豊川にイオンモールができる

事業を始めて12年、豊川に住んで7年になりました。愛知県は大きく尾張、知多、西三河、東三河にわかれ、豊川市は東三河に属します。東三河は名古屋から遠いこともあり、愛知県内でも独自の文化経済圏を築いています。東三河には事業を始めるまで縁がなかったのですが、住めば都、東三河弁にもすっかり馴染んできた気がします。余談ですが、全国的には愛知県というと名古屋弁というイメージがありますが旧国が異なる三河は言葉がかなり違い、また東三河は西三河とも若干言葉が異なりどちらかと言うと浜松あたりの遠州弁に近いです。(「だがや」とか「どえりゃー」という言葉はほぼ使いません)

豊川市は人口18万人、愛知県東部に位置し、戦前の海軍工廠の流れをくんで工業生産が盛んな地域です。もともと、日本車輌、ミノルタ(現コニカミノルタ)などの工場があり、また近年は自動車関連の工場が増え、その下請けの工場も多く存在しています。これらの工場は豊川市内全域にあり、いくつかの工場団地も存在します。こういった小さな工場や貸し工場がたくさんあるのが豊川市の特徴です。
当社が東三河に居を構えることになったのも、小さな貸し工場があったからです。

しかし、近年は工業生産にも陰りが見えているように思われます。コニカミノルタでは以前はコピー機などが生産されていましたが、近年は海外への生産移管が進んでいます。日立のコンピュータ製造工場もありましたが、事業の撤退に伴い工場も閉鎖されてしまいました。スズキ自動車は豊川工場があり、二輪車の生産を行っていましたがこちらも閉鎖が決まっています。スズキの工場は当社のすぐ近傍にあるのですが、今は出入りするトラックも少なく閑散とした様子です。

そんなスズキの工場の跡地にイオンモールができるという話が持ち上がっています。新聞報道などでは、すでに既成事実として語られています。

しかし、実はイオン建設予定地は本当はショッピングモールを作ることができない場所です。用途地域が工業専用地域であるためです。

用途地域というのは、「都市計画法の地域地区のひとつで、用途の混在を防ぐことを目的としている。住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、第一種低層住居専用地域など12種類がある。(Wikipediaより)」というもので、不動産広告などにも記載されています。工業専用地域はその名前の通り、基本的に工場以外の建設ができないことになっています。しかし、用途地域は市町村によって変更が可能であり、今回はイオンモールができるようにするために豊川市が工業地域の指定を外す処置をすることを想定している模様です。

イオンモールができると言う話が広まっていたのは、スズキの撤退が報道されるようになった頃です。その頃からスズキ自動車は工場跡地をイオンに売却することを計画していたようです。豊川市はスズキ自動車から打診を受けていた模様ですが、どのような交渉がおこなわれいるかは開示されていません。私は今年の正月の賀詞交換会で豊川市長にどのような交渉過程状況なのか聞いてみたのですが、「守秘義務契約があるので」と説明はありませんでした。

おそらく、スズキ自動車としては工場用地として販売するより土地価格が高いショッピングモールへの売却を希望しているのではないかと推測され、それは民間企業としては当然の行為です。豊川市はスズキ自動車の意向に沿って用途地域の変更を行なう方針です。(先だっての賀詞交換会で市長は「スズキさんがイオンに売りたいと言っているから」とおっしゃってました。)
しかしながら、行政当局としては地域にとって最善の土地利用を考えることが責務です。今回の土地が、工場用地として売却される場合と、ショッピングモールに使われる場合とどちらが地域にとって良いかを考え、それに基づき対応することが必要です。

豊川市は用途地域という強力な権限があるわけですから、「ここは工業専用地域なので、ショッピングモール建設はできない」とスズキ自動車に通告することもできる訳です。

私も試算を行ったわけではありませんが、一般論としては工場は多くの付加価値をうみ、それが地域経済に環流することで地域の発展を生みます。ショッピングモールの生み出す付加価値額は低く、しかもその付加価値の多くはモール運営者に渡り地域に落ちるお金はごく一部に過ぎません。

私が今回の一連の流れで疑問に思うのは

・本来、工場である用地をショッピングモール建設ができるように用途地域変更を行う経済効果を比較検討していないこと

・スズキ自動車との交渉プロセスが開示されていないこと(市議にも不開示)。秘密保持契約の必要性、内容が開示されていないこと。(秘密保持契約は不要ではないか)

・撤退する工場に対し、配慮(いわゆる忖度)する理由が明確でないこと

といった点です。もし、第三者の検証により工場ができるよりショッピングモールができるほうが経済効果が高いなら現在の方向性には賛同しますが、そう言った検証が行われず、行政内部で秘密裏に決定がされていくことに非常に憤りを感じます。また、交渉がうまい民間企業に対し、経験がすくない行政当局が果たしてまともな交渉ができているのか、不安があります。

なお、実際、現在標高が高い地域の工場団地は人気であり、豊川市でも先だって販売した工業団地は半年で完売しました。私の知り合いの工場経営者でも工場用地を探している人が何人もいます。また、今回のスズキ豊川工場は交通の便が非常に良く、工場用地として販売してもすぐうれることは間違いありません。

我々民間事業者は、税金も補助金も常にエビデンスを求められています。行政の意思決定においても、「なぜこのような政策をおこなっているのか」を説明できることが必要であり、それができないの市民、国民に対する背任行為であることを自覚して欲しいと強く願う次第です。

生ハムとうまみ調味料

かなり前になりますが、秋田で行われた国産生ハムフェスティバルに参加してきました。

生ハムフェスティバル

実は私はの生ハム好きが高じて三河トコ豚極め隊として生ハム工房を立ち上げることを計画しており、以前より豊根村の廃校で生ハムの試作を行っています。今回、生ハムサミットでいろいろ情報交換できたのは非常に参考になりました。

豊根生ハム

私は酒好きで、生ハム、からすみ、ハードチーズ、塩辛、鮒寿司などなどを嗜好しています。共通するのは旨みを多く含まれていると言うことです。こういう、熟成して作られた食品の旨みは何にも代えがたいものがあり、最高に酒に合います(笑)

では、なぜ熟成をすると旨みが増えるのでしょうか。もともと、これらの食品にはタンパク質が多く含まれています。タンパク質はアミノ酸が多数結合されてできています。

タンパク質の構造

こちらの図にある小さな丸1つ1つがアミノ酸です。タンパク質はおよそ20種類のアミノ酸から構成されています。タンパク質そのものは分子構造が大きく、水に溶けませんので基本的に旨みがあるわけではありません。食品を熟成させる過程で、タンパク質が分解してアミノ酸が生成することで旨みがでてきます。熟成といってもその作用機構はそれぞれことなっており、例えば生ハムの場合、肉にもともと含まれているタンパク質分解酵素が働くことで、タンパク質が分解されていきます。また、麹を使った食品などでは、コウジカビが分泌するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が作用することでタンパク質が分解されアミノ酸が生成することで、うまみが増えていきます。

なお、豚肉(生肉)のアミノ酸分析を行うと、アミノ酸含量は低い水準で、味覚閾値(感じることができる濃度)より低いことがほとんどです。基本的に、生肉はアミノ酸の味は無く、脂や香りを旨みとして感じています。

市販の「生ハム」にはラックスハムに分類されるものが多くあります。これは、長期熟成させず短い期間塩蔵したものを調味料で味付けしたものです。熟成期間が短いため、アミノ酸があまり生成されず旨みがたりないため、グルタミン酸ナトリウムなどのうまみ調味料を使用していることがほとんどです。

グルタミン酸ナトリウムなどのうまみ調味料、いわゆる化学調味料を健康に影響があるなどの理由で敬遠されることあります。しかし、グルタミン酸ナトリウムは昆布のうまみ成分であり、一般的な濃度でしたら健康に影響はありません。もし、グルタミン酸ナトリウムで健康に影響が出るなら、昆布だしたっぷりの懐石料理も食べられないことになってしまいます。

ただ、自然の熟成を行うと、単純な一種類のアミノ酸が生成するわけでは無く、タンパク質を構成するさまざまなアミノ酸が生成し、またアミノ酸がいくつか結合したペプチドも生成します。また、熟成の過程で脂肪の分解もおき、それがフレーバー生成にもつながります。多種多様なうまみ、香りがあることが味の奥深さにつながります。

つまり、うまみ調味料を使うと、危険なものが入るのでは無く、うまみを形成するものが足りないので味が単調になってしまうという点が問題であると言うことです。

残念ながら、効率を重視する現在の食品産業ではうまみ調味料を多用する傾向があります。たとえば、市販の塩辛はほとんどがアミノ酸が添加されていますし、サラミなどもうまみ調味料添加されているものが大多数です。しかし、生ハムや塩辛などはきちんと熟成を行うことで、うまみ調味料を使用するよりもうまみを引き出すことができます。
※そういった実験を行った例がデイリーポータルZに載っています。

 

個人的にはこういった知見が広まることで、もっと美味しい生ハム、塩辛が広まることを期待しています。スーパーの塩辛の原料表示に「アミノ酸」とあるのを見てそっと棚に戻すことが減り、美味しいつまみで酒が飲める機会が増えることを心より願っています。

事業戦略の定義

今週は木曜日、金曜日、土曜日と展示会出展していました。
当社は展示会にはかなり良く出るので慣れたものですが、その間会社にいなくて業務が滞るのはいつまで経っても変わりません。今回は少しですが成果が上がりそうなのが救いです。

と言うわけで展示会も終了したので、今は一人音楽を聴きながら晩酌をしつつ来期の事業計画などについて思索しています。当社は12月末決算なので、残すところあと4半期だけになりました。来年の計画を固める時期に来ています。

 

スコッチ

私は中小企業家同友会という経営の勉強会に入っており、そこで経営指針という名の事業計画の勉強をしています。事業計画にもいろいろなフォーマットがありますが、中小企業家同友会では「経営理念」「ビジョン」「方針(戦略)」「計画(戦術)」という様式で経営指針と呼んでいます。

経営者たるもの、もちろん数字や日々の業務管理を疎かにすることはできませんが、やはり根幹となるのは経営理念であることは間違いありません。中小企業家同友会では経営理念について非常に重きを置いていますが、一方、ビジョンや戦略に関しての取組には少し弱く、中小企業家同友会の会員でも戦略をきちんと確立できていない企業がままあるように思います。

よくあるのが、「これが戦略だ」と言っているのがただの戦術であるケース。では戦略とはなにかと言うと、基本的には事業ドメイン(領域)をどうするかという点であると思います。激変する時代において、事業ドメインの定義は会社の存亡にかかわるものであり、中小企業に限らず、コダックや日本の家電メーカーなども事業ドメインの方向性が誤っていたことが凋落の原因となった訳です。その根底となるのは自社分析や情勢分析の甘さ、リソースの配分の誤り、ビジョンや理念の欠落などがあるのではないでしょうか。もっとも、中小企業の場合、儲かりそうだからなどの安易な発想で新規事業始めたりするケースも多くありますが(^^)

中小企業家同友会での学びを通じて、当社も新たな事業分野に進出しようとしています。自社分析を行い勝算ありとみて戦線拡大していますが、脆弱な企業基盤の元での戦線拡大は、第二次世界大戦における日本軍における兵站線のごとくリスクを伴うものです。
社内組織をどう確立していくかが今後の勝負の分かれ目になるかと思います。皆様のご指導ご鞭撻のほどお願いします。

抗生物質の利用

娘(3歳)が風邪を引いたようで、39度ぐらい熱が出ています。普段は元気いっぱいで大変な騒ぎですが、今日は大人しく寝ているのでブログなど書いています。
明日は日曜日で休日診療に行くか様子を見ているところです。

医者に行くと薬の処方があるわけですが、熱が出ているだけでも割と抗生物質が出されることが多いように思います。
畜産関連の仕事をしていると抗生物質の話題も良く出ますが、実は畜産では抗生物質の使用はかなり厳しく制限されています。


Wikipediaより By Yikrazuul – 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン

先日も抗生物質の一部が使用禁止になるというニュースがありました。
薬剤耐性で2つの飼料添加物取り消しへ 農林水産省

まず、抗生物質とはどんなものか改めて確認してみます。
抗生物質は細菌やマイコプラズマなど微生物の増殖や活動を抑制する作用がある物質のことを総称しています。一番最初に発見されたのがペニシリンで、青カビから抽出されています。他の抗生物質もカビなどが由来のものが多いです。抗生物質は微生物だけに作用しますので、基本的には(アレルギー反応などはありますが)哺乳動物には作用しないものを言い、またウイルスなどにも効果はありません。
日本では食品衛生法において「食品は、抗生物質を含有してはならない。」という規定がありますので、と畜場や牛乳工場では検査が行われ、万一検出された場合は出荷が停止されます。しかし、誤解されていることが多いですが、抗生物質自体は人間用、家畜用でも同じようなものが使用されていますので、抗生物質が残留することで健康被害が起きるというわけではありません。抗生物質が危険なわけではなく、抗生物質の多用により抗生物質が効かない耐性菌が出現することが懸念されるためです。実際の現場では、抗生物質が残留しないように出荷時から一定期間は抗生物質は使用できませんし、採卵鶏や牛乳のように毎日出荷するものの場合は出荷中は抗生物質は使用されません。
上記の禁止になった抗生物質も、耐性菌が発見されたため禁止に至ることになり、それ自体の有害性があったわけではありません。

畜産では抗生物質は大きく分けて「治療」「増体」の2種類の目的で使用されます。治療用は人間同様に疾病にかかった豚に経口投与or注射するやりかたで使用されています。一方、増体目的というのは、飼料に抗生物質を少量だけ添加することで成長がよくなることが知られており、より効率的に家畜生産する目的で使用されます。論文のデータなどを見ると増体は確実に良くなる結果が得られています。このメカニズムとしては、抗生物質を添加することで細菌感染が減ることで、免疫ができなくなり、その分のエネルギーロスがなくなるため成長が良くなると一般的には言われています。人間も動物も体内や皮膚に多くの常在菌を養っています。これらの常在菌により病気にならないのは免疫システムがあるためです。(ので、HIVなどで免疫不全になると感染してしまいます)この免疫生成にはかなりのエネルギーを消費しており、この分が減るとエネルギー効率が良くなる・・という仕組みです。
ただ、個人的には増体目的の抗生物質添加にはすこし疑問があります。確か実験結果を見ると顕著な効果があるのですが、実験を行っている多くが試験農場などでもともと細菌感染の機会が少ない状況にあり、免疫抑制の効果が発現しやすい可能性があります。また、菌叢を減らすと言うことは特定の菌が増殖しやすくなる可能性も否定できないのでは無いかと思います。なにより、微量に添加するというのは耐性菌を生み出しやすい条件であります。

私の父は数年前に風邪をこじらせて敗血症になり、抗生物質の多量投与により危機を脱して退院することができました。私自身もピロリ菌除菌や副鼻腔炎治療などで抗生物質にはいろいろと恩恵を受けています。
その経験から、抗生物質は切り札として効果を発揮することが大事ではないかと思います。なので、ウイルス性のものが多い風邪での安易な処方や、増体目的の飼料添加など避けられるものは避けた方が良いと思っています。

重ねて強調しますが、抗生物質自体は安全なものであり使用をむやみに忌避する必要は無いと思います。なので抗生物質不使用で安心という売り方には賛同しかねますが、一方で無用な使用(人間に対しても家畜に対しても)は公衆衛生に影響を与える可能性があるということを留意すべきかと思います。
畜産物の抗生物質を敬遠している消費者が、風邪ひいたときに医者で「抗生物質は出ないのか」と言ったりするのは矛盾しています。いずれにせよ、人間も家畜もあまり薬に依存しすぎないようにすべきかと思います。と言いつつ自分は抗アレルギー剤を365日服用していたりするのですが・・w。

農業政策のあり方について考える

忙しい日々を過ごしているうちにすっかり7月になりました。空梅雨気味で暑い日々が続きすでに夏ばて気味です。
そんな中、当社も半期が過ぎ、来期に向けて今後の事業の方向性を検討しています。
事業のあり方を考える上で外部環境の分析は非常に重要です。めまぐるしく情勢が変わる昨今ですが、先日より報道されている日欧のEPA合意は様々な影響があるのではないかと予想しています。

報道では今回の合意では、ソフトチーズの関税撤廃が含まれており、報道でも大きく取り上げられていました。現在約30%の関税が課されていますので、撤廃によりそれなり価格が低下することが予想されます。しかし、関税がある現時点でもヨーロッパのチーズは国産ナチュラルチーズより安価に販売されていることがほとんどです。ここに農業政策の基本的なスタンスの違いが現れています。
日本の低成長・デフレが20年以上続いた結果、ヨーロッパの物価・賃金水準は日本よりはるかに高くなっています。(最低賃金1,200円ぐらが多いようです)その上、はるばるヨーロッパから運賃をかけて日本に持ってきてなおチーズが安いのは、ヨーロッパの乳価が日本より圧倒的に安いのが大きな理由です。現在の乳価はおよそ40円/kgで、おおむね日本の半額以下です。
ヨーロッパにおける農業保護政策は、農産物価格は安く維持し、農業所得を補填することで農家の生計を維持するというスタイルになっています。生産余剰分は輸出により調整するという方法をとっています。それゆえ輸出先からダンピング批判を受けたりします。
他方、日本の農業政策、特に米と牛乳は、国内で生産調整をして余剰が出ないようにし価格を維持し、不足分は国家管理貿易により輸入するという方法をとっています。

現在の日本の手法は以下のような問題があると私は思います。
1.生産調整がうまくいかず、オーバーシュートしやすい。農産物はすぐに生産の調整がしにくいため、余剰になって生産調整すると不足すると言ったことを繰り返しがちになる。輸入も国家貿易では柔軟に対応出来ない場合がある。
たとえば、牛乳は10年ほど前には生産過剰により廃棄されていましたが、現在は生産拡大、増産が謳われています。米も同様の事態が発生しています。
国内価格を高くする政策のため、輸出により在庫調整する手法が取りにくいのも問題です。

2.食料品価格を高く維持することは、エンゲル係数の高い低所得者層に対して負担が大きくなる。また、消費減退や、代替需要増加の原因になる。
大手メーカーの菓子、パンなどの原料表記を見ると、おどろくほどバターが少なく加工油脂、ファットスプレッドなどが幅をきかせています。バターではなくこれらの代替油脂を使用する大きな理由は価格にあります。

3.世界のグローバル化、複雑化が進んでいく中、品目ごとの関税での保護が難しくなっている。
たとえば、今回のEPAではソフトチーズの関税が撤廃されますが、冷凍ピザだと元から20%程度の関税率です。豚肉も関税撤廃が予定されていますが、ソーセージの関税は10%しかありません。加工製品での輸入は今後も増えていくことが予想されます。

他方、ヨーロッパ他の所得補償制度にも問題があります。
1.財政負担が大きくなる。実質的には、今まで消費者が商品代金として負担していたものを、税金を一旦払いそれを生産者に渡すことになるので負担額が増えるわけでは無いが、感覚的な負担は増えるため理解を進める必要がある。

2.所得補償のやり方によっては、モラルハザードがおこりがち。
日本の飼料米政策では飼料米を作りさえすればお金がもらえる制度になっていたため、作付けだけして生産をきちんと行わない例が問題となりました。耕地面積に応じた単純配分などではこういう問題が起こります。生産量、生産額に応じた配分にする必要があります。

上記のような問題はありますが、私はグローバル化が進む中では関税による保護から農産物価格を抑えることで競争力を高め、輸出入を自由化することで需給バランスを取る方が合理性が高いと思います。

私もEUの農業補助政策については勉強をしているところなので、理解が不足している点も多くあるかと思います。ただ、根本的な農業政策が異なっている背景下で自由化を推進することは影響が大きいのも確かであり、設備や施設の補助をすれば競争力が増えるというものでもありません。価格誘導と生産調整をどのようにしていくか、根本的なところから議論、検討することが望まれます。

ブランドの定義

相変わらず忙しい日々が続いています。最近補助金関連業務が多く、年度末から年度初めとずっと書類作成にいそしんでましたがようやく書類作成も一段落してホッとしています。ここ数年春が忙しく、慌ただしくしていていつの間にか春が終わっているような気がします。

食べることに命をかけた人生を送っているので、忙しくても旬の野菜を食べるのは忘れないようにしています。春だとタケノコとエンドウはマストアイテムです。アスパラガスも好物で、北海道や地元に知り合いのアスパラ農家がいて、美味しいアスパラを食べる機会が増えました。

先日、近所のスーパーで地元JAのラベルがついたアスパラを購入したのですが、竹のような繊維で旨みも甘みも少なく、びっくりするほど品質が悪い代物でした。アスパラガスは鮮度による味の差が大きい農作物だと思いますが、地元のもので低品質というのはいかがなものかと思った次第です。
と同時に、産地ブランドの難しさを感じました。農協単位で集荷、出荷をすると生産者、栽培方法、土壌が異なった商品が同一ブランドとして扱われてしまいます。例えば、豊川市内も砂壌土、黒ボク土、赤黄色土とさまざまな土壌があります。いくら営農指導していると言っても環境が異なれば品質も異なってきてしまいます。

同様のことは、畜産物のブランド化でも言えるかと思います。牛肉は地域ブランド化していることが多いですが、例えば和牛の場合血統や肥育方法が統一されているブランドはそれほど多くありません。和牛は血統による味の差が大きいにもかかわらず、育てた地域でひとくくりのブランド化することには個人的には無理があると思います。愛知県の家畜市場で上市された仔牛が、肥育された地域によって最終的な肉の値段が大きく変わってくるのは不思議なものです。

豚肉のブランドも、品種や飼料まで指定されているものもありますが、単に飼料添加剤を入れただけで銘柄として売り出している例も多くあります。豚肉の場合、飼料による味の差が非常に出ますので、せめて飼料ぐらいは統一すべきでないかと思います。豚肉の場合は農家単位でブランド化していることも多くありますが、品質の画一性という意味では農家ブランドのほうが安定する傾向があると思います。愛知県の農協のブランド豚は品種、飼料の細かい指定がありますが、ブランドで売り出す以上その程度のルール制定はあってしかるべきと思います。
他方、当方が取り扱いしているようなエコフィードを使用すると品質にむらができやすい傾向にあります。ただ、成分分析をしっかりとして配合設計を行うことで、そのリスクを低減することができます。

結局のところ、ブランド化する以上、生産方法や品種、血統を統一し、品質の基準を設け合致するものをブランド名をつけて販売すべきというしごく常識的な結論に至るかと思います。一消費者としては外れなく美味しいアスパラをいつも食べられることを切に希望します(笑)

アスパラ

雇用環境の変化について

早いものでゴールデンも終わってすっかり春も終わりに近づいてきました。当社は祝日は出勤なので、連休も関係なかったのですが、慌ただしい日々が続いています。このまま行くとあっという間に年末になりそうな予感です。
忙しい理由の一つとして、採用活動を行っているからというのもあります。業務の拡大と将来を担う会社の組織体制の構築のため、昨年に引き続き新卒採用活動を実施しています。

採用活動を行っていると、今は非常に売り手市場になっていることを改めて実感します。しかし、それは景気が良くなっているわけでは無く、少子化が急激に進んでいるという要因が大きいです。
私は昭和48年生まれで第二次ベビーブームのピークの世代ですが、48年生まれはおおよそ200万人ぐらいです。ところが現在の21歳は120万人ぐらいしかいません。団塊の世代では200万人以上で、それらの世代がどんどん退職する時代となってくれば当然のごとく人手不足になります。
当社ではアルバイトの方は全員60歳以上ですが、アルバイト求人をしていても感じるのが定年退職する年齢がどんどん高くなっているということです。その理由として若者の採用ができないことも大きな要因かと思います。
政府の見解としては「景気回復にともない失業率の低下が実現した」といった脳天気な発表が見られますが、労働人口の減少は生産にも影を落としつつありますし、消費の減退や社会保障制度の崩壊にもつながり国家の存亡にかかわる大問題であり楽観視できるものではありません。

他方、海外の労働力を期待する意見もみかけますが、個人的には外国人労働者に対して懐疑的です。一昨年中国に行って実感したのは、海外の所得水準の向上です。中国の沿岸部では工場労働者でも月給10万円近くあり、日本での研修生としての単純労働では見合わなくなってきています。オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどでは日本の1.5倍~2倍の給与水準であり、もはや日本で働くことの経済的なメリットが見いだせなくなってきています。日本の一人あたりのGDPは世界20位であり、中進国に近い水準まで低下してきています。アジア各国の少子化も進んでいることから、諸外国との人材確保競争になれば勝ち目は少ないでしょう。
そもそも、世界的に移民に関して軋轢が起きているのは、移民を単純労働者として安価な労働力としての受入を行うからであり、国家の発展を考えればむしろ所得水準の高い高度人材に対しての門戸を開くべきかと思います。私案ですが、外国人労働者は日本人の給与水準や最低賃金より高くする代わりに一切の制限を無くするといった施策がとられてもよいのではと思います。

と言いつつ、当社は中小零細であり多くの人数を採用するわけではありません。当社の存在意義と魅力を高め、収益力を上げることで良い人材に来て頂くことは決してできないことではありません。選ばれるよい会社をめざしてがんばりたいと思います。

ちなみに求人の募集要項はこちら↓へ
http://www.jobway.jp/co/1000313585/index.html

食糧を巡る世界情勢

年度末なのに出張続きで、仕事がだいぶたまっています。今日は畜産学会で神戸出張、翌日の予定の関係で関東に移動しています。相変わらず慌ただしい日々を送っています。

出張をしていると、最近ホテル宿泊客は本当に外国人が増えたなぁと思います。昨日は神戸の三宮で夕食を食べたのですが、外国人目当てなのか、KOBE BEEFの看板を掲げた店が目につきました。

先日、こんなニュースがありました。

中国、豪州産牛肉の輸入制限を撤廃=李首相(ロイター)

現在、牛肉の相場が高値安定しています。その理由の一つに豪州産など海外の市場での調達が難しくなってきていることがあります。
豪州の輸出動向

もともと中国や東南アジア諸国への輸出が増え、そのあおりで日本向けの輸出量が減ってきていました。そんな中、中国が制限を撤廃することでさらに日本向けの輸出が減ってしまうとますます日本は買い負けをすることが予想されます。その一方で、和牛の輸出量は増えており、需給バランスがタイトになっています。

一方、豚肉は国内での生産量減少、牛肉、鶏肉の高騰などの原因によりこちらも高値安定しています。

牛乳でも同様の傾向があり、国際乳価が上昇をして、脱脂粉乳などの乳製品国際価格も上昇基調にあります。

このような畜産物価格の高騰により、中国などの諸外国では畜産の生産量が増加傾向にあります。その結果、飼料の需給もタイトになりつつあり、穀物や魚粉の相場もやはり高値安定の傾向が続いています。

他方、日本の一人あたりGDPは下がり続けており、かってのようにお金にものを言わせて食糧を買い集めることが難しい情勢にあります。お金にものを言わせて世界中から食糧を調達することで成り立ってきた日本社会の構造が立ちゆかなくなるような時期が早晩訪れるのではないでしょうか。

会社を営んでいて最近とくに意識しているのが事業の存在意義です。存在意義が無ければ、事業を継続していくことが困難となります。
当社は食品のリサイクルを行っていますが、このような社会情勢のなか、国内で食糧を生産することに貢献することで当社の存在意義を発揮していくことができるものと考えています。社会と時代の要請に常に応えられる会社で有り続けていたいと思っています。

 

ワクチンと統計処理

ついこの間、年が明けたと思ったのにもう2月の半ば。忙しくしていると、日々過ぎるのが非常に早いです。
例年、冬場は風邪を引いていることが多いのですが、幸い今年に入ってからは元気に仕事に追われています。我が家の2歳児の娘は丈夫な方のようで、あまり保育園休むこともないのには助かっています。
今年はインフルエンザが流行っており、私の周りでもバタバタと感染している状況で保育園でも大流行している模様です。私は今のところ感染を免れていますが、万一罹患したら仕事に大穴が空くのでびくびくしています。
仕事に支障が出る感染のリスクを低減すべく、自分はインフルエンザワクチンを接種しています。否定的な意見の人も多いインフルエンザワクチンですが、個人的には接種する意義があると思っています。
ワクチンに対し、批判的な意見が多いのにはワクチンを接種して効果があったとしてもそれを実感することができないこと、ワクチンの種類によっては感染を100%抑えることができないことが大きな要因だと思います。効果は実感できず、(仮に)副作用があったらそれは実感できる訳です。
ワクチンのような予防医学は、群としての統計処理を行いその効果がはじめてわかるものです。(対症療法も統計処理は必要ですが)つまり、ワクチンを接種しているグループ、していないグループでどれぐらい差があったかで判断すべきです。よく「自分はワクチン打っていなくてもインフルエンザになったことが無い」と言う人がいますが、ガンにせよワクチンにせよ個々のサンプルの効果の有無は意味がありません。
私の知り合いで、車ごと海に落ちて一命を取り留めた人がいます。その人は「車が海に落ちたとき、シートベルトしていなかったから助かった。だからシートベルトしないんだ」と言って取り締まりの警察に強弁したそうです ^^;
もちろん、シートベルトをすることで増えるリスクもあります。ただ、一般的にはシートベルトをしていた方がリスク低減されるためシートベルトが推奨されているわけです。
畜産関係の仕事をしていると、ワクチンの話題にふれることがよくあります。畜種問わずワクチンのプログラム(ワクチネーション)をどうするかの判断が重要です。ワクチン接種はコストも手間もかかります。経済動物である畜産は、コストと利益とのバランスを見ながら接種を決めることになります。たとえ疾病を抑えることができても、それにより得られる利益よりコストが上回ってしまえば接種する意味がありません。人間同様に、打った群と打たない群を比較し、判断をすることになります。従って、ワクチンを全て接種するわけではなく、個々の農場で経営判断の上、接種しないケースも多くあります。
畜産でのワクチネーションやワクチンの効果を見ていると、仕事を休むことができない私は若干でもリスク低減できるのでしたらインフルエンザワクチンを接種した方がいい・・という判断に至った訳です。
世の中の事象には白黒はっきりつけられないものも多くあります。そう言ったものを単純に白だ黒だと決めつけるような論調は疑問を感じますし、そう言った判断は統計学的な理解に基づいての判断になっていないケースが多いことは留意すべきかと思います。統計学は自然事象を理解するにあたって非常に重要だと学生時代に単位を落とした自分としては反省をする次第です(笑)

 

農場要求率と養豚経営

年の瀬が迫ってきて、慌ただしい日々を送っています。日頃からバタバタしているので普段とあまり変わらないという話もありますが(^^)

おかげで学会誌とか業界紙を読む時間が無く、出張中に飛行機やホテルの中で読む羽目になってます。ただ、勉強を継続することは当社の強みにつながっていると思っているので、そこだけは怠らないように努力しています。特に、畜産に関してはまだまだ勉強をすることが多いので、力を入れています。

出張先のホテルで業界紙を勉強
出張先のホテルにて

畜産の勉強をすると、畜産「経営」というのは非常に面白いと思います。耕種農家以上にいろいろな要因があるので、分析をすると様々なことが見えてきます。当然ながら畜種によって全く経営スタイルが異なっており、豚、牛、鶏で分析ポイントが異なるだけではなく、同じ養豚でも実はかなり経営の手法に差異があります。

豚の場合、繁殖、子豚導入による肥育、一貫経営による違いがあります。(日本ではほとんどが一貫経営ですが)一貫経営の中でも、母豚を購入しているのか、自家育成しているのか、種付けをする精液を購入するのか自家採種するのかなどの差により費目ごとのウエイトが変わってきます。経営規模、経営方針によってどこまでアウトソーシングするのかが異なり、それが指標の差となってきます。

しかし、いろいろな経営スタイルがある中、最終的な経営に影響を与えるのは農場要求率という数字です。この数字によって経営は大きく左右されます。

農場要求率というのは、農場全体の飼料の使用量/出荷した豚の生体重で計算される指標です。農場全体の飼料の量となりますので、母豚、肥育豚、子豚の全飼料を足した量となります。
この中で、一番飼料の使用量が多いのが肥育豚です。つまり、肥育豚が少ないエサで効率よく育つ(=要求率が良い)と、農場全体の要求率が良くなります。肥育豚の要求率は、品種、飼料の種類や加工方法、疾病の状況によって大きく異なります。近年の豚は改良が進むにつれて飼料の利用効率がよく、増体が良い品種特性となっています。

また、疾病が少ないと豚の成長はよくなり、逆に、疾病によっては成長が著しく遅れたりします。余談となりますが、ともすれば世間では大規模で効率を重視しているような農場は疾病が多く薬に頼っているイメージがありますが、実際は効率を重視するほど疾病コントロールは重要であり、大規模農場はむしろ衛生レベルが高く疾病も少ない傾向にあります。
肥育豚の要求率に影響が大きいものの一つに、飼料の種類があります。たとえば当社が扱っているエコフィードは、加熱処理がされているもの、微粉砕されているものなどが多くあります。パンは小麦を製粉し、焼き固めたものであり、製粉の過程で消化が悪いフスマなどは除去され加熱によりデンプンのアルファ化がおきているため、飼料としては可消化率はほぼ100%となり、非常に消化吸収がよいものとなります。これに対し、豚では一般的な配合飼料原料のトウモロコシの外皮の消化が悪いため、その分可消化率や消化速度が低くなります。エコフィードのメリットとしてはコストが注目を集めやすいですが、消化吸収がよく飼料要求率が良いことも重視すべき点です。

最近の豚の品種は1回の出生頭数が多くなっています。母豚1頭からの出荷頭数が増えると、当然増収になります。しかし、豚舎のキャパシティには限りがあります。たくさん子豚が生まれると、肥育する場所が足りなくなってしまいますので、結果として母豚の数を減らすこととなります。母豚の数が減り、食べる飼料の量が減りますので農場要求率はその分向上しますが、全体から見るとそれほど大きな効果が得られるわけではありません。近年の品種改良された豚は、たくさん子豚を産むことよりもむしろ肥育において要求率がよく、増体がいいことのほうが農場経営に寄与している場合が多いです。

一般的な養豚経営では売上に占める飼料費の割合は60%程度と言われていますが、お客さまの決算書見たり聞取りをしたりすると、要求率の差や購入単価の違いにより飼料費の割合は40%~70%程度までの大きな開きがあります。数値分析をすると養豚経営における収益構造の差がみられ、非常に面白く思います。

当社も養豚事業参入すべく奮闘していますが、参入しようと思った理由の一つが養豚の経営の幅の広さです。多様な経営戦略の選択肢がある養豚事業を経営することは、経営者の力量が問われるものでありチャレンジ精神が刺激されます。自社の強みを生かし、高い品質と低いコストを両立した畜産経営を目標にがんばりたいと思っています。