抗生物質の利用

娘(3歳)が風邪を引いたようで、39度ぐらい熱が出ています。普段は元気いっぱいで大変な騒ぎですが、今日は大人しく寝ているのでブログなど書いています。
明日は日曜日で休日診療に行くか様子を見ているところです。

医者に行くと薬の処方があるわけですが、熱が出ているだけでも割と抗生物質が出されることが多いように思います。
畜産関連の仕事をしていると抗生物質の話題も良く出ますが、実は畜産では抗生物質の使用はかなり厳しく制限されています。


Wikipediaより By Yikrazuul – 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン

先日も抗生物質の一部が使用禁止になるというニュースがありました。
薬剤耐性で2つの飼料添加物取り消しへ 農林水産省

まず、抗生物質とはどんなものか改めて確認してみます。
抗生物質は細菌やマイコプラズマなど微生物の増殖や活動を抑制する作用がある物質のことを総称しています。一番最初に発見されたのがペニシリンで、青カビから抽出されています。他の抗生物質もカビなどが由来のものが多いです。抗生物質は微生物だけに作用しますので、基本的には(アレルギー反応などはありますが)哺乳動物には作用しないものを言い、またウイルスなどにも効果はありません。
日本では食品衛生法において「食品は、抗生物質を含有してはならない。」という規定がありますので、と畜場や牛乳工場では検査が行われ、万一検出された場合は出荷が停止されます。しかし、誤解されていることが多いですが、抗生物質自体は人間用、家畜用でも同じようなものが使用されていますので、抗生物質が残留することで健康被害が起きるというわけではありません。抗生物質が危険なわけではなく、抗生物質の多用により抗生物質が効かない耐性菌が出現することが懸念されるためです。実際の現場では、抗生物質が残留しないように出荷時から一定期間は抗生物質は使用できませんし、採卵鶏や牛乳のように毎日出荷するものの場合は出荷中は抗生物質は使用されません。
上記の禁止になった抗生物質も、耐性菌が発見されたため禁止に至ることになり、それ自体の有害性があったわけではありません。

畜産では抗生物質は大きく分けて「治療」「増体」の2種類の目的で使用されます。治療用は人間同様に疾病にかかった豚に経口投与or注射するやりかたで使用されています。一方、増体目的というのは、飼料に抗生物質を少量だけ添加することで成長がよくなることが知られており、より効率的に家畜生産する目的で使用されます。論文のデータなどを見ると増体は確実に良くなる結果が得られています。このメカニズムとしては、抗生物質を添加することで細菌感染が減ることで、免疫ができなくなり、その分のエネルギーロスがなくなるため成長が良くなると一般的には言われています。人間も動物も体内や皮膚に多くの常在菌を養っています。これらの常在菌により病気にならないのは免疫システムがあるためです。(ので、HIVなどで免疫不全になると感染してしまいます)この免疫生成にはかなりのエネルギーを消費しており、この分が減るとエネルギー効率が良くなる・・という仕組みです。
ただ、個人的には増体目的の抗生物質添加にはすこし疑問があります。確か実験結果を見ると顕著な効果があるのですが、実験を行っている多くが試験農場などでもともと細菌感染の機会が少ない状況にあり、免疫抑制の効果が発現しやすい可能性があります。また、菌叢を減らすと言うことは特定の菌が増殖しやすくなる可能性も否定できないのでは無いかと思います。なにより、微量に添加するというのは耐性菌を生み出しやすい条件であります。

私の父は数年前に風邪をこじらせて敗血症になり、抗生物質の多量投与により危機を脱して退院することができました。私自身もピロリ菌除菌や副鼻腔炎治療などで抗生物質にはいろいろと恩恵を受けています。
その経験から、抗生物質は切り札として効果を発揮することが大事ではないかと思います。なので、ウイルス性のものが多い風邪での安易な処方や、増体目的の飼料添加など避けられるものは避けた方が良いと思っています。

重ねて強調しますが、抗生物質自体は安全なものであり使用をむやみに忌避する必要は無いと思います。なので抗生物質不使用で安心という売り方には賛同しかねますが、一方で無用な使用(人間に対しても家畜に対しても)は公衆衛生に影響を与える可能性があるということを留意すべきかと思います。
畜産物の抗生物質を敬遠している消費者が、風邪ひいたときに医者で「抗生物質は出ないのか」と言ったりするのは矛盾しています。いずれにせよ、人間も家畜もあまり薬に依存しすぎないようにすべきかと思います。と言いつつ自分は抗アレルギー剤を365日服用していたりするのですが・・w。

農業政策のあり方について考える

忙しい日々を過ごしているうちにすっかり7月になりました。空梅雨気味で暑い日々が続きすでに夏ばて気味です。
そんな中、当社も半期が過ぎ、来期に向けて今後の事業の方向性を検討しています。
事業のあり方を考える上で外部環境の分析は非常に重要です。めまぐるしく情勢が変わる昨今ですが、先日より報道されている日欧のEPA合意は様々な影響があるのではないかと予想しています。

報道では今回の合意では、ソフトチーズの関税撤廃が含まれており、報道でも大きく取り上げられていました。現在約30%の関税が課されていますので、撤廃によりそれなり価格が低下することが予想されます。しかし、関税がある現時点でもヨーロッパのチーズは国産ナチュラルチーズより安価に販売されていることがほとんどです。ここに農業政策の基本的なスタンスの違いが現れています。
日本の低成長・デフレが20年以上続いた結果、ヨーロッパの物価・賃金水準は日本よりはるかに高くなっています。(最低賃金1,200円ぐらが多いようです)その上、はるばるヨーロッパから運賃をかけて日本に持ってきてなおチーズが安いのは、ヨーロッパの乳価が日本より圧倒的に安いのが大きな理由です。現在の乳価はおよそ40円/kgで、おおむね日本の半額以下です。
ヨーロッパにおける農業保護政策は、農産物価格は安く維持し、農業所得を補填することで農家の生計を維持するというスタイルになっています。生産余剰分は輸出により調整するという方法をとっています。それゆえ輸出先からダンピング批判を受けたりします。
他方、日本の農業政策、特に米と牛乳は、国内で生産調整をして余剰が出ないようにし価格を維持し、不足分は国家管理貿易により輸入するという方法をとっています。

現在の日本の手法は以下のような問題があると私は思います。
1.生産調整がうまくいかず、オーバーシュートしやすい。農産物はすぐに生産の調整がしにくいため、余剰になって生産調整すると不足すると言ったことを繰り返しがちになる。輸入も国家貿易では柔軟に対応出来ない場合がある。
たとえば、牛乳は10年ほど前には生産過剰により廃棄されていましたが、現在は生産拡大、増産が謳われています。米も同様の事態が発生しています。
国内価格を高くする政策のため、輸出により在庫調整する手法が取りにくいのも問題です。

2.食料品価格を高く維持することは、エンゲル係数の高い低所得者層に対して負担が大きくなる。また、消費減退や、代替需要増加の原因になる。
大手メーカーの菓子、パンなどの原料表記を見ると、おどろくほどバターが少なく加工油脂、ファットスプレッドなどが幅をきかせています。バターではなくこれらの代替油脂を使用する大きな理由は価格にあります。

3.世界のグローバル化、複雑化が進んでいく中、品目ごとの関税での保護が難しくなっている。
たとえば、今回のEPAではソフトチーズの関税が撤廃されますが、冷凍ピザだと元から20%程度の関税率です。豚肉も関税撤廃が予定されていますが、ソーセージの関税は10%しかありません。加工製品での輸入は今後も増えていくことが予想されます。

他方、ヨーロッパ他の所得補償制度にも問題があります。
1.財政負担が大きくなる。実質的には、今まで消費者が商品代金として負担していたものを、税金を一旦払いそれを生産者に渡すことになるので負担額が増えるわけでは無いが、感覚的な負担は増えるため理解を進める必要がある。

2.所得補償のやり方によっては、モラルハザードがおこりがち。
日本の飼料米政策では飼料米を作りさえすればお金がもらえる制度になっていたため、作付けだけして生産をきちんと行わない例が問題となりました。耕地面積に応じた単純配分などではこういう問題が起こります。生産量、生産額に応じた配分にする必要があります。

上記のような問題はありますが、私はグローバル化が進む中では関税による保護から農産物価格を抑えることで競争力を高め、輸出入を自由化することで需給バランスを取る方が合理性が高いと思います。

私もEUの農業補助政策については勉強をしているところなので、理解が不足している点も多くあるかと思います。ただ、根本的な農業政策が異なっている背景下で自由化を推進することは影響が大きいのも確かであり、設備や施設の補助をすれば競争力が増えるというものでもありません。価格誘導と生産調整をどのようにしていくか、根本的なところから議論、検討することが望まれます。

農場要求率と養豚経営

年の瀬が迫ってきて、慌ただしい日々を送っています。日頃からバタバタしているので普段とあまり変わらないという話もありますが(^^)

おかげで学会誌とか業界紙を読む時間が無く、出張中に飛行機やホテルの中で読む羽目になってます。ただ、勉強を継続することは当社の強みにつながっていると思っているので、そこだけは怠らないように努力しています。特に、畜産に関してはまだまだ勉強をすることが多いので、力を入れています。

出張先のホテルで業界紙を勉強
出張先のホテルにて

畜産の勉強をすると、畜産「経営」というのは非常に面白いと思います。耕種農家以上にいろいろな要因があるので、分析をすると様々なことが見えてきます。当然ながら畜種によって全く経営スタイルが異なっており、豚、牛、鶏で分析ポイントが異なるだけではなく、同じ養豚でも実はかなり経営の手法に差異があります。

豚の場合、繁殖、子豚導入による肥育、一貫経営による違いがあります。(日本ではほとんどが一貫経営ですが)一貫経営の中でも、母豚を購入しているのか、自家育成しているのか、種付けをする精液を購入するのか自家採種するのかなどの差により費目ごとのウエイトが変わってきます。経営規模、経営方針によってどこまでアウトソーシングするのかが異なり、それが指標の差となってきます。

しかし、いろいろな経営スタイルがある中、最終的な経営に影響を与えるのは農場要求率という数字です。この数字によって経営は大きく左右されます。

農場要求率というのは、農場全体の飼料の使用量/出荷した豚の生体重で計算される指標です。農場全体の飼料の量となりますので、母豚、肥育豚、子豚の全飼料を足した量となります。
この中で、一番飼料の使用量が多いのが肥育豚です。つまり、肥育豚が少ないエサで効率よく育つ(=要求率が良い)と、農場全体の要求率が良くなります。肥育豚の要求率は、品種、飼料の種類や加工方法、疾病の状況によって大きく異なります。近年の豚は改良が進むにつれて飼料の利用効率がよく、増体が良い品種特性となっています。

また、疾病が少ないと豚の成長はよくなり、逆に、疾病によっては成長が著しく遅れたりします。余談となりますが、ともすれば世間では大規模で効率を重視しているような農場は疾病が多く薬に頼っているイメージがありますが、実際は効率を重視するほど疾病コントロールは重要であり、大規模農場はむしろ衛生レベルが高く疾病も少ない傾向にあります。
肥育豚の要求率に影響が大きいものの一つに、飼料の種類があります。たとえば当社が扱っているエコフィードは、加熱処理がされているもの、微粉砕されているものなどが多くあります。パンは小麦を製粉し、焼き固めたものであり、製粉の過程で消化が悪いフスマなどは除去され加熱によりデンプンのアルファ化がおきているため、飼料としては可消化率はほぼ100%となり、非常に消化吸収がよいものとなります。これに対し、豚では一般的な配合飼料原料のトウモロコシの外皮の消化が悪いため、その分可消化率や消化速度が低くなります。エコフィードのメリットとしてはコストが注目を集めやすいですが、消化吸収がよく飼料要求率が良いことも重視すべき点です。

最近の豚の品種は1回の出生頭数が多くなっています。母豚1頭からの出荷頭数が増えると、当然増収になります。しかし、豚舎のキャパシティには限りがあります。たくさん子豚が生まれると、肥育する場所が足りなくなってしまいますので、結果として母豚の数を減らすこととなります。母豚の数が減り、食べる飼料の量が減りますので農場要求率はその分向上しますが、全体から見るとそれほど大きな効果が得られるわけではありません。近年の品種改良された豚は、たくさん子豚を産むことよりもむしろ肥育において要求率がよく、増体がいいことのほうが農場経営に寄与している場合が多いです。

一般的な養豚経営では売上に占める飼料費の割合は60%程度と言われていますが、お客さまの決算書見たり聞取りをしたりすると、要求率の差や購入単価の違いにより飼料費の割合は40%~70%程度までの大きな開きがあります。数値分析をすると養豚経営における収益構造の差がみられ、非常に面白く思います。

当社も養豚事業参入すべく奮闘していますが、参入しようと思った理由の一つが養豚の経営の幅の広さです。多様な経営戦略の選択肢がある養豚事業を経営することは、経営者の力量が問われるものでありチャレンジ精神が刺激されます。自社の強みを生かし、高い品質と低いコストを両立した畜産経営を目標にがんばりたいと思っています。

「農業改革」の矛盾

イベント、展示会、講演の講師などなどの予定がめじろおしですっかりブログ更新を怠ってしまいました。
もちろん本業も忙しくしています。最近は肥料関係の仕事がまた増えてきており、受発注処理にも追われる毎日です。

と言うわけで、当社は肥料、飼料などの農業資材を扱っています。そう言う立場から見ると、現在マスコミを賑わしている農業改革には非常に疑問を感じています。

こんなニュースがありました。
<自民党>小泉流改革、正念場…「本丸」農協、農家の反発も
自民党の小泉進次郎農林部会長は3日、11月中にもまとめる農業改革の「骨太の方針」に反映させるため、仙台市で農業関係者と意見交換した。・・以下略
この記事によると、”農協改革を「改革の本丸」と位置づける小泉氏の方針”とあります。現在の日本の農業が厳しい状況に置かれていることは間違いない事実ですが、ではそれはそもそも農協の存在のせいなのでしょうか。

以前も投稿しましたが、農家という個人、零細事業者がマーケットと対峙しているためには農協は必要な存在です。資材を共同で購入することで安価に調達が可能になり、出荷を共同で行うことで市場での存在価値を出すことができます。きちんと仕事をしていない農協が多くあることは事実ですが、農協のプレゼンス低下に伴い商系(非農協系)が台頭しており農家にはその選択の自由があります。小泉氏は「農協よりホームセンターの方が肥料が安い」と批判していますが、ホームセンターの方が安ければホームセンターで買えばいいだけの話であり、現在の議論は「吉野家よりすき家の方が牛丼が高い」と政府が批判するようなものです。
そもそも、農協のあり方の問題は農協という存在に起因するものでは無く、多くの原因は肥大化した組織にありがちなセクショナリズムと事なかれ主義にあります。ので、組織運営がきちんとできている農協は存在感があり、運営が官僚化している農協との差が開いてきているわけです。

現在の農業の根本的な問題は、マーケットに介在しすぎる農業施策に根本的な原因があると私は考えています。業界として保護が手厚い米、牛肉、牛乳などの分野の方が競争力が低く、政府保護がほとんど無い野菜や鶏卵のほうが競争力があるのはその証左です。補助メニューが微に入り細に入り作られており、農家の思考を奪っているように思います。
たとえば「子牛に乳酸菌製剤を与える」のに補助が出ていたりしますが、子牛の健康管理のメニューまで補助金で誘導する必要があるかはなはだ疑問です。

本来、農業改革を標榜するならばこれまでの農業政策(そのほとんどが自民党政権下で行われてきたものであるわけですが)の反省と総括を行い、農業保護の仕組み、あり方の大枠フレームをまず議論していくべきであって、資材価格などの重箱の隅をつつくような話でマスコミの耳目を集める作戦は単なる選挙向けのパフォーマンスにすぎず、農業を変えることにはなりません。
郵政民営化、道路公団民営化でなにか変わったかを見てみれば、「農協改革」の行く末も容易に想像できることかと思います。

では、どんな農業施策を進めていくべきなのでしょうか。私は農業政策は所得補償政策に行き着くしか無いと考えていますが
詳しくは別のエントリーにて投稿したいと考えています。

これは農業だけに限ったことではありませんが、理念があり、ビジョンがあっての戦略、政策であるべきです。将来のビジョンが不明確なことが日本の閉塞感の根本原因になっているような気がしてなりません。明確なビジョンが打ち出され、安心して事業を営み、生活ができる日本となって欲しいと願ってやみません。

農業におけるシステムの導入

新年度も始まりましたが、相変わらずバタバタと落ち着きの無い日々を過ごしています。当社の決算は12月なので、数年前までは年度末と言っても関係なかったのですが、最近は補助事業をいくつか取り組んでいますので年度末、年度初めの書類作成が多く追われる日々です。

そんな中で、当社では販売管理システムを導入することを検討しており、システム導入の費用に充当すべく補助事業の書類を作成しています。最近、業務拡大に伴いお客さまとの取引件数が増加してきており、どうにもこうにも手が回らなくなってきたので業務効率の向上をはかるためにシステム導入を検討している次第です。手書き伝票とFAXで処理することの限界を感ている今日この頃です。

零細企業である当社が販売管理システムを導入するのは大きな投資ですが、顧客情報の集約化により業務効率の向上だけではなく、データ分析により次の仕事への展開を図っていきたいと思っています。これからの時代はシステムをいかにうまく使いこなしていくかが求められています。

最近、当社のお客さまである農家でもシステム導入が徐々に進んでいます。たとえば、稲作オペレータ向けのクラウドシステムでは、圃場とGPS位置データをひもづけし、それぞれの圃場での作業履歴、収量データなどを蓄積できるような仕組みがとられています。それぞれの田んぼでどんな作業をし、どれぐらい収穫したかを記録することでそれぞれの田んぼの成績がきちんと把握できるようになるわけです。いわゆる「見える化」というやつです。作業効率が悪い圃場、収量が劣っている圃場(さらには作業効率が悪いスタッフ)がどこなのかが一目瞭然になるということです。

豊作計画
豊作計画

事業の改善には現状の成績を正確に把握することが非常に重要です。現在の成績把握がその次の「カイゼン」につながります。自社内での比較、さらには他社との比較をすることで今の立ち位置が明確になるわけです。

 

同様のシステムは畜産農家向けのものもあります。畜産農家も個体の成績を把握することで、成績改善、事業収支の向上につなげることができます。たとえば、豚屋さんでは母豚あたりの離乳頭数、離乳体重、出荷日齢、日増体量、投薬履歴、飼料給与量といった項目を管理することが求められており、これらの管理項目をクラウドを利用してデータを蓄積すると言ったことが行われています。

ただ、システムは非常に大きな武器ではありますが、所詮は道具であり手段に過ぎません。本当に成績がよい農家は紙ベース、Excelベースでもデータをきちんと残す習慣があり、データから分析を行なう事を実践しています。Excelでも使いこなしようでは強力なデータベースとして利用することができ、当社のお客さまでもExcelに過去のデータをすべて入力して、成績の推移を把握されている方がみえます。
逆に言うと、今まで記録するという習慣が無い人がシステムを入れたからすぐに記録するようになるかは怪しいところです。記録する習慣が無ければ、いくらシステム導入しても結局は記録を残すことは無く終わってしまいます。(昔からの真の職人気質の方は記録すること無くあらゆるデータを記憶されていることがありますが・・・。)システムは便利な道具ではありますが、目的では無いことを念頭に置くことが重要です。また、単に記録するだけでは無く、それを比較分析する能力も必要となります。

これは、農業だけでは無く、あらゆる分野においても言えることかと思います。データ記録する習慣を確立し、いかに記録を活用していくかがこの激動する社会情勢で生き残っていくために求められています。当社も自社の立ち位置を把握し、次への戦略を打ち出すことができる企業になれるように努力していきたいと思います。

対照区の重要性

恒例となった年末の北海道出張(忘年会とも言う)から戻って来ました。連日の宴会ですっかり弱った感のある胃腸を年末年始に向けて復調させる必要を痛感しておりますw

数年来毎回参加しているTHE EARTH CAFE忘年会は農業関連を中心とした様々な業種の集まりです。ともすれば異業種交流会はただの営業名刺の交換会になりがちですが、この会は崇高な目的(言い過ぎか?)の基に集まっている方が多く、非常の有意義な会話ができます。

忘年会
忘年会

忘年会の前にはプレゼンが行われます。毎年そちらもお話ししているのですが、私は汚泥発酵肥料についてというテクニカルなお話しをしました。汚泥発酵肥料は非常に面白い特性を持つ有益な肥料であり、その特性を当社が実験を行っている名古屋大学附属農場での試験の結果を交えてお話しさせていただきました。

汚泥発酵肥料の特性についてはまた改めて書かせていただこうかと思いますが、プレゼンではテクニカルなこととは別に対照区の重要性についてもすこしお話ししました。

対照区(対象区ではありません)とは、たとえば新しい肥料の実験を行う際、従来のやり方の処理区と新しい肥料の処理区を設けるような手法をいい、この場合新しい肥料の処理区は「試験区」、従来の肥料は「対照区」ということになります。

比較試験をするのはあたりまえのこと・・・と思われますが、我々の日常生活でなにか試みる際にも対照区をきちんと設けることができていないことが多々あります。例えば「ダイエット食品を食べるとやせるのか」というような疑問があったとしても、我々はダイエット食品を食べる自分と食べない自分を作ることはできません。仮にダイエット食品を食べ始めて食べる前と比べてやせたとしても、それはもしかすると一緒にライザップをはじめた効果かもしれません。つまり、我々はダイエット食品を食べる前と食べた後で他の条件が変わっていないという前提の元に判断しているのですが、その前提、「他の条件が変わっていない」という前提が崩れてしまったらその結果は何の意味も持たないことになります。

 

ひるがえって、農業の場合、天候などによる影響が非常に大きく、毎年、毎作同じような栽培を行うことは困難です。畜産分野でも疾病や環境の影響でさまざまな状況が大きく変化しますので、長期間にわたり同じ環境に維持していくことは簡単ではありません。そういった状況下で、たとえば新しい資材や肥料、飼料などを全面的に使用してしまうと、果たして効果があったかどうかは全くわからなくなってしまいます。

たとえば肥料でしたら畑の一部だけ施肥し、飼料でしたら一部の家畜だけ給与するなどの方法により比較することで、その効果がはじめて明確になります。農業は生産者の経験が非常に重要であり、熟練した農家は生産物に対し、きめ細やかな観察眼で接しその変化を見逃さないことは言うまでもありませんし、そのことを否定するつもりはありません。しかし、対照区を設け、比較試験を行なう事で観察眼がより発揮されることもまた間違いの無い事実です。特に、四季のはっきりとした日本では対照区を設けることがとても大きな意義を持ちます。

 

当社の取り扱っている肥料、飼料はその品質、内容には自信があります。ぜひ対照区を設け、試験をしてその良さを実感して欲しいものと思います。(宣伝です^_^)

エコフィードを使えば儲かるのか

ビジネス向けサイトとか見ていると、「儲かっている会社の社長はこれをやっている」みたいな記事をみることがあります。例えば、新聞を3紙以上読んでいる社長の会社の方が経常利益が高い・・と言ったようなネタです。

この手の話、いつも思うのですが、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのではないかと思います。

新聞をたくさん読むことで知識が付いて経営が良くなってきたのか、それとも経営が良いから余裕ができて新聞を読む時間が取れているのか・・。新聞を読むことが無駄になることは無いと思いますが、効果を期待しすぎるのは禁物であると思います。

ホルスタイン
 

当社では有機肥料やエコフィードの生産を行っています。当社のお客さまや知り合いは有機肥料やエコフィードを使いこなしている方がたくさんみえます。
そういった方は概して経営がよいことが多い傾向にあります。有機肥料は一概に言えませんが、エコフィードは一般に配合飼料、輸入飼料と比較して価格が安く、飼料コストが生産コストの大部分を占める畜産農家がエコフィードを使用することでコストが下がります。
当社のお客さまでエコフィードをメインにしている方は概して経営がよいのです。そういった状況を見るとコストの安い飼料をうまく使っているから経営が良くなっているという印象があります。

でも、個人的にはエコフィード使用により経営が良くなっているのはコストが下がっていることが大きな要因では無いと思っています。エコフィードは配合飼料と異なり、成分もまちまちであり自分で配合する必要があったりします。使用に際して工夫が必要ですし、購入飼料と比べ手間もかかります。こういったものをうまく使うには、技術レベルが高く、前向きで意欲がある人で無ければ難しいです。
購入飼料を使うだけでしたら飼料の成分などのことを知らなくても問題ありませんので、残念ながら畜産農家でも飼料の知識に詳しくない人が多く見えます。小規模農家であっても数千万単位で購入しているわけですから、その内容を知ろうとしないのは大きな問題です。
要は、エコフィードをうまく使いこなせる方はもともと経営が良い農家が多いのでは無いかと思います。逆に、コストが下がるからと言って知識が無い人がむやみに使用すると、生産効率がわるくなったり手間がかかったり、畜産物の品質が下がったりと言ったことが発生しかえって経営が悪化するケースも散見されます。

当社のお客さまの酪農家さんは酪農教育ファームに参加されているケースが多いです。酪農教育ファームとエコフィードは関連がありませんが、酪農教育ファームに参加されるような農家さんは前向きな方が多いので、エコフィードなどの新しい技術に積極的なのではと思います。

耕種農家でも土壌分析をしなかったり、肥料の設計をお任せにしているケースはすくなくありません。そういった農家では肥効がまちまちで取り扱いが難しい有機肥料をうまく使用できるはずがありません。有機肥料をうまく使いこなしている農家は肥料に対して知識が深く、収量が多く高品質な農産物を生産できているため経営が良くなっているのではないかと思います。なお、そういった農家は案外有機JASを取得するわけではなく、慣行栽培でありながら減農薬、減化学肥料で有機肥料をうまく使いこなしている場合が多いと感じます。有機肥料を使うのはJASを取るためでも化学肥料を危険視ししているわけでもなく、有機肥料の方がうまく使用すると効果を発揮するからではないかと推察しています。

逆に言うと、そういったハイレベルな農家はエコフィードや有機肥料を使わなくても経営がよかったりします。レベルが高い農家が使いこなすのが難しいけどうまく使うと効果を発揮する・・これがエコフィードや有機肥料ではないでしょうか。
これからの厳しい環境下では、農業生産においても高い技術レベルと前向きな姿勢が求められていくことと思います。私もそういったお客さまとお付き合いするために更に勉強と技術研鑽をしていきたいと思っています。