米騒動とバター不足に見る農業政策

米が足りないことが大きな話題になっています。スーパーも産直もどこも棚がすっからかんになっており、ニュース報道やSNS拡散が不足に輪をかけている気がします。自分は米農家の友達が多いので、無事入手できました。

おかげで米の価格が上がり、米農家の友人達はほっとしているように感じます。ただ、個人的にはこの混乱で価格が上がったことを手放しで喜んでいいものなのか不安に思う部分があります。今回、米の需給がタイトになったのは複数の理由が挙げられています。昨年が猛暑で米の品質が悪く精米時のロスが多いこと、インバウンドでの需要、南海トラフ地震予想による備蓄需要の増加などが理由として挙げられていますが、もっとも根本的な理由として米の生産を抑制するような政策が継続して行われてきたことがあります。

もともと、米の生産量はピーク時は1100万トン以上あったものが現在は700万トン切っています。これは米の消費量が減少を続けることで、かっては減反政策が行われ、現在も転作に対して助成を行うことで生産の抑制を行ってきた結果です。米が余ることは禁忌であり、消費量に応じた生産となるように調整が行われています。田んぼで米を作らず麦や大豆、飼料用の米を作ることに対し補助金が支払われる仕組みとなっています。つまり、生産量を調整することで需給バランスを調整する政策が行われているわけです。

ただ、農業生産は天候に左右される上に、急激な調整が難しい特性があります。また、需要も様々な要因で変動していきます。もちろん米は国家備蓄がありますが市場価格の調整に使う仕組みにはなっていません。結果、少しの需給バランスの変動により価格や流通在庫の変動につながることで今回のような米騒動が発生することになります。

同様の事態は牛乳でも発生しています。牛乳は需給調整を牛の頭数の調整とバターと脱脂粉乳の生産量の管理で行っています。牛乳が余剰になると日持ちがするバターと脱脂粉乳に仕向ける量を増やす仕組みとなっています。しかし、バターと脱脂粉乳では調製しきれなくなり、脱脂粉乳が過剰在庫になったりバターが足りなくなったりという自体が発生します。

そもそも、穀物も牛乳も自給率が100%ではない国で需給の乱れが起きるのは生産調整を国が行う仕組みがうまくいってない証左です。現在のような仕組みがもはや機能していないことはこれまでの多くの混乱事例からも明らかです。今回、米価が上がったことで飼料米の作付け量が減ることはほぼ確実です。食料米の生産量が増加するとまた米が余ることになり、転作に躍起になったり米価がまた下がったりします。このような混乱が発生するたびに結果として農家の疲弊を招き生産基盤が損なわれていきます。

私の友人の生産農家は非常に優れた技術を持っていたり販売がうまかったりして安定した経営を行っているケースが多いです。SNSの投稿を見るに、常に生産方法を研鑽し技術をしのぎ合っています。しかしながら、生産技術の向上には注力していても農業政策についての関心は乏しいように感じます。農家の生殺与奪に与える影響は生産技術より農業政策のほうが間違いなく影響大きい訳ですから、本来は農業技術について学ぶのと同じぐらいの熱意をもってそのあり方を考えて行くべきではないかと思います。

いずれにせよ生産者サイドからも例えば米農家から転作の政策に関する政策提言がある、そんなことがあってしかるべきではないかと感じます。個人的には、グローバル商品である米や乳製品は国家管理での需給調整はもはや困難であり、農家への直接支払い(所得補償)により農産物価格を引き下げ、民間ベースで輸出入での需給調整を行うことが現実解ではないかと思っています。これが正しいかはわかりませんが、全農の米の価格決定方法に対してだれも疑義を唱えてないのは正直不思議です。所得補償には大きな予算が必要となり簡単にできるものではありませんが、本来は農水省予算水準が適正かどうかも含め議論していくことが重要だと感じます。

同じような政府の介入が大きい牛乳においても、酪農家は牛乳の乳価決定プロセスを知ることができず、加工乳補給金(価格の安い加工乳向けに出荷した際にでる補助金)の算定方法も把握していないケースがほとんどです。

農業生産を向上させるためには需給や価格決定のプロセスをどうするかが非常に大きな要因であり、それに触れず生産技術の向上に取り組んでも片手落ちではないかと思います。生産者はもちろん、消費者も農業政策が日常生活に大きな影響を与えることが実感できた今回を契機にもっと農業生産に関わる政策をどうしていくか議論することが必要かと思います。

豚肉の販売の難しさ

今年に入ってからずっとバタバタしており、ブログの更新もだいぶ怠っていました。
忙しい理由の一つに、豚肉の販売店を始めたことがあります。

豚専門店雪乃醸

豚肉の販売店はもちろんのところ、小売り自体が全くの未経験のため様々な課題があり、少しずつ問題解決しながら販売を進めています。
そもそも、豚肉の販売を生産者が行うことは基本的にはかなりハードルが高いです。肉の場合、生体を売るわけにはいかないので必ずと畜場でと畜する必要があり(法律で決まっています)、と畜してできた枝肉を脱骨し整形して始めて小売りすることができるようになります。卵や野菜は収穫したものをそのまま販売することができるのと異なり、流通の過程がどうしても介在するため生産者が販売する差別化が難しい特性があります。
また、豚肉の場合、品質差が少ない傾向にあります。もちろん個々の豚肉には歴然とした違いはあるのですが、絶対的な品質が底上げされており、日本を含め世界中基本的には飼料や品種の差異が大きくないため絶対的な品質差は少なくなっています。日本では配合飼料を給与する場合が多いですが、配合飼料メーカーも当然ながら豚肉品質の改善に注力しているため基本的に美味しい豚肉が生産されています。また、海外の豚肉も日本の商社が介在し、日本の消費者ニーズに合わせた豚肉を生産していたりします。
いきおい、豚肉のブランド化はストーリー性だったり、生産者の情報発信に注力をおくことになりがちになっています。

そういった背景のもとではありますが、当社の養豚は一般的な養豚とは餌の原料が大きく異なるため味の差が通常よりはっきりと出ており、差別化できる可能性はあると思い販売を開始しています。飼料が異なるため、当社の豚肉「雪乃醸」は脂肪中のリノール酸含量が圧倒的に少なく、一般的な豚の半分以下しか含まれていません。脂の質には特徴が出ており、脂の軽さには自信があります。実際、ネット通販のレビューではかなり好評をいただいています。
ただ、そうは言っても脂が軽いことを求めてあえて割高な豚肉専門店に足を運ぶ層はごく一部であり、マーケットとしては限りなくニッチであることは間違いないかと思います。

先日、イベントに出店してベーコンなどを焼いていたのですが、そこで召し上がっていただいた方が「美味しかったから」と来店いただきました。こういうお客様が地域の中に少しずつ根付いていってほしいと思っています。おいしさをもっと知ってもらうため、地道にコツコツがんばっていくつもりです。

微生物資材はどうしてうまくいかないのか

ばたばたしていてブログ更新を怠っていたらすっかり春になってしまいました。暖かくなるこの時期、リキッドフィードの異常発酵が問題になることがあります。リキッドフィード、特に当社が取り扱うものは糖含量が高く、酵母発酵しやすい傾向にあります。酵母発酵するとアルコールが生成され、おそらく香りなどの影響で豚の嗜好性が低下します。また、アルコール含量が高くなると豚も酔っ払ってこちらも嗜好性低下の原因となります。また、発酵すると泡が発生し、タンクからあふれたりする原因となります。ちょうど20度前後は酵母にとって適した温度のため、春と秋は特に発酵が進みやすい傾向にあります。これを防ぐため、当社ではリキッドフィードを65℃で滅菌し、さらにギ酸を添加して発酵を抑制しています。

空気中にはたくさんの酵母や乳酸菌などが浮遊しています。また、リキッドフィードの原料となる食品にも微生物が多く付着しているため、微生物の汚染はさけられません。安定した嗜好性を維持することは豚の飼養管理において最も重要な点であり、そのために費用と手間をかけて菌叢コントロールのための滅菌処理を行っています。

たとえばヨーグルトは乳酸菌の種類によって大きく味が異なりますし、日本酒も酵母によって味が大きく変わります。菌叢のコントロールができているのは滅菌するなどして菌数が少ない状態をつくり、そこに特定の菌株を接種しているからです。
逆に言うと、すでに菌が増殖をしているような環境下で別の菌株を導入してもそれが優占種になることは難しいことが多いです。

排水処理や土壌改良などで微生物資材が各種販売されています。前職で排水処理メーカーの研究所にいたときは、ほんとうによく「汚泥が減る菌」「処理能力が上がる菌」の売り込みがありました。もちろんこういう菌がうまく増えれば処理がうまくいくことはあります。しかし、排水処理は非常に多くの菌が存在している場所なので、そこに特定の菌をいれてもうまく増える可能性は非常に低いです。たとえば、畑にダイコンの種をまくとダイコン畑になります。ところが山のうっそうと茂った森や、草が生い茂った耕作放棄地に種をまいてもほぼ育ちません。排水処理のタンクの中は微生物的にはうっそうと茂った森のようなものです。

ちょっと疑問なのは今は微生物の特定はPCRなどの手法が発達しており容易に確認できます。入れた菌がちゃんと増えているかどうかは確認できるはずなのに、微生物資材の会社はそれを検証している例がほとんどありません。入れた菌がきちんと増殖していなければ、もし効果があったとしても偶然の産物に過ぎないということです。

菌叢をコントロールするためには環境の維持が必要です。逆に言うと、環境と整えれば自ずとそれに適した微生物叢になっていきます。開放系においては菌のコントロールには菌種よりも環境の方が重要なファクターとなります。

日本酒は非常に複雑な菌叢コントロールの仕組みがありますし、味噌や醤油なども繊細な微生物のコントロールが行われています。日本には誇るべき発酵文化がありますので、日本の発酵文化を基に現代の科学的知見をもって多種多様な分野に活かしていけたら新たなステージを築くことができるのではないでしょうか。

年頭所感

明けましておめでとうございます。今年は年初から地震や航空機事故など暗いムードでの始まりになりました。また、昨年は海外においてもウクライナやパレスチナなどの紛争、頻発する異常気象などの多くの社会混乱が続き、世界は混迷の度合いを増しているように感じます。
そんな情勢下ではありますが、当社は昨年売り上げを大幅に伸長することができました。うまく社会ニーズを捉えることができ、顧客から必要とされる業務を行うことができたことが売り上げの増加の要因かと思います。

当社はもうすぐ創業してから20年経ちますが、まだベンチャー企業としての立ち位置で動いています。ベンチャー企業の定義ははっきりとはしませんが、私が個人的には大手、既存企業ががやらない新しい分野の業務を行う会社ではないかと考えています。当社は「他社が取り組まないリサイクルを行う」をモットーに、既存業者とのバッティングが起きない新しい価値創出に取り組んできました。また、食品のリサイクルは新しい分野でありかつマーケット規模が小さいことが、大手の競合が無いブルーオーシャンである理由の一つであるかと思います。

食品関係の仕事をしていていつも感じるのは、食品関連は大手の寡占化が進んでおり、新規にマーケットに食い込むことが難しい分野であると言うことです。無論、食品関連以外でも日本の大きな市場は既存業者が強く、ベンチャー企業が新しいポジションを確立するのは非常に難しくなっています。

おそらく、これからの時代、世界も日本も大きな混乱の時代となることは間違いないように思います。日本の社会は急激な少子高齢化によりドラスティックな構造改革が行われねばもやは持続不可能な状況に陥っていると思いますが、おそらく大きな混乱を経なければドラスティックな改革が起こりえないといと思われます。そういう意味でも必ずや混乱に行き着くのではないかと私は推測しています。
また、世界においても人口の増加、グローバルサウスの台頭、資源の逼迫などは国のパワーバランスの変化をもたらし、戦争や紛争、資源争奪などがますます増えるかと思います。

そのような社会情勢下では、これまでの既存ビジネスのスキームが用をなさなくなり、新たな価値、存在がクローズアップされるようになります。ベンチャー企業として、当夜独自の技術を確立していくことで社会に貢献することを目指していきたいと考えています。

当社農場

他方、海外の混乱により、現代のグローバリゼーションに依存してきた社会システムの維持が難しくなっていくものと思います。エネルギー、食料、資源、それらを高度に海外に依存してきた日本経済がどのような状況になるのか、予断を許さない状況にあります。もちろん、エネルギーを含め自給していくことは大きなハードルがありますが、これまでのように海外資源に依存していくことは大きな社会リスクにもなります。そして、個々の企業においても外的要因である海外への依存度をいかに減らしていくかが事業の継続性においても重要なポイントになります。国としても海外の依存脱却という大きな方向性では動いていますが、現場サイドから見るとまだまだ不十分に感じます。

当社は地域で資源を循環することをビジネスとしているため、海外に依存しない社会実現に貢献をしているという自負があります。しかし、いかんせん零細ベンチャー企業であるため社会波及効果は限られたものに過ぎません。自社だけではなく、もっと多くの組織を巻き込んで社会変革に貢献していきたい、そんな思いでこれから取り組んでいきたいと考えています。

日本の食文化と農業

先日、台湾に旅行してきました。コロナ以降で初の海外でいろいろな体験ができ楽しい旅行でした。台湾は20年ぶりだったのですが、以前と比べ円安になりなんでも価格が高騰しているのかと思いきや、意外に物価も安く食事もいろいろ楽しめました。ただ、なぜかコーヒーだけが高くコンビニコーヒーでも500円ぐらいしていたのは驚きました。

台湾のおこわ 腸詰めがのってます

台湾では会食づづきでたくさん飲んで食べてました。以前より行ってみたかったカバラン蒸溜所にも訪問しました。カバラン蒸溜所は台湾で20年ほど前に設立され、国際的に非常に人気があります。当社はウイスキーの仕事が多く様々な蒸溜所に行く機会があるのですが、カバラン蒸溜所は設備的にも興味深い部分があり面白かったです。

カバラン蒸溜所

と、楽しい日々だったわけですが海外に行くと改めて日本の食文化の素晴らしさを感じます。台湾料理は美味しいのですが、日本の食文化は和食だけでなく、多種多様な世界各国の美味しい料理が非常に高い水準で(しかも安価に)食べられることではないかと思います。

個人的には「日本すごい」的な論調は疑問に思っています。科学技術やものづくりに関してはもはやトップ集団から後れを取っているのは明白であり、イノベーションが起きない文化が蔓延しています。
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少することで消費も低迷し、国力の低下に伴い円安も進行しています。個人的には日本の未来はお先真っ暗だと思っています。「日本すごい」で現実から目をそらすのではなく、日本の相対的な存在感低下に対し真摯に対応策を考えていくことが必要ではないかと思います。

そんな日本のこれからのグローバル社会における存在意義の大きな柱は「食文化」ではないかと思います。多様な自然環境とそれに伴う豊かな食材はもちろんですが、日本の文化として「食べ物にこだわる」というものがあるように思います。和食が世界文化遺産になりましたが、むしろたとえばラーメンのように、世界中の食べ物を日本に取り入れてアレンジし昇華させていくのが日本の文化ではないでしょうか。

何処ぞやで食べたラーメン

インバウンドを呼び込むために各種施策が行われたりカジノを作るなどの動きもありますが、カジノのように日本ならではの特色が希薄なものではなく、日本の文化である「食」を全面に打ち出す方がより高い競争力を生み出すことかと思います。

そういった食文化の礎となる農業はもっと大切にしていくべきだと考えます。今の日本の政策は短期的な視点に立ちがちであり、長期的な視野から食文化をどう醸成していくかという意識が乏しいように感じます。農業振興を図ることで日本独自の食文化を広げることで得られるものは単純に食糧の供給と言ったものにとどまらず裾野の広い経済効果を必ずや発揮すると思います。

例えば、当社でも養豚を行っていますが、当社の豚は日本でしか得られないエコフィードを用い日本でしか得られない味の豚肉を生産しています。エコフィードだけではなく、日本という国の地域性を生かした食の生産をもっと推し進めることが国家100年の計としても必要ではないかと考えています。それが、広義の日本全体のテロワールになっていき、しいては日本としての魅力を高めることにつながっていくことと思います。

「アップサイクル」はエコなのか

秋は展示会出展などで出張が多く、忙しい日々が続いています。展示会に出展していると思わぬ問い合わせがいろいろあり、当社にとってマーケットニーズを捉える意味でも重要な機会です。

最近、展示会に出していて多いのが「アップサイクルしたい」というお話です。ここ数年、アップサイクルについて非常に相談される方が増えているように感じます。

たとえば、飲料工場で排出される緑茶のお茶がらを加工し、プラスチックに混合して成形することで有効利用したい・・的なお問い合わせがよくあります。
捨てられていたお茶がらがリサイクルされて、価値あるものに変換される・・イメージがいいこともありこういう取り組みが増えています。

しかし、実際のところ「捨てられている」というお茶がらもほとんどが堆肥もしくは飼料としてリサイクルされています。堆肥の価格が安いため、原料にお金がかけられず費用をもらって堆肥を作ることが一般的ではありますがリサイクルされていることには変わりません。
一方、プラスチックに混合するためにはお茶がらを乾燥させ、粉砕する必要があります。また、乾燥したお茶がらを混合成形するためには手間がかかり、それらのコストを考慮すると通常のプラスチック成形よりコストアップすることになります。廃棄費用がかからないとしても、できあがった製品を高く買うことで結局排出事業者である飲料メーカーが間接的に費用負担していることになります。

お金をかければ大抵のものがリサイクルはできますが、費用がかかるということはエネルギーが投入されているということの証左でもあります。乾燥や粉砕のためにエネルギーを投入してプラスチックの使用量を抑えるというのは矛盾した行為であり、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的には環境負荷低減できているかは微妙なところです。お茶柄を混ぜることで何らかの機能性がアップするならいざしらず、通常はただの増量剤としての機能しかありません。

さまざまなリサイクル手法がありますが、個人的には重要なのは「コスト低減できていること」だと思います。リサイクルは手段であり目的ではなく、最終的な目的は環境負荷を下げることです。当社はさまざまな食品リサイクルを行っていますが、コストアップするような場合は当初よりおすすめしないケースがほとんどです。たとえばコンビニ弁当などのように包装分別が大変なものだったり、ロットが小さく運搬にコストがかかる場合などは最初からお断りしています。逆に、資源の低投入で有効利用できるものは結果としてリサイクル製品にするための費用を抑えることができます。
企業としてCSR報告書に「アップサイクルしています」と書くためのリサイクルでは無く、環境負荷が本当に低減できる手法を採用すべきでは無いかと思います。コストも資源も抑えることで、長く継続できる取り組みとなりえます。当社はそういう社会課題の解決を通じ環境と経済で貢献できる仕組みを提供していきたいと思っています。

飼料と豚肉の味

先日、豚肉勉強会で少しお話をする機会がありました。豚肉の食味に及ぼす飼料の影響についてお話をしました。

豚肉勉強会にて

講演では飼料は豚肉の肉質に影響を与え、特に脂の質に影響を与えるということを中心にお話しました。牛などの反芻動物は第一胃(ルーメン)で脂肪の組成が変化しますが、人間、豚などの単胃動物は摂取した脂肪の種類がそのまま体に蓄積します。
一般的な飼料に使用されるトウモロコシ、大豆は含まれている脂肪の中にリノール酸が多いため、豚肉の脂肪のリノール酸含量が多くなります。リノール酸自体は必須栄養素でありますが、比率が高いと脂の食感の重さの原因となります。

また、脂肪酸組成によって脂の融点が変わります。融点が高く、特に体温より高い場合は口溶けの悪い脂になります。逆に、不飽和脂肪酸が多く融点が低いと脂のくどさにつながります。
エコフィードを使用した場合に問題になることが多いのは脂肪の量と質です。レストランやスーパなどのいわゆる食べ残し系の食品残渣の場合、揚げ物比率が高い傾向があります。そのような原料は脂の含量が20%以上のこともあり、リノール酸の含量が高いことがほとんどです。また、調理の過程で脂肪の酸化がすすんでいることもあり、匂いの原因となることもあります。魚などが含まれると、DHA(ドコサヘキサエン酸)などが豚肉に移行しますがこれも生臭さの大きな要因となります。

当社生産している豚「雪乃醸」はトウモロコシ、大豆不使用で、エコフィードでもリノール酸が多い原料は極力排除しています。その結果、リノール酸含量が非常に低い値となっています。食べると「あっさりしている」という評価をいただく場合が多いです。また、融点は若干低めとなっていますが、肉の締まりはよく、肉屋さんからも好評を頂いています。

雪乃醸の脂肪酸組成分析(ロース筋内脂肪)

豚肉のブランド化において、飼料による差別化を図ろうとしても通常はコストの制約からトウモロコシ、大豆粕主体とせざる得ないです。その結果、脂肪酸組成の大きな差がつかない傾向にありますがエコフィードを使うことで脂肪酸組成に特色を出すことができます。

しかし、どんな肉が美味しいかは個人の好みであり、当社雪乃醸のようなあっさり路線も一つの方向性でありますが、こってり路線だったり肉肉しさを追求するのもやり方の一つです。飼料原料を選択することでどんな脂肪酸組成になるか、そしてどんな味にするかを決めることができるのが養豚の面白さだと思います。

残念ながらブランド豚肉の中には飼料の差異が少なく、一般豚との味の差が少ないケースも散見されます。そういったブランドの中にはストーリー性や生産者の顔が見えることを差別化のポイントとしている例もあります。ただ、当たり前ですが食べ物のブランドとして販売するためにはきちんと特徴を出した肉であることが必要かと思います。特徴のある豚肉生産をすることで、国産豚肉の存在意義を出していくことがこれからの日本の養豚の存続発展のために必要だと思います。

90’sの音楽

たまには仕事ネタ以外もというリクエストがあったので超久しぶりに音楽ネタを。
90年代はよく音楽聞いてました。名曲も多い時代だったように思います。
女性ボーカル好きですが、グウェン・ステファニーはほんと歌唱力高いと思いますね。

もう一つ最近のお気に入り
ヴァネッサ・パラディもアレンジでこんなにシックになるのかと。

邦楽だとドリカムなんかも聞いてます。

90年代は音楽シーン豊かですよね。

ITリテラシーについて思うこと

このところ忙しい日々が続きブログ更新がすっかり滞っています。年ごとに忙しさが増しているような気がします。
思えば、社会人なりたての26年前は社会全体がのんびりしていたように思います。自分が入社した時は携帯電話もインターネットも無く、PCも一人一台ありませんでした。余談ですが、事務所が禁煙でなくみんなくわえタバコで仕事していて会社から帰ってくると服がタバコ臭かったことを覚えています。
今は外出先でも常に連絡が取れ、出張に行っても夜ホテルでノートPC使って事務仕事をしています。時々「昔は出張の時、夜は飲みに行くだけだったなぁ」って思いだします。(と言いつつ飲みには行きますがw)

しかし、これだけシステム化が進んだ世の中になってもまだまだITを使いこなしていない企業が多くあります。
当社は社内システムをGoogleWorkspaceというGoogleのシステムを利用して構築しています。簡単に言うとGmailやGoogle Driveを社内システムとして利用できるというものです。スマホのGmailアプリから会社ドメインを使ってメールのやり取りができ、スマホでやり取りしたメールもPCのGmailサイトと同期されます。書類データもGoogle Driveに保管されているので、自宅やスマホでも内容確認、編集ができます。こういったことが月々のサブスクで実現することができます。
今はこういったクラウドサービスが充実しています。20年ぐらい前、「クラウド」という用語がはじめて出た頃は私もそのメリットを十分に理解できなかったのですが、実際クラウドサービスを活用するようになってみるとデータがインターネット上にある利便性がよくわかります。例えば、当社では会計システムもクラウドサービスを利用しています。銀行のネットバンキングデータをダウンロードし、Google Driveに保管しています。保管フォルダのアクセス権を税理士に与えてあり、税理士は会計システムの入力データをGoogle Driveのファイルと突合してチェックし、間違いがあれば会計システムを直接修正します。最終的な決算データも税理士がGoogle Driveのフォルダに保管しますので、パスワード付きメールで送付する必要はありません。こういったことが自社のシステム開発とかサーバー不要でできるような時代になっています。
しかし、多くの中小企業ではクラウドとかITの活用が不十分です。これは経営者が「システムで何ができるか知らない」「システム投資による効果がわからない」ことが大きな理由ではないかと思います。もちろん経営者たるものシステムについて勉強することは必要ですし、システムのコンシェルジュ的なコンサルタントがもっといてもいいのではないかとも思います。

中小企業のITリテラシーの低さも課題ではあると思いますが、国のシステムのお粗末さはそれ以上に問題だと思います。マイナンバーに問題が噴出していますが、マイナンバーの最大の問題は「システムを利用して効率的な行政処理ができる」ことが目的のはずなのに利便性が向上していないという点になると思います。そもそも国民全てに一意の番号を割り振ることはシステム処理においては必要です。しかし、個人にマイナンバーカードを配ることがかならずしも必要であるとは思えません。まずは各個人に割り振ったマイナンバーを使って、たとえば企業が給与支払いしたデータをマイナンバー紐づけて税務申告したら確定申告も源泉徴収も不要になるとか、国勢調査を行わなくても各種統計データが取れる‥等々、実現できることはたくさんあるかと思います。マイナンバーを利用して効率化できることは効率化することが優先すべき課題かと思います。
また、企業は源泉徴収や社会保険料の徴収等々で膨大な事務作業が発生しています。もし、マイナンバーを活用してこれらの業務が効率化するなら企業側も全面的にマイナンバー活用を推進していくはずです。
結局、国も「システムでなにか効率化できるか」をわかっている人が音頭をとっていないので利便性向上につながらないしトラブルが発生するのだと思います。この体たらくではただでさえ遅れている我が国のシステム化がますます遅延していき国の競争力が失われるのではないかと非常に危惧しています。

システムは重要なツールでありますが、手段が目的化すると意味がない‥マイナンバーの混乱を反面教師として当社は着実に会社のシステム化をすすめていきたいと思います。


廃棄される麺

廃棄物の量

相変わらずせわしない日々を送っています。
忙しい理由の一つに、新規の案件が多いことがあります。当社は一件一件の案件に対しそれぞれ個別対応しているため、新しいお問い合わせごとに電話で聞き取りをしたり、現地に訪問して確認したり‥と言った作業が発生します。多くの案件があると電話やWEBミーティングだけでもかなりの時間が費やされます。

廃棄されるパン

新規案件で電話を頂いた場合、「どんな廃棄物が」「どれぐらい」「どのような状態で」発生するかを確認します。よくあるのが「いっぱい出るんです」というお問い合わせです。これがやっかいで、お客様によって「いっぱい」の幅が非常に広いです。一日100kgでも中小零細企業にとっては大量ではあるのですが、食品リサイクル業界では一日100kgだと量が少ない方に部類されます。逆に、一日数十トンの廃棄物が発生している現場で「いっぱい」があまりに多くて業界人である私も驚くこともあります。今まで訪問した中で一番多かったのは某飲料工場ですが、一日100トン単位でお茶ガラ、コーヒー粕などが発生しているとのことで、量の多さに圧倒されました。

他方、納品する先の畜産農家における使用量の把握が重要です。とくに酪農の場合、エサの配合を細かく設計するために使用量の変動が難しい傾向にあります。また、牛の頭数が変わるとそれに応じて使用量が変動するため、一頭に何キロ給与し今何頭牛がいるのかを聞き取りしておくことはこの業界では重要です。

発生量を細かく確認するのは、エサにした場合いかに発生したものをうまく捌けさせるかが重要だからです。食品工場からは多量の廃棄物が常に発生し、処理する先がなければすぐに滞留してしまいます。発生量が多い場合はとくにいかに安定的に引取できるかが大きなポイントとなります。

小規模な農家

最近、当社は小規模の農家さんとの取引が増えてきました。一日数十kg、数百kgの単位の発生だと業界としては量は少ないですが小規模経営の農家さんにとっては結構大きな効果がある場合もあります。たとえば、一日100kgでも年間では40トン弱であり配合飼料に換算すると数百万円になり、100万円単位のコストが下がる場合もあります。当然ながら家族経営にとって100万円単位のコスト削減は非常に大きく、当社もお客様の経営に寄与できているという実感が得られやりがいにつながります。

当社の経営スタンスは「他の会社がやらないことをやる」です。他の会社が手を出さない小さな案件も少しずつ掘り起こしていて食品メーカー、農家の経営に寄与していきたいと思います。