畑

有機肥料の可能性

資源価格の上昇や食料の需要の高まりに伴い肥料の価格が上がっています。国内の農産物価格は低迷しており、農業の生産現場は厳しい状況に置かれています。
化学肥料の値上がり当面続くか、国際的な需要高で 農家がとれる対策は?

ただ、肥料の原料であるリンとカリは天然鉱物でありその逼迫は数十年前から言われてきたことです。私は20年ほど前のサラリーマン時代に水処理の会社で研究開発に携わっていましたが、その当時からリンの枯渇と排水中に含まれるリンの回収の必要性が叫ばれていました。人口増加と食料生産の増加のトレンドは継続しており、需給のバランスが崩れるのは想定されてきたことなので、厳しい言い方かもしれませんが今になって肥料価格の上昇や肥料原料の逼迫に右往左往するのは先見性に欠けるように感じます。

このような状況のもと、有機肥料に対する注目が上がっています。日本はたくさんの食品、飼料を輸入しています。輸入されている食品や飼料に含まれている窒素、リン、カリの量は非常に多く、元素の物質収支で言うと国内で肥料として必要とされる量を超えています。つまり、理論的には日本は1kgも肥料を輸入しなくても国内の農業で必要な量を確保することができるということです。
逆に言うと、国内の循環資源で賄えるはずの肥料を輸入しているため窒素、リン、カリなどが国内で過剰となり環境負荷を引き起こしているとも言えます。

では、有機肥料をどんどん使用できるかというと簡単な話ではありません。一番の課題はどうやって散布するということです。
有機肥料は化成肥料とくらべ散布量が多くなります。まず、肥料の有効成分の量が大きくことなるため、散布量が多くなります。また化成肥料は粒状になっているものがほとんどで機械散布が容易にできますが、有機肥料は水分を含んでいたり固まり状になっているため、散布に手間がかかるものがほとんどです。たとえば、堆肥はマニアスプレッダーという機械がないと機械散布は難しいです。農業現場は人手不足が著しく、手間が増える有機肥料は敬遠されがちです。

マニアスプレッダ-(デリカ社ホームページより)

また、有機肥料はその名前の通り有機物を含んでいます。有機物が分解することで肥料として効果を発揮するため、肥料の効果がでるまでに時間がかかります。またいつどれぐらい肥料が効果がでるかが気候や土壌などの条件によって変わるため、経験が無いと予測しにくいという欠点もあります。

しかし、有機肥料をうまく使うと化成肥料だけより間違いなく収量が増えます。私は自分の出身大学で行われている肥料の試験のサポートをさせていただいており、毎年試験圃場の収量調査に参加しています。試験結果を見ると、有機肥料を使う方が顕著に収量が増加します。


これは、有機肥料には微量要素や有機炭素が含まれているため、土壌の改良や微量要素の補給効果などにより収量が増えます。また適切な使用により病害虫も減少する傾向を感じます。有機肥料の効果は非常に高いものがあります。
一方、肥料の価格を考えると実は有機肥料はそれほど安価なものではありません。たとえば一般的にホームセンターなどで安価に販売されている鶏糞も有効成分あたりで計算すると化成肥料とそれほど遜色ない価格となってしまいます。これは、有機肥料の方が有効成分含量が低く、実際に効果を発揮する肥料分が少ないため割高になるためです。
鶏糞の場合、通常は窒素が3%程度含まれています。このうち、実際に植物が利用できるのは半分程度ですので、実際は1.5%程度が有効な窒素成分と言うことになり、窒素15%の化成肥料の1/10となります。つまり、鶏糞は化成肥料の1/10の価格でないとコスト削減することができないということになります。ものの値段が安くなると相対的に運賃や容器代コストの比率が高くなり、コストの低減が難しくなります。

これからの時代、資源が安くなる要素はほぼありません。世界人口増加による食料生産の増加に伴い、肥料の使用量も確実に増加していきます。確かに有機肥料を使えない理由はたくさんありますが、できない理由を挙げるよりどうしたら使えるようになるかを考える姿勢が重要だと思います。当社は「資源循環により持続可能な社会実現に貢献する」ことを経営理念に掲げています。これからも微力ながら資源循環のお手伝いをしていきたいと思います。