麺

エコフィードの集め方

コロナ禍によりいろいろビジネスに支障がある昨今です。当社のお客様でも影響が出ている業種があります。特に、日本酒、ビールなどのお酒関係は甚大な影響があります。今日日、家では酒を飲まなくなってきているのだと実感します。家では酎ハイや発泡酒が中心で、ビールは飲まない人が多いと言うことです。
当社はビール粕や酒粕などの副産物を取り扱っていますので、発生量が減少傾向にあります。

酒粕

そんな中、製麺工場などコロナの影響が少ない業種からの新規のお仕事のご依頼が非常に多く、おかげさまで当社は仕事はむしろ増加傾向にあります。ご依頼をいただく理由の一つとして、今までそういった食品残さの引き取りを行っていた養豚農家が廃業してしまったというものがあります。

愛知県など都市近郊の養豚農家では古くからいわゆる残飯養豚というスタイルで豚を飼っている農家が存在します。飲食店などから残飯を回収してそれを加工し、豚に給与するというものです。しかし、このようなやり方をしている農家は今は非常に少なくなっています。
残飯などはたいてい無償で提供してもらえますので、養豚で一番コストがかかる飼料費を抑えることができます。しかし、当然ながら回収するのにも手間がかかります。残さを回収してまわることで人件費が発生しているので、見かけほどコストが下がるわけではありません。また、残飯養豚をやっているような農家は小規模なことが多く、回収するために時間を費やすとおのずと豚の面倒を見る時間が短くなり、管理がおそろかになりがちです。
そして、残飯を給与することで、肉質などにも影響がでてしまうことがあります。残飯は一般的に粗脂肪含量が非常に高く、油がそのまま豚肉の脂肪に移行してしまうためにおいなどの原因になりがちです。
このようなことから残飯を給与することが経営的なメリットが相対的に少なくなって廃れてきています。

牛、豚など畜種問わず畜産農家が食品残さを回収するのには

・ある程度のロットで回収することができる

・品質が安定している

・回収担当のスタッフがいる

ことが必要条件では無いかと思います。たとえば、大手パン工場から発生するパンの耳、製麺工場から発生する余剰麺、豆腐工場から発生するおからなどを農家が回収して利用している場合、コストの低減と品質の両立がうまくいっていることが多いです。

当たり前ですが畜産経営においては原価計算をきちんと行い、収支をみて利用の可否を判断することが重要です。他方、食品残さ回収などの作業を当社のような業者にうまくアウトソーシングすることで、コストの低減と生産性の向上をうまく実現し、経営に大きく寄与している例も多くあります。(宣伝ですw)
いずれにせよ、畜産経営においては原価の把握が重要であることは言うまでもありません。原価をもとにそれぞれの経営方針に応じた飼料を使用することが大切です。

家畜防疫にとって必要なもの

先般、飼養衛生管理基準の改定が話題になっていました。
放牧経営どうなる 中止、畜舎義務化 懸念広がる 農水省基準案に「唐突」「根拠は」(日本農業新聞)
https://www.agrinews.co.jp/p51016.html

飼養衛生管理基準とは、「家畜伝染病予防法に基づき,家畜の飼養者が家畜伝染病の発生を予防するために,遵守すべき事項について定めたもの」です。
こちらに放牧を禁止する(場合がある)という内容が入っていたため、放牧を行っている畜産関係者等からの反発があり、結果として放牧に関する条項は大幅に割愛されることになりました。
放牧ばかり耳目を集めていたようですがこの飼養衛生管理基準はさまざまな点で規制が強化されており、たとえば農場内で愛玩動物、つまり犬や猫を飼うことが禁止されています。畜産農家に訪問したことがある方はご存じと思いますが、農場で犬や猫を飼っているケースは非常に多いです。しかし、今後は農場内で犬や猫の飼育もできなくなってしまいます。

今回の規制強化は近年の豚熱の流行、そして中国他でのASFや口蹄疫の流行が背景にあります。伝染病の予防や蔓延を防止するために規制を強化することになったわけです。
私は仕事柄様々な畜産農家に訪問する機会がありますが、正直言って防疫対策が不十分な農家も多くあります。規制の強化はやむをえない面もあります。
ただし、当然ながら規制の強化は費用や労力の負担にもなります。ゼロリスクを求めてやみくもに対策するのは非科学的な手法であり、費用便益を考え優先順位を決めてすべきです。犬や猫がいることで本当に伝染病のリスクが高まるのでしょうか。例えば、猫がウイルスを伝播したという事例があれば猫の飼育を禁止するのも当然かと思いますが、そのような事例が報告されているわけではありません。
豚熱の発生の状況を見るに、野生動物に一旦伝染病が広がると(=つまりウイルスが大量にばらまかれると)、感染拡大をおさえるのは非常に困難であり、相当な防疫体制を敷いている農場であっても感染を防ぐことは非常に厳しいということは間違いありません。
であれば、まず第一に行うべきは野生動物への感染をいかに防ぐかであり、いかに国内に伝染病を侵入させないかが第一の対策であるべきです。たとえば、禁忌品、たとえば肉類の持ち込みに関する罰則のレベルは諸外国に比べ低いと言われています。水際対策の強化に対し及び腰にもかかわらず、国内の規制強化に取り組むのは本末転倒です。

今回の改定では

・根拠が明確でないこと、科学的根拠がはっきりしないこと

・改定の決定プロセスが不明確であること

・規制の内容がはっきりしないこと

に関して疑問の声が上がっていたように感じます。

放牧禁止しかり、愛玩動物禁止しかり、なにか明確な根拠があれば意見が噴出することも無かったかと思います。また、これらの改定に関し、農水省から出され原案を専門家委員会で検討をおこなっているのですが、議論の過程はオープンにはなっていません。今回の改定に関する専門家委員会の議事はこちらに公開されていますが、そこには「本年3月に改正された豚等の飼養衛生管理基準の他畜種への反映方針について確認がなされ、大臣指定地域の考え方等について意見があった。」との記載があるのみです。果たして議論が尽くされたのか、これでは全く不明確です。

今回の飼養衛生管理基準の改定の前に、食品残さの加熱基準が強化される改定が行われています。これは、肉を含む食品残さはいままでは70℃30分の加熱だったものの、90℃1時間の加熱が必要になりました。この根拠として、OIE(国際獣疫事務局)の基準が挙げられています。しかしながら、OIEが90℃とした理由は明確に示されていません。70℃30分でウイルスが不活化せず、90℃なら不活化するという実験データが示されるのならいざしらず、とにかくOIEがこう言っているから・・という理由で加熱基準が引き上げられました。この際、専門家委員会では相当議論が紛糾したにもかかわらず、議事要旨には「意見があった」との一文が記載されているのみです。

ゼロリスクを究極的に求めると家畜がいない方が良いことになってしまいます。リスクを回避しながらどうやったら畜産経営を継続していくか、生産現場だけに責任と負担を押しつけるのではなく、俯瞰的な視野の元で実効性のある対策を打ち出して欲しいと願います。

コロナ禍と豚肉のネット通販

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの事業者が大変な影響を受けています。当社はまだそれほど影響は大きくないですが、周りでも先が見えない状況の中で苦しんでいる人がたくさんいます。特に、飲食店関連の事業者はほんとうに大変です。各種景況調査などを見ると、去年の夏ぐらいから米中貿易戦争などの影響により相当景気が悪化しています。消費税増税前の駆け込み需要でそれがごまかされていたのが、駆け込み反動により去年の冬より景気悪化が顕著になり、コロナ影響によりさらに悪化しています。

豊橋商工会議所景況調査https://www.toyohashi-cci.or.jp/koho/pdf/keikyo01-3.pdf

自分と会社は
・今まで月の1/3は出張しており、飲み会も多かったがほぼ毎日家で夕飯を食べるようになった。会社にいる時間が長くなった。
・展示会などのイベントもことごとく中止。来年以降の受注が心配。
・取引先食品工場も業種によっては生産量が大きく低下している。土産物向け菓子、クラフトビール、外食向け製麺工場など。
・生産量が増えている食品工場もあり。スーパー向け菓子、スーパー向け製麺工場など。
・豚価が爆上げしている。スーパーでの国産需要増加、アメリカの豚肉輸出の混乱などの影響。
といった影響があります。生活は一変しています。

ただ、おかげさまでこの状況下でも新規の取引案件のお話しを多くいただいており、それらの準備などでかなり忙しい日々を過ごしています。

今回の社会情勢の変化に伴って一番驚いたのはネット通販の伸びです。昨年よりポケットマルシェというサイトで細々と豚肉のネット通販にとりくんでいましたが、いきなり売上げ激増して対応に追われています。
ポケットマルシェはSNS的な要素を持つ農家の産直サイトで、消費者と農家がコミニュケーションできるのが特徴です。私の販売ページにもたくさんのコメントが寄せられていて、生産者として励みになります。
昨今は生産者と消費者の関係性が希薄になっています。こういったサイトやSNSを通じて、もっと農業生産が身近なものになって欲しいと思います。

その一方で、消費者との関係性に依存した販売でよいのだろうかと言う思いもあります。豚肉、特に国産豚肉は品質向上がめざましいため、極端な味の差がない傾向にあります。とりわけ銘柄豚で販売されている豚に関してはどれもある一定のレベル以上の水準にはあるため差別化が難しいです。どうしても生産者の顔が見えることに注力した販売となります。それは悪いことでは無いと思いますが、私はやはり食べ物である以上おいしさで差別化していきたいと思っています。そう言う思いのもとで生産している当社の豚「雪乃醸」は飼料原料から一般的な豚の飼料に使われるトウモロコシを一切使用しないことで、かなり特徴がある肉質になっていると思います。とにかくあっさりとしていることで、特に女性の受けが非常に良いようです。

バラ肉

もちろん、差があると言っても和牛とオージービーフほどの差があるわけではなく、おいしさに気づいてくれる人は少数派ではないかと思います。その一部かもしれないですが本当に食べ物にこだわっている人に訴求する豚肉を極めていきたいと考えています。
今後も生産を改善し豚肉品質を向上させるとともに、ネット通販を通じそういった方にどこまでアプローチができるか試行錯誤していきたいと思っています。

パイナップルサイレージの消化性

年末からずっと多忙でブログ更新を怠っていましたm(__)m
新型コロナのせいで出張、来客予定がことごとくキャンセルになりようやく少し余裕が出てきた感じです。

最近、引き合いが多いアイテムの一つにパイナップルがあります。カットフルーツマーケットの隆盛に伴い、パイナップルの残さ(皮、芯など)の排出量が非常に増えており、当社の取扱も年々増えています。現在は主に酪農のお客様に供給をしています。そのまま供給する場合と、脱水してパイナップルサイレージとして供給する場合があり、特に脱水パイナップルサイレージは取扱も良好で嗜好性もよく、非常に人気のアイテムです。国内で発生する脱水パイナップルサイレージの取扱を行っている会社はほとんどないため、おそらく当社がトップシェアをとっているものと推測されます。

 

パイナップルサイレージ
パイナップルサイレージ

パイナップル自体は乾燥したものが従来より配合飼料原料として利用されており、日本標準飼料成分表にも記載されています。従来は嗜好性の向上のために利用する程度であり、配合飼料に含まれている割合もごくわずかでした。
ところが、当社(のお客様)では相当な割合でパイナップルを配合しているため、従来ではあまり想定されていない量のパイナップルを給与しているケースがあります。パイナップルを多給した場合、どうなるのかを確認するために共同研究している日大の飼養学研究室にて試験をしていただきました。飼養学研究室にて新規アイテムの試験をする場合、
サンプル分析→invitro試験(インビトロ:試験管での消化試験)→ヤギへの給与試験→牛への給与試験
という順番に試験をしていきます。牛への試験を行う場合には、消化率と消化速度、反芻時間なども測定します。糞を採取し未消化の部分を測定することで消化率がわかります。また、希土類元素でエサに標識をつけ、それがどれぐらいの時間で糞に出てくるかを測定することで消化速度もわかります。

最初にサンプル分析をしたところ、繊維の量が多くあまり消化をしないのでは無いかと懸念したのですが、消化試験を行ったところ分析値から想定されるよりはるかに消化して先生が感心をしていました。その後のヤギへの給与試験、牛への給与試験も非常に良い結果が出ました。パイナップルサイレージは消化も良好で嗜好性もよく使用しやすい飼料であると言えます。
今回の試験をしてみて実感したのは、分析結果は重要ではあるが実際に給与すると想定とは異なる場合があるということです。特にエコフィードは様々な原料があるため、一般的な配合飼料や牧草の分析方法での結果は単純には適用できない部分があるように思います。もちろん、分析を基に配合設計をすることは非常に重要ですが最後は実際に給与して家畜の様子を観察し、調整していくことが重要であることを思い知らされました。

なお、パイナップルの給与試験については共同研究している先生が畜産学会で発表する予定でしたが、コロナのせいで学会が中止になってしまいました。これ以上影響が広がらないことを切に願います。

豚を飼ってみて思うこと

今年も暑い夏でしたが、急に秋めいてきました。

当社で豚を飼い始めて1年半が過ぎ、2回目の夏を超すことができました。まだまだ未熟ですが、経験を積み重ねて養豚業ということが多少わかってきたように思います。

当初想定したとおり家畜の飼育はいろいろと苦労することがありましたが、ここ最近生産や品質が安定してきたようでほっとしています。
今、農場の調子がよくなったのはひとえにスタッフの成長によるものです。(そもそも私はほとんど農場の管理業務は行っていません・・)飼料の設計もスタッフが行い、スタッフのスキルアップにより疾病の予防や治療も適切になってきました。成長の速度や肉質も当初の予定以上の数字が出るようになりました。

豚コレラもまだまだ安心できませんが、一応ワクチン接種もおわり少しほっとしています。
今回の豚コレラの流行で家畜飼育のリスクを痛感しました。突然他国から侵入した疾病により事業の存続が脅かされる可能性があることをあらためて認識することになりました。農場の立地等の関係もあり、結局当社の農場は都合4回も採血、検査を行っています。その度に「万一陽性だったらどうしようか」と祈る気持ちでした。

養豚事業をはじめた目的の一つは、エコフィードだけで豚を飼育し美味しい豚を作ることです。当社では非常に多くのエコフィードを扱っていますが、その中で特に肉質によいものを選択し給与しています。

主に給与しているのが
炭水化物源として ラーメン、うどん、グミ、シロップ、菓子くず
タンパク質原料として 酒粕、みりん粕、ビール酵母
などを給与しています。
飼料原料はアミノ酸のバランスが取れていること、多価不飽和脂肪酸(リノール酸など)が少ないことに気をつけています。個人的には、多価不飽和脂肪酸の量が豚肉の味の良し悪しを決める大きな要因だと思います。

肉質に関しては飼料の影響が大きいことからあまり心配はしていませんでしたが、自分で食べるだけではなく、肉質を分析した結果、また販売先の肉屋さんやレストランからの意見をフィードバックして常にエサの改良を心がけています。
おかげさまで、最近は取引先からの評価もよくなり、卸先肉屋さんからも「ブラインドで食味評価したら一番よかったよ」と言われるようになりました。

現在はブランド名「雪乃醸」として東京のレストラン中心に販売も行っています。片手間で販売していることもありまだまだ苦労していますが、今後は多くの皆様に肉を届けたいと思っています。

先日、イベント出店していたら「雪乃醸食べたらおいしかったけどどこで売っているの」とうれしいお話をいただきました。生産者冥利に尽きます。
これからもおいしい豚肉を届けていけるように努力していきたいと思います。

イベントで販売したベーコン串

消費税アップの駆け込み需要

暑い日々が続きます。書類の締め切りと雑務に追われており、すっかり更新が滞ってしまいました。
雑務の一つに秋の消費税アップに向けて社内システムの修正作業があります。税制の変更のためになぜ企業が費用負担を強いられるのか全く納得いきませんが、粛々と対応をしています。

今日、会社に来たFAXを見ていたら、今回の消費税率アップに伴い豚向け飼料の駆け込み需要が予想されるので注文を早めにと言う案内がありました。実は、ほとんどの養豚農家にとって駆け込み需要は意味が無いものです。そして、案外多くの人(経営者含む)が消費税の根本的な仕組みを把握していないように思います。かく言う私も事業を行うまでは知らなかったのですが・・(笑)

事業者は消費税を納税する義務があります。納税する消費税は売上げにかかる消費税、つまり受け取った消費税から仕入れにかかる消費税(支払った消費税)の差額を納税します。このため、消費税率が上がって支払う消費税が増えた場合、納税額が減る計算となります。

例えば、税別売上げ1億円の会社の場合、消費税率が10%では1000万円の消費税を受け取ります。
この会社が税率8%の時に1000万の車を購入すると80万円の消費税を支払います。この場合、
納税額は1000万円-80万円=920万円となります。
税率10%の時に車購入するとすると、100万円の消費税を支払います。この場合、
納税額は1000万円-100万円=900万円となり、消費税が増えた分納税額が減ることがわかります。
消費税の簡易課税を利用している場合はまた違う計算となりますが、養豚業の場合簡易課税の限度額である売上げ5000万円を超えるケースが多く、また原価率が高いことから簡易課税を利用している人はほとんどいないものと思います
このような仕組みであることから、消費税は最終消費者が負担するものであり、それ故「消費」税という名称になっている訳です。

消費税の仕組み(財務省ホームページより)

高額な車両や重機などは消費税額が大きくなるため、駆け込みが多いものと思われますが、消費税本則の場合はむしろ駆け込み後を狙った方が値引き額が増えてお得かと思います。
事業を始めて十余年経過して税制には詳しくなりましたが、知識を活かして節税をがんばるほど儲かっていないのが残念なところです ^^;

食品ロスは削減できるのか

食品ロス削減法案が成立しました。毎日新聞より
「同法は、食品ロス削減の意識を高め、食品を活用する仕組み作りが狙い。政府には基本方針、自治体には推進計画の策定を求め、ロス削減に取り組む事業者の支援も義務づけた。」

当社は食品リサイクル業を営んでいますが、当社は主に食品工場の製造副産物を取り扱っており、いわゆる食品ロス(可食部位)は業界の中でも比較的取り扱いは少ないです。スーパーやコンビニなどの売れ残り商品などのリサイクルのご依頼もかなりあるのですが、当社の受け入れ能力や品質の安定を考慮し、あまり受け入れをしていません。

しかし、食品工場から廃棄されるものの中には、食べられるような商品も多く含まれており、工場見学にいらっしゃったお客様から「これはなぜ廃棄されるのか」とご質問いただくこともよくあります。

当社で取り扱っている食品廃棄物の廃棄理由は様々ですが、大別すると以下のような理由があります。

1.見た目などの規格外

お菓子類などでは焼きムラ、形状異常などで廃棄されることがよくあります。たとえば、当社ではバームクーヘンを取り扱っていますが、バームクーヘンは製造時に両端が焦げるため切り落とします。焦げが入ると異物混入としてクレームになるため、かなりの量を切り落とすため多量の廃棄品が出ます。

バームクーヘン

2.ライン切り替え時のロス

味の切り替えなどで製造ラインを切り替えたとき、味の混入を避けるためライン清掃を行い廃棄物が出ます。たとえば羊羹は釜で炊きますが、必要製造量に対しロスを考慮し必ず余分に製造する必要があります。

3.ウエイトチェッカーやX線での検品

ほとんどの商品には重量規格があり、製品検査ライン重量測定を行い重量オーバー、重量不足で廃棄されることがあります。特に、包装ゆでうどんなどは均一に充填することが難しく、重量の過不足が出やすい傾向があります。

4.不可食部位

カットフルーツ工場で発生するパイナップルの皮、豆腐工場で発生するおから、ビール工場での麦芽粕などが該当します。安定発生するため当社でも積極的にリサイクルしています。

5.異物混入・製造ミス

製造の際、原料の調合を間違えた、加工方法に不具合があったなどの理由で廃棄するものが発生することはよくあります。また、異物混入が出荷前に発覚し在庫品を含め廃棄する場合もよくあります。

食品リサイクル法での推計では2018年度食品廃棄物全体で2759万トン/年の発生があり、そのうち可食部位は643万トン発生しています。当社の取り扱いしている食品廃棄物は食品ロスに該当しないものが多いですが、不可食部位以外は人間が食べられるものばかりです。食品ロス削減法の趣旨からいえば、消費者などへの啓蒙をはかりこれらの削減をめざすべきかと思われますが、日本人の異常なまでの細かさから削減は簡単ではないと思います。

以前、ゼリー工場から「キウイフルーツの果肉入りゼリーで種がはずれてゼリー部分に入ると異物としてクレームが来るため、検査ラインで検品してはねている」というお話をお伺いしたことがあります。先のバームクーヘンでもわずかな焦げが混入していただけでクレームが入ります。あめ玉も形が悪いとお客様相談室に電話があります。おそらく大多数の人が気にしないものであっても、納品先からのクレームなどを敬遠し事前に廃棄してしまいます。

カップ麺に使用される乾麺であっても重量と形状のチェックを行い、規格に外れたものは廃棄されます。私にはカップ麺の乾麺の形状が悪いとクレームがあることが理解できませんが、実際問題としてカップ麺工場の乾麺廃棄は膨大な量です。

乾麺

異物混入で廃棄されるものも多くありますが、ほとんどの場合食品衛生上混入しても健康被害がないものばかりです。以前、砂糖を数百トン廃棄するという案件がありましたが、これは赤色シリコンパッキンが混入したというもので、万一食べても全く健康には問題ないものです。しかし、「異物が入っているとわかって販売すると会社の姿勢が問われる」という理由で廃棄されることになりました。

個人的には異物混入などの事件が起こると「食の安全」を錦の御旗としてマスコミによる食品工場のバッシングされることが食品ロスの増加につながっているように思います。健康被害があるものの回収は当然ですが、健康被害がないものまで回収を求める今の風潮はおかしいと思います。

たとえば、最近ではこんなニュースが。

J-オイルミルズ/「味の素 から揚げの日の油」40万個自主回収

「一部製品について、包装容器の接着不良により最上部からの油漏れが判明したため、対象製品を自主回収すると発表した。」「同社では、健康危害はないが、消費者が不快な思いをすることないよう、同社では本件を重く受け止め、万全を期すため、回収するとしている。」個人的にはこれで回収する風潮が不快ですw

今回の法律制定を機に過敏な消費者とそれをあおるマスコミの風潮が少しでも改善することを願ってやみません。

豚コレラについて

最近、豚コレラについて聞かれる機会が非常に多いです。いろいろな情報が入る立場なので、整理してみたいと思います。
なお、豚コレラは人間には感染しない病気であり、万一食べても影響はありませんので安心ください。

今回の豚コレラで不思議なのは、感染力が強くないにも関わらず、感染が広がっているという点です。
公表されているレポートに出てきませんが、本巣や渥美半島の農場では感染している豚が導入されているにも関わらず、導入されている豚がいる豚房以外では感染した豚がいませんでした。また、豊田の農場では11月ぐらいに母豚が感染していると推測されています。(抗体の上がり方からの推測)にも関わらず、同じ豚舎から出荷された子豚は1月中旬まで感染していませんでした。つまり、同じ豚舎内で作業者が行き来しているような状況であっても、豚同士が接触をしないような状況では感染が起きにくいということは明確です。
それにもかかわらず、多くの農場に感染が広がっているのは非常に不思議です。当然ながら豚舎の中にイノシシが侵入することは想定されず、また各務原や豊田の農場は付近にイノシシがいる環境ではありません。仮に小動物や鳥で感染するぐらい感染力があるようなら、もし感染した場合は農場内全体に一気に感染が広がるはずで感染豚が農場内に遍在するような現在の状況は説明がつかないことになります。

養豚関係者がワクチン接種を望む大きな理由として、このように感染経路が不明確であり、衛生管理を徹底し飼養衛生管理基準を完全に順守することで100%感染を防ぐことが難しいと感じているからです。現に、数年前流行したPEDという伝染病は衛生管理基準を完全に順守しているはずの農水省直轄の家畜改良センターに侵入しています。病気の感染原因によっては衛生管理基準を完全に順守することでも防げないということの証左です。

もちろん、ワクチン接種には様々なデメリットがありそれを理由に農水省は接種に対し否定的です。
デメリットとしてはおもに
・輸出ができなくなる
・現在阻止できている豚コレラ発生国から輸入が増える恐れがある
といったものです。ワクチンを接種すると、「非清浄国」という扱いになり、清浄国へ輸出ができなくなります。また、非清浄国からの輸入は現在はできませんが、その障壁が無くなってしまいます。
しかし、豚肉の輸出額は10億円程度、頭数で約12000頭分と金額的には少なく、仮に輸出が止まったとしても影響は軽微です。また、現在の輸出は香港などが中心であり、非清浄国となっても輸出は可能です。強いて言えば、清浄国であるアメリカやEU諸国への輸出ができなくなるということがありますが、国内の豚はこれらの国に輸出できる競争力は残念ながらほぼありません。
一方、豚の皮の輸出金額は大きく、かっては120億円程度ありました。
原皮の輸出が減ると影響はありますが、輸出先の多くは豚コレラ非清浄国であり、ワクチン接種しても輸出することは可能です。

他方、非清浄国からの輸入が増える恐れがありますが、非清浄国の多くは口蹄疫の非清浄国でもあります。このため、それらの国からは輸入することはできません。アジアでは唯一フィリピンが清浄国でありますが、フィリピンは豚肉の純輸入国であり、輸出余力は無いものと思われます。
もし輸入を阻止したいのであれば、まずは現時点でアフリカ豚コレラが発生している中国から正規の検疫をへて輸入されている豚肉加工品をストップすべきです。あまり知られていませんが、日本は年間1万トンもの豚肉加工品を中国から輸入しています。

このような理由から、私はワクチン接種による非清浄国化は豚肉、原皮などの輸出、輸入に関する制約はすくないものと思います。
むしろ、ワクチン接種する場合、ワクチンの費用負担や接種の労力のほうが影響が大きいと思います。ただ、生産者のほとんどはそれらのデメリットを踏まえたうえでワクチン接種を望んでいます。

このような状況を踏まえ、農水省は壊れたテープレコーダーのように「飼養衛生管理基準の徹底」を謳うだけではなく
1.ワクチン接種に頼らない感染予防が本当にできるのか(感染経路の明確化ができるのか)
2.仮にワクチン接種した場合、輸出入に対しどういった影響があるのかのシミュレーション
を行うべきです。経済動物である以上、リスクベネフィットで判断すべきであるのに、その提示がなされていないことに疑問を感じます。

多くの生産者が不安な心持で過ごす日々が続いています。また、飼料の流通や人の交流など、多岐にわたる影響が発生しています。政府は多くの声に真摯に向き合ってほしいと切に願います。

家畜福祉

年末年始で慌ただしく、すっかり更新が滞ってしましました。
事業を開始したときはそうでもなかったのですが、2つの会社を経営しどちらも12月末決算のため1月は非常に慌ただしい日々を過ごしています。

養豚の事業も豚を実際に飼い始めて1年が経過しました。まだまだ改善するところは多々あり問題山積ですが1年たつといろいろと見えてくるものもあります。

素人ばかりで豚を飼っているのでトラブルも多くありました。その一つに豚のしっぽかじりです。豚は何らかの理由でストレスを感じると、ほかの豚をいじめたりします。いじめの行動の一つがしっぽかじりで、同じ豚房にいる豚のしっぽをかじってしまうというものです。当然、傷ができますので感染症などの原因にもなりますし、かじられた方はストレスになり成長に影響が出たりします。

豚を飼って強く思うのは、豚にいかにストレスを感じさせないかが非常に重要だという点です。暑さ、寒さ、他の豚とのけんか、飼料の嗜好性等々、ストレスを感じると豚の成長に大きな影響があります。養豚生産者はみな、いかにストレスを与えないかに腐心しています。

これは養豚だけではなく、牛でも鶏でも同様です。牛もストレスを感じると乳量が減りますし、鶏も卵を産まなくなってしまいます。快適な環境が畜産においては非常に重要です。

オリンピックに向けて、ヨーロッパなどで一般化しつつある家畜福祉(アニマルウェルフェア)の考え方が日本でも徐々に広まりつつあります。
世間ではよく「大規模な畜産農家は効率を重視するあまり、家畜福祉に反した飼養を行っている」と思われているようですが、実際のところ家畜にストレスを与えるような飼養管理はむしろ生産性が低下するわけであり、効率を重視する大規模生産者こそそういったストレスに対しては敏感であったりします。
家畜がストレスを感じているかは物言わないため明らかではありませんが、ストール飼育だったりウインドレスだったりがもしストレスフルならば生産者が採用するはずがありません。家畜福祉に取り組む動きを否定するわけではありませんが、現状でも規模にかかわらず家畜福祉には常に配慮されているという実態を理解していただけたらと思います。経済動物ではありますが、家畜がよりよい環境で過ごしてほしいと思うのはすべての畜産農家の共通した思いではないかと思います。

エサをたくさん食べ、いびきをかいて寝ている豚たちを見るとなんとなくうれしくなりますが、それは生産者ならばだれしも感じるものである感情です。ゆったり育ち、結果としておいしい畜産物になることがなによりも願いです。

酵母と酵素

師走になり忙しい日々が続いています。忘年会も多く、酒を飲む機会が増えており肝臓に負担がかかる日々です。
ここ数年、飲む機会が多いのですっかり肝臓が鍛えられ、以前に比べ格段に酒に強くなった気がします。

当社は様々なお取引先がありますが、酒好きだからというわけではなく最近は醸造関係のお取引先が増えてきました。日本酒、ビール、ウィスキー、焼酎、みりん、醤油、味噌、etc.

発酵に興味がある自分としてはお客様訪問してもいろいろと現場を見せていただくのが非常に面白いです。
また、おいしいお酒にも巡り合える機会も増えたのもポイント高いです。酒蔵やウイスキー工房を営業しては酒を買う・・という本末転倒な機会も増えているのはここだけの話です(笑)

そんな中で今年から取り組んで切るのはビール酵母の飼料化です。ビール酵母自体は昔から食品や飼料として利用されており、一般的なものです。しかし、通常は乾燥させて乾燥ビール酵母として流通されており乾燥コストが高いため、かなり高価な原料でありどちらかというとサプリメント的な使用方法が主体でした。
現在、当社が取り組んでいるのはビール酵母を乾燥せず単に濃縮させ、そのまま豚のリキッドフィードのたんぱく源として利用するという取り組みです。
現在、飼料のタンパク源としては大豆粕の利用が主体です。しかし、大豆粕は近年の畜産需要の高まりにより単価が高止まりしています。これをビール酵母代替することで、コストの低減をめざしています。
愛知県農業総合試験場で試験を実施したところ、大豆粕以上の成績をあげることができ、自信をもって供給を行っています。現在は当社の豚もこのビール酵母をタンパク源としており、良い結果を残すことができています。

ところで、酵母という言葉は一般的ですが、じつはあまりよく理解されていないように思います。酵母とは単細胞の真菌(核を持つ)の総称であり、細菌とは異なります。酸素がある状態では普通に呼吸を行いますが、酸素が少ないと糖を分解し二酸化炭素とアルコールを生成するという呼吸を行い、これが酒やパンを造る際の重要な働きとなっています。飼料に使う際も菌体なのでタンパク質含量が高く、またアミノ酸のバランスが良いという特徴があります。

また、酵素と酵母の混同もよく見受けられますが、酵母と酵素は全く別のものです。酵母は生物ですが、酵素は体内でも分泌されているタンパク質の一種であり、触媒作用を持つものを指します。代表的なものにアミラーゼがありますが、これは唾液にも含まれておりデンプンを糖に分解する作用があります。カビ(これも真菌です)が多量に体外に分泌する性質があり、この性質を利用して麹などが作られています。麹はコウジカビであり、アミラーゼやプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を分泌します。この作用により、デンプンを糖化し、酒を造ることができるわけです。

流行っている酵素ジュースは糖が酵母発酵しているのであり、正確には「酵母ジュース」と言うべきものかと思います。むしろ、酵素の作用で糖ができている甘酒のほうが酵素ジュースとよぶのにふさわしいものです。個人的にはそのうちこの酵素ジュースのアルコール発酵を税務署が問題にするのではないかと危惧するところですw