コロナ禍と豚肉のネット通販

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの事業者が大変な影響を受けています。当社はまだそれほど影響は大きくないですが、周りでも先が見えない状況の中で苦しんでいる人がたくさんいます。特に、飲食店関連の事業者はほんとうに大変です。各種景況調査などを見ると、去年の夏ぐらいから米中貿易戦争などの影響により相当景気が悪化しています。消費税増税前の駆け込み需要でそれがごまかされていたのが、駆け込み反動により去年の冬より景気悪化が顕著になり、コロナ影響によりさらに悪化しています。

豊橋商工会議所景況調査https://www.toyohashi-cci.or.jp/koho/pdf/keikyo01-3.pdf

自分と会社は
・今まで月の1/3は出張しており、飲み会も多かったがほぼ毎日家で夕飯を食べるようになった。会社にいる時間が長くなった。
・展示会などのイベントもことごとく中止。来年以降の受注が心配。
・取引先食品工場も業種によっては生産量が大きく低下している。土産物向け菓子、クラフトビール、外食向け製麺工場など。
・生産量が増えている食品工場もあり。スーパー向け菓子、スーパー向け製麺工場など。
・豚価が爆上げしている。スーパーでの国産需要増加、アメリカの豚肉輸出の混乱などの影響。
といった影響があります。生活は一変しています。

ただ、おかげさまでこの状況下でも新規の取引案件のお話しを多くいただいており、それらの準備などでかなり忙しい日々を過ごしています。

今回の社会情勢の変化に伴って一番驚いたのはネット通販の伸びです。昨年よりポケットマルシェというサイトで細々と豚肉のネット通販にとりくんでいましたが、いきなり売上げ激増して対応に追われています。
ポケットマルシェはSNS的な要素を持つ農家の産直サイトで、消費者と農家がコミニュケーションできるのが特徴です。私の販売ページにもたくさんのコメントが寄せられていて、生産者として励みになります。
昨今は生産者と消費者の関係性が希薄になっています。こういったサイトやSNSを通じて、もっと農業生産が身近なものになって欲しいと思います。

その一方で、消費者との関係性に依存した販売でよいのだろうかと言う思いもあります。豚肉、特に国産豚肉は品質向上がめざましいため、極端な味の差がない傾向にあります。とりわけ銘柄豚で販売されている豚に関してはどれもある一定のレベル以上の水準にはあるため差別化が難しいです。どうしても生産者の顔が見えることに注力した販売となります。それは悪いことでは無いと思いますが、私はやはり食べ物である以上おいしさで差別化していきたいと思っています。そう言う思いのもとで生産している当社の豚「雪乃醸」は飼料原料から一般的な豚の飼料に使われるトウモロコシを一切使用しないことで、かなり特徴がある肉質になっていると思います。とにかくあっさりとしていることで、特に女性の受けが非常に良いようです。

バラ肉

もちろん、差があると言っても和牛とオージービーフほどの差があるわけではなく、おいしさに気づいてくれる人は少数派ではないかと思います。その一部かもしれないですが本当に食べ物にこだわっている人に訴求する豚肉を極めていきたいと考えています。
今後も生産を改善し豚肉品質を向上させるとともに、ネット通販を通じそういった方にどこまでアプローチができるか試行錯誤していきたいと思っています。

養豚農家と経営方針

以前も書きましたが、一昨年より愛知中小企業家同友会という中小企業の経営者の集まりに入っています。

この会では経営指針を重視しており、そういったものを作成する講座があったりします。また、経営者と使用者という対峙する関係ではなく、従業員と共に育つ会社を目指すことを基本としています。

サラリーマン時代の経験から、経営指針の重要性については感じていましたので、そういう方針に共感を覚え入会した次第です。
やはり、経営者が目指すべき方針をしっかり打ち立てなければ従業員は不安になってしまいますし、自分が行っている仕事の意味が理解できなくなります。仕事の意義が感じられることが何よりも高い仕事に対するモチベーションになると思います。

また、会では経営指針の1つとして経営理念、経営戦略も位置づけられています。自社の強みを十分に把握し、次なる戦略を構築することが経営者には求められています。

養豚農家さんとお話ししていて思うのが、農業であってもこういった経営に対する取り組みが必要であると言うことです。養豚農家は特にこの経営指針が重要であるように感じます。

養豚は外部へ支払うお金が多く、付加価値率が非常に低い農業です。また、一般的には販売価格は安いのですが、逆に言うと販売手法によっては通常の価格と大きな差額で販売ができるポテンシャルを秘めています。

飼料も配合飼料を選択すればあまり差はありませんが、当社の取り扱うようなエコフィードの場合、選択によって肉質や成長に大きな差が出ますし、当然価格にもかなりの幅があります。
農場の施設に対する投資も大きく、また投資の多寡は農場の成績に大きな影響を与えます。

このように、パラメーターが大きく投資が多く、なおかつ付加価値率が低い場合、農業の技術だけではなく経営の手腕が問われます。利益が出たときに適切な投資を怠ると農場の成績に影響しますし、無用に投資をすると短期間に経営に対する影響を与えます。経営者はどれぐらいの投資をし、どういった農場にしていくかという方針をきちんと打ち立てることが必要です。

また、特にエサは短期間に影響が出ます。コストだけを重視すると1月で肉質が悪くなってしまいます。一度評判を落とすとそれを取り返すのは大変です。
どれくらいのコストをかけ、どれくらいの肉質を求めるのか、それをきちんと方針として決めておくことがとても重要です。たまに、「とにかく低コストで、でもブランド豚を作りたい」と言われる方が見えますが、それは相反する要求で実現は厳しいです。とにかく安いエサでそれなりの豚肉を作るのか、それとも肉質を求めるのかめざすものをしっかりと決めることがとても重要です。

昔の農家はよい農産物さえ作ればよかったのですが、良くも悪くも今の農家は経営者としての資質が求められる時代になってきている、そんな気がします。