牛の飼料設計の難しさ

12月に入って急に寒くなってきました。あっという間に年末です。年を取るごとに1年が早くなっている気がします。
おかげさまでエコフィードの新規の引き合いが多く、今年も売上、取扱量をふやすことができました。これもお取引先の皆様のおかげです。

当社はエコフィード業界に足を踏み入れてまだ15年ほどの新参者で、まだまだ勉強が足りないと思うことが多くあります。最初は豚の飼料からスタートしたのですが、今は扱い量では牛、特に酪農の餌の比率が高くなっています。

ニンジンジュース工場のニンジン

豚の栄養設計は基本的にシンプルで、カロリーとタンパク質のバランス、油脂の量を間違えなければほぼ問題ありません。しかし、反芻動物である牛は複雑な消化の仕組みのため簡単ではありません。反芻動物は牧草などの繊維(セルロースなど)は哺乳類は直接消化することができないため、第1胃(ルーメン)に共存している微生物の働きで分解をしています。繊維がどれぐらいルーメンで分解するか、繊維の量とデンプンの量の比率、デンプンの分解する速度、タンパク質の分解する速度など多くのパラメーターが関係してきます。コンサルタントや飼料メーカーの人が飼料の設計をする際には飼料設計のプログラムを用い、想定する乳量に対してこういったパラメーターと配合量を入力していきます。今の飼料設計プログラムは非常に良くできていて、適切な設計をすればおおよそ設計した乳量を生産することができます。

しかし、エコフィードの場合はこの設計値とのずれが発生する場合がしばしばあります。エコフィードも分析をして配合するのですが、飼料の分析方法はあくまで牧草やトウモロコシなどの配合飼料を想定した分析方法であり、その原料や加工方法が一般的な飼料と全く異なるエコフィードの場合、分析したとしても正確な状態を示すものになっていないケースがあるように思います。
例えば、繊維の量はNDFという値で評価します。牧草などに含まれるセルロースなどがNDFとして検出されますが、エコフィードの場合、牧草などとは違う種類のものもNDFとして検出されてしまっているようです。その結果、想定よりNDFの消化率がよいという現象がおきることもあります。

分析だけではわからないため、当社では共同研究している大学で消化試験を行っていただいています。これは、ルーメン内容液(胃液)を取り、それとサンプルを試験管に入れて温度をたもち擬似的にルーメンの状態を再現しどこまで分解するかを確認するというものです。しかし、実際の牛は継続的に飼料を摂取しますがこの試験はバッチ試験でありどうしてもずれが出てしまいます。

もちろん、分析や試験は意味が無いわけではないわけではなく非常に重要ではありますが、分析結果だけ見ていると思わぬトラブルが発生しかねません。当社お客様には多くの酪農家さんがあり、そのなかで成績が良好な人はたいがい細かく牛の状態を観察して飼料の微調整をしています。エコフィードを使いこなすためには生産者のスキルが求められるように感じます。

逆に、うまく使いこなせる人が使用すると、エコフィードはむしろ成績が良くなることがよくあります。酪農の場合、ソフトでの設計以上に乳量が出ることもよくあります。

そういった腕のいい生産者だけではなく、そうでない生産者にももっとエコフィードを利用していただくためには分析や試験の手法についても検討を進めていくことが重要だと思います。それが、エコフィードをもっと幅広く利活用していただくために必要なことではないかと思います。

選挙における政策のあり方

衆議院が解散され選挙か始まりました。選挙のたびに思うのが、各党の政策が具体性に欠けることです。

どの党も所得の向上、経済の発展、子育て支援を謳っており、正直選挙公報を見ても大きな差を感じることができないかと思います。もちろん、経済発展や子育て支援は重要であることは間違いありませんし、そこを目指すのは大切なことです。しかし、政策としてみた場合必要なのはその手段であり、目標だけ掲げるのは意味が無いことです。

与党ならば、従来の施策の問題点を洗い出し、これからなにをどのように変えていくかを具体的に例示すべきだと思います。これまで政権を担ってきたにもかかわらず経済が停滞し少子化が進行してきたことに対するエクスキューズがない政策提言は無責任だと思います。

野党ならば、これからどういう予算編成にしていくか、具体的な目標数値を示すべきだと思います。10年後の想定税収、それに対する支出割合を示し、なににいくら金を使うのかの具体案を提言すべきでは無いでしょうか。減税を公約するならば現在によってどれぐらい税収が減り、それをどのように補填していくかを数値化して示すべきです。選挙公報には将来の予算支出割合の円グラフを記載して欲しいです。民間企業ならば中長期的なビジョンに基づき数カ年の予算を立案することは普通に行っています。国家であってもそういった予算のシミュレーションをすることは採点現必要だと思います。

仕事柄、農業政策についても注視していますが、これも与野党問わず農業振興を謳っているにとどまっているように思えてなりません。野党においては直接支払いを政策として掲げている例がありますが、直接支払いは政府の財政規模が大きくなることは避けられないものです。農水省の予算規模としてどれぐらいを想定しているのか数値目標を出さないと、絵に描いた餅と思われてしまうのでは無いでしょうか。

結局、太宗として「大きな政府を目指すのか小さな政府を目指すのか」がわかりにくいのが政策論争にならない大きな原因かと思います。個人的には少子高齢化が進み生産年齢人口比率が下がると社会保障費が増えることが避けられないこと、また政府の再分配機能を踏まえると大きな政府にせざる得ないのでは無いかと思います。減税をするのでは無く、むしろ税収をあげその上で給付を増やしていくことが格差の低減につながって行くと思います。格差の縮小は決して単なる社会正義的な見地だけというわけではなく、支出指向性の高い低所得者の支援は経済刺激効果の面からも必要なことでは無いでしょうか。財源無き減税や給付は質の悪いバラマキ政策であり、これまで効果が無かったことを今更繰り返すのは愚の骨頂です。

もし、私が政策立案を手伝ったとしたら、こんな感じの案を提言します。

・格差の低減・・大きな政府により格差低減をめざす。

・年金と税の一体化・・シンプルな制度にすることで徴収コストを下げるとともに、130万の壁を撤廃

・教育費の支出増加・・OECDでも下位の教育費を増やすことで、長期的な国力増加めざす

・都心部一極集中の低減・・人口密度に応じて税負担をあげることで、人口集中の是正を目指す

・食料生産の強化・・直接支払制度により生産物価格をさげ輸出などによる需給調整機能を付加しつつ農家所得を維持する。

・金融所得の分離課税を廃し、総合課税として単純化をはかる

・マイナンバー等、DXの効率的な利用により社会の負担を低減。確定申告も年末調整も廃止。

・給食は国の公費負担とする

いずれにせよ、国会議員には政策秘書がいるにもかかわらず具体性を持った政策提言がほとんどなされていないのは大きな問題だと思いますが、その大きな原因として有権者が公共事業などの成果や、お祭りに来る人を選ぶ行動があるかと思います。

高度経済成長期と異なり、現在は社会インフラが律速で経済成長が阻害されている訳ではなく、少子高齢化による社会負担の増大と将来不安が大きな要因になっているかと思います。将来の不安を払拭するためには具体的な将来像を掲げることがなによりも重要だと思います。選挙カーでお願いするのでは無く、文書でビジョンを語ってほしいものだと思います。

米騒動とバター不足に見る農業政策

米が足りないことが大きな話題になっています。スーパーも産直もどこも棚がすっからかんになっており、ニュース報道やSNS拡散が不足に輪をかけている気がします。自分は米農家の友達が多いので、無事入手できました。

おかげで米の価格が上がり、米農家の友人達はほっとしているように感じます。ただ、個人的にはこの混乱で価格が上がったことを手放しで喜んでいいものなのか不安に思う部分があります。今回、米の需給がタイトになったのは複数の理由が挙げられています。昨年が猛暑で米の品質が悪く精米時のロスが多いこと、インバウンドでの需要、南海トラフ地震予想による備蓄需要の増加などが理由として挙げられていますが、もっとも根本的な理由として米の生産を抑制するような政策が継続して行われてきたことがあります。

もともと、米の生産量はピーク時は1100万トン以上あったものが現在は700万トン切っています。これは米の消費量が減少を続けることで、かっては減反政策が行われ、現在も転作に対して助成を行うことで生産の抑制を行ってきた結果です。米が余ることは禁忌であり、消費量に応じた生産となるように調整が行われています。田んぼで米を作らず麦や大豆、飼料用の米を作ることに対し補助金が支払われる仕組みとなっています。つまり、生産量を調整することで需給バランスを調整する政策が行われているわけです。

ただ、農業生産は天候に左右される上に、急激な調整が難しい特性があります。また、需要も様々な要因で変動していきます。もちろん米は国家備蓄がありますが市場価格の調整に使う仕組みにはなっていません。結果、少しの需給バランスの変動により価格や流通在庫の変動につながることで今回のような米騒動が発生することになります。

同様の事態は牛乳でも発生しています。牛乳は需給調整を牛の頭数の調整とバターと脱脂粉乳の生産量の管理で行っています。牛乳が余剰になると日持ちがするバターと脱脂粉乳に仕向ける量を増やす仕組みとなっています。しかし、バターと脱脂粉乳では調製しきれなくなり、脱脂粉乳が過剰在庫になったりバターが足りなくなったりという自体が発生します。

そもそも、穀物も牛乳も自給率が100%ではない国で需給の乱れが起きるのは生産調整を国が行う仕組みがうまくいってない証左です。現在のような仕組みがもはや機能していないことはこれまでの多くの混乱事例からも明らかです。今回、米価が上がったことで飼料米の作付け量が減ることはほぼ確実です。食料米の生産量が増加するとまた米が余ることになり、転作に躍起になったり米価がまた下がったりします。このような混乱が発生するたびに結果として農家の疲弊を招き生産基盤が損なわれていきます。

私の友人の生産農家は非常に優れた技術を持っていたり販売がうまかったりして安定した経営を行っているケースが多いです。SNSの投稿を見るに、常に生産方法を研鑽し技術をしのぎ合っています。しかしながら、生産技術の向上には注力していても農業政策についての関心は乏しいように感じます。農家の生殺与奪に与える影響は生産技術より農業政策のほうが間違いなく影響大きい訳ですから、本来は農業技術について学ぶのと同じぐらいの熱意をもってそのあり方を考えて行くべきではないかと思います。

いずれにせよ生産者サイドからも例えば米農家から転作の政策に関する政策提言がある、そんなことがあってしかるべきではないかと感じます。個人的には、グローバル商品である米や乳製品は国家管理での需給調整はもはや困難であり、農家への直接支払い(所得補償)により農産物価格を引き下げ、民間ベースで輸出入での需給調整を行うことが現実解ではないかと思っています。これが正しいかはわかりませんが、全農の米の価格決定方法に対してだれも疑義を唱えてないのは正直不思議です。所得補償には大きな予算が必要となり簡単にできるものではありませんが、本来は農水省予算水準が適正かどうかも含め議論していくことが重要だと感じます。

同じような政府の介入が大きい牛乳においても、酪農家は牛乳の乳価決定プロセスを知ることができず、加工乳補給金(価格の安い加工乳向けに出荷した際にでる補助金)の算定方法も把握していないケースがほとんどです。

農業生産を向上させるためには需給や価格決定のプロセスをどうするかが非常に大きな要因であり、それに触れず生産技術の向上に取り組んでも片手落ちではないかと思います。生産者はもちろん、消費者も農業政策が日常生活に大きな影響を与えることが実感できた今回を契機にもっと農業生産に関わる政策をどうしていくか議論することが必要かと思います。

豚肉の販売の難しさ

今年に入ってからずっとバタバタしており、ブログの更新もだいぶ怠っていました。
忙しい理由の一つに、豚肉の販売店を始めたことがあります。

豚専門店雪乃醸

豚肉の販売店はもちろんのところ、小売り自体が全くの未経験のため様々な課題があり、少しずつ問題解決しながら販売を進めています。
そもそも、豚肉の販売を生産者が行うことは基本的にはかなりハードルが高いです。肉の場合、生体を売るわけにはいかないので必ずと畜場でと畜する必要があり(法律で決まっています)、と畜してできた枝肉を脱骨し整形して始めて小売りすることができるようになります。卵や野菜は収穫したものをそのまま販売することができるのと異なり、流通の過程がどうしても介在するため生産者が販売する差別化が難しい特性があります。
また、豚肉の場合、品質差が少ない傾向にあります。もちろん個々の豚肉には歴然とした違いはあるのですが、絶対的な品質が底上げされており、日本を含め世界中基本的には飼料や品種の差異が大きくないため絶対的な品質差は少なくなっています。日本では配合飼料を給与する場合が多いですが、配合飼料メーカーも当然ながら豚肉品質の改善に注力しているため基本的に美味しい豚肉が生産されています。また、海外の豚肉も日本の商社が介在し、日本の消費者ニーズに合わせた豚肉を生産していたりします。
いきおい、豚肉のブランド化はストーリー性だったり、生産者の情報発信に注力をおくことになりがちになっています。

そういった背景のもとではありますが、当社の養豚は一般的な養豚とは餌の原料が大きく異なるため味の差が通常よりはっきりと出ており、差別化できる可能性はあると思い販売を開始しています。飼料が異なるため、当社の豚肉「雪乃醸」は脂肪中のリノール酸含量が圧倒的に少なく、一般的な豚の半分以下しか含まれていません。脂の質には特徴が出ており、脂の軽さには自信があります。実際、ネット通販のレビューではかなり好評をいただいています。
ただ、そうは言っても脂が軽いことを求めてあえて割高な豚肉専門店に足を運ぶ層はごく一部であり、マーケットとしては限りなくニッチであることは間違いないかと思います。

先日、イベントに出店してベーコンなどを焼いていたのですが、そこで召し上がっていただいた方が「美味しかったから」と来店いただきました。こういうお客様が地域の中に少しずつ根付いていってほしいと思っています。おいしさをもっと知ってもらうため、地道にコツコツがんばっていくつもりです。

微生物資材はどうしてうまくいかないのか

ばたばたしていてブログ更新を怠っていたらすっかり春になってしまいました。暖かくなるこの時期、リキッドフィードの異常発酵が問題になることがあります。リキッドフィード、特に当社が取り扱うものは糖含量が高く、酵母発酵しやすい傾向にあります。酵母発酵するとアルコールが生成され、おそらく香りなどの影響で豚の嗜好性が低下します。また、アルコール含量が高くなると豚も酔っ払ってこちらも嗜好性低下の原因となります。また、発酵すると泡が発生し、タンクからあふれたりする原因となります。ちょうど20度前後は酵母にとって適した温度のため、春と秋は特に発酵が進みやすい傾向にあります。これを防ぐため、当社ではリキッドフィードを65℃で滅菌し、さらにギ酸を添加して発酵を抑制しています。

空気中にはたくさんの酵母や乳酸菌などが浮遊しています。また、リキッドフィードの原料となる食品にも微生物が多く付着しているため、微生物の汚染はさけられません。安定した嗜好性を維持することは豚の飼養管理において最も重要な点であり、そのために費用と手間をかけて菌叢コントロールのための滅菌処理を行っています。

たとえばヨーグルトは乳酸菌の種類によって大きく味が異なりますし、日本酒も酵母によって味が大きく変わります。菌叢のコントロールができているのは滅菌するなどして菌数が少ない状態をつくり、そこに特定の菌株を接種しているからです。
逆に言うと、すでに菌が増殖をしているような環境下で別の菌株を導入してもそれが優占種になることは難しいことが多いです。

排水処理や土壌改良などで微生物資材が各種販売されています。前職で排水処理メーカーの研究所にいたときは、ほんとうによく「汚泥が減る菌」「処理能力が上がる菌」の売り込みがありました。もちろんこういう菌がうまく増えれば処理がうまくいくことはあります。しかし、排水処理は非常に多くの菌が存在している場所なので、そこに特定の菌をいれてもうまく増える可能性は非常に低いです。たとえば、畑にダイコンの種をまくとダイコン畑になります。ところが山のうっそうと茂った森や、草が生い茂った耕作放棄地に種をまいてもほぼ育ちません。排水処理のタンクの中は微生物的にはうっそうと茂った森のようなものです。

ちょっと疑問なのは今は微生物の特定はPCRなどの手法が発達しており容易に確認できます。入れた菌がちゃんと増えているかどうかは確認できるはずなのに、微生物資材の会社はそれを検証している例がほとんどありません。入れた菌がきちんと増殖していなければ、もし効果があったとしても偶然の産物に過ぎないということです。

菌叢をコントロールするためには環境の維持が必要です。逆に言うと、環境と整えれば自ずとそれに適した微生物叢になっていきます。開放系においては菌のコントロールには菌種よりも環境の方が重要なファクターとなります。

日本酒は非常に複雑な菌叢コントロールの仕組みがありますし、味噌や醤油なども繊細な微生物のコントロールが行われています。日本には誇るべき発酵文化がありますので、日本の発酵文化を基に現代の科学的知見をもって多種多様な分野に活かしていけたら新たなステージを築くことができるのではないでしょうか。

年頭所感

明けましておめでとうございます。今年は年初から地震や航空機事故など暗いムードでの始まりになりました。また、昨年は海外においてもウクライナやパレスチナなどの紛争、頻発する異常気象などの多くの社会混乱が続き、世界は混迷の度合いを増しているように感じます。
そんな情勢下ではありますが、当社は昨年売り上げを大幅に伸長することができました。うまく社会ニーズを捉えることができ、顧客から必要とされる業務を行うことができたことが売り上げの増加の要因かと思います。

当社はもうすぐ創業してから20年経ちますが、まだベンチャー企業としての立ち位置で動いています。ベンチャー企業の定義ははっきりとはしませんが、私が個人的には大手、既存企業ががやらない新しい分野の業務を行う会社ではないかと考えています。当社は「他社が取り組まないリサイクルを行う」をモットーに、既存業者とのバッティングが起きない新しい価値創出に取り組んできました。また、食品のリサイクルは新しい分野でありかつマーケット規模が小さいことが、大手の競合が無いブルーオーシャンである理由の一つであるかと思います。

食品関係の仕事をしていていつも感じるのは、食品関連は大手の寡占化が進んでおり、新規にマーケットに食い込むことが難しい分野であると言うことです。無論、食品関連以外でも日本の大きな市場は既存業者が強く、ベンチャー企業が新しいポジションを確立するのは非常に難しくなっています。

おそらく、これからの時代、世界も日本も大きな混乱の時代となることは間違いないように思います。日本の社会は急激な少子高齢化によりドラスティックな構造改革が行われねばもやは持続不可能な状況に陥っていると思いますが、おそらく大きな混乱を経なければドラスティックな改革が起こりえないといと思われます。そういう意味でも必ずや混乱に行き着くのではないかと私は推測しています。
また、世界においても人口の増加、グローバルサウスの台頭、資源の逼迫などは国のパワーバランスの変化をもたらし、戦争や紛争、資源争奪などがますます増えるかと思います。

そのような社会情勢下では、これまでの既存ビジネスのスキームが用をなさなくなり、新たな価値、存在がクローズアップされるようになります。ベンチャー企業として、当夜独自の技術を確立していくことで社会に貢献することを目指していきたいと考えています。

当社農場

他方、海外の混乱により、現代のグローバリゼーションに依存してきた社会システムの維持が難しくなっていくものと思います。エネルギー、食料、資源、それらを高度に海外に依存してきた日本経済がどのような状況になるのか、予断を許さない状況にあります。もちろん、エネルギーを含め自給していくことは大きなハードルがありますが、これまでのように海外資源に依存していくことは大きな社会リスクにもなります。そして、個々の企業においても外的要因である海外への依存度をいかに減らしていくかが事業の継続性においても重要なポイントになります。国としても海外の依存脱却という大きな方向性では動いていますが、現場サイドから見るとまだまだ不十分に感じます。

当社は地域で資源を循環することをビジネスとしているため、海外に依存しない社会実現に貢献をしているという自負があります。しかし、いかんせん零細ベンチャー企業であるため社会波及効果は限られたものに過ぎません。自社だけではなく、もっと多くの組織を巻き込んで社会変革に貢献していきたい、そんな思いでこれから取り組んでいきたいと考えています。

日本の食文化と農業

先日、台湾に旅行してきました。コロナ以降で初の海外でいろいろな体験ができ楽しい旅行でした。台湾は20年ぶりだったのですが、以前と比べ円安になりなんでも価格が高騰しているのかと思いきや、意外に物価も安く食事もいろいろ楽しめました。ただ、なぜかコーヒーだけが高くコンビニコーヒーでも500円ぐらいしていたのは驚きました。

台湾のおこわ 腸詰めがのってます

台湾では会食づづきでたくさん飲んで食べてました。以前より行ってみたかったカバラン蒸溜所にも訪問しました。カバラン蒸溜所は台湾で20年ほど前に設立され、国際的に非常に人気があります。当社はウイスキーの仕事が多く様々な蒸溜所に行く機会があるのですが、カバラン蒸溜所は設備的にも興味深い部分があり面白かったです。

カバラン蒸溜所

と、楽しい日々だったわけですが海外に行くと改めて日本の食文化の素晴らしさを感じます。台湾料理は美味しいのですが、日本の食文化は和食だけでなく、多種多様な世界各国の美味しい料理が非常に高い水準で(しかも安価に)食べられることではないかと思います。

個人的には「日本すごい」的な論調は疑問に思っています。科学技術やものづくりに関してはもはやトップ集団から後れを取っているのは明白であり、イノベーションが起きない文化が蔓延しています。
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少することで消費も低迷し、国力の低下に伴い円安も進行しています。個人的には日本の未来はお先真っ暗だと思っています。「日本すごい」で現実から目をそらすのではなく、日本の相対的な存在感低下に対し真摯に対応策を考えていくことが必要ではないかと思います。

そんな日本のこれからのグローバル社会における存在意義の大きな柱は「食文化」ではないかと思います。多様な自然環境とそれに伴う豊かな食材はもちろんですが、日本の文化として「食べ物にこだわる」というものがあるように思います。和食が世界文化遺産になりましたが、むしろたとえばラーメンのように、世界中の食べ物を日本に取り入れてアレンジし昇華させていくのが日本の文化ではないでしょうか。

何処ぞやで食べたラーメン

インバウンドを呼び込むために各種施策が行われたりカジノを作るなどの動きもありますが、カジノのように日本ならではの特色が希薄なものではなく、日本の文化である「食」を全面に打ち出す方がより高い競争力を生み出すことかと思います。

そういった食文化の礎となる農業はもっと大切にしていくべきだと考えます。今の日本の政策は短期的な視点に立ちがちであり、長期的な視野から食文化をどう醸成していくかという意識が乏しいように感じます。農業振興を図ることで日本独自の食文化を広げることで得られるものは単純に食糧の供給と言ったものにとどまらず裾野の広い経済効果を必ずや発揮すると思います。

例えば、当社でも養豚を行っていますが、当社の豚は日本でしか得られないエコフィードを用い日本でしか得られない味の豚肉を生産しています。エコフィードだけではなく、日本という国の地域性を生かした食の生産をもっと推し進めることが国家100年の計としても必要ではないかと考えています。それが、広義の日本全体のテロワールになっていき、しいては日本としての魅力を高めることにつながっていくことと思います。

「アップサイクル」はエコなのか

秋は展示会出展などで出張が多く、忙しい日々が続いています。展示会に出展していると思わぬ問い合わせがいろいろあり、当社にとってマーケットニーズを捉える意味でも重要な機会です。

最近、展示会に出していて多いのが「アップサイクルしたい」というお話です。ここ数年、アップサイクルについて非常に相談される方が増えているように感じます。

たとえば、飲料工場で排出される緑茶のお茶がらを加工し、プラスチックに混合して成形することで有効利用したい・・的なお問い合わせがよくあります。
捨てられていたお茶がらがリサイクルされて、価値あるものに変換される・・イメージがいいこともありこういう取り組みが増えています。

しかし、実際のところ「捨てられている」というお茶がらもほとんどが堆肥もしくは飼料としてリサイクルされています。堆肥の価格が安いため、原料にお金がかけられず費用をもらって堆肥を作ることが一般的ではありますがリサイクルされていることには変わりません。
一方、プラスチックに混合するためにはお茶がらを乾燥させ、粉砕する必要があります。また、乾燥したお茶がらを混合成形するためには手間がかかり、それらのコストを考慮すると通常のプラスチック成形よりコストアップすることになります。廃棄費用がかからないとしても、できあがった製品を高く買うことで結局排出事業者である飲料メーカーが間接的に費用負担していることになります。

お金をかければ大抵のものがリサイクルはできますが、費用がかかるということはエネルギーが投入されているということの証左でもあります。乾燥や粉砕のためにエネルギーを投入してプラスチックの使用量を抑えるというのは矛盾した行為であり、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的には環境負荷低減できているかは微妙なところです。お茶柄を混ぜることで何らかの機能性がアップするならいざしらず、通常はただの増量剤としての機能しかありません。

さまざまなリサイクル手法がありますが、個人的には重要なのは「コスト低減できていること」だと思います。リサイクルは手段であり目的ではなく、最終的な目的は環境負荷を下げることです。当社はさまざまな食品リサイクルを行っていますが、コストアップするような場合は当初よりおすすめしないケースがほとんどです。たとえばコンビニ弁当などのように包装分別が大変なものだったり、ロットが小さく運搬にコストがかかる場合などは最初からお断りしています。逆に、資源の低投入で有効利用できるものは結果としてリサイクル製品にするための費用を抑えることができます。
企業としてCSR報告書に「アップサイクルしています」と書くためのリサイクルでは無く、環境負荷が本当に低減できる手法を採用すべきでは無いかと思います。コストも資源も抑えることで、長く継続できる取り組みとなりえます。当社はそういう社会課題の解決を通じ環境と経済で貢献できる仕組みを提供していきたいと思っています。

飼料と豚肉の味

先日、豚肉勉強会で少しお話をする機会がありました。豚肉の食味に及ぼす飼料の影響についてお話をしました。

豚肉勉強会にて

講演では飼料は豚肉の肉質に影響を与え、特に脂の質に影響を与えるということを中心にお話しました。牛などの反芻動物は第一胃(ルーメン)で脂肪の組成が変化しますが、人間、豚などの単胃動物は摂取した脂肪の種類がそのまま体に蓄積します。
一般的な飼料に使用されるトウモロコシ、大豆は含まれている脂肪の中にリノール酸が多いため、豚肉の脂肪のリノール酸含量が多くなります。リノール酸自体は必須栄養素でありますが、比率が高いと脂の食感の重さの原因となります。

また、脂肪酸組成によって脂の融点が変わります。融点が高く、特に体温より高い場合は口溶けの悪い脂になります。逆に、不飽和脂肪酸が多く融点が低いと脂のくどさにつながります。
エコフィードを使用した場合に問題になることが多いのは脂肪の量と質です。レストランやスーパなどのいわゆる食べ残し系の食品残渣の場合、揚げ物比率が高い傾向があります。そのような原料は脂の含量が20%以上のこともあり、リノール酸の含量が高いことがほとんどです。また、調理の過程で脂肪の酸化がすすんでいることもあり、匂いの原因となることもあります。魚などが含まれると、DHA(ドコサヘキサエン酸)などが豚肉に移行しますがこれも生臭さの大きな要因となります。

当社生産している豚「雪乃醸」はトウモロコシ、大豆不使用で、エコフィードでもリノール酸が多い原料は極力排除しています。その結果、リノール酸含量が非常に低い値となっています。食べると「あっさりしている」という評価をいただく場合が多いです。また、融点は若干低めとなっていますが、肉の締まりはよく、肉屋さんからも好評を頂いています。

雪乃醸の脂肪酸組成分析(ロース筋内脂肪)

豚肉のブランド化において、飼料による差別化を図ろうとしても通常はコストの制約からトウモロコシ、大豆粕主体とせざる得ないです。その結果、脂肪酸組成の大きな差がつかない傾向にありますがエコフィードを使うことで脂肪酸組成に特色を出すことができます。

しかし、どんな肉が美味しいかは個人の好みであり、当社雪乃醸のようなあっさり路線も一つの方向性でありますが、こってり路線だったり肉肉しさを追求するのもやり方の一つです。飼料原料を選択することでどんな脂肪酸組成になるか、そしてどんな味にするかを決めることができるのが養豚の面白さだと思います。

残念ながらブランド豚肉の中には飼料の差異が少なく、一般豚との味の差が少ないケースも散見されます。そういったブランドの中にはストーリー性や生産者の顔が見えることを差別化のポイントとしている例もあります。ただ、当たり前ですが食べ物のブランドとして販売するためにはきちんと特徴を出した肉であることが必要かと思います。特徴のある豚肉生産をすることで、国産豚肉の存在意義を出していくことがこれからの日本の養豚の存続発展のために必要だと思います。

90’sの音楽

たまには仕事ネタ以外もというリクエストがあったので超久しぶりに音楽ネタを。
90年代はよく音楽聞いてました。名曲も多い時代だったように思います。
女性ボーカル好きですが、グウェン・ステファニーはほんと歌唱力高いと思いますね。

もう一つ最近のお気に入り
ヴァネッサ・パラディもアレンジでこんなにシックになるのかと。

邦楽だとドリカムなんかも聞いてます。

90年代は音楽シーン豊かですよね。