産廃業者はブラックな存在なのか

相変わらず慌ただしい日々を送っています。常に締めきりのある書類を抱えているという状態がここ数年来続いており、少々疲れ気味です。仕事することは楽しいのですが、たまにはTODOリストが空になって欲しいと切に願う今日この頃です。

忙しい理由の一つは、カツの横流し事件をきっかけに、当社の取引先の食品メーカーの担当の方が監査のため当社に来社される機会が増えたためです。以前書いたように、お越し頂くのは歓迎なのですが予定が埋まってしまいスケジュールがタイトになっています。

しかし、立ち入り監査をしても、24時間見張っているわけに行きませんから本当に悪意を持っている業者がいた場合、今回のような事件を防ぐことは困難です。
実は、廃棄物業界は構造的にこのような犯罪がおきやすくなっています。それは、産廃業者がブラックというわけではなく、廃棄物の取引の形態に起因するものです。

一般の商取引の場合、商品やサービスの引き渡しと引き替えに対価が支払われます。つまり、商品、サービスとお金が逆方向の流れになります。ところが、廃棄物の取引の場合、商品(廃棄物)の引き渡しとあわせて対価の引き渡しが行われます。つまり、商品とお金が同じ方向に流れるわけです。

商品の流れ

一般的な商取引の場合お金を支払った側にはサービスや商品が渡されるため、もし商品に瑕疵や不正があった場合には発覚が容易ですが、廃棄物取引の場合、お金を払った時点で手元から商品(廃棄物)が無くなってしまうため仮に不正があったとしても発覚しにくいことになります。このため、不正が起こりやすい環境にはあります。
食品の産地偽装などが散発しているのも、同様に確認するすべがないため発覚しにくいことがその一因かと思います。
また、このようなものの流れがあり、品質が悪くとも排出事業者には直接的な影響がないため、とかく安ければいいという風潮になりがちです。このことも今回の事件の一つの理由かと思います。

逆に、廃棄物はこのような特色があるため、許可取得には高いハードルがあり、また不祥事を起こすと許可取り消しなどの厳しい処分があります。廃棄物業界は不正を行う=即利益という性質があるために許認可に際しては法知識を有することを求められるのはもちろん、財務内容などの審査も行われます。

また、廃棄物の処理に関しては必ず契約書を締結することが法で義務づけられています。不正が起きないように契約面でも担保しようという意味もあります。今回の横流しは廃棄物処理法での立件はかなり厳しいものがあると思いますが、契約に違反していることは明らかです。

産廃業界に足を踏み入れた頃よく、産廃業界って悪い人がいっぱいいるのでは無いか?と聞かれました。許可取得に際しては警察に暴力団関係者で無いことの照会がおこなわれますし、先に述べたように許可取得もかなりハードルが高いため世間一般の人がイメージするようなブラックな業界ではありません。今回のような事件を起こすのはごく一部の業者であることを強調しておきたいと思います。

食品廃棄物の横流しに関する業界人の意見

例によって更新を怠っているため書こうと思っているネタがたまっているのですが、世間を騒がしている廃棄カツの事件についてお問い合わせが多いので業界人の立場からすこし書いておこうと思います。

まず、世間の皆様に最初にご理解頂きたいのは、ほとんどすべての廃棄物は適正に処理されており、今回のような事件は非常にレアケースであると言うことです。日本では食品廃棄物は2000万トン弱の発生量が推定されており、その中には今回ような製品も多く含まれています。仮に横流しが横行しているようでしたら、もっと大変な量が出回っていることとなります。

また、産業廃棄物処分業は非常に厳しい規制があり、今回のような問題が発生すれば間違いなく事業を続けることができません。許認可を受けるためには法律を含んだ講習を受講することが義務づけられており、廃棄物業界の人は「なにをやったら違法なのか」ということは十分承知しています。

加えて、今回のような冷凍食品は取り扱いが難しいため、横流しすることはきわめて困難です。(廃棄物の収集運搬車で冷凍車はほとんどありません)食品として買取したいというブローカーが暗躍しているという一部報道があったようですが、少なくとも当社に食品として買い取りしたいと言って来た人間はいません。普通に考えて産廃業者からまともな「食品」が出てくるわけがありませんから、それを買おうと思う人間は相当な確信犯であり、そういう人間が多いとは思えません。

なお、産業廃棄物として受け入れたものを有価売却すること自体は法に問われるかどうかは微妙です。たとえば解体工事で出てきた鉄筋はスクラップとして販売されることが普通です。問題なのは、「食品として使えないから処分したい」という依頼に対し「堆肥として処理する」という契約を締結しているにも関わらず「食品」として転売したという点にあります。
今回の事件ではマニフェスト(産業廃棄物管理表)に虚偽記載がされていたわけですが、これは不適正な処理を行ったから正確な記載ができなかったという結果であり、原因ではありません。

なお、今回の事件で私が一番おかしいと思うのは、少なからず「法制度に不備があったからこのような事件が起きた」「監視体制が悪かったから」などの報道が行われているという点です。
なにかを委託するなどの取引の場合、どれだけ厳しく法律などで縛っても悪意ある人間がいた場合不正を100%防ぐことは困難です。

たとえば、新聞記者は記事のねつ造をしたり、マスコミがやらせをしたりすることは本当に悪意ある人間がその気になれば簡単にできてしまいます。監視やチェックだけで防ぐことは無理で、良識と常識によって担保されているに過ぎません。

日経新聞にこんな記載がありました。記者の知見があまりにお粗末なので無断転載します。

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「廃棄カツ、なぜ食卓に 自己申告悪用浮き彫り」 2016/1/20 2:02

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD18H47_Z10C16A1CN8000/

性善説で運用

ダイコーはマニフェストにうその情報を書き込んで廃棄食品を処分したように装っていた。壱番屋は処分結果をマニフェスト上で確認しただけで、実際に堆肥にしたかは確認していなかったという。ダイコーの自己申告であり、記録だけ見ても不正を見抜くことはできなかった。壱番屋の担当者は「報告通り、処分したと信じていた」としており、廃棄物を産廃業者に委託する際の対応を厳格化する再発防止策を発表した。

廃棄物処理法は、委託先が契約通りに処理したかについて、処理を発注する事業者が、立ち会い確認などすることを努力規定としている。いわば、廃棄物処理は処理業者がうそをつかないことを前提とした「性善説」で運用されているのが実情だ。愛知県の担当者は「発注元はできる限り、実地確認をしてほしいが、マニフェストには第三者のチェックが入らず、うそを見破るのは難しい」と話す。

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実地確認したって24時間張り付いているわけではないので限界がありますし、仮に24時間張り付いていたとしても本当に悪意ある人間は防げません。先に述べたようにすでに法律が厳しく運用されており、行政の立ち入り検査も頻繁にあります。一般的な商取引よりはるかに厳しく監視されている状態ですらこのような事件を行うのは相当な確信犯であり、そういった人間を規制や監視で防げると思うのがおかしいです。世の中は社会システムは基本的に性善説で運用されているわけであり、むしろ産廃業界(や食品業界)は疑われやすい業界であるが故に一般的な事業と比較し監視体制が厳しく行われています。中国ならいざ知らず、相手が不正を行うことを前提で商取引を行う業界が日本にあるのかと言う話です。先に述べたように新聞記者の記事もいわば性善説で書かれているわけですから、この事件で「性善説で運用」なんて見出しをつける日経記者の思考回路は相当一般社会常識から乖離していることは間違いないでしょう。

今回に限りませんが、食品になると鬼の首を取ったように大騒ぎするマスコミの姿勢には本当にうんざりです。そもそも廃棄品が出たのも異物混入などの事件でマスコミが繰り返しあおり立てるためむやみに廃棄品が増えているわけです。(おかげで業界及び当社の仕事は増えていますが)本来、健康被害が出る恐れがないものに関しては回収や廃棄する必要はないと思いますが、センセーショナルな報道やそれに影響された一部の消費者により異常なほど食品業界の規格が厳しくなっています。仕事を長くやっていると当たり前のようにそのような廃棄品を受け入れていますが、いまなお飢えた人がいる社会の中でほんとうにこれで本当によいのか、時々自問自答する日々です。もちろん当社では今回のように食品として流通させることはなく飼料、肥料としてリサイクルしているのですが、食べるのに全く問題無いものを家畜飼料にすることに背徳感を感じることもあります。

マスコミの皆さんは本質的になにが大事なことかよく考え報道を行っていただきたく思います。報道機関には耳目を集めることだけを考えるのでは無く、これからの社会構築に必要なことを報道することが求められています。

産業廃棄物の現地確認

1ヶ月ぶり&新ブログになって初めての更新です。相変わらず落ち着きのない日々を過ごしています。

先日、お取引のある排出事業者の担当の方が来社されました。
※「排出事業者」とは、廃棄物業界で言うところの廃棄物を出す事業者です。

廃掃法12条にはこのような記載があります。

「事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」

また、愛知県条例には現地での確認行為を義務づけしています。

「県内産業廃棄物の運搬又は処分を産業廃棄物処理業者に委託した事業者は、当該委託に係る県内産業廃棄物の 適正な処理を確保するため、当該県内産業廃棄物の処理の状況を定期的に確認しなければならない。」

このような記載があるため、排出事業者の方は定期的に当社を訪問され適切な処理が行われているかを確認するわけです。
排出事業者の方が見えると工場で説明を行います。当社のような小規模な事業所では現地確認の頻度はそれほどでもありませんが、大規模な産業廃棄物処理施設では頻繁に現地確認が行われ、工場の担当者は年中対応に追われていたりします。

ところで、県の条例で処理の状況を確認するように記載するのはおかしいのではないかと常々思っています。そもそも廃棄物処分業の許可は県が出しており、その際に適切な処理が行われることを確認しているわけです。それなのに排出事業者に現地確認をさせるということは自ら出した許可の正当性を担保してないと言うことになります。
また、廃掃法を熟知した県の担当者が適正処理しているか現地での確認を行っているのに、一般の排出事業者が確認してもあまり意味がないのではないかと思います。

個人的には排出事業者さんが来て頂けると営業に行く手間が省け、新規のお仕事につながったりするので現地確認自身はむしろ歓迎だっりしますが ^^;

 

一方、このような法や条例があるにもかかわらず、排出事業者によってはどこで廃棄物を処分しているか把握していないケースが多々あります。産業廃棄物を処分する際には最終的な処分先と契約書を締結します。また廃棄物を出す都度マニフェストを発行しますが、こちらには処分を行う事業所が書かれています。にもかかわらず、どこで処分しているかすら知らない排出事業者が珍しくありません。そういうお客様のところに新規営業で行き、「今まではどのような処分していますか」とお聞きすると「○○に委託してます」と運搬業者の名前を言われます。いつも引き取りに来てお金を払っている運搬業者=処分業者と思われている訳です。

廃棄物処理に負担をしているのですから、どのような内容で廃棄物の処理を行うか把握することは廃掃法うんぬん以前に商取引上からも当然のことではないかと思います。商取引という側面から、価格だけではなく、品質や内容も加味して委託先を選定して欲しいものだと思います。当社も品質の高いリサイクルとコストの低減を実現し、排出事業者の要求に応えていく所存です。(宣伝ですw)

有価物と総合判断説

相変わらず多忙な日々が続いております。40歳になったせいかどうかはわかりませんが、最近睡眠時間が短くても平気になってきたので夜なべしてなんとか仕事をこなしている状態です。

忙しい中もセミナーなどは割とマメに参加しているのですが、先日とあるセミナーで県の職員の方が廃棄物の定義についてお話しをされていました。その中で「総合判断説」についても触れられていました。

総合判断説には以前の記事にも書きましたが、重要なのであらためてまとめてみたいと思います。

総合判断説とは、廃棄物か有価物は「総合的に判断する」というものです。

ちょっと長いですが環境省の通知を引用します。

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廃棄物とは、……占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであ

る。

また、本来廃棄物たる物を有価物と称し、法の規制を免れようとする事案が後を絶たないが、このような事案に適切に対処するため、廃棄物の疑いのあるものについては、……以下のような各種判断要素の基準に基づいて慎重に検討し、それらを総合的に勘案して、その物が有価物と認められるか否かを判断し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うこと。

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とあります。
その中でいくつかの判断の基準の中の1つとしてに以下のようなものがあります。

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取引価値の有無……占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。

実際の判断に当たっては、

・名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと.

・当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活

動として合理的な額であること.

・当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること.

等の確認が必要である。

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ここに、「占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており」とあります。ここに重きをおくと有価物としての取引は売買の際に完全な無償ではなく、0.1円でもいいから対価を支払うことを求められるケースがあります。

ところが、この通知には以下のような記載もあります。

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なお、占有者と取引の相手方の間における有償譲渡の実績や有償譲渡契約の有無は、廃棄物であるか否かを判断する上での一つの簡便な基準にすぎず、 廃プラスチック類、がれき類、木くず、廃タイヤ、廃パチンコ台、堆肥(汚泥、動植物性残さや家畜のふん尿を中間処理(堆肥化)した物)、建設汚泥処理物(建設汚泥を中間処理した改良土等と称する物)等、場合によっては必ずしも市場の形成が明らかでない物については、法の規制を免れるため、恣意的に有償譲渡を装う場合等も見られることから、

当事者間の有償譲渡契約等の存在をもって直ちに有価物と判断することなく、上記のア.からオ.までの各種判断要素の基準により総合的に判断されたい。

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とあります。つまり、いくら有価物としての売買契約があったとしても関係ない・・と述べられているわけです。
対価としてかなりの金額を支払う場合はともかく、0.1円/kg程度の金額での取引では上記通達から言ってその契約の有無が判断基準を左右することがあるとは言い難いわけです。むしろ、売買契約などで継続的に引取を行なう事や引き取った際に排出事業者が費用負担をしていないこと明確化することの方が重要ではないかと考えられます。

当社ではこのような背景の元、有価物として取引させて頂く場合には取り扱い方法や保管方法などを細かく指導させていただき、商品としての間違いない価値を維持するように努めています。質の高いリサイクルにより確実な有価物として認識させるものとすることが重要だと考えています。

廃棄物処理施設の立地と用途地域

忙しい日々が続いています。実は、当社の工場を来月移転する予定があり、そのためにばたばたしています。

一般家庭の引越はおまかせプランなどもありますが、会社、それも工場の場合は引越はかなり大変です。また、リサイクルの仕事というのは長期の休みがとれませんので、稼働させながら移転をしなければいけませんので一層大変です。

当社は飼料原料の買取も行っていますが、産業廃棄物処分業も許可を受けて事業を行っています。廃棄物処分業の許可は会社として受けている訳ではなく、施設にたいして許可を取得しています。このため、廃棄物処分業の許可は移転の際に再度取得が必要となります。当然書類なども作成しなければいけませんので、忙しさに拍車がかかるわけです。

 

廃棄物の許可を取得するためには工場の立地が問題となります。最初に問題となるのは用途地域です。用途地域というのは都市計画法によって定められており、それぞれの土地が目的に応じて区分され、その土地に建てられている建物の種類や用途などを示すものです。よく、住宅広告にある「第1種住居専用地域」と書いてあるのがそれです。

もちろん、産業廃棄物処理を住宅地で行なう事はできませんので、住居専用地域では産業廃棄物処理の許可申請を行なう事ができません。基本的には「工場地域」「工業専用地域」などで事業を営むこととなります。

用途地域には「準工業地域」という区分があります。こちらも基本的には工場を建てることのできる地域ですが、たとえば名古屋市の条例では肥料工場は設置できないと言うことになっています。このため、当社のような肥料製造事業者は工場が設置できず、当然産業廃棄物処理の許可申請もできないわけです。

 
しかし、この用途地域というのは事業者にたいして不利にできています。上記のように住居地域で工場設置をするのには制限がかかっているのですが、逆に工業地域では住居を建てることができるのです。工業地域で住居を建てるわけですから当然周りに工場があることは想定されるわけですが、実際のところ工場が稼働していると騒音や臭いで苦情が来たりします。愛知県で言うと特に名古屋市など都市化が進んでいる地域では工業地域でもかなり住宅が建っており、工場の運営がしにくい状況にあります。

当社の工場は工業団地にあり、工業地域になっているだけではなく住宅も少ないです。このため、夜中までフォークリフトを動かしている工場なども多く、事業を行うには適した環境です。本来なら工業地域というのはこうあるべきだと思います。

 

廃棄物を扱っていると言うだけで世間からはあまりよく思われないのは常です。ただ、廃棄物に限らず事業者全般に言えると思いますが、無秩序な都市計画が無用の軋轢を生んでいることは間違いありません。臭いものに蓋をする方式ではなく、きちんと計画的に国土のあり方を構想していくことが地域発展につながっていくと思います。

廃棄物の管理会社

リサイクル・産業廃棄物業界に足を踏み入れてはや5年が経ちました。最初は業界の習慣とか雰囲気に驚くこともありましたが、今はすっかり業界人?です。
驚いたことの1つに、管理会社の存在があります。産業廃棄物の許可を取得するためには講習会に行く必要があります。講習会では「ブローカー行為の禁止」と習います。ところが、業界では普通に管理会社というものが存在しており、仲介を行っているわけです。
もっとも、ブローカー行為とはなんぞやという定義が曖昧ではあります。産業廃棄物の処理に関して仲介行為が禁止されているのは、仲介によって廃棄物の処理委託先が不明確になることがその理由の1つです。処理を委託する場合、必ず排出事業者と処理業者が直接契約書を結ぶことが義務づけられています。
管理会社が仲介を行う場合、もちろん契約書は排出事業者と処分業者の間で結びます。ただし、金銭の授受は管理会社が行うケースがほとんどです。もちろん、この際に管理会社は管理手数料を得るわけです。
大手飲食店チェーンやコンビニなどでこの管理会社の仲介が行われることが多いです。また、食品製造業の会社でも全国に工場を展開している大手では管理会社がマネージメントを行っているケースがあります。なぜ費用を払ってまで管理会社に管理を委託するのか、その理由はいくつかありますが、一番は「適切な料金で適切な業者に委託するため」というものだと思います。
廃棄物の処理業者が全国展開しているケースはほとんどありません。このため、処理を委託するのは地域によって違う業者になってしまいます。その地域で事業を行っている廃棄物業者を探すことが第一のハードルです。また、廃棄物の処分費は地域によって相場が大きく異なります。廃棄物処理に関する情報が少ないため、果たして適正な価格がどれくらいなのかがわかりにくいです。たくさんの管理契約を持っている管理会社なら、適正な価格がどれくらいか把握できるわけです。
当社にも管理会社からのオファーがあることがあります。ところが、当社では食品リサイクルにより飼料や肥料を製造しています。特に、飼料は原料成分や取り扱いがシビアなため管理会社が持ってくる情報では十分な判断ができないことが多いです。結局、話が回りくどくなるだけでいいことがあまりないケースが多いです。
先日も管理会社から話があり、話がスムーズに進むか心配だったことがありました。ところが、今回の管理会社はきちんと必要な情報をまとめて記録を作成し、お客様にこちらの条件を提示してくれたので感心しました。本来、管理会社とはかくあるべきとの思いをあらたにしました。
 
私は前職で設計業務を行っており、商社との交渉をする機会がよくありました。使えない商社が多く、「見積が出るのが遅くなる以外の仕事をしていない」と思ったものです。インターネットが普及して情報が収集しやすい今日、商社や代理店、管理会社は無用の長物になりかねません。仲介をすることにより対価を得るためには、相応の仕事をする必要がある、当たり前のことですけどできていない事業者が多いのではないかと思いますね~。

逆有償に関する通達と有価偽装

リサイクル業界の人が結構このブログをご覧になっているようですが、最近はちょっと法律についてのネタが少なかった気がしますので、今日は法律論を久々に書きます。そうそう、環境省の方もたまにこのブログをご覧になっている模様です。
この前、リサイクル業界の人と話をしていて、逆有償について話題になりました。実は、このブログのアクセス解析を見ると一番多いキーワードが「逆有償」です。
逆有償については以前も書いていますが、もう一度整理してみたいと思います。
逆有償という言葉の定義は明確になっているわけではありませんが、業界において一般的には「有価物として取引されているが、販売価格より運賃が上回っている場合」です。これって、実質的には処分費用を払っているのと同じ状態じゃないの?って言う疑問が出てくるかと思います。
実は、環境省から通達が出ています。
環廃産発第050325002号
これは、先の通達、平成3年10月18日付け衛産第50号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課産業廃棄物対策室長通知の補足的な内容となっています。
ちょっと長いですが抜粋します。
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産業廃棄物の占有者(排出事業者等)がその産業廃棄物を、再生利用するために有償で譲り受ける者へ引渡す場合の収集運搬においては、引渡し側が輸送費を負担し、当該輸送費が売却代金を上回る場合等当該産業廃棄物の引渡しに係る事業全体において引渡し側に経済的損失が生じている場合には、産業廃棄物の収集運搬に当たり、法が適用されること。一方、再生利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については、廃棄物に該当しないこと。
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これ、相手に渡したときに相手がちゃんとお金払っていれば相手に渡った時点で有価物になると言うことです。
もう少し具体的に例示してみます。
A乳業から牛乳が廃棄されます。養豚農家はそれを1円/kgで購入し、A乳業へ支払ます。運賃は3円/kgかかりますが、これはA乳業が負担して、B運送へ支払います。
と言う場合です。この場合、運搬している間はA乳業が費用を支払っている、つまり経済的損失が生じているため廃棄物となり、養豚農家へついた時点で有価物として扱うと言うことです。
ところが、ここで有価偽装という問題が出てきます。有価偽装とはどういうことかというと、先の例で言うと養豚農家は代金をA乳業に支払います。ところが、裏金として実際はA乳業からお金をもらってると、それは有価偽装となります。
お金を受け取るというのがなぜ問題なのか、それは受け取っただけでお金がもらえるため受け取ったものを不法投棄などしたら簡単に儲かってしまうからです。これが一番最初の例のようにきちんとお金を払っていたら普通は捨てることはありません。お金払って買ったものは普通は簡単に捨てませんよね。
そういう疑いをもたれないように、契約書などできちんとお金の流れを把握できるようにして行政に説明できるようにしておくことが重要ですが、一番重要なのは取り扱うものがちゃんと「価値あるものとして見なされるようなものであること」です。誰がどう見てもゴミにしか見えないものを有価物として主張するのは無理があります。
 
と、つらつら書きましたが、廃棄物行政で問題なのは環境省の通達が出ているのにもかかわらず行政の担当者によっては上記のような取引を認めない(あくまでも廃棄物として取り扱うように)と言うことです。廃棄物行政は曖昧模糊としており法律に明記されていないことが多いため、どうしてもそのような事態が発生しがちです。また、都道府県の担当者も異動が多く、全ての人が法規に精通しているわけではありませんのでどうしても判断が揺れ動きやすくなります。
リサイクル関係の仕事をする以上、法律については行政担当者と同等以上に把握しておく必要があると思います。

食品リサイクルと一般廃棄物

世間は連休のようですが、例によって仕事をしています。新しい案件が次々と舞い込んでくるので、いっこうに暇にならず、タスクの待ち行列が増大しています。毎日過ぎるのが驚くほど早いです。
忙しかった理由の1つに、許認可の申請を行っていたからということがあります。一般廃棄物処分業の許可申請を行っており、先日無事許可が下りました。
食品リサイクルの対象となる食品廃棄物は、排出事業者の業種と廃棄物の性状によって産業廃棄物と一般廃棄物に分かれます。ちょっとややこしいので、詳しく説明します。
まず、固形の廃棄物のうち、食品製造業から排出されるものは産業廃棄物となります。食品製造業以外(流通、外食など)から排出されるものは一般廃棄物となります。
液体の廃棄物は産業廃棄物となります。その性状によって、産業廃棄物の中で、汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油に分類されます。
まとめると
食品工場からの固形物・・動植物性残さ(産業廃棄物)
食品工場からの液状物・・汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油(産業廃棄物)
外食、小売からの固形物・・一般廃棄物
となります。今回は一般廃棄物の許可が下りましたので、晴れてスーパーや外食、コンビニなどの廃棄物を受け入れできるようになったわけです。今回は飼料化としての許可をいただきました。
ところが、この「食品製造業」という定義が非常に曖昧です。たとえば、カット野菜の工場などは地域によって食品製造業と見なさない場合があります。地域によって判断が分かれるというのは非常にやりにくいです。今回産業廃棄物、一般廃棄物両方の許可を取得したとはいえ、廃棄物の区分によっては書類の取り扱いなどが変わってくるためきちんと決めて欲しいものです。また、産業廃棄物に区別されるとしても、液状か固形状か、はたまた泥状かの判断基準も曖昧です。担当者の恣意的で曖昧な基準に振り回されるので仕事が非常にやりにくいです。
また、一般廃棄物に分類されるものははっきり言って飼料原料として向いていないものが多いです。スーパの廃棄物はおおむね魚のアラ、野菜、お総菜で占められています。魚のアラは専門のアラ加工業者が魚粉原料として引き取るケースが多いため、それ以外のものを対象とするのですが、お総菜は油が非常に多いため飼料として使用することが難しいです。このため、利用できるのはご飯と野菜ぐらいが対象となります。
許認可をとっても、リサイクル品の品質を考慮するとなかなか使えるものが限られてしまうのが難しいところです。

廃棄物処理法と食品リサイクル法

最近は政策論だとか肥料の話が多かったので、久しぶりに法律の話を書いてみます。
この前、人と話していたら食品リサイクル法の報告義務の話が出ました。その中で、食品工場から出る廃棄の飲料は、「現状は廃酸として産廃処理しているから食品リサイクル法の報告は必要ないのではないか」と判断されていることが判明。実はこれは間違っています。
食品リサイクル法(正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」)では、以下のような記載があります。
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この法律において「食品」とは、飲食料品のうち薬事法 (昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
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ちゃんと飲食料品と書いてあるので、液体の飲料であっても、廃油であっても食品として分類されるものに関しては食品リサイクル法が適用となるわけです。また、以前も書きましたが、食品廃棄物を有価物として売却しても、それが食品としての売却でなければ食品リサイクル法の適用となります。
このあたりが廃掃法と食品リサイクル法の微妙なちがいですが、個人的には食品リサイクル法のほうが明確で好ましいと思います。同じ廃棄物がちょっとした性状の違いや行政判断で廃掃法における分類が変わってくるのは非常にやっかいです。
要するに生ゴミ=動植物性残さというわけではないことに注意が必要と言うことです。そもそも一般廃棄物でしたら動植物性残さという区分もないわけですし。
 
同じような違いは肥料取締法にも関係してきます。肥料の登録を行う際、原料が「汚泥」であるかどうかで扱いが大きく変わるのですが、肥料取締法で言う汚泥というのは排水処理等から発生する余剰汚泥をさします。ところが、廃棄物として見た場合、「泥状のもの」はなんでも汚泥になりますので、廃掃法のほうが汚泥に含まれる範囲がひろいことになります。したがって、汚泥としてマニフェストを切っていても肥料取締法では汚泥肥料として取り扱わない場合もあるわけです。このことはFAMICの内規にも記載されています。
 
しかし、日本の法律は本当に複雑ですね。読み込むといろいろと矛盾点がいろいろ見えてきます。この原因の1つに縦割り行政がありますが、振り回されれる立場だと大変です。法律が厳密でも実際の運用が柔軟ならいいのですが、廃棄物行政の場合法律違反に対しては非常に厳格な運用がなされていますので。違法行為=許可の取り消しや刑事罰につながるケースもありますし。

不法投棄と一般廃棄物

ここ数日暑さが戻ってきた東三河です。今日も本当に暑かった。だいたい朝はリフトに乗って当日出荷する物を段取りしたりしているのですが、リフトに乗っているだけなのに朝から大汗かきました。昼間の工場は更に暑くて、現場の人たちにはご苦労をかけています。

 

先日、こんな記事を見かけました。

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【8/5朝日新聞

髪の毛33キロを海岸に投棄容疑 愛知のウミガメ産卵地

アカウミガメの産卵地として知られる愛知県豊橋市の表浜海岸に、ごみ袋約10袋分(33キロ)の髪の毛を捨てたとして、豊橋署は5日、市内の美容室経営会社と、従業員の女(20)=豊川市=を廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで書類送検し、発表した。

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この手の不法投棄はちょこちょことありますが、あまり新聞紙面に載ることは無いようにも思います。表浜海岸という景勝地だったからかもしれませんね。

この中で、《女は「店長から(髪の毛を)捨てて、と言われたが、朝早く家庭ごみの収集場所に持って行くのが面倒だった」と話した
》と記事にあります。仮に家庭ゴミの収集場所に持っていくとしたら、それも実は不法投棄になります。

廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物という区別があります。産業廃棄物は事業から発生して指定されたものだけが該当します。それ以外の物は一般廃棄物になります。ここで、よく誤解があるのですが一般廃棄物の中には事業から発生するものと家庭のものがあり、事業活動から発生した物は事業者自らの負担により処理しなければいけません。豊橋市も含め多くの市町村では市町村は事業から発生した一般廃棄物の回収業務を行っておらず、発生事業者が民間の事業者に委託することがルールとなっています。このようなゴミの種類の区別に従わず処理=不法投棄という扱いになります。場合によっては逮捕者も出るような違法行為です。

同様に、産業廃棄物を一般廃棄物として処理した場合も不法投棄という扱いになる訳です。

 

本来は、市町村がこの区別について指導しなければいけません。ところが、市町村によってはこのような指導をあまり行っていないのが実情です。当社のお客様でも、相当の大企業にもかかわらず本来は産業廃棄物として扱わなければいけない廃棄物を一般廃棄物として処理していたケースがありました。これは、私が現場を見ていての想像ですが、おそらく年商1億円以下の企業では半分以上が産業廃棄物を一般廃棄物として扱っていたり、家庭ゴミの集積場に出していると思います。

最近は、自治体によってはこの区別の周知徹底を行っているケースも増えてきていますが、まだまだ少ないのが実情です。今回のような事件が起きたのは、豊橋市の指導が不十分であった証左ではないかと思います。

ちなみに、豊橋市の相場ではこの33キロを事業系一般廃棄物として民間業者に委託した場合の費用はだいたい1、2千円です。事業を営む以上、この程度の費用負担は相応かと思いますが、残念ながら中小企業ではゴミの処理費用は完全な捨て金という認識が大多数であり、少しでも安ければいいという姿勢が横行しています。行政も実体を見て見ぬふりをしているので、このような不法投棄事件を誘発することになるのだと感じますね。