梅雨がそうそうに明けて暑い日が続いていると思ったら、一転してすっきりしない天気となっています。そんな中、北海道へ出張に来ています。
北海道へ来るといかにもな景色が広がっており、陳腐な表現ですが見渡す限りの畑や雄大な景色に圧倒されます。
また、草を食む牛や牧草のロールを見ると、畜産が盛んな地域であることを改めて感じます。農業に関連するビジネスを行っているならば、北海道は欠かすことができない地域であると感じます。
ですが、実はここ愛知県も農業がさかんな地域です。農林水産統計によると、愛知県の農業出荷額は全国6位です。愛知県の農業の特徴はすべての農業がまんべんなく盛んなこと。花卉出荷額は全国一位ですが、米も野菜も畜産も全国上位の生産額です。
そのなかで、乳牛の生産額も全国6位です。大消費地の近郊と年間通じて温暖な気候を背景に酪農も盛んな地域です。
乳牛を飼育するためにはたくさんの牧草が必要です。ところが都市近郊であるが故、愛知県は牧草地を確保することが難しいです。とくに当社がある東三河では大規模な農家が多いこともあり、粗飼料の生産を行っていないケースが多くあります。
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010642075.pdf
これをみると、2001年時点で粗飼料をまったく生産していない農家が41%、1ha以下の農家が15%であわせて56%の農家がほぼ粗飼料生産を行っていないという結果が出ています。
粗飼料を生産していないということは、購入した粗飼料を使用するということです。東三河では主にアメリカやカナダから輸入された粗飼料が使用されています。この仕事を始めた頃、豊橋港の倉庫に大量の牧草がストックされているのを見て衝撃を受けたことを覚えています。
大規模な農家になると40フィートの海上コンテナで購入するケースも多くあります。
実は愛知県は飼料の価格が全国的に見ても安い地域です。名古屋港という全国有数の貿易港が近いこともあり、輸入粗飼料も安く供給されてきました。
このため、愛知県の酪農は「大規模な農家が安価な輸入飼料を使用し、乳量をたくさん出させる」というスタイルが主流となっています。
これまではこういうやり方をしたほうが経営的にはよかったことは事実です。
しかし、昨今の穀物価格の上昇は配合飼料だけではなく、粗飼料の価格にも影響を与えています。トウモロコシや小麦の価格が上昇すると、アメリカやカナダの農家は牧草を生産するのをやめて穀物を生産するようになります。供給がへった結果牧草の価格が上がっているのです。
海外からの購入資材に依存すると言うことは、グローバリゼーションの流れに身を置くと言うことです。本来は地域の天候などが主な経営の影響要因だった農業が、世界情勢によって経営が左右されるようになってしまうわけです。不安定化が増している世界情勢に一介の農業生産者が振り回されるのはリスクがとても大きいです。
石油ショック後の数十年は海外の資源が安定して入手できる時代が続いていました。しかし、人口が増大している今、輸入資源に依存するやり方は見直すべき情勢になってきています。
資源高という背景のもとでは購入資材を使い付加価値率が低い農産物を大量に生産するのではなく、高い付加価値率で少量生産を行っていくことが重要になってくると思います。従来の経営手法を見直していくことが日本の畜産が生き残れるかの分かれ道ではないかと思います。