最近、お客様の養豚農家へ行くと、お尋ねしていることがあります。
1.エサの購入価格
2.母豚(ぼとん)1頭あたりの年間出産頭数と母豚数
3.年間出荷頭数
4.出荷までの生育日数(出荷日齢)
このあたりをお聞きしています。
実は、養豚農家の経営っていうのはほぼこの要素で決まります。
これだけ聞けば儲かっているのかどうかがすぐにわかります。
エサ代は売上の6割を占めますので、1が経営を大きく左右します。
2を聞くことにより繁殖成績がわかります。1頭の母豚からいかにたくさんの子豚を産ませるかが経営に影響します。
3は2からだいたい推測ができるのですが、2から計算した値と差があると病気になって死んでしまう豚が多いことをがわかります。
4で成長が順調かどうかがわかります。エサの配合が悪かったり、病気が多かったりすると出荷日齢が伸び、出荷頭数の割にエサの使用量が増えてしまいます。
食品残さなどのエコフィードを利用する大きな理由の1つに、エサの購入単価を抑えると言う目的があります。
ところが、配合飼料の購入価格も畜産農家によって大きく異なります。購入単価が高い農家にはいろいろ理由がありますが、特に多いのが飼料販売代理店に買掛をためるケースです。
借金があると、代理店もリスク分を上乗せして販売せざる得なくなります。また、一番大きいのは相見積もりが取れなくなると言うことです。一社購買では自ずから値段が上がっていきます。
逆に、安く購入している方はやはりそれなりに工夫しているから安く購入できます。1回の発注ロットを大きくしたり、共同購買したりすることによって価格を抑えているケースもあります。
配合飼料の購入価格は安い農家と高い農家で1割以上差があります。売上の6割が1割違ってくると経営は大きく変わります。愛知県の標準的な養豚農家である母豚300頭の場合、年間の飼料購入費は1億円以上になります。1割違うと毎年1千万以上コストが変わってくるわけです。
配合飼料を高く購入されているような農家はエコフィードを使ってもやっぱりコストがあがってしまいます。
安いからとエコフィードに取り組む以前に、養豚という「ビジネス」に向き合う姿勢が重要なのだと思いますね。
投稿者: eco
石鹸と化学合成
仕事柄、有機農業と関わり合うことが多くあります。価格が高い有機農産物を購入される人は、自然や健康にこだわる方が多いです。この前、そういう方とお話ししていて「化学合成されたものではなく、石鹸を使いたい」と言われているのを聞いて、ちょっと違和感を感じました。
高校の化学でも習うかとおもいますが、石鹸というのは高級脂肪酸のアルカリ塩です。油脂(脂肪酸のグリセリンエステル)をエステル置換し製造されます。これは立派な化学反応です。
合成洗剤というとイメージが悪いですが、石鹸もある意味合成されているわけです。合成洗剤の主成分である界面活性剤の代表的なものの1つに、LAS(直鎖ベンゼンアルキルスルホン酸ナトリウム)という物質があります。名前だけ聞くと非常におどろおどろしいのですが、石鹸も「オレイン酸ナトリウム」というと同じような響きに聞こえてきたりします。
家庭でも廃食用油を使って石鹸を作ったりもできますが、廃食用油のような不純物が多い油脂を使用しますと、化学反応の過程でおもわぬ物質が生成する可能性があります。工場での大規模なプラントで製造する合成界面活性剤の方が「何が入っているかわからない」という状態は少ないと思います。
石鹸の危険性を喧伝したいわけではなく(私も家では石鹸中心です)、われわれの豊かで文明的な生活において化学合成というものはもはや切り離すことができなくなっているので、化学合成したものを排除するというのはナンセンスだということです。人類が鉄と火を手にした時点で化学合成が始まっているわけですから。
私はよりよい地球環境を構築することを目標に(微力ですが)努力していますが、世間一般における環境にたいして優しい行動というのが本質とずれているような気がしてなりません。イメージではなく、実質で環境を考える必要があると思います。当社の手がけているリサイクルでもそうですが、世の中にある「エコ」な商品の多くはイメージが先行している気がしてなりません。リサイクルだから、自然由来だから、素朴な作り方だから環境に優しいとは限らないのです。
そもそも、現代の日本人の生活というのはエネルギーの大量消費と「化学合成」されたものを含む大量の物質消費に依存しているわけです。この大量消費社会を本質的に変換しなければ、石鹸を使う運動というのは大海の一滴で自己満足の世界に過ぎないと思います。これだけ豊かな生活を送っている日本人が「環境に優しい」なんて言葉を使うというのはある意味皮肉ではないかと思ったりもします。自分も含めて反省をしなければいけないですね。
梅酒の作り方と梅の実
いよいよ梅雨入りして雨が多い東三河です。
梅雨と言えば梅の時期。というわけで梅酒を作りました。毎年梅酒を作っていますが、レシピを毎回変えています。今年は試みで芋焼酎の原酒で作りました。
左が今年仕込んだもの、真ん中が去年、瓶が3年前のものです。去年のものはラム(バカルディ)でつけたのですが、これが大正解でした。おそらく今まで作った中で一番美味しい気がします。ラムって案外安いですし、お勧めです。
ちなみに、つけた後の梅の実は美味しく食しています。ただ、アルコールがかなりきついので気をつけないと飲酒運転になってしまいます。
去年の記事にも書きましたが当社では梅酒の梅のリサイクルをしています。去年は機械が小さかったので処理に苦慮していましたが、今年は粉砕機の追加導入をしたのでかなり効率よく処理できるようになりました。
ですが、ちょっと粉砕の目が荒かったらしくお客様の養豚農家でポンプが詰まるというトラブルが発生。粉砕粒径は気をつけないといけないですね~。
オンサイト処理と衛生環境
出張続きで忙しい日々が続いています。毎月、「来月はちょっと時間の余裕が取れるかも」と思いつつはや半年以上こんな状態が続いています。
最近、当社が力を入れているのが食品残さのオンサイト処理システムです。今回の出張では、オンサイト処理の営業もしてきました。オンサイト処理というのは、食品廃棄物を排出事業所で保存、加工を行なう事でリサイクルに適した状態にするシステムです。
当社が行っている例としてはジャガイモの皮のリサイクルがあります。ポテトスチームピーラーというジャガイモの皮むき機があり、ジャガイモの加工を行っている工場ではこの機械を使ってジャガイモを大量に皮むきしています。剥いた皮はデンプンが豊富に含まれており、飼料として有用ですが高栄養のため非常に腐敗が早いです。このため、当社ではこのジャガイモの皮をオンサイト処理することによりリサイクルできるようにしています。有機酸を添加し密閉容器に充填することにより飼料として利用できる形態になります。
実は、この処理を行なう事によりリサイクルが推進され、コストが下がるだけではなく隠れたメリットがあります。それは衛生環境の向上です。
腐敗しやすい廃棄物を食品工場に保管すると、臭いや虫の発生を招きます。食品工場で腐敗したものを保管することは好ましくありません。飼料として利用できるように加工することにより、衛生環境の向上にもつながります。
昨今食品工場では衛生環境について非常に厳しくなっており、HACCPや納品先の立ち入り検査など、管理がきちんと求められるようになってきています。どうしてもなおざりになりがちな廃棄物ですが、工場内全体の衛生レベルを引き上げなければ製品の衛生レベルは向上しません。
最近、食品メーカーにお伺いすると工場の衛生レベルの違いについて気になるようになってきました。きちんと管理をされている会社はバックヤードにまわってもやっぱり安心できます。なんにせよ、いろいろな部分でお客様に喜んでもらえるのは嬉しいですね。
汚泥の減容化
6月に入って暇になるはず・・だったのですが、どうにも忙しい日が続きブログ更新もすっかり怠っています。
西へ東へ奔走する日々が続いています。仕事の引き合いを頂くのは嬉しいのですが、どうにも回らなくなってきたのでなんとかしなければと思う今日この頃です。
そんな中で昨日お伺いしたお客様で聞いた話。お客様の排水処理から出る余剰汚泥の処理のコストがかかるため、地元の企業が汚泥が減容できる装置を考案したので、取付をしたけどうまく行かなかったと言われていました。
排水処理を微生物処理で行うと、有機汚泥が発生します。これはどういうことをしているのかというと、水に懸濁している有機物を微生物の菌体に取り込ませるというプロセスです。微生物は呼吸で有機物を炭酸ガスなどの形で放出しますが、自身の菌体合成にも利用し、できあがった菌体を排水から分離すると余剰汚泥となるわけです。
汚泥は有効利用が難しいため一般的に廃棄費用が発生します。このため、できるだけ汚泥を減らしたいという要請があるのですが、簡単なことではありません。私も前職で排水処理メーカーに在籍しており、汚泥の減容化について検討するチームにも所属していたのですが、これはという手法はなかなかありません。
汚泥の減容化について検討を行っているのは排水処理メーカーだけではなく、世界中の研究機関が検討を行っています。日本でも大学や下水道事業団、大手プラントメーカーなどが様々な手法を実験しているのですが、しっかりとした実績が出ているものは無いのが現状です。
世界中の一流研究者が検討しているものを一介の地方企業が開発できる可能性は非常に低いと思うのですが、環境関連の展示会など行くと「汚泥が減ります」「グリーストラップの油を分解します」みたいな装置や薬品、微生物製剤がたくさん展示されていたりするのが不思議ですし、それを購入しようとする人もちょっと不勉強なのではないかと思います。要は、街の発明家が癌の治療薬を作ることができるのか・・ってことと同じ事です。
技術が高度化している現代社会において画期的なシステムってそんなに簡単にできるものではないと思うんですよね~。新技術への探求を否定するわけではありませんが。
養豚農家への営業
先週の環境展はおかげさまで盛況に終わりました。いろいろとよいお話しもたくさん頂き、嬉しく思っています。一生懸命頑張っていたのでとても疲れて、終わったらほとんど立てないくらいでした。やっとの思いで帰宅しました。
サラリーマンでしたら出展すればそれで仕事は終わりですが、そこは零細企業の経営者、出展料を回収しなければと必死です。通りかかったお客様全員に声をかけようと頑張っていたので疲れたのだと思います。コンパニオンさんに感心されたぐらいなので、端から見ても一生懸命だったと思います。
環境展も終わってホッとしたのもつかの間、来週には三河トコ豚極め隊で「国際養鶏養豚展」なるものに出展するので、その準備に追われています。環境展の準備でこちらに手が回っていなかったので、慌てて準備をしています。と、そんな中で出張の予定をいれていたので、現在九州に来ているという多忙ぶりであります。
今日は雲仙普賢岳のふもとにある豚屋さんのところへ営業へ行って来ました。
こちらのお客様は自家配合でエサを作っています。養豚農家は9割がた配合飼料を使っていますので、自分でエサを混ぜている人は少数派です。多分1割ぐらいです。
その少数派の人はやはりいろいろとこだわりがあったり、経営に対する厳しい姿勢があったりします。というわけで、話が盛りあがって2時間ぐらい滞在していました。
豚屋さんは一軒ごとに経営スタイルが違います。カロリー高いエサを欲しい方、タンパク質が多いエサを欲しい方、紙袋でなければ使えない方、いろいろなケースがあります。ので、お伺いして詳しい条件を聞かなければ飼料を供給することができないです。
なにかよい材料が提供できたらいいのですが。
環境展に出展しています。
というわけで、昨日から環境展に出展しています。とても小さなブースで場所が悪いにもかかわらず、初日から大勢の来場者がみえてとても疲れました。ただ、けっこういい話もありましたので、高いお金を払って出した甲斐がありました。
ブースはこんな感じ↓でやっています。
今回、お客さんがたくさん見えた理由の1つに、のぼりがよかったことがあるのではないかと自画自賛しています。「エコフィードあります」と書いてあると、エコフィードが何か知っている人は興味を示すのでコンバージョン率が高いのではないかと思います。
今回はコンパニオンさんと、学生のバイト2名を雇っています。
コンパニオンの方はとても優秀で、こちらが勉強になることが多いです。色々教えてもらったのですが、その1つとしてあったのが、「大手企業のブースでは名刺獲得のノルマがある」ってことです。たしかに数値目標は大事ですが、どうでもいい名刺をたくさんもらってもしょうがないのでしっかり相手を見て資料を配ることが重要かなと思いますね。
あと2日間、よい出会いがあることを願っています。明日は環境展併設セミナーの講師もしなければいけません。脚が疲れたけど、気力で乗り切ります。
豆腐のカロリー
来週の環境展の準備が忙しくてばたばたです。来週一週間出張なので、その前に溜まった仕事をこなさなければいけないので大変です。明日の日曜日も出勤して来週の仕事を前倒しでする予定です。
暑くなってきたので冷や奴とかが食べたくなる時期です。当社はリキッドフィーディングというヨーグルト状の飼料を製造しています。どろどろの液状なので豆腐のようなものも設備的には使用することができます。ですが、実は豆腐は豚の餌として向いていません。意外なのですが、「油が多すぎるから」使用が難しいのです。
豆腐も種類によって成分がかなり変わりますが、木綿豆腐の成分は食品成分表によるとこんな感じです。
水分 86.8%
タンパク質 6.6%
脂肪 4.2 %
炭水化物 1.6%
水分が多いので固形物の割合が低いのですが、乾物あたりで計算すると
タンパク質 50%
脂肪 31%
炭水化物 12%
となります。確かにタンパク質が多いのですが、脂肪が30%も入っている食品は牛乳と豆腐ぐらいです。たとえば、脂が多い印象がある牛肉ですが、もも肉ならタンパク質:脂肪は2:1ぐらいですので、豆腐より脂肪分が少なくヘルシーということになります。
豚の飼料はカロリーが低いことが求められていますので、油脂含量が高い豆腐は使用しにくいです。
豆腐に含まれる油はリノール酸という不飽和脂肪酸です。動脈硬化にいいと言われている不飽和脂肪酸ですが、摂取した脂肪が体内に蓄積しやすいという特徴があります。融点が低いリノール酸が多くなると豚肉のしまりが悪くなり、食味に影響が出る場合があります。そういった意味からも使いにくい素材ではあります。
豆腐工場では角が欠けたり等の理由でかなりの量の豆腐が廃棄されています。利用したいのは山々なのですが、どんなものでも飼料になるわけではないのです。
豆腐は禅寺のお坊さんがあれで生きていけるぐらいですので、かなり高カロリー、高タンパクな食品だということです。よく、自然食とかを推進している方は「肉は脂が多くて栄養バランスが」っていうことを言っていたりしますが、食事の栄養計算をすると案外高カロリーで肉食べていた方が栄養バランスがいいケースもあったりするわけです。
飼料の仕事をして思うのですが、栄養成分は一般的なイメージと案外違っていたりします。きちんと分析した値を見て判断することが重要だと思います。
石灰中和曲線
今日は恒例の名古屋大学附属農場での作業でした。よく晴れていましたが風が強くやや肌寒い感じでした。
この圃場の春作はトウモロコシです。5月に定植して7月に収穫です。
以前の記事にも書きましたが、当社の肥料は硫黄分が多いためpHが下がりやすい傾向にあります。ので、今回は石灰の施用量をふやしてあります。
と言う話を恩師にしたところ、「石灰の中和曲線をしらべておきなさい」と言われてしまいました。土壌は緩衝能があり、土壌の種類により緩衝能が変わってくるためどれくらい石灰を入れればpHが上がるかは実際に石灰による緩衝中和曲線を調べてみないとわからないのです。
とはいえ、なんかなか実験をしている暇もないのでハテどうしたものか、どこかに分析委託しようかどうか悩んでいます。学生の頃から先生はいろんな実験を言いつけていたな~と感傷にふけりました。
養豚農家での研修
世間ではゴールデンウイークなるものがあったようですが、当社は祝日は原則出勤のため通常通りの業務でした。しかし、世間は連休で予定が無かったので、これはいい機会だと思いお客様の養豚農家のところで3日間実習を受けてきました。
1日目はGP農場へ。ここは母豚を生産する農場です。農場を回ってエサやりや掃除をしました。母豚を生産するだけで規模が小さいので全体の流れがよくわかりました。
2日目は繁殖農場へ。ここでは母豚に人工授精をして種付けをし、生まれた子豚を30kgまで飼います。人工授精の様子や出産の介助、生まれた子豚の管理等々を行います。素人が手出しできる部分はすくないので、後ろをついて回っただけでしたが、すごく勉強になりました。
3日目は肥育農場でのエサの製造。この農場ではエコフィードをつかったリキッドフィーディングが導入されています。実際にエサを混ぜて溶かす作業を行いました。
はっきり言ってあまり役に立たず、足手まといな感じだったことは否定できません。ご迷惑をおかけして申し訳なかったと思います。
私にとっては知らなかったことがたくさんあり、すごく勉強になりました。やっぱりものを売るのにお客様のことをよく知らなければいけないと思います。特に畜産の世界は奥が深いので、今回のように実際に農場の中に入ってみないと理解できないこともたくさんあります。
養豚農家は非常に細かく現場を観察する必要があること、また計算しながらやらなければいけないことが多いことがよくわかりました。頭が悪いとできない仕事ですね。
というわけで、連休が有意義に過ごせてよかったです。でも、久しぶりに早起きして現場にずっといたのでちょっと疲れました・・。