アミノ酸の話

すっかり更新が滞ってしまいました。締め切りのある書類はおおむね終了して時間が少し取れるようになってきたのですが、依然として机の上が片付かず雑務に追われています。展示会の準備などもあるので、連休は出勤予定です。
先日、三河トコ豚極め隊で行っている生ハムの試作の点検に行って来ました。(以前の投稿はこちら
半年経過して熟成が少しずつ進んできているようです。それらしい香りがしてきました。私はこの手の熟成させた食品には目がないので、とても楽しみです。ブルーチーズ、生ハム、からすみ、塩辛etc.
熟成の美味しいさの秘密はアミノ酸の含量増加にあります。タンパク質はアミノ酸がたくさんつながってできています。タンパク質は水に溶けませんので、旨味を感じることができません。熟成というのはこのタンパク質が分解してアミノ酸の形になるプロセスです。
肉や魚などのタンパク質が多い食品を腐らないように保管すると、微生物や生物が持っている酵素などの働きによりじょじょにタンパク質が分解していきます。そのままでは遊離のアミノ酸が少ないものでも、人間が感じることができるアミノ酸量となるわけです。
では、グルタミン酸Na(味の素=アミノ酸)やイノシン酸などのアミノ酸を添加すれば同じような味になるのかというと、一概には言えません。確かにこう言ったアミノ酸を添加すれば旨味は増えます。でも、熟成の旨味と比べると深みに欠けます。
熟成された食品は多くの種類のアミノ酸やペプチドを含みます。これは、もともとタンパク質が多くの種類のアミノ酸を含むこと、熟成の過程で微生物が新たなアミノ酸を合成することにより、アミノ酸の種類がバラエティーに富むのだと思います。また、熟成の過程で芳香成分も増えます。これが、味に深みが出る理由だと思います。
私がこのように思うようになったのも、熟成が短いラックスハムと、長期熟成の生ハムを比較して味わいに大きな違いを感じたからです。ラックスハムにはアミノ酸が添加されていたにもかかわらず、旨味感はあきらかに長期熟成のものの方が高かったです。おそらく、ラックスハムはアミノ酸添加しなければもっと味が薄くなると思います。
 
本当にいい素材を使って、手間暇をかければアミノ酸なんて入れなくても美味しいと思います。加工品メーカーの人はすぐ「グルソー(グルタミン酸Naのこと)入れなければ味が出ないよ」って言いますが、本当に美味しいものを作りたければよい材料と調味料を使って手間暇かけて作るべきでしょう。
佃煮とか本来は旨味の固まりであるはずの食品にアミノ酸が入っていたりすると、ちゃんと作っているのか心配になります。加工品メーカーも、材料や調理方法に自信があるならアミノ酸に頼らないで作って欲しいですね。