります。片方で配合飼料を安値誘導しておき、もう片方でエコフィードの普及に補助を出すというのは自己矛盾をしています。
食糧自給率を向上させるならできるだけ輸入トウモロコシを使わせないように経済誘導するのは当然であると思います。

 

同様に、飼料米に関する補助も非常に煩雑な手続きがあり、事務処理のコストがばかになりません。飼料米を作付けすると補助が出るのですが、飼料米が食品に転用されていないかいちいち証明書を出す必要があります。

個人的には飼料米は政府の備蓄米の買い上げ数量を増やし、古米の飼料分野への放出量を増やすのが合理的だと思います。

 

 

当社では雇用に関する助成も受けたことがあります。特定の条件に合致する人材を雇用すると一時金が出るというものですが、中小企業経営者の立場から言うと一時金が出るからと言って雇用が促進されるとは思えないです。

雇用に関する助成を出す一方で、社会保険料の金額は毎年上がってきており、会社負担分も増加しています。雇用を増やそうとするなら、補助に使っている同じ財源を使って社会保険の会社負担額を減らせば一番効果的かつ効率的だと思います。

税制や社会保険制度で誘導するのは、シンプルかつ効率的です。どんな事業者でも影響があるわけですから。

 

昨今は公務員バッシングを頻繁に目にしますが、私は日本の公務員はとても優秀で、熱心に働いていると思います。また、全ての補助が無駄だとも言えません。ただ、今している仕事が本当に社会のために役に立つのか、それをもう一度考えて業務の内容を見直す必要があるのではないでしょうか。

 

なお、念のために補足しますが当社への利益誘導的な政策を是としているわけではありません。もちろん当社には政策を誘導する権力があるわけではありません^^;

豚祭り

年度末、年度初めと多忙ですっかり更新が滞っています。以前は年度末と言ってもいつもと変わらない感じだったのですが、ここ数年は補助金を受けており、どうしてもこの時期忙しくなってしまいます。このあたりの問題については後日また書かせて頂きたいと思います。

さて、一週間以上経ってしまいましたが、三河トコ豚極め隊では3月24日(日)に豊橋市にあるこども未来館ココニコにて第1回三河トコ豚豚祭りを開催しました。

このイベントは「豚とふれ合い、豚を学んで、豚を味わう」をテーマとしており、豚について理解を深めてもらうと共に、おいしい豚肉を食べて地元の養豚への理解を深めていただくことを目標としています。

イベント内容として

・生ハムの試食

・子豚とのふれ合い

・豚肉の解体体験

・ソーセージ教室

・食育ビデオ

・地元の銘店による豚肉料理の露店

といった盛りだくさんの内容で行いました。おかげさまで参加して頂いた方々からは好評であったように思います。

 

 

Imgp6570

ソーセージ造り

Imgp6592


子豚とのふれ合い

いろいろとイベント開催までには苦労が多かったですが、盛況だったのでほっとしました。

個人的には食育ビデオはプロにお願いしましたが撮影、編集とこちらで企画を練ってたいへんだったので、とくに思い入れがあります。

なにはともあれ、今回のイベントはたくさんの人たちの協力がなければできませんでした。ご協力頂いた方々、参加して頂いた方々、その他皆さん全員に多謝!

リキッドフィードの保存性から見た浅漬けの危険性

出張で山梨に向かっています。身延線の初めて乗りましたがスピードが遅い・・。山梨で大して滞在時間がないのですが、今日は丸1日つぶれてしまいます。

 

リキッドフィードを扱っているとよく、「製造したエサはどれくらい日持ちするのですか?」という質問を受けます。実際に試験をしてみると、25℃ぐらいの一番厳しい条件でも一ヶ月以上問題がないという結果が出ています。

試験する際には一般細菌数、大腸菌群数、サルモネラ菌数を測定します。場合によっては乳酸菌数や酵母数、カビ数も測定します。一般細菌数には乳酸菌数も含まれます。食品の場合は酸敗は問題になることが多いので、一般細菌数(含む乳酸菌数)が増加するのは嫌われますが、リキッドフィードは乳酸発酵させていますので、一般細菌数は問題にしません。問題になるのは大腸菌群数とサルモネラ菌数です。もちろん、腐敗原因になる菌はほかにもいろいろありますが、大腸菌群数を指標にすることができます。

大腸菌群を抑制するために、リキッドフィードではpHのコントロールを行います。pHを4.0程度より低くすることにより常温でも大腸菌群を抑制することができます。リキッドフィードはエサなので当然デンプンや糖、タンパク質が多く含まれており、そのままでは菌の培地状態になってしまいますが、pHをコントロールすることにより腐敗を防止することができます。

当社ではリキッドフィードを製造する際にはギ酸を添加します。ギ酸は決して安いものではなく、危険な薬品でもあるのですが、製品の品質を保持するためには無くてならないものです。ギ酸を添加してpHが3.8より低くなるように管理しています。
 

昨年末、浅漬けで食中毒が発生して死者が出るという事件がありました。上記のような試験結果を見ると、浅漬けというのはとても危険であると思います。浅漬けは漬物のように見えますが、実際は乳酸発酵させているわけではなく、生野菜を調味液に漬け込んでいるに過ぎません。塩分濃度もそれほど高いわけではなく、pHも5.0ぐらいあります。アミノ酸や糖も入った調味液は培養液のようなものです。野菜を次亜塩素酸ナトリウムで消毒していますが、でこぼこや切り口のある野菜は次亜塩素酸ナトリウムぐらいでは完全に滅菌できません。腸管出血性大腸菌などでは非常に少量の菌数でも発症してしまうので、とても危険です。
本当はこういう危険性の高い食品は保存料などの添加物を使った方が安全だと思いますが、昨今の低添加志向では添加物は嫌われますので、無添加のものが増えています。

昔は漬物というとしっかりと漬け込んで乳酸菌発酵した酸っぱいものが当たり前だったのでしょうが、最近の消費者の嗜好がこういった危険性を産んでいるとも言えると思います。

飼料や微生物を取り扱っていると、通常食べているものでも結構危ないなと思うことがよくあります。逆に、食品メーカーの人や飲食店の人も微生物学的な知識があればもっと食品の安全性って担保されるのではないかなと思う今日この頃です。

コカコーラと食の安全、安心について

近年、「食の安心、安全」が強く求められるようになってきており、皆さん念仏のように安心安全と言われています。
ただ、安心と安全は別の物であり、安全であっても安心とは限りませんし、逆もまたしかりです。

コカコーラに含まれている砂糖を表現したこんな画像がネットで出回っています。

Colas

 
これを見るとコカコーラってなんて砂糖が多いのだろう、これは危険だと思わされます。でも、私は食品リサイクルに携わって普段から多くの食品の成分を見ていますので、この画像をちょっと疑問に思いました。

コカコーラの成分はWebサイトに掲載されています。それによると、100mlあたりの炭水化物量は11.3gです。原料から見て炭水化物=糖類ですので、350mlだと40g近い糖類が入っていることとなり、この画像は間違っていないことがわかります。(この画像には記載がないが、サイトによると39gを角砂糖で表現)

ところが、コカコーラ社のサイトには他の飲料の成分も掲載されています。
果汁飲料を見てみると、たとえばミニッツメイドオレンジは100mlあたりの炭水化物量は11.9g、グレープに至っては12.7gとコーラより多く含まれています。果汁の場合も炭水化物=糖類とみてほぼ間違いありませんので、コーラよりむしろ果汁飲料のほうが糖類の量が多いことになります。

逆に、スポーツ飲料などを見てみると、アクエリアスの場合は100mlあたり4.7gしか炭水化物が含まれていません。果汁飲料よりずっと低カロリーと言えると思います。

無論、糖類の過剰摂取は肥満だけではなく健康に悪影響ではありますが、そういった面で見るとコカコーラも果汁も変わらないわけです。極端な話、糖度が15度を超えるようなものもあるスイートコーンの方が糖の含有量が高かったりします。もっとも、飲料の方が摂取量が多くなりがちですし、果汁にはビタミンC等の成分も含まれていますのでそういう意味では同列では並べられませんが。

世間では「コカコーラ=健康によくない飲み物」と言ったイメージがありますので角砂糖が並んでいる画像をみると「やっぱり」と思いがちになってしまうのだと思います。
こういったセンセーショナルな画像が拡散しやすく、データを見ずに判断しがちな世間の傾向はゆゆしきものだと思います。データよりもイメージが主体となっている「安心」がいかに情緒的なものかという証左ではないかと思います。

センセーショナルなものは人々の関心を集めるものですから、マスコミに限らず耳目を集めたいがためにセンセーショナルな喧伝をする人は多くいます。個人的には、「○○の真実」のようなセンセーショナルなものこそ疑う姿勢が重要なのではないかと思っています。

ちなみに、私はコカコーラの味があまり好きでなく炭酸飲料がむしろ苦手なので基本的に飲みませんし、コカコーラを推奨しているわけではありません。念のため。

ギ酸による酵母発酵の抑制

当社ではリキッドフィーディングという液状のエサを扱っています。液状飼料はさまざまなメリットがありますが、欠点もあります。あまり知られていないのですが、実は酵母発酵しやすいというのも欠点の1つです。

そもそも酵母とはなんでしょうか。ウィキペディアによると、真核微生物で細胞壁を持ち、出芽によって増えるものをさす、とあります。単細胞の真菌であり、アルコール発酵を行う種類が含まれています。

酵母は好気的な環境では通常の呼吸を行いますが、嫌気的な環境では糖を基質としてアルコール発酵を行います。この際、二酸化炭素を放出します。パンが膨らむのはこの二酸化炭素の作用です。酵母は糖は資化できますが、デンプンなどの多糖類は資化できません。このため、日本酒では最初に麹をつかい米のデンプンを糖化させ、それから酵母発酵を行います。ビールでは麦芽の糖化酵素を使い、デンプンを糖化させ酵母発酵を行います。

当社の製造しているリキッドフィードは原料に糖質がたくさん含まれています。シロップや砂糖など糖のそのものも多く含まれています。また、ジャガイモの皮も原料として利用しており、ハンドリングを良くするため糖化酵素を利用してデンプンを分解しています。

さらにリキッドフィードは保存性をよくするために、酸素の入らないように密閉状態で保管します。このように条件が揃っているため、リキッドフィードではかなり酵母発酵が発生しやすい状態にあります。

酵母発酵が起こると、含まれている糖がアルコールと二酸化炭素に変化します。つまり、有機物の一部が二酸化炭素として放出されてしまい、エネルギーのロスが発生します。その量はすさまじく、固形分の10%以上がロスすることもあります。

もう一つの重大な問題は発泡です。二酸化炭素の放出により発泡がおき、タンクなどからのあふれが発生しやすくなります。あふれるだけならいいのですが、発酵によりガスが発生し圧力が高まったため、当社ではタンクを何個か壊しています。

当社ではリキッドフィードにギ酸を添加しています。これはpHを低下させることにより保存性を向上させることが第一の目的ですが、ギ酸を添加することにより酵母発酵を抑制することができます。ギ酸には静菌作用があるため、酵母やカビの増殖を抑制することができるわけです。この前文献を見ていて知ったのですが、同じpHであっても有機酸の種類によりかなり静菌作用に差が出ます。酢酸やクエン酸では代わりにならないのです。

しかし、微生物というのはコントロールが本当に難しいです。エサを作るときも、杜氏になった気分で仕事していますw