畜産と食糧自給率

穀物価格の上昇がニュースを賑わしています。→ロイター記事
普通に生活している限りあまり実感がないのですが、日本は世界から多量の穀物を輸入しています。トウモロコシの輸入量は1600万トンで世界最大の輸入量です。そのうち1200万トンが家畜の餌に使われています。残りはおもにデンプンなどの加工用になり、デンプンは更に加工され異性化糖として清涼飲料水などに使われています。
トウモロコシ以外には大豆が多く輸入され、大豆は食品用だけではなく、圧搾抽出されて大豆油として利用されています。油を搾った残りは大豆粕として醤油原料や家畜飼料として利用されます。
日本の家畜は輸入飼料に依存しています。日本の食糧自給率が低い原因は家畜飼料と油糧作物の輸入にあります。エサが肉になる効率は1/3~1/5ぐらいなので、実は日本国内での畜産をやめて海外から肉や卵、牛乳を輸入した方が(カロリーベースの)食糧自給率は上がることになります。
日本で飼われている家畜のエサのうち、配合飼料は基本的にトウモロコシがベースとなります。豚や鶏のエサは基本的に配合飼料が主体なので、トウモロコシがメインということです。
一方、牛は草(粗飼料)だけたべているのかというと、実は現代の畜産では配合飼料をたくさん与えています。牛といっても牛乳を搾る酪農と肉を作る肥育ではエサの配合はかなり異なっており、また北海道などでは粗飼料の割合が高い傾向にあります。
黒毛和牛などの高級な肉牛では、粗飼料の割合がかなり低いです。本来牛は草を食べなければ胃の中にある微生物の調子が悪くなってしまいますので、粗飼料はある程度与えなければ死んでしまいます。ですが、霜降りにするためには高カロリーの濃厚飼料(配合飼料)を中心に与えなければいけません。したがって、日本で育てられている「和牛」も実は海外の輸入トウモロコシによって成立しているわけです。
昨日、近江牛ドットコムを運営している新保さんのお誘いで、プレミアム近江牛を食べる会に参加してきました。プレミアム近江牛とは国産飼料にこだわって育てられた近江牛です。粗飼料を主体とし、濃厚飼料も国内原料のおからなどのエコフィードを主体としています。
「飼料が100%国産」と言っても一般の方はあまり驚かれませんが、実はこれはかなりすごいことです。おそらく全国で初めての取り組みと行ってもいいのではないでしょうか。
今回は通常肥育の近江牛や粗飼料主体の短角牛などとも食べ比べしましたのですが、一般に粗飼料主体だとサシが入りにくく脂肪の融点が高くなりやすい・・と言われているのにもかかわらずプレミアム近江牛はしっかりとした味わいでとても美味しく頂くことができました。
いろいろな立場、意見がありますが、日本の畜産は海外の輸入飼料に依存していることは間違いのない事実です。そして、海外の穀物の価格が上昇基調にあることも間違いありません。そんな中、日本の畜産をどうしていくべきか考えなければいけないと思いますが、今回のプレミアム近江牛は美味しい肉を食べながらいろいろと考えさせられるイベントでした。今まで既成概念から離れて日本の畜産の将来を考えるよい機会だったと思います。多謝。
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