再生可能エネルギーの課題

最近、さまざまな資源が高騰をしています。当社が取り扱っている食品、飼料も大変な水準になっています。また、当社もエネルギー価格の上昇にも大きな影響を受けています。そんな中、再生可能エネルギーに注目が集まっています。

当社は直接的には再生可能エネルギーに関する業務を行っていませんが、再生可能エネルギーに関する業務を行っている事業者との取引も多く、再生可能エネルギーに関する知識もついてきました。
農業では太陽光発電の親和性が高く、営農型太陽光発電という制度があります。これは農地で耕作を行いながら発電をするというものです。また、当社が取り組んでいる食品リサイクルの分野では、バイオガス発電が増えています。これは食品廃棄物をメタン発酵させ、発生したメタンガスで発電を行うというものです。
また、バイオマス発電の事業者とも取り組みを行っています。バイオマス発電は木くずなどを燃料としてボイラーで利用し、発電するというものです。

このように再生可能エネルギーは徐々に普及が進んでいますが、その大きな背景として再生エネルギー固定買取制度があります。再生可能エネルギーを利用して発電した電力を一定価格で20年にわたり買取を行うという制度です。この制度は買取価格にインセンティブをつけることで再生エネルギーの普及を促進するという制度であり、その財源は電力料金に付加することで捻出されています。

電気料金の明細を見ると、「再生エネルギー賦課金」という名目で費用が計上されています。このお金をプールしたものが再生エネルギーで発電した電気を買い取る原資となっているわけです。現在は3.45円/kwとなり、通常支払っている電気代の1割程度を占めています。毎月1万円電気代払うと1000円程度の負担になります。このあたり、詳しい制度設計は経済産業省のサイトをご覧下さい。

もともと、この固定買取制度の目的として、再生エネルギーという事業に対し国が20年間価格を保証することで事業の参入を促し再生エネルギーの普及をすすめるというものです。発電の種類によって買取価格が決められており、その価格は毎年見直しされています。太陽光発電ではパネルの値下がりにより10年前の半額以下の価格となっています。
しかし、これまではこの固定買取制度の設定金額が高いため、再生可能エネルギーの発電事業はかなり利益率がよいビジネスとなっていました。例えば太陽光発電では一時期は投資利回り10%以上も可能でした。つまり、1000万円投資して20年間で2000万円以上になります。それで山を切り開いて太陽光パネルを並べるような現場が増えている訳です。その原資はすべて我々の電気代になります。私は山を埋め尽くした太陽光パネルを見るにつけ、本当にこの再生エネルギーの買取価格が妥当なのか疑問に思います。

再生可能エネルギーの買取価格は4兆円程度となり、通常の発電に比べて割高となっている分の3兆円弱が電気料金に上乗せされ全国民の負担となっています。その制度の是非はともかくとして、発電事業に関わっている人以外はほとんどこの制度でお金を負担していることを知らないことは大きな問題だと思います。私は周りの人に「電気料金に上乗せされているのを知っているか」と尋ねるようにしていますが、たいていの人はこの制度を知らずお金を払っていることすら知りません。

これから資源価格が高止まりして再生エネルギーの重要性がますます増しますが、発電のコストが高額な発電が本当に環境負荷が低いのか、個人的には疑問です。LCA(ライフサイクルアセスメント)の算出を行い環境負荷を把握すべきですが、基本的にはコスト≒エネルギーなので本来環境に対し優しいものはコストも低いはずです。そう言う意味で、発電単価が下がって火力発電よりコストが低い今の太陽光発電は環境負荷が低い発電であると言えます。太陽光発電の場合、固定買取価格が下がったため、通常の火力発電よりコストが低くなっています。現在は電気代が高騰しており、太陽光発電は売電するよりも自家消費するほうがお得になってきています。これが本来の姿では無いかと思います。
逆に、いつまでも発電単価が下がらない発電を国民負担により支援し続ける意味があるのか、検討をすべきではないでしょうか。

環境問題に対してどう向き合って政策決定していくかは将来の日本に対し大きな影響を与えますが、世間一般の関心が薄いことに危惧の念を抱きます。環境問題は地球環境のためでもありますが、日々の生活にも関係していることでもあります。毎日の財布とも密接関係する身近な問題として向き合っていくべきでは無いでしょうか。

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