カビの話

たまには趣向を変えたネタをと思いまして、カビについて語ってみたいと思います。

エコフィードだけではなく、飼料を取り扱っていると「カビ」は結構大きな問題です。配合飼料の主原料は輸入されたトウモロコシですが、トウモロコシはカビが生えやすいのです。カビぐらいと侮る無かれ、カビ毒(マイコトキシン)はかなり毒性が強く、マイコトキシンの1つであるアフラトキシンは発がん性が非常に高く、また急性毒性もあります。フモニシンやゼアラノンはトウモロコシに発生し、家畜の流産の原因になったり消化器、呼吸器系に影響を与えます。

というわけで、怖いカビですが、カビ胞子の付着を抑えるのは非常に困難です。というのも、カビの胞子というのはそこらじゅうに飛んでいるんです。1mあたり数百個ぐらい飛んでいるわけですので、ちょっとカビやすいものを置いておいたらあっという間に胞子が付着してしまいます。

カビが生えないようにするにはどうしたらいいかというと、基本的にはカビが生えない条件にしてやるのが一番です。水分がある程度以下になればカビは生えませんので、乾燥するのが一番のカビ対策です。ところが、小麦粉などは吸湿しやすいため、梅雨時などは湿気を吸ってカビが生えるなんてことも良くあります。密閉容器に保管することが重要です。

また、カビはアルコールがあると増殖が抑えられます。カビの胞子が例え付着してもカビが増えません。酒粕などは密閉せずにおいておくとあっという間にカビが生えますが、密閉しておくとアルコールが効いて1年でも2年でもカビが生えません。コンビニで売っているバームクーヘン、常温でもカビが生えないのはアルコール製剤というものがパッケージの中に入っているからです。よくシリカゲルと勘違いしている人がいますが、乾燥させると味に影響があり、また相当に乾燥させなければカビは抑えられないのでシリカゲルは使えません。アルコール製剤とはエタノールを吸着させてある薬剤で、徐々にアルコールが放出されるようにできています。

 

山崎パンはなぜカビないか という本があります。この本では山崎パンでは「臭素酸カリウム」を使用しているからカビが生えないという結論となっていますが、微生物学的にみてナンセンスです。

臭素酸カリウムぐらいでカビが抑えられるなら食品工場の人は苦労しませんし、そもそも検出されない程度の添加物でカビが抑制できるはずもないです。それぐらいカビは強力です。また、もし臭素酸カリウムによりカビが抑制できるというなら、きちんと対照実験を行うべきです。臭素酸カリウムを添加したもの、そうでない物を用意して、どちらにカビが生えるか比較実験を行うべきでしょう。おそらく全く違いは出ないと思います。

 

大手の食品メーカーがつくったパンや菓子類はカビが生えにくいのは確かですが、それは衛生管理の違いによるものが大きいです。パンも釜から出てきたときには無菌です。その後のプロセスでカビの胞子が付着するわけです。大手メーカーは町工場と衛生管理が全く違います。外気はフィルターでろ過してから工場内に導入されますし、窯から出てきたパンはロボットが袋詰めを行います。早い話がクリーンルーム(に近い)でパンを作ればカビが生えるなんてことは無いわけです。

とはいえ、私は山崎のパンはあまり嗜好に合わないのでほとんど買うことはありませんが(^_^)

 

えらそうなことをつらつら書いていますが、学生実験での微生物実験の時に自分の班だけコンタミしてシャーレがカビだらけになっていました ^^; クリーンベンチでも取り扱いが悪ければカビが生えるものですね。