エコフィードの普及とリキッドフィーディング

今、北海道に出張で来ています。とても気持ちいい秋晴れで仕事をするのが嫌になりますね~。学生時代の友人もいるのですが、今回の出張はタイトな日程なのでちょっと会えそうにないですね。もっとも、会うとススキノに拉致されるので会わない方がいいかもしれませんが ^^;

 

先日、当社も参加している豊川地域農業研究・普及協議会が愛知県の補助金の採択を受けました。これは、「循環型社会形成推進事業費補助金」というもので、産廃税(産業廃棄物を埋め立てると課税される)が活用されて、リサイクル施設の整備に関し補助が出ます。協議会では補助を使って施設整備を行います。協議会の主体となっている地元のJAひまわりに施設を整備するだけではなく、当社と農家にも設備を設置することになっています。

農家に設置する設備というのは、リキッドフィーディング給餌装置です。リキッドフィーディングは飼料を液状にして給餌するという方法です。リキッドフィーディングには

・ホコリが立たないので衛生環境がよい(ほこりっぽいと呼吸器系の病気の原因になる)

・消化吸収がいいので成長がよい

・餌をこぼす量が少ないのでロスが少ない(通常の配合飼料では数%程度こぼれていると言われている)

等のメリットがあると言われていますが、特に

水分の多い食品残さを利用することが可能である

というのが非常に大きなメリットとして挙げられます。

 

逆に、デメリットとしては

給餌施設にコストがかかる

・水分が多いため、保存性が劣る(乳酸菌発酵させるのは保存性を上げるため)

・運搬すると運賃が割高

などがあります。このうち、とくに設備投資額が大きいことがリキッドフィーディングの普及を大きく阻害しています。どこまでを自動的に行うかによって設備の金額は大きく異なりますが、タイマー制御を行い自動的に豚に給餌するようなシステムでしたら、肥育頭数1頭あたり1~2万程度の費用がかかる場合が多いようです。愛知県の平均規模の養豚農家で3000頭ぐらい肥育している場合、3000万円~6000万円程度の投資が必要となります。最近の養豚業はそれほど利益率が良いわけではないので、これだけの投資をおこなうのはそれなりのリスクがあります。上記のメリットで理論的には回収できるのですが、投資金額が大きいのはリスクが大きいと言うことです。

今回の補助金を使うことにより、投資金額が圧縮できるので農家も設備投資に踏み切ることができたのですが、補助金がないとなかなか踏ん切りがつかないケースが多いです。養豚業自体がそれほど儲からないので、リキッドフィーディングを入れないと完全な赤字だけどいれても赤字額が減るだけというのでは投資に踏み切れないわけです。

通常の給餌システムでは使えない牛乳などの液状食品残さもリキッドフィーディングなら飼料として活用が可能であり、多種多様の食品残さを活用するには有効な手段ですが、設備投資をいかに抑えるかを検討していく必要があるかと思います。

名大農場での白菜定植

先日の台風はそれほどの被害もなくなんとか過ぎ去りました。今年は台風の当たり年ですね。

 

昨日は実験をお願いしている名古屋大学附属農場での白菜定植作業でした。

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まずは作業内容の説明です。ちなみに、学生20人強、教官その他10名強といった面子です。学生は非常に軽装でクロックスにレギンスという格好の女の子も。そんな格好で畑耕すんですか・・。

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こちらが試験圃場です。各処理区は2畝で面積は0.5aです。30年ほど実験を続けていますので、処理区毎に土壌の色が違ってきています。

ここにマルチを貼って白菜を定植します。

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定植を行った後はスプリンクラーで灌水を行います。ちなみに白菜の苗は播種後2週間のものを使用しているとのこと。ずいぶん小さい苗を使うのですね。

当社の「ゆうきのススメ」処理区はまだ3年ほど実験を続けているだけなので、まだまだ土壌改良が進んでいません。それでも化成肥料の実験区よりは良好な結果となっています。30年厩肥を多量施肥した処理区は土がふかふかです。土壌に有機物を施用する意味がよくわかる実験ですね~。

カビの話

たまには趣向を変えたネタをと思いまして、カビについて語ってみたいと思います。

エコフィードだけではなく、飼料を取り扱っていると「カビ」は結構大きな問題です。配合飼料の主原料は輸入されたトウモロコシですが、トウモロコシはカビが生えやすいのです。カビぐらいと侮る無かれ、カビ毒(マイコトキシン)はかなり毒性が強く、マイコトキシンの1つであるアフラトキシンは発がん性が非常に高く、また急性毒性もあります。フモニシンやゼアラノンはトウモロコシに発生し、家畜の流産の原因になったり消化器、呼吸器系に影響を与えます。

というわけで、怖いカビですが、カビ胞子の付着を抑えるのは非常に困難です。というのも、カビの胞子というのはそこらじゅうに飛んでいるんです。1mあたり数百個ぐらい飛んでいるわけですので、ちょっとカビやすいものを置いておいたらあっという間に胞子が付着してしまいます。

カビが生えないようにするにはどうしたらいいかというと、基本的にはカビが生えない条件にしてやるのが一番です。水分がある程度以下になればカビは生えませんので、乾燥するのが一番のカビ対策です。ところが、小麦粉などは吸湿しやすいため、梅雨時などは湿気を吸ってカビが生えるなんてことも良くあります。密閉容器に保管することが重要です。

また、カビはアルコールがあると増殖が抑えられます。カビの胞子が例え付着してもカビが増えません。酒粕などは密閉せずにおいておくとあっという間にカビが生えますが、密閉しておくとアルコールが効いて1年でも2年でもカビが生えません。コンビニで売っているバームクーヘン、常温でもカビが生えないのはアルコール製剤というものがパッケージの中に入っているからです。よくシリカゲルと勘違いしている人がいますが、乾燥させると味に影響があり、また相当に乾燥させなければカビは抑えられないのでシリカゲルは使えません。アルコール製剤とはエタノールを吸着させてある薬剤で、徐々にアルコールが放出されるようにできています。

 

山崎パンはなぜカビないか という本があります。この本では山崎パンでは「臭素酸カリウム」を使用しているからカビが生えないという結論となっていますが、微生物学的にみてナンセンスです。

臭素酸カリウムぐらいでカビが抑えられるなら食品工場の人は苦労しませんし、そもそも検出されない程度の添加物でカビが抑制できるはずもないです。それぐらいカビは強力です。また、もし臭素酸カリウムによりカビが抑制できるというなら、きちんと対照実験を行うべきです。臭素酸カリウムを添加したもの、そうでない物を用意して、どちらにカビが生えるか比較実験を行うべきでしょう。おそらく全く違いは出ないと思います。

 

大手の食品メーカーがつくったパンや菓子類はカビが生えにくいのは確かですが、それは衛生管理の違いによるものが大きいです。パンも釜から出てきたときには無菌です。その後のプロセスでカビの胞子が付着するわけです。大手メーカーは町工場と衛生管理が全く違います。外気はフィルターでろ過してから工場内に導入されますし、窯から出てきたパンはロボットが袋詰めを行います。早い話がクリーンルーム(に近い)でパンを作ればカビが生えるなんてことは無いわけです。

とはいえ、私は山崎のパンはあまり嗜好に合わないのでほとんど買うことはありませんが(^_^)

 

えらそうなことをつらつら書いていますが、学生実験での微生物実験の時に自分の班だけコンタミしてシャーレがカビだらけになっていました ^^; クリーンベンチでも取り扱いが悪ければカビが生えるものですね。

農業参入の施策

いつまでも暑い日が続きます。去年の秋も暑かったですが、それよりは若干マシな気がします。来週からは涼しくなるようですね。

 

この前、こんな記事が出ていました。

農水省、39歳以下に就農交付金 平均100万円超で調整

農林水産省は13日、39歳以下の若い世代の就農を支援する交付金制度を2012年度に創設する方針を明らかにした。交付額は平均で100万円を超える規模とする方向で、政府・与党内の調整を今後本格化させる。12年度予算の概算要求額は数十億円規模になる見通しだ。

9/13 時事通信

ってことですが、色々と疑問な点があります。

・100万円では農業は始められません。露地でもトラクターとか買ったりしたら結構な投資になりますし、運転資金も要ります。施設園芸や畜産ではハッキリ言ってこの金額では端金にもなりません。

・農水省はここ数十年にわたって様々な交付金の施策を実施してきたにもかかわらず、食糧自給率が上がらず耕作放棄地が増えてきたことをもっと真摯に反省し分析を実施するべきでしょう。毎年何千億もドブに捨ててきたようなものです。

・こういう施策を農水省がマスコミにリークしてその後政府与党と調整って、おかしいですよね。「政治主導」ならば「政府与党が就農者を増やす施策を農水省に検討指示し、その結果案が出てくる」というのが筋だと思います。

と、こんな交付金を始めたって就農者は増えませんし、自給率が上がらないのは自明です。農業従事者が減ってきているのは単純な話、儲からないからです。例えば、それなりに利益が上がる渥美半島の畑作地帯では耕作放棄地なんて見かけませんが、同じ渥美半島でも田んぼでは耕作放棄地が目立ちます。儲かるのなら黙っていても耕作放棄地にはなりません。当たり前ですよね。

国家公務員は非常に優秀な人材が揃っていると思いますが(嫌みではなく)、従来のやり方に固執するのではなく産業構造まで立ち入った施策を実施して欲しいものだと思います。個人的には、税制で誘導するのがもっとも効率的だと思いますが、ほかにもいい方法があるかもしれません。幅広い議論を行いもっと意見を募っていくべきでしょう。

炎の祭典

今日は全国的に日曜日ですが、出勤して書類を作っています。明日からもちょっと忙しい予定です。水曜日から土曜日まで毎日日帰り出張の予定です。出かけていると書類を作る仕事が進まないんですよね~。

昨日は豊橋公園で行われた炎の祭典という手筒花火のイベントに「三河トコ豚極め隊」として参加していました。豚串とフランクフルトを焼いていたのですが、とにかく暑かったです・・。豚串を炭火で焼いていましたが、炭火焼きって火力の調整が難しいですね。焼くのにも時間が結構かかります。原価もそれほど安くできないので、売価も高くなり、フランクフルトよりも正直売れ行きが悪かったです。

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自動車関係が出勤日だったせいか暑かったせいか、いまいちお客さんの動きが悪く想定していたよりも売れ行きは悪かったですが、それでもそれなりの売上はありました。にしても、露天って結構大変ですね。テキ屋稼業も大変だと言うことがわかりました。

今回の目的はフランクフルトをたくさん売ることではなく、三河トコ豚極め隊のPRです。すこしでも地元の豚肉って美味しいねと思ってもらうことができたら嬉しいですね。

リサイクル施設の投資と補助

ただいま関東方面出張中です。今回の出張では生まれて初めて東武伊勢崎線と京王線に乗りました。だからどうというわけではありませんが・・・。

今回の出張は色々盛りだくさんです。予定の1つに同業の堆肥化施設の見学があります。堆肥化って奥が深く、プラント毎にやり方が全く違いますので見学すると色々と参考になります。

リサイクルの施設運営で重要なのは、プラントの設備投資をいかに抑えるかと言うことです。って、当たり前と言えば当たり前の話です。どんな業種でも設備投資が少なければ儲かる話です。ただ、リサイクル施設の場合、原料は処分費用をもらって受け入れるケースが多く、原料を購入する場合でもたいした金額にはなりません。ので、原価の多くを占めるのは設備投資の減価償却と人件費です。効率的な投資を行いすくない人間で運営することがプラントの運営において不可避です。

 

当社も参画している豊川宝飯地域農業研究・普及協議会がこのたび愛知県の補助事業の採択を受けました。これは、地域全体となってリサイクルを推進する仕組みに対して施設整備の補助を行うというものです。今回の補助採択を受けて、当社も一部施設の整備を行うことになりました。先の話で設備の減価償却費用の割合が高いわけですので、当然その設備投資に関して補助が出れば損益分岐点がぐっと下がる・・はずなのですが計算を色々してみると大して儲からないのがあな不思議なところです。

結局、食品リサイクルは注目を集めていますし、これから必要とされる事業ですが、そんなに儲かる仕事ではありません。お盆もずっと仕事していたら近所の人からすごく儲かっていると勘違いされるのが目下の悩みですねww

豚肉のオーダーメイド

皆さんの地域では台風による被害は大丈夫でしたか?会社のある愛知県東三河は幸いちょっと風が強くて雨が降ったぐらいですみました。日本は本当に自然災害が多い国ですね。

 

私が事務局を担当している「三河トコ豚極め隊」のホームページが完成しました。今日日、ホームページぐらいはないとお話になりませんので、これでようやく活動本格始動といったところです。

三河トコ豚極め隊のプロジェクトの1つに、「豚肉のオーダーメイドシステム」があります。これは、お客様の注文に応じて、飼料や品種、育て方を変えて豚を育てお客様のところへ届けるという仕組みです。

豚肉は実は規格がかなり厳しく、脂身が厚かったり、豚が大きく育ちすぎたりすると値段が下がってしまいます。ところが、脂身が厚くて大きい豚のほうが美味しいのです。今までは規格に適合させるために味が二の次にされていたわけです。

オーダーメード制度ではこういった規格の縛りが無くなります。また、オーダーメードで生産するので飼料のコストの制約もなくなります。豚肉の生産原価のおよそ60%が飼料代です。勢い飼料はコスト優先になりがちですが、オーダーメード制度では本当に美味しい豚肉を作るためにコストの制約を取り払って飼料を選択することができるようになるわけです。

オーダーメードは単に美味しい豚肉をお客様に届けるためのプロジェクトではなく、規格やコストの制約というものを取り払うことができるということがポイントな訳です。

 

今回の取り組み、早速中日新聞にも取り上げて頂きました。(→記事コピーリンク)これからもPRを続けて「皆様に美味しい豚肉を食べて頂く」ための活動を続けていきたいと思います。