食品リサイクルと一般廃棄物

世間は連休のようですが、例によって仕事をしています。新しい案件が次々と舞い込んでくるので、いっこうに暇にならず、タスクの待ち行列が増大しています。毎日過ぎるのが驚くほど早いです。
忙しかった理由の1つに、許認可の申請を行っていたからということがあります。一般廃棄物処分業の許可申請を行っており、先日無事許可が下りました。
食品リサイクルの対象となる食品廃棄物は、排出事業者の業種と廃棄物の性状によって産業廃棄物と一般廃棄物に分かれます。ちょっとややこしいので、詳しく説明します。
まず、固形の廃棄物のうち、食品製造業から排出されるものは産業廃棄物となります。食品製造業以外(流通、外食など)から排出されるものは一般廃棄物となります。
液体の廃棄物は産業廃棄物となります。その性状によって、産業廃棄物の中で、汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油に分類されます。
まとめると
食品工場からの固形物・・動植物性残さ(産業廃棄物)
食品工場からの液状物・・汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油(産業廃棄物)
外食、小売からの固形物・・一般廃棄物
となります。今回は一般廃棄物の許可が下りましたので、晴れてスーパーや外食、コンビニなどの廃棄物を受け入れできるようになったわけです。今回は飼料化としての許可をいただきました。
ところが、この「食品製造業」という定義が非常に曖昧です。たとえば、カット野菜の工場などは地域によって食品製造業と見なさない場合があります。地域によって判断が分かれるというのは非常にやりにくいです。今回産業廃棄物、一般廃棄物両方の許可を取得したとはいえ、廃棄物の区分によっては書類の取り扱いなどが変わってくるためきちんと決めて欲しいものです。また、産業廃棄物に区別されるとしても、液状か固形状か、はたまた泥状かの判断基準も曖昧です。担当者の恣意的で曖昧な基準に振り回されるので仕事が非常にやりにくいです。
また、一般廃棄物に分類されるものははっきり言って飼料原料として向いていないものが多いです。スーパの廃棄物はおおむね魚のアラ、野菜、お総菜で占められています。魚のアラは専門のアラ加工業者が魚粉原料として引き取るケースが多いため、それ以外のものを対象とするのですが、お総菜は油が非常に多いため飼料として使用することが難しいです。このため、利用できるのはご飯と野菜ぐらいが対象となります。
許認可をとっても、リサイクル品の品質を考慮するとなかなか使えるものが限られてしまうのが難しいところです。

アミノ酸の話

すっかり更新が滞ってしまいました。締め切りのある書類はおおむね終了して時間が少し取れるようになってきたのですが、依然として机の上が片付かず雑務に追われています。展示会の準備などもあるので、連休は出勤予定です。
先日、三河トコ豚極め隊で行っている生ハムの試作の点検に行って来ました。(以前の投稿はこちら
半年経過して熟成が少しずつ進んできているようです。それらしい香りがしてきました。私はこの手の熟成させた食品には目がないので、とても楽しみです。ブルーチーズ、生ハム、からすみ、塩辛etc.
熟成の美味しいさの秘密はアミノ酸の含量増加にあります。タンパク質はアミノ酸がたくさんつながってできています。タンパク質は水に溶けませんので、旨味を感じることができません。熟成というのはこのタンパク質が分解してアミノ酸の形になるプロセスです。
肉や魚などのタンパク質が多い食品を腐らないように保管すると、微生物や生物が持っている酵素などの働きによりじょじょにタンパク質が分解していきます。そのままでは遊離のアミノ酸が少ないものでも、人間が感じることができるアミノ酸量となるわけです。
では、グルタミン酸Na(味の素=アミノ酸)やイノシン酸などのアミノ酸を添加すれば同じような味になるのかというと、一概には言えません。確かにこう言ったアミノ酸を添加すれば旨味は増えます。でも、熟成の旨味と比べると深みに欠けます。
熟成された食品は多くの種類のアミノ酸やペプチドを含みます。これは、もともとタンパク質が多くの種類のアミノ酸を含むこと、熟成の過程で微生物が新たなアミノ酸を合成することにより、アミノ酸の種類がバラエティーに富むのだと思います。また、熟成の過程で芳香成分も増えます。これが、味に深みが出る理由だと思います。
私がこのように思うようになったのも、熟成が短いラックスハムと、長期熟成の生ハムを比較して味わいに大きな違いを感じたからです。ラックスハムにはアミノ酸が添加されていたにもかかわらず、旨味感はあきらかに長期熟成のものの方が高かったです。おそらく、ラックスハムはアミノ酸添加しなければもっと味が薄くなると思います。
 
本当にいい素材を使って、手間暇をかければアミノ酸なんて入れなくても美味しいと思います。加工品メーカーの人はすぐ「グルソー(グルタミン酸Naのこと)入れなければ味が出ないよ」って言いますが、本当に美味しいものを作りたければよい材料と調味料を使って手間暇かけて作るべきでしょう。
佃煮とか本来は旨味の固まりであるはずの食品にアミノ酸が入っていたりすると、ちゃんと作っているのか心配になります。加工品メーカーも、材料や調理方法に自信があるならアミノ酸に頼らないで作って欲しいですね。

亜硝酸塩とボツリヌス菌

金曜日、土曜日と飯田のお客様のところへ行って来ました。エコフィードを使って頂いている養豚農家です。豚舎も見せて頂きましたが、豚たちの状態も良さそうで嬉しい限りです。使ってよかったと言われると嬉しいですね。
帰りに三河トコ豚極め隊が豊根村の廃校で作っている生ハムの点検をしてきました。
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少しカビが生えてきています。カビが生えるのは正常だそうです。生ハムっぽい臭いになってきました。できあがりまで後半年、楽しみです。
ところで、今回の生ハムは完全に塩だけ使っています。海外の生ハムも、原料は豚肉と塩だけというものが多いですが、一部の生ハムは発色剤(亜硝酸塩)を使用しているものもあります。
「買ってはいけない」系の本には、亜硝酸塩は発がん性物質としてあげられていますが、なぜ発色剤を使用するのでしょうか?生ハムはそもそも熟成させる内に色が濃くなってくるので、発色剤なんて必要ないようにも思えます。
実は、発色剤として使われる亜硝酸塩には殺菌作用があるのです。
ボツリヌス菌という強力な食中毒原因菌があります。30年ぐらい前に辛子蓮根による食中毒事件がありましたが、あの原因菌です。(子供心に大騒ぎだったことを覚えています)この菌による食中毒が硝石という天然鉱物を添加することによって防ぐことが見いだされ、使用されるようになったのです。硝石というのは火薬の原料にもなる硝酸カリウムを主体とした鉱物です。硝酸カリウムすなわち硝酸塩というわけです。岩塩にも硝酸塩が含まれるものがありますので、岩塩を使用することによっても殺菌効果が得られます。
ハムソーセージ製造業の方に聞いたのですが、亜硝酸塩を添加することによってボツリヌス菌だけではなく、その他の細菌の繁殖を抑える効果があるそうです。
このような効果のため、ドイツではソーセージに亜硝酸塩を添加することが義務づけられています。日本でもだいたい発色剤添加のものの方が主流ですが、最近は無添加にするために「無塩せき」のハムソーセージが増えてきています。無塩せきというのは、亜硝酸塩を添加していないもののことです。
私は添加物は少ない方がいいと思い普段はなるべく低添加のものを購入するようにしていますし、合成着色料は無用なものだと思っていますが、発色剤は安全性を考えると使用した方がいいと思います。最近は衛生管理がよくなってきているので食中毒は少なくなってきていますが、発がん性の増加と食中毒のリスク、比較すると食中毒のリスクの方が大きいと判断します。そもそも、亜硝酸塩の発がん性はWHOなどの機関で認められているわけではありませんし。
私が常々おかしく思うのは、亜硝酸塩(発色剤)と書いてあると非常に危険なもののように受け止め、岩塩とかいてあると安心すると言う点です。天然物でも合成したもの化学式が同じなら同じ物質で、どちらも入っているのは同じ硝酸塩でも、印象だけで判断する人が多すぎることです。また、キャベツやホウレンソウなどの青菜にはハムソーセージ以上にたくさん硝酸塩が含まれています。
無添加を目指すことは否定しませんが、うわべだけの安心でいいのかなと疑問に思う次第です。

桜の季節

年度末、年度初めで忙しい日々が続いていましたが、ようやく期限のある書類が一通り終わりました。期限がない書類が依然として滞留していますが、それでも気分的にはかなり楽です。
家の近所の音羽川河畔は桜の名所です。忙しくて見に行けないかと思っていましたが、先日ちょっと時間が取れたので写真を撮ってきました。桜を美しく取るのは難しいですね~。
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MA米の行方

年度末で非常に忙しい日々続いていました。1月頃からずっと忙しかったので、体重が2kgも減りました。ダイエットにはちょうどいいですが、いささか不健康か感じですね。ブログの更新もすっかりご無沙汰になってしまいました。ネタ帳にはだいぶネタがたまってきています。ともあれ、忙しいのもようやくピークを過ぎたので、ちょっとホッとしています。
 
この前、地産地消を目指すべく活動しているNPOの集まりがあり、ちょっと興味があったので参加してきました。活動の予定の中で、「食糧自給率を上げるために消費者を啓蒙する」と言うような内容があったので、少し疑問に思いました。地産地消については賛同するのですが、食糧自給率をあげるために消費者を啓蒙しても無駄だろうと思いました。
たとえば、スーパーに並んでいる野菜、一時は中国産がたくさんならでいましたが、いまはほとんど見かけることはありません。ところが、野菜の自給率は80%に過ぎません。20%は輸入野菜というわけです。この野菜はどこへ行っているのでしょうか?加工食品や外食産業など、消費者が直接選択することない分野では輸入の野菜がたくさん使われています。
一番顕著なのは、米だと思います。米の生産量はおよそ800万トン、それに対し、MA米の輸入量は80万トン前後で、米の生産量の一割が輸入されているわけです。ところが主食用に回っている米はほとんどありません。多くは加工用と飼料用に利用されています。加工用に回る分は40万トン弱、つまり人間の口に入る米のうち5%程度は輸入米というわけです。一般消費者をいくら啓蒙してもこの加工用に使われている分に対して影響を与えることができないとおもいます。(米トレーサビリティー法施行の影響はありますが、それはまた別の機会に)
そもそも、カロリーベースの食糧自給率を押し下げているのは輸入穀物です。そして、その多くは加工品や飼料に使用されています。もっとも輸入量が多い食品はトウモロコシですが、輸入量の6割程度が飼料に、残りが加工用に使用されています。加工品として多いのがデンプン原料であり、このデンプンを更に加工したものが清涼飲料水によく使われる異性化糖(果糖ブドウ糖液糖と表記されているもの)となります。
つまり、本当に食糧自給率に対して危惧しているなら、コカコーラは飲むべきではありませんし、輸入飼料を使って育てられた畜産物は食べるべきではないです。
こんな社会構造になったのは、輸入トウモロコシがここ数十年来安値安定だったからです。しかし、その安定も崩れてきています。自分が食べているものがどこから来ているのかを考える時期ではないかと思います。食卓で何気なく口にしているものの原料が地球の裏側から来ているわけですから。