酵母と酵素

師走になり忙しい日々が続いています。忘年会も多く、酒を飲む機会が増えており肝臓に負担がかかる日々です。
ここ数年、飲む機会が多いのですっかり肝臓が鍛えられ、以前に比べ格段に酒に強くなった気がします。

当社は様々なお取引先がありますが、酒好きだからというわけではなく最近は醸造関係のお取引先が増えてきました。日本酒、ビール、ウィスキー、焼酎、みりん、醤油、味噌、etc.

発酵に興味がある自分としてはお客様訪問してもいろいろと現場を見せていただくのが非常に面白いです。
また、おいしいお酒にも巡り合える機会も増えたのもポイント高いです。酒蔵やウイスキー工房を営業しては酒を買う・・という本末転倒な機会も増えているのはここだけの話です(笑)

そんな中で今年から取り組んで切るのはビール酵母の飼料化です。ビール酵母自体は昔から食品や飼料として利用されており、一般的なものです。しかし、通常は乾燥させて乾燥ビール酵母として流通されており乾燥コストが高いため、かなり高価な原料でありどちらかというとサプリメント的な使用方法が主体でした。
現在、当社が取り組んでいるのはビール酵母を乾燥せず単に濃縮させ、そのまま豚のリキッドフィードのたんぱく源として利用するという取り組みです。
現在、飼料のタンパク源としては大豆粕の利用が主体です。しかし、大豆粕は近年の畜産需要の高まりにより単価が高止まりしています。これをビール酵母代替することで、コストの低減をめざしています。
愛知県農業総合試験場で試験を実施したところ、大豆粕以上の成績をあげることができ、自信をもって供給を行っています。現在は当社の豚もこのビール酵母をタンパク源としており、良い結果を残すことができています。

ところで、酵母という言葉は一般的ですが、じつはあまりよく理解されていないように思います。酵母とは単細胞の真菌(核を持つ)の総称であり、細菌とは異なります。酸素がある状態では普通に呼吸を行いますが、酸素が少ないと糖を分解し二酸化炭素とアルコールを生成するという呼吸を行い、これが酒やパンを造る際の重要な働きとなっています。飼料に使う際も菌体なのでタンパク質含量が高く、またアミノ酸のバランスが良いという特徴があります。

また、酵素と酵母の混同もよく見受けられますが、酵母と酵素は全く別のものです。酵母は生物ですが、酵素は体内でも分泌されているタンパク質の一種であり、触媒作用を持つものを指します。代表的なものにアミラーゼがありますが、これは唾液にも含まれておりデンプンを糖に分解する作用があります。カビ(これも真菌です)が多量に体外に分泌する性質があり、この性質を利用して麹などが作られています。麹はコウジカビであり、アミラーゼやプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を分泌します。この作用により、デンプンを糖化し、酒を造ることができるわけです。

流行っている酵素ジュースは糖が酵母発酵しているのであり、正確には「酵母ジュース」と言うべきものかと思います。むしろ、酵素の作用で糖ができている甘酒のほうが酵素ジュースとよぶのにふさわしいものです。個人的にはそのうちこの酵素ジュースのアルコール発酵を税務署が問題にするのではないかと危惧するところですw

食品リサイクルから見た科学リテラシー

相変わらずあわただしい日々を送っていますが、先日台風上陸に伴い参加予定していたセミナーが中止になったおかげで3日間ぽっかり予定が空いてしまいました。おかげでたまっていたデスクワークを若干ですがこなすことができました。
来週からはまた出張行脚の日々が続きます。最近は関東方面の案件が多く、月に1回は関東出張している状況です。

関東出張が多いのは、首都圏の人口集中や、中食、外食の比率増大に伴い食品工場の生産量が上昇し、食品残さの発生量が増えていることが背景にあります。関東でのお仕事の場合、多くは当社に食品残さを搬入するのではなく、「オンサイト処理」と呼ばれる手法を取っています。食品工場内で飼料に加工し、それを畜産農家へ直送する仕組みです。脱水や濃縮などのプロセスにより、保存性を高め品質を安定化することで飼料としての利用ができるようになります。
現在、実績があるものとしてはモヤシサイレージ、パイナップルサイレージ、ゴボウサイレージ、小豆皮サイレージなど多種多様なものを飼料化しています。最近はとくにパイナップルの皮の引き合いが多くあります。

また、現在取り組みを行っているものの一つにゆで卵のリサイクルがあります。ゆで卵の場合、食品工場で乾燥処理を行い、飼料とすることを計画しています。

この取り組みのために、現在乾燥機メーカー数社と打ち合わせを行っています。図面や仕様書を提出してもらい打ち合わせを行います。書類の一つに設計計算書がありますが、設計計算書をみると製造メーカーの技術水準がよくわかります。

乾燥機

乾燥機の場合、主に熱伝達効率と乾燥に必要なエネルギー量から必要なランニングコストが算出されます。
重油などの燃料を燃焼させることで熱が発生し、伝達効率に応じた熱量が被処理物に伝わります。水分を蒸発させるのに必要な熱量は決まっていますので、そこから必要燃料や電力量が算出できるわけです。
ところが、驚くことにメーカーによってはエネルギーの伝達効率が100%を超えるような計算書を提出してくることがあります。燃焼エネルギーは燃料種別に決まっており、また水分蒸発に必要なエネルギー量も決まっています。伝達効率が100%を超えることは理論上あり得ません。エネルギー伝達効率が120%という計算書を見ると、思わず「波動砲かよ」と突っ込みを入れたくなります。投入されたエネルギー以上の働きをすることはエネルギー保存の法則を超えた神の世界です。

乾燥飼料

自分は超理系人間ですので、理論を超越した書類を見るとムズムズしてしまいます。最近はなるべく自重しているのですが、それでも我慢できなくなり論破してしまうことがあります。

ちなみに、乾燥機の場合はボイラーの効率や乾燥機の熱伝達効率などトータルで計算するとだいたい投入されたエネルギーの50%程度が水分蒸発に使われることが多いようです。今のA重油の値段から計算すると、だいたい水分1㎏蒸発させるのに10円弱程度の燃料費がかかる計算です。熱回収(ヒートポンプ)などを使用していないケースでメーカーの計算これ以下の場合はおかしいと思ったほうが良いです。
こういったエセ科学的なものが跋扈する理由の一つが日本人の科学リテラシー不足にあるのではないかと思っています。もっと理系教育を充実させたほうがいいのではないかと痛感します。科学の基礎的知識は技術的な分野はもとより、日常生活において広く役に立つものでありますし、つきつめれば国家の発展にもつながるものだと思うのですが。

といったことを書き綴っていると、学生の頃、飲み会で女子大の子に「高橋君理屈っぽい」って言われたことを思い出しますw

豚の格付け

暑い日が続いていますが、今年は夏バテもせずなんとか乗り切れそうです。現場に出る機会が多かったのですっかりドカタ焼けしてしまいました。ただ、体重は順調に減っており晩酌のビールの量を増やしても体重は増えそうにない感じですw

暑いと人間も食欲なくなりますが、豚も一緒で顕著に飼料摂取量が低下し、その結果として増体が低下し、出荷体重が小さくなったりします。液状飼料(リキッドフィード)を使うメリットの一つとして、夏場の飼料摂取量の低下を抑えることができるといわれています。ただ、実際のところはリキッドフィードを使用していても飼料摂取量の低下が起きている場合も多くあります。
飼料原料の組み合わせなどによって嗜好性が変化しますので、いかに夏場でも飼料摂取量を低下させないかを工夫することが求められています。また、豚舎の環境を適切に維持することも非常に重要です。

 

手前味噌になりますが、自社農場は最近調子がよく、暑いさなかでもかなり飼料摂取量が高い状態を維持できています。おかげで増体もまずまず順調ですが、お盆休みでと畜場が休みのため出荷できなかったこともあり、重量が重すぎて規格を外れた豚が多くなっています。

格付け

豚の場合、格付けは上、中、並、等外という区分になります。格付けが落ちる原因として一般的に多いのは厚脂と重量オーバーです。背脂肪厚がある程度を越える、また重量も80kgを超えると格付けが落ちます。脂肪が厚いと肉の割合が減ってしまい歩留まりが悪くなるため格付けが落ちます。重量に規格があるのは、たとえばロースの大きさがまちまちとなってしまうと、トレーに収まらない、スライス品の重量がまちまちになってしまうなどの問題があるためです。
しかし、業界関係者の間では、重量がある程度大きいものの方がおいしいと言われています。今の規格では、じつはおいしさがスポイルされているということになります。柔らかさに影響を与える脂肪交雑なども格付けには考慮されません。低価格な海外産豚肉との競合を考えれば、本来は歩留まりや大きさだけではなく、味も基準となる格付けであってほしいものです。

今回の出荷が重量大きめだった理由の一つは、小さいよりは大きい方がおいしい肉を供給できるという思いがあったこともあります。個人的には最終的には自社で販売することで、規格にとらわれずおいしい肉を提供できるようになりたいと思っています。
とは言え、まだ生産には課題が多く、販売以前にやらないといけないことがたくさんある訳ですが・・。

養豚に新規参入

気がつくと1月も終わってしまいました。年月の過ぎるのが非常に早く感じる44歳です。
当社は12月末決算です。昨年は新規投資をいろいろと行ったので、決算内容は不本意なものがありました。
当社は決算の結果を持って経営指針書の発表を行っています。経営指針書はいわゆる事業計画ですが、経営理念、経営方針(戦略)、経営計画(戦術)をまとめたものです。私が所属している中小企業家同友会では、この経営指針書を作ることを会の方針としています。決算の実績をふまえ、今期以降の会社経営のあり方を社員、取引先の皆様に発表致しました。

昨期の投資のうち大きいのは、新卒採用と新規事業の開始です。昨年は4月に大卒新人を初めて採用し、今年の4月にも入社予定です。採用が難しい時代において多くの応募があり、優秀な人材が入社してくれるのは本当に感謝しています。当社が存在意義ある事業を行い、また経営指針書の発表など含めた将来展望を明示していることが、採用ができている理由の一つでは無いかと思います。

新規事業の方は、1月より養豚を開始しています。非常にささやかな規模にもかかわらず、大きな投資となり畜産を始めることの大変さを感じています。
なぜ、当社が養豚を始めるのかについて、指針発表でもお話ししましたが、お取引先からもよくお問い合わせ頂くのでこちらに記します。

・リサイクル飼料で食糧生産を行うという社会的存在意義
世界人口は増大し、日本の相対的GDPは低下しています。日本人がいつまでも海外の食糧、飼料を輸入できるとも限りません。国内でリサイクル飼料を利用した養豚を行なうことは大きな意義があります。

・事業シナジー効果
飼料を作っているため、安価で良いエサを提供することができます。

・ビジネスとしての魅力
国内養豚生産が減少しており、国産豚肉価格は高止まりしています。安価な飼料を利用することができるため、収益性も期待できます。

・実験農場として
新しい飼料の給与試験や、嗜好性の試験を行います。

・マーケティングの実験
養豚業界にいると、マーケティングを的確に行うことで販売拡大できる要素がまだ大きいのでは無いかと感じます。販売の取り組みを実験的に行いたいと思っています。最終的には飲食店経営もできたらと考えています。

創造と野望と希望を実現するために、新たな分野に踏み出していきます。皆様のご支援のほどよろしくお願いします。

農場要求率と養豚経営

年の瀬が迫ってきて、慌ただしい日々を送っています。日頃からバタバタしているので普段とあまり変わらないという話もありますが(^^)

おかげで学会誌とか業界紙を読む時間が無く、出張中に飛行機やホテルの中で読む羽目になってます。ただ、勉強を継続することは当社の強みにつながっていると思っているので、そこだけは怠らないように努力しています。特に、畜産に関してはまだまだ勉強をすることが多いので、力を入れています。

出張先のホテルで業界紙を勉強
出張先のホテルにて

畜産の勉強をすると、畜産「経営」というのは非常に面白いと思います。耕種農家以上にいろいろな要因があるので、分析をすると様々なことが見えてきます。当然ながら畜種によって全く経営スタイルが異なっており、豚、牛、鶏で分析ポイントが異なるだけではなく、同じ養豚でも実はかなり経営の手法に差異があります。

豚の場合、繁殖、子豚導入による肥育、一貫経営による違いがあります。(日本ではほとんどが一貫経営ですが)一貫経営の中でも、母豚を購入しているのか、自家育成しているのか、種付けをする精液を購入するのか自家採種するのかなどの差により費目ごとのウエイトが変わってきます。経営規模、経営方針によってどこまでアウトソーシングするのかが異なり、それが指標の差となってきます。

しかし、いろいろな経営スタイルがある中、最終的な経営に影響を与えるのは農場要求率という数字です。この数字によって経営は大きく左右されます。

農場要求率というのは、農場全体の飼料の使用量/出荷した豚の生体重で計算される指標です。農場全体の飼料の量となりますので、母豚、肥育豚、子豚の全飼料を足した量となります。
この中で、一番飼料の使用量が多いのが肥育豚です。つまり、肥育豚が少ないエサで効率よく育つ(=要求率が良い)と、農場全体の要求率が良くなります。肥育豚の要求率は、品種、飼料の種類や加工方法、疾病の状況によって大きく異なります。近年の豚は改良が進むにつれて飼料の利用効率がよく、増体が良い品種特性となっています。

また、疾病が少ないと豚の成長はよくなり、逆に、疾病によっては成長が著しく遅れたりします。余談となりますが、ともすれば世間では大規模で効率を重視しているような農場は疾病が多く薬に頼っているイメージがありますが、実際は効率を重視するほど疾病コントロールは重要であり、大規模農場はむしろ衛生レベルが高く疾病も少ない傾向にあります。
肥育豚の要求率に影響が大きいものの一つに、飼料の種類があります。たとえば当社が扱っているエコフィードは、加熱処理がされているもの、微粉砕されているものなどが多くあります。パンは小麦を製粉し、焼き固めたものであり、製粉の過程で消化が悪いフスマなどは除去され加熱によりデンプンのアルファ化がおきているため、飼料としては可消化率はほぼ100%となり、非常に消化吸収がよいものとなります。これに対し、豚では一般的な配合飼料原料のトウモロコシの外皮の消化が悪いため、その分可消化率や消化速度が低くなります。エコフィードのメリットとしてはコストが注目を集めやすいですが、消化吸収がよく飼料要求率が良いことも重視すべき点です。

最近の豚の品種は1回の出生頭数が多くなっています。母豚1頭からの出荷頭数が増えると、当然増収になります。しかし、豚舎のキャパシティには限りがあります。たくさん子豚が生まれると、肥育する場所が足りなくなってしまいますので、結果として母豚の数を減らすこととなります。母豚の数が減り、食べる飼料の量が減りますので農場要求率はその分向上しますが、全体から見るとそれほど大きな効果が得られるわけではありません。近年の品種改良された豚は、たくさん子豚を産むことよりもむしろ肥育において要求率がよく、増体がいいことのほうが農場経営に寄与している場合が多いです。

一般的な養豚経営では売上に占める飼料費の割合は60%程度と言われていますが、お客さまの決算書見たり聞取りをしたりすると、要求率の差や購入単価の違いにより飼料費の割合は40%~70%程度までの大きな開きがあります。数値分析をすると養豚経営における収益構造の差がみられ、非常に面白く思います。

当社も養豚事業参入すべく奮闘していますが、参入しようと思った理由の一つが養豚の経営の幅の広さです。多様な経営戦略の選択肢がある養豚事業を経営することは、経営者の力量が問われるものでありチャレンジ精神が刺激されます。自社の強みを生かし、高い品質と低いコストを両立した畜産経営を目標にがんばりたいと思っています。

動物性タンパク質の効果

すっかり更新がご無沙汰になってしまいました。相変わらず書類の締めきりに追われる毎日です。

忙しい毎日で子供の相手もあまり出来ませんが、予定が無ければ朝食は子供と一緒に食べています。最近は好き嫌いがはっきりしてきて、キュウリやピーマンを食べさせるのに苦労しています(^^)キュウリは嫌いですが、肉や乳製品、特にチーズが好物で、ブルーチーズでもなんでももりもり食べます。

 

豚の飼料でも動物性のタンパク質を与えることがあります。ただし、昨今は動物性タンパク質をあまり使用しなくなってきています。大きな理由として動物性タンパク質原料の高騰です。魚粉は需要の増加と漁獲量の低迷が相まって高値安定状態になっています。脱脂粉乳なども需要の増加で一時はかなり国際相場が高騰しました。

また、BSE以降、動物性タンパク質の給与に関しては使用に制限がかかる原料もあることも要因のひとつです。

このような背景で、市販の配合飼料のうち特に出荷間近の豚にあたえる飼料はほとんど動物性タンパクが使用されていません。魚粉を給与すると肉ににおいが移行する傾向にあります。個人的な意見として、魚粉が原因と言うより、魚粉に含まれている脂肪の影響が大きいと思っています。したがって全国的に豚肉がにおいが少ない、あっさりとした脂のものが多くなっていいます。

一方、子豚の飼料には動物性タンパク質が使用されているものが中心です。脱脂粉乳や魚粉などが飼料原料として利用されています。理論的には飼料はアミノ酸のバランスがとれていれば問題ありませんので、大豆由来のタンパク質であってもアミノ酸のバランスを補正すれば動物性タンパク質と同等であるはずですが、実際には動物性タンパク質の方が増体がよい傾向にあります。特に子豚の段階での発育は非常に重要であるため、高価格な動物性タンパク質が原料として利用されています。動物性タンパク質が優位である理由として、嗜好性がよいこと、消化率がよいことなどがありますが、それだけでは説明できない部分があります。
当社でもゆで卵の廃棄品や脱脂粉乳(のB品)などを飼料原料として取り扱いしており、子豚の飼料として活用しています。未利用な資源は多くありますが、適材適所で有効活用していくことが必要かと思います。

ゆで卵

廃棄ゆで卵

飼料を取り扱うなかで栄養学が発展してもまだまだわからないことが多くあることを知り、生き物の奥深さを感じます。うちの子供はチーズが好きな割に身長が低めなのもどうなっているのだろうと思う今日この頃です(^^)

エコフィードの保存性

ここ数年来、東京ビッグサイトで行われる環境展に出展しています。東京で4日間の展示会は営業担当者が私一人の当社にとって結構負担も大きいのですが、ビッグサイトだけに多くの方の来場を頂けるので継続して出展しています。おかげで毎年5月は非常に忙しく過ごしており、ブログの更新も滞りがちになっています。(言い訳ですが・・)

展示内容は毎年あまり代わり映えもせず、食品工場でのオンサイト処理に関するものです。オンサイト処理とは、食品工場で食品廃棄物を処理するシステムのことです。腐敗しやすい食品廃棄物も現場で処理を行うことで、長期間の保存が可能となり、飼料としての利用が容易になります。例えば、以前も投稿しましたが当社ではビール粕のリサイクルに取り組んでいます。ビール粕も適切な処理を行わなければすぐに腐敗変性してしまいますが、処理を行うことで高品質な飼料となります。

展示会ではよく、「保存処理とはどういった処理をするのか?」というお問い合わせをいただくことがあります。食品工場から排出される食品残さは、業種によってももちろん異なりますし、工場によっても差異があります。このため、現場によって処理方法を変えることが必要です。当社はこれまでの実績でノウハウを蓄積しており、コストをできるだけかけず、品質を確保できる手法を選択しています。

たとえば、当社ではもやしをサイレージ化して飼料にする実績が多くあります。もやしは高タンパクであり、遊離アミノ酸やカルシウムを多く含むため緩衝能が高くpHが下がりにくい傾向があります。密閉保管しておけば乳酸発酵も行われますが、それだけではpHが十分に下がらないため品質が不安定になります。このためもやしの保存処理はギ酸を添加する必要があります。

他方、同じ野菜加工残さでもゴボウの場合はギ酸の添加は不要です。ゴボウは想像に反し糖含量が高いため密閉保管することで容易に乳酸発酵がおきます。このため、サイレージ化は比較的容易です。

廃棄ゴボウ
廃棄ゴボウ

無論、乾燥処理を行えば安定した品質のものができます。しかし、高水分の食品廃棄物の場合、乾燥処理のランニングコストが高くなるため乾燥処理は事業収支が厳しいケースが多いです。製造される飼料の価格も踏まえ、乾燥処理を選択することが重要になります。

また、当社では保存処理を行うだけでは無く、飼料としての有効性を確認するために各種分析も実施しています。上記のゴボウも共同研究先の大学で消化性試験を実施し、飼料価値を見いだしています。

様々な原料を扱うに当たっては、科学的なアプローチを駆使することが求められます。仮説を立て、実験し、そして実用化することで食品メーカーにも畜産農家にも喜んでもらえる飼料ができる、この一連の新たな価値を創出するプロセスはとてもやりがいがありますし、おもしろくもあります。これからも新たな価値創出をめざし取り組んでいきたいと思います。

 

エコフィードを使えば儲かるのか

ビジネス向けサイトとか見ていると、「儲かっている会社の社長はこれをやっている」みたいな記事をみることがあります。例えば、新聞を3紙以上読んでいる社長の会社の方が経常利益が高い・・と言ったようなネタです。

この手の話、いつも思うのですが、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのではないかと思います。

新聞をたくさん読むことで知識が付いて経営が良くなってきたのか、それとも経営が良いから余裕ができて新聞を読む時間が取れているのか・・。新聞を読むことが無駄になることは無いと思いますが、効果を期待しすぎるのは禁物であると思います。

ホルスタイン
 

当社では有機肥料やエコフィードの生産を行っています。当社のお客さまや知り合いは有機肥料やエコフィードを使いこなしている方がたくさんみえます。
そういった方は概して経営がよいことが多い傾向にあります。有機肥料は一概に言えませんが、エコフィードは一般に配合飼料、輸入飼料と比較して価格が安く、飼料コストが生産コストの大部分を占める畜産農家がエコフィードを使用することでコストが下がります。
当社のお客さまでエコフィードをメインにしている方は概して経営がよいのです。そういった状況を見るとコストの安い飼料をうまく使っているから経営が良くなっているという印象があります。

でも、個人的にはエコフィード使用により経営が良くなっているのはコストが下がっていることが大きな要因では無いと思っています。エコフィードは配合飼料と異なり、成分もまちまちであり自分で配合する必要があったりします。使用に際して工夫が必要ですし、購入飼料と比べ手間もかかります。こういったものをうまく使うには、技術レベルが高く、前向きで意欲がある人で無ければ難しいです。
購入飼料を使うだけでしたら飼料の成分などのことを知らなくても問題ありませんので、残念ながら畜産農家でも飼料の知識に詳しくない人が多く見えます。小規模農家であっても数千万単位で購入しているわけですから、その内容を知ろうとしないのは大きな問題です。
要は、エコフィードをうまく使いこなせる方はもともと経営が良い農家が多いのでは無いかと思います。逆に、コストが下がるからと言って知識が無い人がむやみに使用すると、生産効率がわるくなったり手間がかかったり、畜産物の品質が下がったりと言ったことが発生しかえって経営が悪化するケースも散見されます。

当社のお客さまの酪農家さんは酪農教育ファームに参加されているケースが多いです。酪農教育ファームとエコフィードは関連がありませんが、酪農教育ファームに参加されるような農家さんは前向きな方が多いので、エコフィードなどの新しい技術に積極的なのではと思います。

耕種農家でも土壌分析をしなかったり、肥料の設計をお任せにしているケースはすくなくありません。そういった農家では肥効がまちまちで取り扱いが難しい有機肥料をうまく使用できるはずがありません。有機肥料をうまく使いこなしている農家は肥料に対して知識が深く、収量が多く高品質な農産物を生産できているため経営が良くなっているのではないかと思います。なお、そういった農家は案外有機JASを取得するわけではなく、慣行栽培でありながら減農薬、減化学肥料で有機肥料をうまく使いこなしている場合が多いと感じます。有機肥料を使うのはJASを取るためでも化学肥料を危険視ししているわけでもなく、有機肥料の方がうまく使用すると効果を発揮するからではないかと推察しています。

逆に言うと、そういったハイレベルな農家はエコフィードや有機肥料を使わなくても経営がよかったりします。レベルが高い農家が使いこなすのが難しいけどうまく使うと効果を発揮する・・これがエコフィードや有機肥料ではないでしょうか。
これからの厳しい環境下では、農業生産においても高い技術レベルと前向きな姿勢が求められていくことと思います。私もそういったお客さまとお付き合いするために更に勉強と技術研鑽をしていきたいと思っています。

塩は買うものでない

当社では労働安全衛生法に則って健康診断を実施しています。結果は個人に配るのですが、会社にも保管用の一覧が届きます。先日もらったらうちのスタッフ引っかかりまくりで困惑です。従業員の健康が心配なだけではなく、零細企業の場合従業員の健康問題は会社経営にも影響しますので、健康管理には気をつけてほしいものです。

食品リサイクル稼業をしているとよくわかるのですが、今の日本人が食べているものはカロリー過多、塩分過多、脂肪過多です。とくに、日本人は塩分を過剰摂取していると言われており、WHOの推奨値の2倍程度摂取していると言われています。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77445710U4A920C1000000/

一方、家畜のエサにも塩分が配合されています。例えば汗腺が少ない豚では飼料中の塩分要求量はずっと少なく、だいたい0.2%程度です。肥育豚は乾燥物換算で2kgぐらいの飼料をたべますので、塩として約4gぐらいとなります。これは必要量ですので、実際はこれより若干多い塩分が飼料には配合されています。

しかし、食品廃棄物を扱っていると塩分が多いものが多くあるため、これを利用しない手はありません。品質の高い廃棄物は入手が難しくなってきていますが、塩分が多いものはまだまだ手つかずで残っています。

当社が今まで塩分が多いものとして利用してきたものの例として

・味噌RIMG0197

・醤油粕

・五平餅のたれ

・めんつゆ

・ふりかけ

・インスタントスープ

・椎茸旨煮の煮汁

等々があります。たとえば味噌は塩分10%程度あります。1日10トンのリキッドフィードを製造するとすると、乾物として約2トン、塩分0.4%とすると8kgの塩の量となり、塩分10%の味噌を80kg配合することが可能となります。なお、当社のお客さまの場合、塩分があるものを入れるため、リキッドフィードに混合する配合飼料からは塩を抜いてあります。

また、こういった高塩分のものに共通する特徴として、旨み成分であるアミノ酸を多く含むことが多いと言うことです。これらのものを配合することで、単に塩分(ナトリウム)の補給になるだけではなく、旨み成分による嗜好性向上が期待できます。

この中でもとくにめんつゆは絶大な効果がありました。めんつゆは塩分が5%程度と案外低く、かなりの量を添加できます。糖度が15度程度あり、鰹だしの旨み成分が含まれているため相当な嗜好性アップの効果が得られました。

最近はリキッドフィード原料にゆでうどんの廃棄品を利用しているため、できあがった飼料はいわば「味噌煮込み」状態です(笑)
よりよい飼料を製造するためには、いかに未利用の資源を有効に活用するかの智慧が求められています。