リサイクル費用を受け取るという意味

暑い日々が続いてすっかりげっそりとなっている今日この頃です。暑いと食べ物を食べなくなるので例年痩せます。豚も一緒で暑くなると食べる量が減るため、当社の飼料出荷量もそれにともない減少します。
この前、養豚農家さんが「産業廃棄物処分業の許可がほしい」ということを言われていました。養豚は古くから残飯を受け入れていたこともあり、全国でも少なからず産業廃棄物処分業の許可がある養豚農家があります。しかし、産業廃棄物処分業の許可があるということは、「原料の受入の際に処分費用を受け取る」ということです。たしかに、お金をもらってエサを入手できるのですから、すごく儲かりそうな印象がありますが、お金をもらうと言うことはまた違った意味が出てきます。
排出事業者の立場に立つと、お金を払うと言うことはお客様になるわけです。廃棄物を確実、安定的に処理を行う対価としてお金を支払う訳なので、安定的に処理を行なう事を求められことになります。
食品工場からの廃棄物は様々な種類のものが発生し、その量も変動します。養豚農家が処分費用をもらうということは、そういったものを受け入れしなければいけないことになります。上で述べたように、豚が食べる量は年間を通じて変動がある上に、受入量が変動するためその需給調整がたいへんになります。これがエサを購入すると、必要な分だけを購入すればいいわけです。また、食品工場からの廃棄物でも飼料に向かないものもありますが、こう言ったものが発生しても引取をもとめられてしまいます。
養豚農家によっては配合飼料との併用により需給調整をうまく行っている例がないわけではありません。でも、安定的にリサイクルすると言うことは結構たいへんなことです。
当社のようなリサイクル専業業者でも需給調整は苦労しますが、当社の場合、顧客となる畜産農家の数が多くありますので、リスクをヘッジできるわけです。
飼料に向かないものは肥料としてリサイクルすることにより、飼料の品質の均質化もはかっています。
また、有価物として養豚農家が引き取りする場合もあります。この場合、購入しているわけですから必ずしも引取の義務が生じるわけではありません。ところが、こういう排出事業者から当社への引き合いが結構あります。「養豚農家さんが取りに来ていたが、時々取りに来なくて困ったのでリサイクル業者をさがしている」っていうようなお話しを頂いたりします。排出事業者は費用が発生しても安定的に処理が行われることを求められているわけです。
食品に限らず、リサイクル業界は需給調整が必要となります。そこに当社のような業者が存在する意義があるわけです。いわば、静脈ビジネスにおける商社と言うわけです。
存在意義がない事業って継続することはできません。会社の立ち位置、意義を常に考えて事業を営んでいきたいと思っています。

畜産と食糧自給率

穀物価格の上昇がニュースを賑わしています。→ロイター記事
普通に生活している限りあまり実感がないのですが、日本は世界から多量の穀物を輸入しています。トウモロコシの輸入量は1600万トンで世界最大の輸入量です。そのうち1200万トンが家畜の餌に使われています。残りはおもにデンプンなどの加工用になり、デンプンは更に加工され異性化糖として清涼飲料水などに使われています。
トウモロコシ以外には大豆が多く輸入され、大豆は食品用だけではなく、圧搾抽出されて大豆油として利用されています。油を搾った残りは大豆粕として醤油原料や家畜飼料として利用されます。
日本の家畜は輸入飼料に依存しています。日本の食糧自給率が低い原因は家畜飼料と油糧作物の輸入にあります。エサが肉になる効率は1/3~1/5ぐらいなので、実は日本国内での畜産をやめて海外から肉や卵、牛乳を輸入した方が(カロリーベースの)食糧自給率は上がることになります。
日本で飼われている家畜のエサのうち、配合飼料は基本的にトウモロコシがベースとなります。豚や鶏のエサは基本的に配合飼料が主体なので、トウモロコシがメインということです。
一方、牛は草(粗飼料)だけたべているのかというと、実は現代の畜産では配合飼料をたくさん与えています。牛といっても牛乳を搾る酪農と肉を作る肥育ではエサの配合はかなり異なっており、また北海道などでは粗飼料の割合が高い傾向にあります。
黒毛和牛などの高級な肉牛では、粗飼料の割合がかなり低いです。本来牛は草を食べなければ胃の中にある微生物の調子が悪くなってしまいますので、粗飼料はある程度与えなければ死んでしまいます。ですが、霜降りにするためには高カロリーの濃厚飼料(配合飼料)を中心に与えなければいけません。したがって、日本で育てられている「和牛」も実は海外の輸入トウモロコシによって成立しているわけです。
昨日、近江牛ドットコムを運営している新保さんのお誘いで、プレミアム近江牛を食べる会に参加してきました。プレミアム近江牛とは国産飼料にこだわって育てられた近江牛です。粗飼料を主体とし、濃厚飼料も国内原料のおからなどのエコフィードを主体としています。
「飼料が100%国産」と言っても一般の方はあまり驚かれませんが、実はこれはかなりすごいことです。おそらく全国で初めての取り組みと行ってもいいのではないでしょうか。
今回は通常肥育の近江牛や粗飼料主体の短角牛などとも食べ比べしましたのですが、一般に粗飼料主体だとサシが入りにくく脂肪の融点が高くなりやすい・・と言われているのにもかかわらずプレミアム近江牛はしっかりとした味わいでとても美味しく頂くことができました。
いろいろな立場、意見がありますが、日本の畜産は海外の輸入飼料に依存していることは間違いのない事実です。そして、海外の穀物の価格が上昇基調にあることも間違いありません。そんな中、日本の畜産をどうしていくべきか考えなければいけないと思いますが、今回のプレミアム近江牛は美味しい肉を食べながらいろいろと考えさせられるイベントでした。今まで既成概念から離れて日本の畜産の将来を考えるよい機会だったと思います。多謝。
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6次産業化とフランクフルト

昨日は昼から豊橋駅前で行われていたまちなかマルシェという地産地消イベントに行って来ました。
見に行ったわけではなく、お客様のGファームが出店されているので、そのお手伝いです。
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こういう出店の時、いつもはフランクフルトが中心なのですが今回はウズラ豚串なるものを販売していました。ウズラの周りに豚のバラ肉を巻き付けて焼いたものです。売っていて言うのもなんですが、美味しいです。ビールに非常に合います。
豚屋さんがこうい出店をしてフランクフルトを売ったりするのは、今流行の6次産業化とも言えるかと思います。6次産業化っていうのは、農林水産業(一次産業)の人が、製造(二次産業)や流通(三次産業)を行っていくというもので、1×2×3で6次産業と呼ばれています。
ただ、私が以前から思うのは、製造流通をやっている方がそんなに儲かっている訳ではないのに農業従事者が屋ったら儲かるのか・・という疑問です。以前、ネットで「6次産業化っていうのは新日鉄が車を作って売るようなものだ」と書いている人がいましたが、製造流通にも色々ノウハウが必要なのに農家が参入して簡単にできるわけではありません。むしろ、製造流通の人が農業参入する方がまだ容易かなと思います。
6次産業化が成功するとしたら、それは規格外品をうまく活用したりするなど一次産業のメリットを上手く行かした場合かなと思います。
特に、肉は6次産業化が難しいです。生産した豚を自分で肉にするわけにはいかないので(自分でと畜することは法で禁止されています)、必ずと畜場へ持ち込まなければ行けません。枝肉からパーツにするのもかなり熟練が要りますので、結局肉屋さんにお願いすることになってしまいます。
また、肉屋さんでもこれは同じ状況なのですが、パーツの量の調整が出てきます。売れ筋のバラ、ロースはいいのですが、売れ行きが悪いモモ、腕をどうやって安定的に販売するかが難しいです。売れ残ると安く販売せざる得なくなり、それが全体の足を引っ張ってしまいます。
一次産業の人って、「売る」って概念が無い人が多いのでそういう人たちが6次産業化に取り組むのは市場を見据えた生産につながって良いことだと思いますが、農水省の考えているような「6次産業化で日本の一次産業が飛躍してTPPが来てもばっちりOK(って考えているかはわかりませんがw)」みたいなのは幻想だと思いますね。

養豚農家の経営要素

最近、お客様の養豚農家へ行くと、お尋ねしていることがあります。
1.エサの購入価格
2.母豚(ぼとん)1頭あたりの年間出産頭数と母豚数
3.年間出荷頭数
4.出荷までの生育日数(出荷日齢)
このあたりをお聞きしています。
実は、養豚農家の経営っていうのはほぼこの要素で決まります。
これだけ聞けば儲かっているのかどうかがすぐにわかります。
エサ代は売上の6割を占めますので、1が経営を大きく左右します。
2を聞くことにより繁殖成績がわかります。1頭の母豚からいかにたくさんの子豚を産ませるかが経営に影響します。
3は2からだいたい推測ができるのですが、2から計算した値と差があると病気になって死んでしまう豚が多いことをがわかります。
4で成長が順調かどうかがわかります。エサの配合が悪かったり、病気が多かったりすると出荷日齢が伸び、出荷頭数の割にエサの使用量が増えてしまいます。
食品残さなどのエコフィードを利用する大きな理由の1つに、エサの購入単価を抑えると言う目的があります。
ところが、配合飼料の購入価格も畜産農家によって大きく異なります。購入単価が高い農家にはいろいろ理由がありますが、特に多いのが飼料販売代理店に買掛をためるケースです。
借金があると、代理店もリスク分を上乗せして販売せざる得なくなります。また、一番大きいのは相見積もりが取れなくなると言うことです。一社購買では自ずから値段が上がっていきます。
逆に、安く購入している方はやはりそれなりに工夫しているから安く購入できます。1回の発注ロットを大きくしたり、共同購買したりすることによって価格を抑えているケースもあります。
配合飼料の購入価格は安い農家と高い農家で1割以上差があります。売上の6割が1割違ってくると経営は大きく変わります。愛知県の標準的な養豚農家である母豚300頭の場合、年間の飼料購入費は1億円以上になります。1割違うと毎年1千万以上コストが変わってくるわけです。
配合飼料を高く購入されているような農家はエコフィードを使ってもやっぱりコストがあがってしまいます。
安いからとエコフィードに取り組む以前に、養豚という「ビジネス」に向き合う姿勢が重要なのだと思いますね。