家畜防疫にとって必要なもの

先般、飼養衛生管理基準の改定が話題になっていました。
放牧経営どうなる 中止、畜舎義務化 懸念広がる 農水省基準案に「唐突」「根拠は」(日本農業新聞)
https://www.agrinews.co.jp/p51016.html

飼養衛生管理基準とは、「家畜伝染病予防法に基づき,家畜の飼養者が家畜伝染病の発生を予防するために,遵守すべき事項について定めたもの」です。
こちらに放牧を禁止する(場合がある)という内容が入っていたため、放牧を行っている畜産関係者等からの反発があり、結果として放牧に関する条項は大幅に割愛されることになりました。
放牧ばかり耳目を集めていたようですがこの飼養衛生管理基準はさまざまな点で規制が強化されており、たとえば農場内で愛玩動物、つまり犬や猫を飼うことが禁止されています。畜産農家に訪問したことがある方はご存じと思いますが、農場で犬や猫を飼っているケースは非常に多いです。しかし、今後は農場内で犬や猫の飼育もできなくなってしまいます。

今回の規制強化は近年の豚熱の流行、そして中国他でのASFや口蹄疫の流行が背景にあります。伝染病の予防や蔓延を防止するために規制を強化することになったわけです。
私は仕事柄様々な畜産農家に訪問する機会がありますが、正直言って防疫対策が不十分な農家も多くあります。規制の強化はやむをえない面もあります。
ただし、当然ながら規制の強化は費用や労力の負担にもなります。ゼロリスクを求めてやみくもに対策するのは非科学的な手法であり、費用便益を考え優先順位を決めてすべきです。犬や猫がいることで本当に伝染病のリスクが高まるのでしょうか。例えば、猫がウイルスを伝播したという事例があれば猫の飼育を禁止するのも当然かと思いますが、そのような事例が報告されているわけではありません。
豚熱の発生の状況を見るに、野生動物に一旦伝染病が広がると(=つまりウイルスが大量にばらまかれると)、感染拡大をおさえるのは非常に困難であり、相当な防疫体制を敷いている農場であっても感染を防ぐことは非常に厳しいということは間違いありません。
であれば、まず第一に行うべきは野生動物への感染をいかに防ぐかであり、いかに国内に伝染病を侵入させないかが第一の対策であるべきです。たとえば、禁忌品、たとえば肉類の持ち込みに関する罰則のレベルは諸外国に比べ低いと言われています。水際対策の強化に対し及び腰にもかかわらず、国内の規制強化に取り組むのは本末転倒です。

今回の改定では

・根拠が明確でないこと、科学的根拠がはっきりしないこと

・改定の決定プロセスが不明確であること

・規制の内容がはっきりしないこと

に関して疑問の声が上がっていたように感じます。

放牧禁止しかり、愛玩動物禁止しかり、なにか明確な根拠があれば意見が噴出することも無かったかと思います。また、これらの改定に関し、農水省から出され原案を専門家委員会で検討をおこなっているのですが、議論の過程はオープンにはなっていません。今回の改定に関する専門家委員会の議事はこちらに公開されていますが、そこには「本年3月に改正された豚等の飼養衛生管理基準の他畜種への反映方針について確認がなされ、大臣指定地域の考え方等について意見があった。」との記載があるのみです。果たして議論が尽くされたのか、これでは全く不明確です。

今回の飼養衛生管理基準の改定の前に、食品残さの加熱基準が強化される改定が行われています。これは、肉を含む食品残さはいままでは70℃30分の加熱だったものの、90℃1時間の加熱が必要になりました。この根拠として、OIE(国際獣疫事務局)の基準が挙げられています。しかしながら、OIEが90℃とした理由は明確に示されていません。70℃30分でウイルスが不活化せず、90℃なら不活化するという実験データが示されるのならいざしらず、とにかくOIEがこう言っているから・・という理由で加熱基準が引き上げられました。この際、専門家委員会では相当議論が紛糾したにもかかわらず、議事要旨には「意見があった」との一文が記載されているのみです。

ゼロリスクを究極的に求めると家畜がいない方が良いことになってしまいます。リスクを回避しながらどうやったら畜産経営を継続していくか、生産現場だけに責任と負担を押しつけるのではなく、俯瞰的な視野の元で実効性のある対策を打ち出して欲しいと願います。

コロナ禍と豚肉のネット通販

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの事業者が大変な影響を受けています。当社はまだそれほど影響は大きくないですが、周りでも先が見えない状況の中で苦しんでいる人がたくさんいます。特に、飲食店関連の事業者はほんとうに大変です。各種景況調査などを見ると、去年の夏ぐらいから米中貿易戦争などの影響により相当景気が悪化しています。消費税増税前の駆け込み需要でそれがごまかされていたのが、駆け込み反動により去年の冬より景気悪化が顕著になり、コロナ影響によりさらに悪化しています。

豊橋商工会議所景況調査https://www.toyohashi-cci.or.jp/koho/pdf/keikyo01-3.pdf

自分と会社は
・今まで月の1/3は出張しており、飲み会も多かったがほぼ毎日家で夕飯を食べるようになった。会社にいる時間が長くなった。
・展示会などのイベントもことごとく中止。来年以降の受注が心配。
・取引先食品工場も業種によっては生産量が大きく低下している。土産物向け菓子、クラフトビール、外食向け製麺工場など。
・生産量が増えている食品工場もあり。スーパー向け菓子、スーパー向け製麺工場など。
・豚価が爆上げしている。スーパーでの国産需要増加、アメリカの豚肉輸出の混乱などの影響。
といった影響があります。生活は一変しています。

ただ、おかげさまでこの状況下でも新規の取引案件のお話しを多くいただいており、それらの準備などでかなり忙しい日々を過ごしています。

今回の社会情勢の変化に伴って一番驚いたのはネット通販の伸びです。昨年よりポケットマルシェというサイトで細々と豚肉のネット通販にとりくんでいましたが、いきなり売上げ激増して対応に追われています。
ポケットマルシェはSNS的な要素を持つ農家の産直サイトで、消費者と農家がコミニュケーションできるのが特徴です。私の販売ページにもたくさんのコメントが寄せられていて、生産者として励みになります。
昨今は生産者と消費者の関係性が希薄になっています。こういったサイトやSNSを通じて、もっと農業生産が身近なものになって欲しいと思います。

その一方で、消費者との関係性に依存した販売でよいのだろうかと言う思いもあります。豚肉、特に国産豚肉は品質向上がめざましいため、極端な味の差がない傾向にあります。とりわけ銘柄豚で販売されている豚に関してはどれもある一定のレベル以上の水準にはあるため差別化が難しいです。どうしても生産者の顔が見えることに注力した販売となります。それは悪いことでは無いと思いますが、私はやはり食べ物である以上おいしさで差別化していきたいと思っています。そう言う思いのもとで生産している当社の豚「雪乃醸」は飼料原料から一般的な豚の飼料に使われるトウモロコシを一切使用しないことで、かなり特徴がある肉質になっていると思います。とにかくあっさりとしていることで、特に女性の受けが非常に良いようです。

バラ肉

もちろん、差があると言っても和牛とオージービーフほどの差があるわけではなく、おいしさに気づいてくれる人は少数派ではないかと思います。その一部かもしれないですが本当に食べ物にこだわっている人に訴求する豚肉を極めていきたいと考えています。
今後も生産を改善し豚肉品質を向上させるとともに、ネット通販を通じそういった方にどこまでアプローチができるか試行錯誤していきたいと思っています。

豚を飼ってみて思うこと

今年も暑い夏でしたが、急に秋めいてきました。

当社で豚を飼い始めて1年半が過ぎ、2回目の夏を超すことができました。まだまだ未熟ですが、経験を積み重ねて養豚業ということが多少わかってきたように思います。

当初想定したとおり家畜の飼育はいろいろと苦労することがありましたが、ここ最近生産や品質が安定してきたようでほっとしています。
今、農場の調子がよくなったのはひとえにスタッフの成長によるものです。(そもそも私はほとんど農場の管理業務は行っていません・・)飼料の設計もスタッフが行い、スタッフのスキルアップにより疾病の予防や治療も適切になってきました。成長の速度や肉質も当初の予定以上の数字が出るようになりました。

豚コレラもまだまだ安心できませんが、一応ワクチン接種もおわり少しほっとしています。
今回の豚コレラの流行で家畜飼育のリスクを痛感しました。突然他国から侵入した疾病により事業の存続が脅かされる可能性があることをあらためて認識することになりました。農場の立地等の関係もあり、結局当社の農場は都合4回も採血、検査を行っています。その度に「万一陽性だったらどうしようか」と祈る気持ちでした。

養豚事業をはじめた目的の一つは、エコフィードだけで豚を飼育し美味しい豚を作ることです。当社では非常に多くのエコフィードを扱っていますが、その中で特に肉質によいものを選択し給与しています。

主に給与しているのが
炭水化物源として ラーメン、うどん、グミ、シロップ、菓子くず
タンパク質原料として 酒粕、みりん粕、ビール酵母
などを給与しています。
飼料原料はアミノ酸のバランスが取れていること、多価不飽和脂肪酸(リノール酸など)が少ないことに気をつけています。個人的には、多価不飽和脂肪酸の量が豚肉の味の良し悪しを決める大きな要因だと思います。

肉質に関しては飼料の影響が大きいことからあまり心配はしていませんでしたが、自分で食べるだけではなく、肉質を分析した結果、また販売先の肉屋さんやレストランからの意見をフィードバックして常にエサの改良を心がけています。
おかげさまで、最近は取引先からの評価もよくなり、卸先肉屋さんからも「ブラインドで食味評価したら一番よかったよ」と言われるようになりました。

現在はブランド名「雪乃醸」として東京のレストラン中心に販売も行っています。片手間で販売していることもありまだまだ苦労していますが、今後は多くの皆様に肉を届けたいと思っています。

先日、イベント出店していたら「雪乃醸食べたらおいしかったけどどこで売っているの」とうれしいお話をいただきました。生産者冥利に尽きます。
これからもおいしい豚肉を届けていけるように努力していきたいと思います。

イベントで販売したベーコン串

豚コレラについて

最近、豚コレラについて聞かれる機会が非常に多いです。いろいろな情報が入る立場なので、整理してみたいと思います。
なお、豚コレラは人間には感染しない病気であり、万一食べても影響はありませんので安心ください。

今回の豚コレラで不思議なのは、感染力が強くないにも関わらず、感染が広がっているという点です。
公表されているレポートに出てきませんが、本巣や渥美半島の農場では感染している豚が導入されているにも関わらず、導入されている豚がいる豚房以外では感染した豚がいませんでした。また、豊田の農場では11月ぐらいに母豚が感染していると推測されています。(抗体の上がり方からの推測)にも関わらず、同じ豚舎から出荷された子豚は1月中旬まで感染していませんでした。つまり、同じ豚舎内で作業者が行き来しているような状況であっても、豚同士が接触をしないような状況では感染が起きにくいということは明確です。
それにもかかわらず、多くの農場に感染が広がっているのは非常に不思議です。当然ながら豚舎の中にイノシシが侵入することは想定されず、また各務原や豊田の農場は付近にイノシシがいる環境ではありません。仮に小動物や鳥で感染するぐらい感染力があるようなら、もし感染した場合は農場内全体に一気に感染が広がるはずで感染豚が農場内に遍在するような現在の状況は説明がつかないことになります。

養豚関係者がワクチン接種を望む大きな理由として、このように感染経路が不明確であり、衛生管理を徹底し飼養衛生管理基準を完全に順守することで100%感染を防ぐことが難しいと感じているからです。現に、数年前流行したPEDという伝染病は衛生管理基準を完全に順守しているはずの農水省直轄の家畜改良センターに侵入しています。病気の感染原因によっては衛生管理基準を完全に順守することでも防げないということの証左です。

もちろん、ワクチン接種には様々なデメリットがありそれを理由に農水省は接種に対し否定的です。
デメリットとしてはおもに
・輸出ができなくなる
・現在阻止できている豚コレラ発生国から輸入が増える恐れがある
といったものです。ワクチンを接種すると、「非清浄国」という扱いになり、清浄国へ輸出ができなくなります。また、非清浄国からの輸入は現在はできませんが、その障壁が無くなってしまいます。
しかし、豚肉の輸出額は10億円程度、頭数で約12000頭分と金額的には少なく、仮に輸出が止まったとしても影響は軽微です。また、現在の輸出は香港などが中心であり、非清浄国となっても輸出は可能です。強いて言えば、清浄国であるアメリカやEU諸国への輸出ができなくなるということがありますが、国内の豚はこれらの国に輸出できる競争力は残念ながらほぼありません。
一方、豚の皮の輸出金額は大きく、かっては120億円程度ありました。
原皮の輸出が減ると影響はありますが、輸出先の多くは豚コレラ非清浄国であり、ワクチン接種しても輸出することは可能です。

他方、非清浄国からの輸入が増える恐れがありますが、非清浄国の多くは口蹄疫の非清浄国でもあります。このため、それらの国からは輸入することはできません。アジアでは唯一フィリピンが清浄国でありますが、フィリピンは豚肉の純輸入国であり、輸出余力は無いものと思われます。
もし輸入を阻止したいのであれば、まずは現時点でアフリカ豚コレラが発生している中国から正規の検疫をへて輸入されている豚肉加工品をストップすべきです。あまり知られていませんが、日本は年間1万トンもの豚肉加工品を中国から輸入しています。

このような理由から、私はワクチン接種による非清浄国化は豚肉、原皮などの輸出、輸入に関する制約はすくないものと思います。
むしろ、ワクチン接種する場合、ワクチンの費用負担や接種の労力のほうが影響が大きいと思います。ただ、生産者のほとんどはそれらのデメリットを踏まえたうえでワクチン接種を望んでいます。

このような状況を踏まえ、農水省は壊れたテープレコーダーのように「飼養衛生管理基準の徹底」を謳うだけではなく
1.ワクチン接種に頼らない感染予防が本当にできるのか(感染経路の明確化ができるのか)
2.仮にワクチン接種した場合、輸出入に対しどういった影響があるのかのシミュレーション
を行うべきです。経済動物である以上、リスクベネフィットで判断すべきであるのに、その提示がなされていないことに疑問を感じます。

多くの生産者が不安な心持で過ごす日々が続いています。また、飼料の流通や人の交流など、多岐にわたる影響が発生しています。政府は多くの声に真摯に向き合ってほしいと切に願います。

家畜福祉

年末年始で慌ただしく、すっかり更新が滞ってしましました。
事業を開始したときはそうでもなかったのですが、2つの会社を経営しどちらも12月末決算のため1月は非常に慌ただしい日々を過ごしています。

養豚の事業も豚を実際に飼い始めて1年が経過しました。まだまだ改善するところは多々あり問題山積ですが1年たつといろいろと見えてくるものもあります。

素人ばかりで豚を飼っているのでトラブルも多くありました。その一つに豚のしっぽかじりです。豚は何らかの理由でストレスを感じると、ほかの豚をいじめたりします。いじめの行動の一つがしっぽかじりで、同じ豚房にいる豚のしっぽをかじってしまうというものです。当然、傷ができますので感染症などの原因にもなりますし、かじられた方はストレスになり成長に影響が出たりします。

豚を飼って強く思うのは、豚にいかにストレスを感じさせないかが非常に重要だという点です。暑さ、寒さ、他の豚とのけんか、飼料の嗜好性等々、ストレスを感じると豚の成長に大きな影響があります。養豚生産者はみな、いかにストレスを与えないかに腐心しています。

これは養豚だけではなく、牛でも鶏でも同様です。牛もストレスを感じると乳量が減りますし、鶏も卵を産まなくなってしまいます。快適な環境が畜産においては非常に重要です。

オリンピックに向けて、ヨーロッパなどで一般化しつつある家畜福祉(アニマルウェルフェア)の考え方が日本でも徐々に広まりつつあります。
世間ではよく「大規模な畜産農家は効率を重視するあまり、家畜福祉に反した飼養を行っている」と思われているようですが、実際のところ家畜にストレスを与えるような飼養管理はむしろ生産性が低下するわけであり、効率を重視する大規模生産者こそそういったストレスに対しては敏感であったりします。
家畜がストレスを感じているかは物言わないため明らかではありませんが、ストール飼育だったりウインドレスだったりがもしストレスフルならば生産者が採用するはずがありません。家畜福祉に取り組む動きを否定するわけではありませんが、現状でも規模にかかわらず家畜福祉には常に配慮されているという実態を理解していただけたらと思います。経済動物ではありますが、家畜がよりよい環境で過ごしてほしいと思うのはすべての畜産農家の共通した思いではないかと思います。

エサをたくさん食べ、いびきをかいて寝ている豚たちを見るとなんとなくうれしくなりますが、それは生産者ならばだれしも感じるものである感情です。ゆったり育ち、結果としておいしい畜産物になることがなによりも願いです。

豚の格付け

暑い日が続いていますが、今年は夏バテもせずなんとか乗り切れそうです。現場に出る機会が多かったのですっかりドカタ焼けしてしまいました。ただ、体重は順調に減っており晩酌のビールの量を増やしても体重は増えそうにない感じですw

暑いと人間も食欲なくなりますが、豚も一緒で顕著に飼料摂取量が低下し、その結果として増体が低下し、出荷体重が小さくなったりします。液状飼料(リキッドフィード)を使うメリットの一つとして、夏場の飼料摂取量の低下を抑えることができるといわれています。ただ、実際のところはリキッドフィードを使用していても飼料摂取量の低下が起きている場合も多くあります。
飼料原料の組み合わせなどによって嗜好性が変化しますので、いかに夏場でも飼料摂取量を低下させないかを工夫することが求められています。また、豚舎の環境を適切に維持することも非常に重要です。

 

手前味噌になりますが、自社農場は最近調子がよく、暑いさなかでもかなり飼料摂取量が高い状態を維持できています。おかげで増体もまずまず順調ですが、お盆休みでと畜場が休みのため出荷できなかったこともあり、重量が重すぎて規格を外れた豚が多くなっています。

格付け

豚の場合、格付けは上、中、並、等外という区分になります。格付けが落ちる原因として一般的に多いのは厚脂と重量オーバーです。背脂肪厚がある程度を越える、また重量も80kgを超えると格付けが落ちます。脂肪が厚いと肉の割合が減ってしまい歩留まりが悪くなるため格付けが落ちます。重量に規格があるのは、たとえばロースの大きさがまちまちとなってしまうと、トレーに収まらない、スライス品の重量がまちまちになってしまうなどの問題があるためです。
しかし、業界関係者の間では、重量がある程度大きいものの方がおいしいと言われています。今の規格では、じつはおいしさがスポイルされているということになります。柔らかさに影響を与える脂肪交雑なども格付けには考慮されません。低価格な海外産豚肉との競合を考えれば、本来は歩留まりや大きさだけではなく、味も基準となる格付けであってほしいものです。

今回の出荷が重量大きめだった理由の一つは、小さいよりは大きい方がおいしい肉を供給できるという思いがあったこともあります。個人的には最終的には自社で販売することで、規格にとらわれずおいしい肉を提供できるようになりたいと思っています。
とは言え、まだ生産には課題が多く、販売以前にやらないといけないことがたくさんある訳ですが・・。

飼料による食味の変化

世間はお盆休みですが、当社は絶賛営業中です。食品業界全般の傾向としてお盆は繁忙期で、業界の端くれの当社も当然ながら多忙のためなかなかお盆は休めません。私自身は年間通じて多忙なのでお盆がとりたてて繁忙期というわけでもないのですが:)

最近、エコフィードを使い始めたor使いたいという農家さんのお手伝いをする機会が増えてきました。使用するエコフィードの選定などのお手伝いもしています。
一口エコフィードと言っても千差万別であり、使用方法を誤ると肉質が低下したり増体が悪くなったりします。
豚の場合、特に注意するべき点の一つが脂肪酸組成です。
油脂、特にリノール酸が多い大豆油、菜種油などのいわゆるサラダ油を多く含む原料を使用すると、豚肉中の脂肪融点が下がることで商品価値の低下につながります。
たとえば、おからや揚げ物などを多く給与すると、脂肪融点が10度以上低下することも珍しくありません。

他方、動物性の脂肪も肉質に大きな影響を与えます。魚の油脂にはDHAやEPAなどが多く含まれています。DHAは健康によいと言われる脂肪酸ですが、酸化されやすいという特徴があり、酸化が進んだDHAは生臭い独特のにおいがあります。これが豚肉中の脂肪に移行しやすいため、魚(の油脂)を給与すると豚肉中にもDHAが含まれ、獣臭の原因となります。
従って、脂肪が少ない魚でしたら影響が出にくく、たとえば鰹節やはんぺんなどを給与しても問題はありません。

いろいろなデータを見ていると、(特に豚の場合は)飼料が肉質に与える影響が大きいと言うことを改めて感じます。輸入トウモロコシ主体の配合飼料ではなくエコフィードを使うというのは、特徴のある肉質を作る大きなポイントであり、使い方によっては肉質が良くも悪くもなりえます。それだけ難しくもあり、面白くもあります。また、同じ単胃動物である人間も食べるものによってお腹の脂の質が変わるわけであり、人間にとっても食べ物がいかに大事かと思い知られます。私はリノール酸多給してぶよぶよの脂となった枝肉の写真を見てから揚げ物は極力食べないようにしています(笑)

 

 

養豚に新規参入

気がつくと1月も終わってしまいました。年月の過ぎるのが非常に早く感じる44歳です。
当社は12月末決算です。昨年は新規投資をいろいろと行ったので、決算内容は不本意なものがありました。
当社は決算の結果を持って経営指針書の発表を行っています。経営指針書はいわゆる事業計画ですが、経営理念、経営方針(戦略)、経営計画(戦術)をまとめたものです。私が所属している中小企業家同友会では、この経営指針書を作ることを会の方針としています。決算の実績をふまえ、今期以降の会社経営のあり方を社員、取引先の皆様に発表致しました。

昨期の投資のうち大きいのは、新卒採用と新規事業の開始です。昨年は4月に大卒新人を初めて採用し、今年の4月にも入社予定です。採用が難しい時代において多くの応募があり、優秀な人材が入社してくれるのは本当に感謝しています。当社が存在意義ある事業を行い、また経営指針書の発表など含めた将来展望を明示していることが、採用ができている理由の一つでは無いかと思います。

新規事業の方は、1月より養豚を開始しています。非常にささやかな規模にもかかわらず、大きな投資となり畜産を始めることの大変さを感じています。
なぜ、当社が養豚を始めるのかについて、指針発表でもお話ししましたが、お取引先からもよくお問い合わせ頂くのでこちらに記します。

・リサイクル飼料で食糧生産を行うという社会的存在意義
世界人口は増大し、日本の相対的GDPは低下しています。日本人がいつまでも海外の食糧、飼料を輸入できるとも限りません。国内でリサイクル飼料を利用した養豚を行なうことは大きな意義があります。

・事業シナジー効果
飼料を作っているため、安価で良いエサを提供することができます。

・ビジネスとしての魅力
国内養豚生産が減少しており、国産豚肉価格は高止まりしています。安価な飼料を利用することができるため、収益性も期待できます。

・実験農場として
新しい飼料の給与試験や、嗜好性の試験を行います。

・マーケティングの実験
養豚業界にいると、マーケティングを的確に行うことで販売拡大できる要素がまだ大きいのでは無いかと感じます。販売の取り組みを実験的に行いたいと思っています。最終的には飲食店経営もできたらと考えています。

創造と野望と希望を実現するために、新たな分野に踏み出していきます。皆様のご支援のほどよろしくお願いします。

農場要求率と養豚経営

年の瀬が迫ってきて、慌ただしい日々を送っています。日頃からバタバタしているので普段とあまり変わらないという話もありますが(^^)

おかげで学会誌とか業界紙を読む時間が無く、出張中に飛行機やホテルの中で読む羽目になってます。ただ、勉強を継続することは当社の強みにつながっていると思っているので、そこだけは怠らないように努力しています。特に、畜産に関してはまだまだ勉強をすることが多いので、力を入れています。

出張先のホテルで業界紙を勉強
出張先のホテルにて

畜産の勉強をすると、畜産「経営」というのは非常に面白いと思います。耕種農家以上にいろいろな要因があるので、分析をすると様々なことが見えてきます。当然ながら畜種によって全く経営スタイルが異なっており、豚、牛、鶏で分析ポイントが異なるだけではなく、同じ養豚でも実はかなり経営の手法に差異があります。

豚の場合、繁殖、子豚導入による肥育、一貫経営による違いがあります。(日本ではほとんどが一貫経営ですが)一貫経営の中でも、母豚を購入しているのか、自家育成しているのか、種付けをする精液を購入するのか自家採種するのかなどの差により費目ごとのウエイトが変わってきます。経営規模、経営方針によってどこまでアウトソーシングするのかが異なり、それが指標の差となってきます。

しかし、いろいろな経営スタイルがある中、最終的な経営に影響を与えるのは農場要求率という数字です。この数字によって経営は大きく左右されます。

農場要求率というのは、農場全体の飼料の使用量/出荷した豚の生体重で計算される指標です。農場全体の飼料の量となりますので、母豚、肥育豚、子豚の全飼料を足した量となります。
この中で、一番飼料の使用量が多いのが肥育豚です。つまり、肥育豚が少ないエサで効率よく育つ(=要求率が良い)と、農場全体の要求率が良くなります。肥育豚の要求率は、品種、飼料の種類や加工方法、疾病の状況によって大きく異なります。近年の豚は改良が進むにつれて飼料の利用効率がよく、増体が良い品種特性となっています。

また、疾病が少ないと豚の成長はよくなり、逆に、疾病によっては成長が著しく遅れたりします。余談となりますが、ともすれば世間では大規模で効率を重視しているような農場は疾病が多く薬に頼っているイメージがありますが、実際は効率を重視するほど疾病コントロールは重要であり、大規模農場はむしろ衛生レベルが高く疾病も少ない傾向にあります。
肥育豚の要求率に影響が大きいものの一つに、飼料の種類があります。たとえば当社が扱っているエコフィードは、加熱処理がされているもの、微粉砕されているものなどが多くあります。パンは小麦を製粉し、焼き固めたものであり、製粉の過程で消化が悪いフスマなどは除去され加熱によりデンプンのアルファ化がおきているため、飼料としては可消化率はほぼ100%となり、非常に消化吸収がよいものとなります。これに対し、豚では一般的な配合飼料原料のトウモロコシの外皮の消化が悪いため、その分可消化率や消化速度が低くなります。エコフィードのメリットとしてはコストが注目を集めやすいですが、消化吸収がよく飼料要求率が良いことも重視すべき点です。

最近の豚の品種は1回の出生頭数が多くなっています。母豚1頭からの出荷頭数が増えると、当然増収になります。しかし、豚舎のキャパシティには限りがあります。たくさん子豚が生まれると、肥育する場所が足りなくなってしまいますので、結果として母豚の数を減らすこととなります。母豚の数が減り、食べる飼料の量が減りますので農場要求率はその分向上しますが、全体から見るとそれほど大きな効果が得られるわけではありません。近年の品種改良された豚は、たくさん子豚を産むことよりもむしろ肥育において要求率がよく、増体がいいことのほうが農場経営に寄与している場合が多いです。

一般的な養豚経営では売上に占める飼料費の割合は60%程度と言われていますが、お客さまの決算書見たり聞取りをしたりすると、要求率の差や購入単価の違いにより飼料費の割合は40%~70%程度までの大きな開きがあります。数値分析をすると養豚経営における収益構造の差がみられ、非常に面白く思います。

当社も養豚事業参入すべく奮闘していますが、参入しようと思った理由の一つが養豚の経営の幅の広さです。多様な経営戦略の選択肢がある養豚事業を経営することは、経営者の力量が問われるものでありチャレンジ精神が刺激されます。自社の強みを生かし、高い品質と低いコストを両立した畜産経営を目標にがんばりたいと思っています。

動物性タンパク質の効果

すっかり更新がご無沙汰になってしまいました。相変わらず書類の締めきりに追われる毎日です。

忙しい毎日で子供の相手もあまり出来ませんが、予定が無ければ朝食は子供と一緒に食べています。最近は好き嫌いがはっきりしてきて、キュウリやピーマンを食べさせるのに苦労しています(^^)キュウリは嫌いですが、肉や乳製品、特にチーズが好物で、ブルーチーズでもなんでももりもり食べます。

 

豚の飼料でも動物性のタンパク質を与えることがあります。ただし、昨今は動物性タンパク質をあまり使用しなくなってきています。大きな理由として動物性タンパク質原料の高騰です。魚粉は需要の増加と漁獲量の低迷が相まって高値安定状態になっています。脱脂粉乳なども需要の増加で一時はかなり国際相場が高騰しました。

また、BSE以降、動物性タンパク質の給与に関しては使用に制限がかかる原料もあることも要因のひとつです。

このような背景で、市販の配合飼料のうち特に出荷間近の豚にあたえる飼料はほとんど動物性タンパクが使用されていません。魚粉を給与すると肉ににおいが移行する傾向にあります。個人的な意見として、魚粉が原因と言うより、魚粉に含まれている脂肪の影響が大きいと思っています。したがって全国的に豚肉がにおいが少ない、あっさりとした脂のものが多くなっていいます。

一方、子豚の飼料には動物性タンパク質が使用されているものが中心です。脱脂粉乳や魚粉などが飼料原料として利用されています。理論的には飼料はアミノ酸のバランスがとれていれば問題ありませんので、大豆由来のタンパク質であってもアミノ酸のバランスを補正すれば動物性タンパク質と同等であるはずですが、実際には動物性タンパク質の方が増体がよい傾向にあります。特に子豚の段階での発育は非常に重要であるため、高価格な動物性タンパク質が原料として利用されています。動物性タンパク質が優位である理由として、嗜好性がよいこと、消化率がよいことなどがありますが、それだけでは説明できない部分があります。
当社でもゆで卵の廃棄品や脱脂粉乳(のB品)などを飼料原料として取り扱いしており、子豚の飼料として活用しています。未利用な資源は多くありますが、適材適所で有効活用していくことが必要かと思います。

ゆで卵

廃棄ゆで卵

飼料を取り扱うなかで栄養学が発展してもまだまだわからないことが多くあることを知り、生き物の奥深さを感じます。うちの子供はチーズが好きな割に身長が低めなのもどうなっているのだろうと思う今日この頃です(^^)