有機肥料を使うことは難しいのか。

最近は飼料の話が多かったですが、当社では有機肥料の製造から事業をスタートしました。
大学の専攻は肥料であり、その縁もあり事業開始した頃から出身の大学の付属農場で肥料の連用試験を行っています。先日はその試験を行っている圃場で白菜の定植作業を行ってきました。試験圃場では処理区をもうけ、それぞれに同じ肥料を毎年施用しています。実験を開始したのが25年前で、私がちょうど大学に入学する前ぐらいです。長期間連用を行うことで肥料の種類による違いが顕著に現れます。

ところで、有機肥料を使っている農家では有機JASの認証を取っているケースがあります。有機JASとは、有機(オーガニック)であることを認証機関が確認を行い、認証されたものだけが「有機」の表示ができるというものです。
有機JASに関しては賛否両論がありますが、私はある基準を決め、それにのっとり表示を行うという制度自体は必要であると思います。多分、有機JASの制度がなければいい加減な表示やインチキが横行するものと思います。問題はその基準ですが、これに関しては長くなりますので別のエントリーでまた書きたいと思います。

「有機」表示で私が従来より疑問に思うのは、有機JASには農薬を使用しないことも入っているという点です。有機という言葉の定義は有機物(炭素化合物)という意味であり、肥料の定義であり農薬の使用は言葉には含まれていないと思います。ですので、有機肥料を使って農薬を使うというパターンもあっていいのではないかと考えています。
と言うのも、個人的には時期や作物にもよりますが有機肥料を使った栽培より、無農薬で栽培することの方が難しいと思うからです。逆に、誤解を恐れずに言えば有機肥料を使うことは、技術とデータがあればそれほど難しくないと思います。
有機肥料と化成肥料の違いは、成分の面から端的に言えばある特定の成分だけを抽出したものが化成肥料であり、有機肥料はそれが化合物の形になっていること、様々な成分が含まれているのが有機肥料であります。
特に、窒素成分に関しては有機肥料と化成肥料には大きな違いがあります。有機肥料の場合、窒素成分の多くはタンパク質、アミノ酸などの有機化合物の形で含まれているのに対し、化成肥料では硝酸イオンや尿素、アンモニアなどの化合物で含まれています。有機肥料に含まれる窒素成分はそのままアミノ酸などの吸収されるものもありますが、多くは土壌中の微生物などにより分解され、硝酸イオンなどの形で吸収されます。有機肥料を使うに当たって、この窒素の分解がどのように進むかがポイントです。分解は微生物反応であるため、肥料の種類、温度や環境によってその速度が大きく変わります。ざっくり言うと、分解が早いほうが窒素の肥効が出やすく、遅いと窒素が効きにくくなります。
この分解速度の予想さえできれば、有機肥料を使いこなすことは難しくありません。例えば水稲は窒素の肥効時期によって食味や倒伏などの影響があり、分解を予測することは非常に重要です。
現在は、分析手法の向上、知見の集積により分解速度の推定がよりできるようになってきています。要するに、技術を持った人なら有機肥料を使いこなすことができるってことです。

有機肥料を使用することで、土壌に有機物や様々な微量要素が持ち込まれます。これにより、土壌の微生物の菌叢が種類、量とも増えていきます。このことが土壌環境を改善し、団粒構造の発達、病原微生物の抑制につながっていく訳です。有機肥料は、「土を作る」ことができる訳です。

他方、有機JASの要件である農薬の不使用は、季節や作物によっては非常に難しいケースがあり、技術で対応出来ないケースも多くあります。例えば、愛知県では8月下旬にキャベツを定植する作型がありますが、虫害の発生が非常に多いため、無農薬で栽培することはかなりの困難を伴います。家庭菜園でしたら手で取る作戦も有効ですが、コマーシャルベースでは現実的ではありません。

日本で有機農業が普及しない理由の一つに、温暖な気候による虫害、病害、雑草発生の多さゆえの農薬の不使用の難しさがあると思います。ただ、上で書いたように、有機の要件のうち、肥料に関してはハードルが低いと思います。有機肥料の利用は、土壌をゆたかにし、場合によってはコストの削減にもつながります。技術が普及し、更なる普及が行われることを願っています。

インターンシップの受け入れ

このところ、多忙な日々が続いており、久々の更新となりました。
そんな忙しい夏でしたが、今年は新しい試みとしてインターンシップの受け入れを行いました。

今回はご紹介で会社の近くの人間環境大学の学生さん4名がインターンシップとして参加されました。
学生さんは授業の一環としてインターンシップに参加されているのですが、受け入れ企業としてもいろいろと勉強になることがあります。
今時の学生の気質がわかるだけではなく、教育体制や社員教育のあり方なども考えせられるものがありました。

実習内容は、現場での選別作業、回収作業の同行、お客さま訪問の同行等々、多岐にわたる作業でした。
普段は重機で行なう切返しを人力でやってもらったのですが、さすがにこたえたようです。人力でやることで内部の状況などを体感することができ、より理解が深まる・・と思ったのですが体力的には結構きつかったようです。

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インターンシップを受け入れて、当社のスタッフも若い人が入ることで刺激を受けていたようです。当社は現在は中途採用だけですので年齢構成が偏っていますが、今後は新卒採用も行うことで将来的な社内体制の整備をはかっていくことが必要ではないかということを意識させられました。

当初は地域への貢献という意味でインターンシップを受け入れしたのですが、当社にとっても有意義な経験をつむことができました。地域社会との共生は、実は自社にとっても意味あることである・・改めて考えさせられ、良い機会でした。

エコフィードを使えば儲かるのか

ビジネス向けサイトとか見ていると、「儲かっている会社の社長はこれをやっている」みたいな記事をみることがあります。例えば、新聞を3紙以上読んでいる社長の会社の方が経常利益が高い・・と言ったようなネタです。

この手の話、いつも思うのですが、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのではないかと思います。

新聞をたくさん読むことで知識が付いて経営が良くなってきたのか、それとも経営が良いから余裕ができて新聞を読む時間が取れているのか・・。新聞を読むことが無駄になることは無いと思いますが、効果を期待しすぎるのは禁物であると思います。

ホルスタイン
 

当社では有機肥料やエコフィードの生産を行っています。当社のお客さまや知り合いは有機肥料やエコフィードを使いこなしている方がたくさんみえます。
そういった方は概して経営がよいことが多い傾向にあります。有機肥料は一概に言えませんが、エコフィードは一般に配合飼料、輸入飼料と比較して価格が安く、飼料コストが生産コストの大部分を占める畜産農家がエコフィードを使用することでコストが下がります。
当社のお客さまでエコフィードをメインにしている方は概して経営がよいのです。そういった状況を見るとコストの安い飼料をうまく使っているから経営が良くなっているという印象があります。

でも、個人的にはエコフィード使用により経営が良くなっているのはコストが下がっていることが大きな要因では無いと思っています。エコフィードは配合飼料と異なり、成分もまちまちであり自分で配合する必要があったりします。使用に際して工夫が必要ですし、購入飼料と比べ手間もかかります。こういったものをうまく使うには、技術レベルが高く、前向きで意欲がある人で無ければ難しいです。
購入飼料を使うだけでしたら飼料の成分などのことを知らなくても問題ありませんので、残念ながら畜産農家でも飼料の知識に詳しくない人が多く見えます。小規模農家であっても数千万単位で購入しているわけですから、その内容を知ろうとしないのは大きな問題です。
要は、エコフィードをうまく使いこなせる方はもともと経営が良い農家が多いのでは無いかと思います。逆に、コストが下がるからと言って知識が無い人がむやみに使用すると、生産効率がわるくなったり手間がかかったり、畜産物の品質が下がったりと言ったことが発生しかえって経営が悪化するケースも散見されます。

当社のお客さまの酪農家さんは酪農教育ファームに参加されているケースが多いです。酪農教育ファームとエコフィードは関連がありませんが、酪農教育ファームに参加されるような農家さんは前向きな方が多いので、エコフィードなどの新しい技術に積極的なのではと思います。

耕種農家でも土壌分析をしなかったり、肥料の設計をお任せにしているケースはすくなくありません。そういった農家では肥効がまちまちで取り扱いが難しい有機肥料をうまく使用できるはずがありません。有機肥料をうまく使いこなしている農家は肥料に対して知識が深く、収量が多く高品質な農産物を生産できているため経営が良くなっているのではないかと思います。なお、そういった農家は案外有機JASを取得するわけではなく、慣行栽培でありながら減農薬、減化学肥料で有機肥料をうまく使いこなしている場合が多いと感じます。有機肥料を使うのはJASを取るためでも化学肥料を危険視ししているわけでもなく、有機肥料の方がうまく使用すると効果を発揮するからではないかと推察しています。

逆に言うと、そういったハイレベルな農家はエコフィードや有機肥料を使わなくても経営がよかったりします。レベルが高い農家が使いこなすのが難しいけどうまく使うと効果を発揮する・・これがエコフィードや有機肥料ではないでしょうか。
これからの厳しい環境下では、農業生産においても高い技術レベルと前向きな姿勢が求められていくことと思います。私もそういったお客さまとお付き合いするために更に勉強と技術研鑽をしていきたいと思っています。

研究機関とのお付き合い

先々週、今週と展示会続きで少々お疲れモードです。貧乏性のため展示会出展費を回収するべく気合いを入れて接客をするのでかなり体力を消耗します。今年の展示会はいろいろな出会いがあり、今後に期待できるものでした。

展示会
展示会

展示会出展していると都道府県の農業試験場などの研究機関の方や、大学などの研究者のかたが数多くブース来場されます。そういった方々から「どういった研究テーマを行ったら良いか」という質問を受けます。

当社は様々な食品廃棄物をリサイクルしており、今まで利用されていなかった原料の受け入れも行っております。新規アイテムを利用する場合(特に飼料として利用する場合)には大学などの研究機関に委託し、特性や性状を確認すると言うことを行っています。最近は非常に多岐にわたるアイテムの相談があるため、研究機関との連携は欠かせないものがあります。

例えば飼料の場合、研究機関での試験は成分分析、保存性試験などから消化試験、家畜への給与試験など、様々な段階の試験を依頼しています。そういった試験の成果は実際の飼料の流通販売において基礎データとして活用されています。研究機関での試験が現場で生きているわけです。

他方、学会などに参加すると「この研究内容はいったいどのように実用化していくのだろうか」と思うような試験が少なくありません。どう考えてもコストが合うはずのないアイテムだったり、現場でのニーズが全くない分野だったり。「研究のための研究」になっているようにも感じられます。そのようなことが起こる理由として、もちろん現場の声をくみ上げていない研究機関の体制にも問題あると思いますが、我々のような民間事業者が研究機関への積極的なアプローチを行っていないこともその一因ではないかと思います。

当社の場合、目新しいアイテムが多くあるため研究機関の先生方の興味を引くものが多くあります。研究テーマとしておもしろいことと実用性があることの両立をはかったものを提供してきたことがこれまでの成果につながっているように思います。

研究機関の運営には多くの税金が投入されているわけですから、”役に立つ”研究を行ってもらいたいと思います。それが民間事業者の事業拡大にもつながり社会全体の利益に結びついていくことになります。最終的に当社にその利益が分配されることになればさらに喜ばしい限りですヽ(^0^)ノ

6次産業化を進めるためには

年度末、年度初めの報告書もようやくだいたい終わり、少しだけホッとしている今日この頃です。時間があるときはたまに子供のために離乳食を作ったりしています。どうやらチーズとかイカみたいなアミノ酸たっぷりのものが好きなようで、酒飲みな将来は約束されているようなものです(^^)

当社のお客さまの酪農家さんでもチーズを作られているところが何件かあり、美味しいチーズを食べる機会が増えたのはこういう仕事をしている役得というものです。

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もともと牛乳はその商品の性質上個々の農家さんをわけて集めることが難しいため、酪農家さん個々の特徴を出すことが難しいですが、チーズを作ることで、牛乳の持つ個性を発揮できる場面が出てきます。特に、チーズやバターは牛乳の成分が濃縮されるので、牛乳の特徴がはっきりと出てくるように感じます。将来、「チーズスペシャル」な飼料を作ることができたら・・・と夢想する今日この頃です。

昨今は酪農に限らず、こういった6次産業化が増えてきており、政府も政策的に奨励を行っています。美味しいチーズが食べられるのは歓迎ですが、個人的には安易な6次産業化推進には疑問を持っています。

6次産業化に限ったことではありませんが、新規分野に事業展開をする際にもっとも必要なことはその事業を行う存在意義があるかどうかだと考えています。例えば、養豚や肉牛の場合、法律によってと畜を自分で行うことができません。(仮にできたとしても非常に非効率でコスト高になってしまいますが)6次産業化で肉を販売すると言ってもと畜場から買い戻す形態となり、一般の肉屋さんと流通経路が変わらないことになります。もともとの肉屋さんとの相違がなければ、新規参入しても競争力があるわけではありません。
6次産業化で肉を販売して成功している農家さんは、品質が高いにもかかわらず規格などの理由で市場価格が安いものを適正価格で販売しているケースが多いように思います。この場合、「生産者が知っている価値を伝える」ことが存在意義になっているかと思います。

 

また、農業はそれで生計を立てているような規模になると労働時間の拘束が長いケースがほとんどです。家族全員が労働力としてカウントされていて余裕が無い場合に、新たな事業を展開すると言うことは本業である農業の労働時間を削ることになります。農業は農作物や家畜をきちんと見なければよいものを生産することができません。生産の品質が落ちたり、生産量に影響が出たりします。果ては6次産業化を進めたら農業を辞めると言う笑えない事例があったりします。

事業を新規に展開する以上、ヒト、モノ、カネを確保して事業計画をきちんと立てなければ事業が成り立たないのは言わずもがなです。農業はまだまだ市場出荷していても成立することが多くあり、「ものを売る」ってことを1回もやったことが無い人がいきなり”商売”を始めるということがいかにハードルが高いかは想像に難くありません。

 

と、辛辣なことを書いてしまいましたが、どんな事業であっても新しい分野に挑戦し続けることは重要ですし、6次産業化は新たな価値を創造することにつながると思います。今後も当社のお客さまのそういった取り組みを応援できたらと思っています。

酒粕の成分と酒造り


最近、ホームページからのお問い合わせで酒粕の買い取り依頼が非常に増えています。食品としての需要低迷が主因のようですが、Webという媒体によって需給の状況がわかることも興味深いです。

私は酒と名前が付くものはたいがい好きですが、日本酒ももちろん愛好しています。飲むだけではなく、酒蔵見学や杜氏とお話しで酒造りの方法を聞いたりすることも好きです。日本酒の作り方は非常に複雑なプロセスを経ますが、微生物学的な知見が皆無であった江戸時代にこのような技術が確立されていることに非常に驚きを感じます。

酒粕

 

日本酒の作り方はWikipediaの記載が詳しい(異常にw)ですが、超概略として

1.米を精米し、蒸す。

2.コウジカビをふりかけ、麹を作る

3.麹、別に蒸した米、酵母を混ぜもろみをつくり、発酵させる

4. もろみを絞り、濾過して酒になる。

と言ったプロセスとなります。

一連の反応で米に含まれるデンプンがコウジカビが出すアミラーゼによりブドウ糖となります。酵母はデンプンをエサにすることはできず、ブドウ糖は使えるのでカビを使ってデンプンを糖に変えることで米を使って酒を造ることができます。ビールやウィスキーではデンプンの糖化を麦芽の持つアミラーゼを用いて行い、ワインはブドウに含まれている糖をそのまま用いていることが日本酒との違いです。

酒粕を飼料として取り扱うにあたって、成分分析を行っているのですが分析結果を見ているとびっくりするぐらい成分が異なります。一番差が出るのは粗タンパク質含量の差で、最も低いものは乾物換算で20%程度、高いものは乾物換算で60%と大きな差があります。傾向として、安い酒ほど酒粕の粗タンパク質含量が高い傾向にあるようです。

酒粕の粗タンパク質は米に8%程度含まれる粗タンパク質が濃縮されたものです。この値が大きく違う原因として

・高い酒ほど精米歩合が高い。米は表面ほど粗脂肪、粗タンパク質が高いため、精米歩合が高くなるとそもそも原料中の粗タンパク質含量が低くなる。

・安い酒は麹の活性を高め、米を良く溶かしている(=糖化反応をすすめている)糖化がすすむと糖はエタノールに変換され、酒の歩留りが上がる。その分残った粕に粗タンパク質が濃縮される。

・安い酒は酒粕を絞る際にしっかり絞るので、水溶性の糖などの割合が下がるため相対的に粗タンパク質含量が高くなる。

などが推定されます。飼料としては水分が少なく、タンパク質の含量が高いほうが好まれますので、安い酒の酒粕が飼料に向いていると言うことになります。酒粕を見ると酒造りの奥深さを感じるとともに、自分の飲む酒選びにも役立っています ^^;
こう言う仕事をしていると食品メーカーの裏事情が垣間見えてとてもおもしろいですね。

老舗企業の強み

ここ数年、年度末が忙しくなっています。補助事業を受けているのが主な原因なのですが、今年はとくに尋常ならざる忙しさでした。大量の書類締め切りに追われていて、本当に終わるのだろうかと絶望的な気分になっていましたが、終わりましたヽ(^0^)ノとは言え、まだ残務がありますけどようやく目処がついてブログを書くことができるように。

忙しすぎて自分でもすっかり忘れていましたが、今年の3月は創業10周年でした。実際は最初の2年はほぼ業務を行っていなかったので、事業を行ってからは8年ですが。それにしても思いおこすとこの10年のことが比喩では無く走馬燈のようによぎります。最初の2年は当然収入ゼロで、事業を開始した3年目もほとんど売上が無くお先真っ暗な状態でした。そこからなんとか今まで継続的できたのは、ひとえに応援してくれる皆様のおかげだと感謝しています。まだまだ脆弱な会社基盤をどうやって強固なものとしていき、未来に渡って継続できる企業に変革していけるかが目下の課題です。

当初は汚泥の堆肥化を目指して事業を始めたのですが、現在は事業の主体がかなり変化をしました。事業計画もろくに無く事業を始め、いきなり行き詰まって事業の転換をはかり、その後も当社の強みを生かせる分野を模索してきた結果、事業内容が変わってきました。

事業を始めたときは、顧客ゼロ、仕入元ゼロ、借入先ゼロ、東三河に出てきて知り合いゼロという状態からのスタートでした。顧客ゼロが大変なのは当然として、仕入元が無いのも事業を営む上で大きなハンデです。そういうリソースが少ない中、事業の内容を転換することは大きなリスクでしたが、自社の強みを最大限生かす方向を常に模索してきた結果、現在まで事業を継続できたものと考えています。

翻って、当社の周りやお取引先には創業100年を超えるような老舗企業が多くありますが、その中の多くの企業が現在の事業に安穏と甘んじており、積極的に新分野に進出することを怠っているように見えます。移り変わりの激しい世の中で、現在の事業が今後も継続可能な環境にあるか非常に先行きが見えない時代になっています。そんな中で新規の分野に取り組まないのは事業の大きなリスクファクターだと思います。長い間事業を営んでいる会社は、含み資産はもちろん、数多くの取引先、従業員など、有形無形の資産を多く保有しており、それが会社の強みとなっています。よく「うちは何も取り柄が無いから」と言う社長がいますが、事業の継続自体が強みになっており、それが故に信用調査会社の評点では事業の経歴年数が入っているわけです。資産を生かし切れない会社を見ていると、「ああ、もったいないなぁ」強く思います。

当社は常に新しい取り組みを模索し、すべての取引先、従業員、その他関係する皆様方のニーズに応える会社を目指していきたいと思っています。
今後もよろしくお願いいたします。

 

塩は買うものでない

当社では労働安全衛生法に則って健康診断を実施しています。結果は個人に配るのですが、会社にも保管用の一覧が届きます。先日もらったらうちのスタッフ引っかかりまくりで困惑です。従業員の健康が心配なだけではなく、零細企業の場合従業員の健康問題は会社経営にも影響しますので、健康管理には気をつけてほしいものです。

食品リサイクル稼業をしているとよくわかるのですが、今の日本人が食べているものはカロリー過多、塩分過多、脂肪過多です。とくに、日本人は塩分を過剰摂取していると言われており、WHOの推奨値の2倍程度摂取していると言われています。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77445710U4A920C1000000/

一方、家畜のエサにも塩分が配合されています。例えば汗腺が少ない豚では飼料中の塩分要求量はずっと少なく、だいたい0.2%程度です。肥育豚は乾燥物換算で2kgぐらいの飼料をたべますので、塩として約4gぐらいとなります。これは必要量ですので、実際はこれより若干多い塩分が飼料には配合されています。

しかし、食品廃棄物を扱っていると塩分が多いものが多くあるため、これを利用しない手はありません。品質の高い廃棄物は入手が難しくなってきていますが、塩分が多いものはまだまだ手つかずで残っています。

当社が今まで塩分が多いものとして利用してきたものの例として

・味噌RIMG0197

・醤油粕

・五平餅のたれ

・めんつゆ

・ふりかけ

・インスタントスープ

・椎茸旨煮の煮汁

等々があります。たとえば味噌は塩分10%程度あります。1日10トンのリキッドフィードを製造するとすると、乾物として約2トン、塩分0.4%とすると8kgの塩の量となり、塩分10%の味噌を80kg配合することが可能となります。なお、当社のお客さまの場合、塩分があるものを入れるため、リキッドフィードに混合する配合飼料からは塩を抜いてあります。

また、こういった高塩分のものに共通する特徴として、旨み成分であるアミノ酸を多く含むことが多いと言うことです。これらのものを配合することで、単に塩分(ナトリウム)の補給になるだけではなく、旨み成分による嗜好性向上が期待できます。

この中でもとくにめんつゆは絶大な効果がありました。めんつゆは塩分が5%程度と案外低く、かなりの量を添加できます。糖度が15度程度あり、鰹だしの旨み成分が含まれているため相当な嗜好性アップの効果が得られました。

最近はリキッドフィード原料にゆでうどんの廃棄品を利用しているため、できあがった飼料はいわば「味噌煮込み」状態です(笑)
よりよい飼料を製造するためには、いかに未利用の資源を有効に活用するかの智慧が求められています。

農協は不要な存在なのか

久々の更新です。今年に入って種々の書類の締め切りに終われ、余裕のない状態が続いていました。社長兼営業部長兼工場長兼営繕担当みたいな動きをしているとにっちもさっちも行かなくなってきていますので、いいかげん組織としての体制と構築していきたいと考えています。と言いつつ、今晩も会社に導入する新しい設備の検討をして夜が更けていくわけですがw 組織と言えば、日本の農業組織の代表である農協が「農協改革」の名の下に批判を浴びています。農協不要論がマスコミを賑わせていますが、果たして本当に農協はオワコンな存在なのでしょうか。

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昨今は六次産業化がもてはやされ、農家が直接販売に乗り出すケースも多く見られます。有力な農家ほど農協の流通経路を敬遠し、自ら販売ルートを切り開いています。商系の流通問屋へ納品することもありますが、商品を直接流通販売することも増えてきています。 直接販売を行うようになると、ある程度ロットをまとめ、規格をそろえ、物流コストを下げることを目的として農家が集まり共同の集荷設備や保管設備を作る・・そんな事例があります。 販売を行うと、与信管理、代金回収も大きな問題です。代金を回収するために、回収代行業者を利用したりします。 肥料や飼料などの資材も個々の農家で購入するよりもまとまって購入したほうが安上がりになります。当社のお客さまでも飼料を入札、共同購入してコストを下げている人もいます。 こういったことはみな農協がやっていることです。アンチ農協の優秀な農家ほど農協のような取り組みをしているのは皮肉なものです。

 

結局のところ、農協の事業自体には存在意義があるのでしょうが、(多くの)単位農協が仕事をきちんとしていないことが問題の本質であると思います。 肥料飼料や段ボールなどの資材は農協の取扱高が圧倒的であり、本来はどのルートよりもっとも安価に農家に提供できるはずであり、農協に出荷すると一番高くなってもよいはずなのに、そうでないケースが多々あります。しかも、それでいて多くの農協では営農事業が赤字です。商系で成立する事業が成立しないのは組織のあり方が間違っていると言わざる得ません。

 

組織が大きく古くなると、組織の維持が目的となり本来の目的を見失っていくものです。農協が本来の目的を見据えた組織に変革していくことが日本の農業の発展に必要なのではないかと思います。そのためには農協を構成する組合員が農協を”自分たちの組織”であるという意識を持つことが重要だと思います。 今の”農協改革”と呼ばれる動きは既得権益の奪い合いやパフォーマンスに過ぎません。アメリカの輸出団体やニュージーランドの乳業メーカーで明らかなように、組織というのは非常に強いものです。見せかけの改革ではなく、これからますます社会のグローバル化が進む中、農協が理念と長期的な戦略をもった組織となり、日本農業を支えていって欲しいものだと願います。

1年間ありがとうございました。

大晦日、そして決算日の夜、例によって仕事をしながら過ごしています。今年は元旦が入荷の少ない木曜日なのでお休みすることができ、ちょっとほっとしています。

今年は会社も人員が増え、組織的な体系に少しずつ踏み出すことができた1年でした。事業計画は若干目標にショートしたのが不本意なところですが、様々な出会いがあったのが何よりも嬉しいことです。新しいプロジェクトもいくつか進行しており、経営理念にある資源循環の貢献が着実に広がりを見せているのが何よりも確かな自信につながっているようにも思います。

グローバルでは社会の混迷度がますます深まり、人口増加圧力に伴い資源の重要性が増してきています。そんな中、日本の国力は低下し将来への不安が蔓延しています。激動する社会の中、個人と企業のレゾンデートルを確認する必要性を改めて感じています。

プライベートでは子供が生まれ、自身のあり方について考える機会が増えました。子供が幸せに育てる責務を感じるとともに、幸せに暮らせる日本社会であってほしいと切に願います。

何はともあれ、こうやって新しい年を迎えることができるのは周りの皆様方のおかげだと心より感謝しています。一人で始めた会社ももうすぐ創業10年を迎えます。これからも謙虚でありつつ新しい挑戦に果敢に取り組みたいと思っています。来年もよろしくお願いいたします。

 

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