微生物資材はどうしてうまくいかないのか

ばたばたしていてブログ更新を怠っていたらすっかり春になってしまいました。暖かくなるこの時期、リキッドフィードの異常発酵が問題になることがあります。リキッドフィード、特に当社が取り扱うものは糖含量が高く、酵母発酵しやすい傾向にあります。酵母発酵するとアルコールが生成され、おそらく香りなどの影響で豚の嗜好性が低下します。また、アルコール含量が高くなると豚も酔っ払ってこちらも嗜好性低下の原因となります。また、発酵すると泡が発生し、タンクからあふれたりする原因となります。ちょうど20度前後は酵母にとって適した温度のため、春と秋は特に発酵が進みやすい傾向にあります。これを防ぐため、当社ではリキッドフィードを65℃で滅菌し、さらにギ酸を添加して発酵を抑制しています。

空気中にはたくさんの酵母や乳酸菌などが浮遊しています。また、リキッドフィードの原料となる食品にも微生物が多く付着しているため、微生物の汚染はさけられません。安定した嗜好性を維持することは豚の飼養管理において最も重要な点であり、そのために費用と手間をかけて菌叢コントロールのための滅菌処理を行っています。

たとえばヨーグルトは乳酸菌の種類によって大きく味が異なりますし、日本酒も酵母によって味が大きく変わります。菌叢のコントロールができているのは滅菌するなどして菌数が少ない状態をつくり、そこに特定の菌株を接種しているからです。
逆に言うと、すでに菌が増殖をしているような環境下で別の菌株を導入してもそれが優占種になることは難しいことが多いです。

排水処理や土壌改良などで微生物資材が各種販売されています。前職で排水処理メーカーの研究所にいたときは、ほんとうによく「汚泥が減る菌」「処理能力が上がる菌」の売り込みがありました。もちろんこういう菌がうまく増えれば処理がうまくいくことはあります。しかし、排水処理は非常に多くの菌が存在している場所なので、そこに特定の菌をいれてもうまく増える可能性は非常に低いです。たとえば、畑にダイコンの種をまくとダイコン畑になります。ところが山のうっそうと茂った森や、草が生い茂った耕作放棄地に種をまいてもほぼ育ちません。排水処理のタンクの中は微生物的にはうっそうと茂った森のようなものです。

ちょっと疑問なのは今は微生物の特定はPCRなどの手法が発達しており容易に確認できます。入れた菌がちゃんと増えているかどうかは確認できるはずなのに、微生物資材の会社はそれを検証している例がほとんどありません。入れた菌がきちんと増殖していなければ、もし効果があったとしても偶然の産物に過ぎないということです。

菌叢をコントロールするためには環境の維持が必要です。逆に言うと、環境と整えれば自ずとそれに適した微生物叢になっていきます。開放系においては菌のコントロールには菌種よりも環境の方が重要なファクターとなります。

日本酒は非常に複雑な菌叢コントロールの仕組みがありますし、味噌や醤油なども繊細な微生物のコントロールが行われています。日本には誇るべき発酵文化がありますので、日本の発酵文化を基に現代の科学的知見をもって多種多様な分野に活かしていけたら新たなステージを築くことができるのではないでしょうか。

年頭所感

明けましておめでとうございます。今年は年初から地震や航空機事故など暗いムードでの始まりになりました。また、昨年は海外においてもウクライナやパレスチナなどの紛争、頻発する異常気象などの多くの社会混乱が続き、世界は混迷の度合いを増しているように感じます。
そんな情勢下ではありますが、当社は昨年売り上げを大幅に伸長することができました。うまく社会ニーズを捉えることができ、顧客から必要とされる業務を行うことができたことが売り上げの増加の要因かと思います。

当社はもうすぐ創業してから20年経ちますが、まだベンチャー企業としての立ち位置で動いています。ベンチャー企業の定義ははっきりとはしませんが、私が個人的には大手、既存企業ががやらない新しい分野の業務を行う会社ではないかと考えています。当社は「他社が取り組まないリサイクルを行う」をモットーに、既存業者とのバッティングが起きない新しい価値創出に取り組んできました。また、食品のリサイクルは新しい分野でありかつマーケット規模が小さいことが、大手の競合が無いブルーオーシャンである理由の一つであるかと思います。

食品関係の仕事をしていていつも感じるのは、食品関連は大手の寡占化が進んでおり、新規にマーケットに食い込むことが難しい分野であると言うことです。無論、食品関連以外でも日本の大きな市場は既存業者が強く、ベンチャー企業が新しいポジションを確立するのは非常に難しくなっています。

おそらく、これからの時代、世界も日本も大きな混乱の時代となることは間違いないように思います。日本の社会は急激な少子高齢化によりドラスティックな構造改革が行われねばもやは持続不可能な状況に陥っていると思いますが、おそらく大きな混乱を経なければドラスティックな改革が起こりえないといと思われます。そういう意味でも必ずや混乱に行き着くのではないかと私は推測しています。
また、世界においても人口の増加、グローバルサウスの台頭、資源の逼迫などは国のパワーバランスの変化をもたらし、戦争や紛争、資源争奪などがますます増えるかと思います。

そのような社会情勢下では、これまでの既存ビジネスのスキームが用をなさなくなり、新たな価値、存在がクローズアップされるようになります。ベンチャー企業として、当夜独自の技術を確立していくことで社会に貢献することを目指していきたいと考えています。

当社農場

他方、海外の混乱により、現代のグローバリゼーションに依存してきた社会システムの維持が難しくなっていくものと思います。エネルギー、食料、資源、それらを高度に海外に依存してきた日本経済がどのような状況になるのか、予断を許さない状況にあります。もちろん、エネルギーを含め自給していくことは大きなハードルがありますが、これまでのように海外資源に依存していくことは大きな社会リスクにもなります。そして、個々の企業においても外的要因である海外への依存度をいかに減らしていくかが事業の継続性においても重要なポイントになります。国としても海外の依存脱却という大きな方向性では動いていますが、現場サイドから見るとまだまだ不十分に感じます。

当社は地域で資源を循環することをビジネスとしているため、海外に依存しない社会実現に貢献をしているという自負があります。しかし、いかんせん零細ベンチャー企業であるため社会波及効果は限られたものに過ぎません。自社だけではなく、もっと多くの組織を巻き込んで社会変革に貢献していきたい、そんな思いでこれから取り組んでいきたいと考えています。

日本の食文化と農業

先日、台湾に旅行してきました。コロナ以降で初の海外でいろいろな体験ができ楽しい旅行でした。台湾は20年ぶりだったのですが、以前と比べ円安になりなんでも価格が高騰しているのかと思いきや、意外に物価も安く食事もいろいろ楽しめました。ただ、なぜかコーヒーだけが高くコンビニコーヒーでも500円ぐらいしていたのは驚きました。

台湾のおこわ 腸詰めがのってます

台湾では会食づづきでたくさん飲んで食べてました。以前より行ってみたかったカバラン蒸溜所にも訪問しました。カバラン蒸溜所は台湾で20年ほど前に設立され、国際的に非常に人気があります。当社はウイスキーの仕事が多く様々な蒸溜所に行く機会があるのですが、カバラン蒸溜所は設備的にも興味深い部分があり面白かったです。

カバラン蒸溜所

と、楽しい日々だったわけですが海外に行くと改めて日本の食文化の素晴らしさを感じます。台湾料理は美味しいのですが、日本の食文化は和食だけでなく、多種多様な世界各国の美味しい料理が非常に高い水準で(しかも安価に)食べられることではないかと思います。

個人的には「日本すごい」的な論調は疑問に思っています。科学技術やものづくりに関してはもはやトップ集団から後れを取っているのは明白であり、イノベーションが起きない文化が蔓延しています。
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少することで消費も低迷し、国力の低下に伴い円安も進行しています。個人的には日本の未来はお先真っ暗だと思っています。「日本すごい」で現実から目をそらすのではなく、日本の相対的な存在感低下に対し真摯に対応策を考えていくことが必要ではないかと思います。

そんな日本のこれからのグローバル社会における存在意義の大きな柱は「食文化」ではないかと思います。多様な自然環境とそれに伴う豊かな食材はもちろんですが、日本の文化として「食べ物にこだわる」というものがあるように思います。和食が世界文化遺産になりましたが、むしろたとえばラーメンのように、世界中の食べ物を日本に取り入れてアレンジし昇華させていくのが日本の文化ではないでしょうか。

何処ぞやで食べたラーメン

インバウンドを呼び込むために各種施策が行われたりカジノを作るなどの動きもありますが、カジノのように日本ならではの特色が希薄なものではなく、日本の文化である「食」を全面に打ち出す方がより高い競争力を生み出すことかと思います。

そういった食文化の礎となる農業はもっと大切にしていくべきだと考えます。今の日本の政策は短期的な視点に立ちがちであり、長期的な視野から食文化をどう醸成していくかという意識が乏しいように感じます。農業振興を図ることで日本独自の食文化を広げることで得られるものは単純に食糧の供給と言ったものにとどまらず裾野の広い経済効果を必ずや発揮すると思います。

例えば、当社でも養豚を行っていますが、当社の豚は日本でしか得られないエコフィードを用い日本でしか得られない味の豚肉を生産しています。エコフィードだけではなく、日本という国の地域性を生かした食の生産をもっと推し進めることが国家100年の計としても必要ではないかと考えています。それが、広義の日本全体のテロワールになっていき、しいては日本としての魅力を高めることにつながっていくことと思います。

「アップサイクル」はエコなのか

秋は展示会出展などで出張が多く、忙しい日々が続いています。展示会に出展していると思わぬ問い合わせがいろいろあり、当社にとってマーケットニーズを捉える意味でも重要な機会です。

最近、展示会に出していて多いのが「アップサイクルしたい」というお話です。ここ数年、アップサイクルについて非常に相談される方が増えているように感じます。

たとえば、飲料工場で排出される緑茶のお茶がらを加工し、プラスチックに混合して成形することで有効利用したい・・的なお問い合わせがよくあります。
捨てられていたお茶がらがリサイクルされて、価値あるものに変換される・・イメージがいいこともありこういう取り組みが増えています。

しかし、実際のところ「捨てられている」というお茶がらもほとんどが堆肥もしくは飼料としてリサイクルされています。堆肥の価格が安いため、原料にお金がかけられず費用をもらって堆肥を作ることが一般的ではありますがリサイクルされていることには変わりません。
一方、プラスチックに混合するためにはお茶がらを乾燥させ、粉砕する必要があります。また、乾燥したお茶がらを混合成形するためには手間がかかり、それらのコストを考慮すると通常のプラスチック成形よりコストアップすることになります。廃棄費用がかからないとしても、できあがった製品を高く買うことで結局排出事業者である飲料メーカーが間接的に費用負担していることになります。

お金をかければ大抵のものがリサイクルはできますが、費用がかかるということはエネルギーが投入されているということの証左でもあります。乾燥や粉砕のためにエネルギーを投入してプラスチックの使用量を抑えるというのは矛盾した行為であり、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的には環境負荷低減できているかは微妙なところです。お茶柄を混ぜることで何らかの機能性がアップするならいざしらず、通常はただの増量剤としての機能しかありません。

さまざまなリサイクル手法がありますが、個人的には重要なのは「コスト低減できていること」だと思います。リサイクルは手段であり目的ではなく、最終的な目的は環境負荷を下げることです。当社はさまざまな食品リサイクルを行っていますが、コストアップするような場合は当初よりおすすめしないケースがほとんどです。たとえばコンビニ弁当などのように包装分別が大変なものだったり、ロットが小さく運搬にコストがかかる場合などは最初からお断りしています。逆に、資源の低投入で有効利用できるものは結果としてリサイクル製品にするための費用を抑えることができます。
企業としてCSR報告書に「アップサイクルしています」と書くためのリサイクルでは無く、環境負荷が本当に低減できる手法を採用すべきでは無いかと思います。コストも資源も抑えることで、長く継続できる取り組みとなりえます。当社はそういう社会課題の解決を通じ環境と経済で貢献できる仕組みを提供していきたいと思っています。

飼料と豚肉の味

先日、豚肉勉強会で少しお話をする機会がありました。豚肉の食味に及ぼす飼料の影響についてお話をしました。

豚肉勉強会にて

講演では飼料は豚肉の肉質に影響を与え、特に脂の質に影響を与えるということを中心にお話しました。牛などの反芻動物は第一胃(ルーメン)で脂肪の組成が変化しますが、人間、豚などの単胃動物は摂取した脂肪の種類がそのまま体に蓄積します。
一般的な飼料に使用されるトウモロコシ、大豆は含まれている脂肪の中にリノール酸が多いため、豚肉の脂肪のリノール酸含量が多くなります。リノール酸自体は必須栄養素でありますが、比率が高いと脂の食感の重さの原因となります。

また、脂肪酸組成によって脂の融点が変わります。融点が高く、特に体温より高い場合は口溶けの悪い脂になります。逆に、不飽和脂肪酸が多く融点が低いと脂のくどさにつながります。
エコフィードを使用した場合に問題になることが多いのは脂肪の量と質です。レストランやスーパなどのいわゆる食べ残し系の食品残渣の場合、揚げ物比率が高い傾向があります。そのような原料は脂の含量が20%以上のこともあり、リノール酸の含量が高いことがほとんどです。また、調理の過程で脂肪の酸化がすすんでいることもあり、匂いの原因となることもあります。魚などが含まれると、DHA(ドコサヘキサエン酸)などが豚肉に移行しますがこれも生臭さの大きな要因となります。

当社生産している豚「雪乃醸」はトウモロコシ、大豆不使用で、エコフィードでもリノール酸が多い原料は極力排除しています。その結果、リノール酸含量が非常に低い値となっています。食べると「あっさりしている」という評価をいただく場合が多いです。また、融点は若干低めとなっていますが、肉の締まりはよく、肉屋さんからも好評を頂いています。

雪乃醸の脂肪酸組成分析(ロース筋内脂肪)

豚肉のブランド化において、飼料による差別化を図ろうとしても通常はコストの制約からトウモロコシ、大豆粕主体とせざる得ないです。その結果、脂肪酸組成の大きな差がつかない傾向にありますがエコフィードを使うことで脂肪酸組成に特色を出すことができます。

しかし、どんな肉が美味しいかは個人の好みであり、当社雪乃醸のようなあっさり路線も一つの方向性でありますが、こってり路線だったり肉肉しさを追求するのもやり方の一つです。飼料原料を選択することでどんな脂肪酸組成になるか、そしてどんな味にするかを決めることができるのが養豚の面白さだと思います。

残念ながらブランド豚肉の中には飼料の差異が少なく、一般豚との味の差が少ないケースも散見されます。そういったブランドの中にはストーリー性や生産者の顔が見えることを差別化のポイントとしている例もあります。ただ、当たり前ですが食べ物のブランドとして販売するためにはきちんと特徴を出した肉であることが必要かと思います。特徴のある豚肉生産をすることで、国産豚肉の存在意義を出していくことがこれからの日本の養豚の存続発展のために必要だと思います。

90’sの音楽

たまには仕事ネタ以外もというリクエストがあったので超久しぶりに音楽ネタを。
90年代はよく音楽聞いてました。名曲も多い時代だったように思います。
女性ボーカル好きですが、グウェン・ステファニーはほんと歌唱力高いと思いますね。

もう一つ最近のお気に入り
ヴァネッサ・パラディもアレンジでこんなにシックになるのかと。

邦楽だとドリカムなんかも聞いてます。

90年代は音楽シーン豊かですよね。

ITリテラシーについて思うこと

このところ忙しい日々が続きブログ更新がすっかり滞っています。年ごとに忙しさが増しているような気がします。
思えば、社会人なりたての26年前は社会全体がのんびりしていたように思います。自分が入社した時は携帯電話もインターネットも無く、PCも一人一台ありませんでした。余談ですが、事務所が禁煙でなくみんなくわえタバコで仕事していて会社から帰ってくると服がタバコ臭かったことを覚えています。
今は外出先でも常に連絡が取れ、出張に行っても夜ホテルでノートPC使って事務仕事をしています。時々「昔は出張の時、夜は飲みに行くだけだったなぁ」って思いだします。(と言いつつ飲みには行きますがw)

しかし、これだけシステム化が進んだ世の中になってもまだまだITを使いこなしていない企業が多くあります。
当社は社内システムをGoogleWorkspaceというGoogleのシステムを利用して構築しています。簡単に言うとGmailやGoogle Driveを社内システムとして利用できるというものです。スマホのGmailアプリから会社ドメインを使ってメールのやり取りができ、スマホでやり取りしたメールもPCのGmailサイトと同期されます。書類データもGoogle Driveに保管されているので、自宅やスマホでも内容確認、編集ができます。こういったことが月々のサブスクで実現することができます。
今はこういったクラウドサービスが充実しています。20年ぐらい前、「クラウド」という用語がはじめて出た頃は私もそのメリットを十分に理解できなかったのですが、実際クラウドサービスを活用するようになってみるとデータがインターネット上にある利便性がよくわかります。例えば、当社では会計システムもクラウドサービスを利用しています。銀行のネットバンキングデータをダウンロードし、Google Driveに保管しています。保管フォルダのアクセス権を税理士に与えてあり、税理士は会計システムの入力データをGoogle Driveのファイルと突合してチェックし、間違いがあれば会計システムを直接修正します。最終的な決算データも税理士がGoogle Driveのフォルダに保管しますので、パスワード付きメールで送付する必要はありません。こういったことが自社のシステム開発とかサーバー不要でできるような時代になっています。
しかし、多くの中小企業ではクラウドとかITの活用が不十分です。これは経営者が「システムで何ができるか知らない」「システム投資による効果がわからない」ことが大きな理由ではないかと思います。もちろん経営者たるものシステムについて勉強することは必要ですし、システムのコンシェルジュ的なコンサルタントがもっといてもいいのではないかとも思います。

中小企業のITリテラシーの低さも課題ではあると思いますが、国のシステムのお粗末さはそれ以上に問題だと思います。マイナンバーに問題が噴出していますが、マイナンバーの最大の問題は「システムを利用して効率的な行政処理ができる」ことが目的のはずなのに利便性が向上していないという点になると思います。そもそも国民全てに一意の番号を割り振ることはシステム処理においては必要です。しかし、個人にマイナンバーカードを配ることがかならずしも必要であるとは思えません。まずは各個人に割り振ったマイナンバーを使って、たとえば企業が給与支払いしたデータをマイナンバー紐づけて税務申告したら確定申告も源泉徴収も不要になるとか、国勢調査を行わなくても各種統計データが取れる‥等々、実現できることはたくさんあるかと思います。マイナンバーを利用して効率化できることは効率化することが優先すべき課題かと思います。
また、企業は源泉徴収や社会保険料の徴収等々で膨大な事務作業が発生しています。もし、マイナンバーを活用してこれらの業務が効率化するなら企業側も全面的にマイナンバー活用を推進していくはずです。
結局、国も「システムでなにか効率化できるか」をわかっている人が音頭をとっていないので利便性向上につながらないしトラブルが発生するのだと思います。この体たらくではただでさえ遅れている我が国のシステム化がますます遅延していき国の競争力が失われるのではないかと非常に危惧しています。

システムは重要なツールでありますが、手段が目的化すると意味がない‥マイナンバーの混乱を反面教師として当社は着実に会社のシステム化をすすめていきたいと思います。


廃棄される麺

廃棄物の量

相変わらずせわしない日々を送っています。
忙しい理由の一つに、新規の案件が多いことがあります。当社は一件一件の案件に対しそれぞれ個別対応しているため、新しいお問い合わせごとに電話で聞き取りをしたり、現地に訪問して確認したり‥と言った作業が発生します。多くの案件があると電話やWEBミーティングだけでもかなりの時間が費やされます。

廃棄されるパン

新規案件で電話を頂いた場合、「どんな廃棄物が」「どれぐらい」「どのような状態で」発生するかを確認します。よくあるのが「いっぱい出るんです」というお問い合わせです。これがやっかいで、お客様によって「いっぱい」の幅が非常に広いです。一日100kgでも中小零細企業にとっては大量ではあるのですが、食品リサイクル業界では一日100kgだと量が少ない方に部類されます。逆に、一日数十トンの廃棄物が発生している現場で「いっぱい」があまりに多くて業界人である私も驚くこともあります。今まで訪問した中で一番多かったのは某飲料工場ですが、一日100トン単位でお茶ガラ、コーヒー粕などが発生しているとのことで、量の多さに圧倒されました。

他方、納品する先の畜産農家における使用量の把握が重要です。とくに酪農の場合、エサの配合を細かく設計するために使用量の変動が難しい傾向にあります。また、牛の頭数が変わるとそれに応じて使用量が変動するため、一頭に何キロ給与し今何頭牛がいるのかを聞き取りしておくことはこの業界では重要です。

発生量を細かく確認するのは、エサにした場合いかに発生したものをうまく捌けさせるかが重要だからです。食品工場からは多量の廃棄物が常に発生し、処理する先がなければすぐに滞留してしまいます。発生量が多い場合はとくにいかに安定的に引取できるかが大きなポイントとなります。

小規模な農家

最近、当社は小規模の農家さんとの取引が増えてきました。一日数十kg、数百kgの単位の発生だと業界としては量は少ないですが小規模経営の農家さんにとっては結構大きな効果がある場合もあります。たとえば、一日100kgでも年間では40トン弱であり配合飼料に換算すると数百万円になり、100万円単位のコストが下がる場合もあります。当然ながら家族経営にとって100万円単位のコスト削減は非常に大きく、当社もお客様の経営に寄与できているという実感が得られやりがいにつながります。

当社の経営スタンスは「他の会社がやらないことをやる」です。他の会社が手を出さない小さな案件も少しずつ掘り起こしていて食品メーカー、農家の経営に寄与していきたいと思います。

お客様との関わり方

先日、当社の経営指針発表会を行いました。社員だけではなく銀行などの関係者も参加していただき、現状を報告し、事業の方向性、今後の計画などをお話しました。経営の計画に関し文書を作成し発表することで、会社の進むべき方向が明確化し各々の果たすべき役割がはっきりとします。

その中へで経営理念について、また当社が大事にしていることについてお話しました。

お陰様で最近は売上がかなり増えています。もちろん業界として追い風が吹いていることも大きな要因ではありますが、当社は基本的に「お客様の経営に寄与するような事業を行う」という姿勢で事業に取り組んでいます。食品工場にとって食品廃棄費用は売上に対し大きな割合であり、飼料販売先の畜産農家にとっても売上に対し飼料コストが占める割合は高いです。当社が取引することでお客様の経営をよくすることを目標としています。このような取組の結果、売上向上につながってきたように感じます。

酪農家お客様に納品したビール粕

当社のお手伝いがどれぐらい寄与しているかは明確ではありませんが、当社のお客様の経営状態が業界水準と比べ平均的に良好な状態であるケースが多いように思います。昨今の飼料高の情勢下では当社の取り扱っているエコフィードを高く販売することもできますが、当社では基本的に価格は据置しています。高く販売すると結局お客様の経営が悪化し継続的な取引が難しくなってしまいます。お客様の身になって事業を行こなうことで中長期的な関係性を築くことを重視したビジネスを展開しています。

最近、お客様からお土産をもらったり、食事を御馳走になることがよくあります。お客様から信頼し喜ばれる関係が構築できてきたことが実感できて嬉しく思います。

今は食品廃棄物のリサイクルや飼料の販売だけではなく、お客様の経営のサポート的な仕事が増えてきています。例えば、エコフィードの利用のための設備の導入のお手伝いを行ったり、資金繰りが厳しい農家さんの決算書を分析し経営改善の相談をしたり、金融機関との交渉に同席したりと様々な経営サポートを行っています。技術的にはしっかりしている会社でも、財務や金融機関との交渉が得意でないケースは多くあります。先日も養豚農家さんが「豚を飼う技術よりも資金調達を行う能力や飼料購買の交渉技術のほうが経営的には重要だったりする」と話していました。せっかく高い技術を持ちながら資金調達が苦手なため経営が悪化しているのはもったいない話だと思います。農業振興のために技術分野のみならず経営的な立場からもお手伝いすることが当社のミッションではないかと思っています。


これからもお客様の経営のサポートを行っていくことでさらによりよい関係性を構築していきたいと思っています。結果としてお土産いただければ望外の喜びです(取引先各位<土産を要求しているわけではありませんw)

豚を飼う理由

忙しさにかまけてブログ更新できずはや数ヶ月経ってしまいました。今年も残りあとわずかとなりました。今年はお陰様で本業の食品リサイクルの仕事は増えておりまずまず順調でした。養豚事業も豚を飼ってはや4年、なんとかそれなりに安定した成績をだすことができ、出荷も順調、肉質も安定してきました。

改めてなぜ当社が豚を飼うようになったか、あらためて触れてみたいと思います。

当社はもともと食品廃棄物から肥料をつくることを目的として創業しました。しかし、創業後なかなか事業が軌道に乗らず、廃業の一歩手前まで行きました。その時、たまたま縁あってお伺いした養豚農家から「おまえ、肥料なんか作らずエサつくって俺に売れ」って言われたのが飼料製造することになったきっかけです。

その後、また縁あって地元の農協が中心となって行われたエコフィードの実証試験事業に参画することになりました。愛知県の試験場で試験を行ったのですが、エサを変えるとおどろくほど豚の状態や肉質が変わることに感心して、「養豚っておもしろい」と思ったのが豚を飼ってみたいと思うようになったきっかけです。それから10年ほど経過して実際に豚を飼うようになるとは当時は全く思っていませんでしたが。

もう一つ、豚を飼おうと思ったのはエサを扱かうようになって養豚農家に説明をするようになった時、いろいろ解説したところ「高橋くん、説明はわかったけど豚飼ったことないじゃん」と言われたこともきっかけです。そうか、豚を飼わないとわからないことが多いから豚飼ってみようと安直に思った次第です。もともと動物は好きな方ですが、大学も農学部農学科で植物や微生物相手の仕事をしてきて豚を飼うノウハウもろくにもたずよくいきなり養豚を始めたものだと我ながら思います。

飼料として利用されるパン

そういったきっかけはあるものの、現在、以下のような目的を持って豚を飼っています

・食品残さで美味しい豚が育つことの証明

 食品残さを使った養豚は以前より行われていますが、食品残さの種類によっては肉質が悪くなったり、大きくならなかったりします。食品廃棄物がこれだけたくさん発生しているのにもかかわらず、食品残さを使っている養豚場は一部にとどまっている大きな理由の一つに肉質の問題があります。
しかし、適切な原料を選択し、きちんと計算して給与すれば配合飼料と遜色ない肉質とすることもできます。また、配合飼料では価格やハンドリングで使用が難しい原料もあり、その中には肉質によいものもたくさんあります。例えば茹でうどんはとても良好な原料ですが、配合飼料には使用することが難しいです。こういった原料を使用することで、特徴のある高い品質の豚肉生産が可能となります。当社も紆余曲折がありましたが現在は肉の品質を高いレベルで維持できています。

・ちゃんと大きくなることの証明

食品残さが使われなくなったもう一つの理由として、農場成績の低下(成長の低下)があります。今の豚は成長が早く、半年で出荷されます。半年で出荷するためには栄養バランスをきちんと整えて給与することが必要となります。逆に言えば、きちんと設計さえすれば決して成長が悪くなることはなく、むしろ嗜好性や消化率が良いことから成長が良くなるケースも多々あります。

・飼料製造や給与方法のノウハウ蓄積

食品残さが使われない理由には、ハンドリングの問題もあります。スイッチひとつで給与できる配合飼料とは異なり、飼料の給与するためにはさまざまな工夫、装置が必要となります。原料の種類に応じて適切な設備を導入して給与するためのノウハウを蓄積することも自社で養豚を行う目的の一つです。これまでの経験を元に、最近はいろいろな養豚農家で飼料利用のお手伝いをできるようになってきました。

自社で養豚を行うことで、「エコフィードの良さを証明する」ことは少しずつできてきたように思います。これからのステップとして、このエコフィードの良さを全国に広めていきたい、さらには世界に普及させていきたいという大きな野望があります。今は自社の養豚での実績を元に、さまざまな農家のエコフィード利用のアドバイスをすることができるようになってきました。これをもっと広げていきたいと思っています。

当社養豚場「リンネファーム」

これまで、日本の畜産は輸入飼料に依存して発達してきました。これまでの社会の時流にのったものだったかと思いますが、世界的な人口増加を背景とした資源の逼迫により従来のモデルの継続が難しくなってきています。資源が不足する時代において、リサイクルは避けられない選択肢になるでしょう。
当社が行っている養豚は非常に小さな規模ではありますが、このような時代において、畜産業界の新しい方向性を示す道標になり、日本の畜産の存在意義の向上に貢献したい、そんな大きな夢があります。国内で資源循環することで海外の影響をうけず、そして日本にしかない美味しい畜産物ができる、そんなことが目標です。当社の小さな取り組みがどんどん広がり、大きな社会変革に繋がったら‥そんなことを考えながらエコフィードからエサを作り、豚にやっています。