バックヤードからみた食品マーケット

今年ももうすぐ終わろうとしています。年を取り1年過ぎるのは本当に早く感じます。
今年はコロナに翻弄された一年でした。

毎年出展している環境展も中止になり、営業活動があまりできない状況でしたがおかげさまで新規の仕事も多く会社の売上げ的にはなんとか体裁を保つことができました。これもコロナ以前よりホームページ等多方面への営業活動を行ってきたことが成果を結んでいるように思います。

今年大きく増えた仕事の一つがパイナップルです。カットフルーツ工場から排出されるパイナップルの残さをリサイクルする仕事が大きく増えました。コンビニ、スーパーでのカットフルーツマーケットの伸張により、パイナップの排出量が大きく増えています。パイナップルは可食部位の比率が50%に満たず、1kgのカットフルーツを製造すると1kg以上のゴミが発生します。
もともと世帯人口の減少、共働き世帯の増加によりカットフルーツの需要は伸びていたのですが、コロナ禍による内食の高まりにより、更に需要が増えています。
このため、当社へのカットフルーツ残さリサイクルのご依頼が増加しています。

パイナップル残さ

他方、テレワークや学校のリモート授業により、お弁当やおにぎりの需要が落ちているます。このため、米の需要は落ちています。家で食べるとしても、簡単に調理できるものが主体になっていることがよくわかります。
また、外食が減り中食が増えることにより、国産豚肉の需要が高まり今年は高豚価が続きました。今年一年通してみて、外食と中食ではかなり食べるものが変わるというのが新しい発見でした。
バックヤード稼業をやっていると世間の食マーケットの動きがよくわかり興味深く思います。

パイナップルに話を戻すと、現在当社では関東地区4カ所(神奈川2カ所、埼玉2カ所)、静岡、兵庫のカットフルーツ工場から発生するパイナップル残さのリサイクルを行っています。
パイナップル残さの取扱量は年間4000トン程度になり、パイナップル換算すると約9000トン程度の取扱量となります。日本のパイナップル輸入量は15万トンぐらいなので、当社は全国のパイナップルの6%の残さを取り扱いしていることとなります。零細企業の割にシェアが高いものだと自分で計算して驚いた次第です(^^)

パイナップルサイレージ

新しく始まった静岡の現場では、パイナップルを脱水し、粕と汁に分けて再利用しています。粕は高消化性繊維、汁は糖が成分の主体であり、パイナップル粕はサイレージとして牛に、絞り汁は液体のまま豚向けに供給を行っています。

さまざまな食品リサイクルが取り組まれていますが、まだまだリサイクルされていない食品残さはたくさんあります。来年もまたバックヤード稼業として新たなリサイクルに取り組んでいきたいと思います。

パイナップルサイレージの消化性

年末からずっと多忙でブログ更新を怠っていましたm(__)m
新型コロナのせいで出張、来客予定がことごとくキャンセルになりようやく少し余裕が出てきた感じです。

最近、引き合いが多いアイテムの一つにパイナップルがあります。カットフルーツマーケットの隆盛に伴い、パイナップルの残さ(皮、芯など)の排出量が非常に増えており、当社の取扱も年々増えています。現在は主に酪農のお客様に供給をしています。そのまま供給する場合と、脱水してパイナップルサイレージとして供給する場合があり、特に脱水パイナップルサイレージは取扱も良好で嗜好性もよく、非常に人気のアイテムです。国内で発生する脱水パイナップルサイレージの取扱を行っている会社はほとんどないため、おそらく当社がトップシェアをとっているものと推測されます。

 

パイナップルサイレージ
パイナップルサイレージ

パイナップル自体は乾燥したものが従来より配合飼料原料として利用されており、日本標準飼料成分表にも記載されています。従来は嗜好性の向上のために利用する程度であり、配合飼料に含まれている割合もごくわずかでした。
ところが、当社(のお客様)では相当な割合でパイナップルを配合しているため、従来ではあまり想定されていない量のパイナップルを給与しているケースがあります。パイナップルを多給した場合、どうなるのかを確認するために共同研究している日大の飼養学研究室にて試験をしていただきました。飼養学研究室にて新規アイテムの試験をする場合、
サンプル分析→invitro試験(インビトロ:試験管での消化試験)→ヤギへの給与試験→牛への給与試験
という順番に試験をしていきます。牛への試験を行う場合には、消化率と消化速度、反芻時間なども測定します。糞を採取し未消化の部分を測定することで消化率がわかります。また、希土類元素でエサに標識をつけ、それがどれぐらいの時間で糞に出てくるかを測定することで消化速度もわかります。

最初にサンプル分析をしたところ、繊維の量が多くあまり消化をしないのでは無いかと懸念したのですが、消化試験を行ったところ分析値から想定されるよりはるかに消化して先生が感心をしていました。その後のヤギへの給与試験、牛への給与試験も非常に良い結果が出ました。パイナップルサイレージは消化も良好で嗜好性もよく使用しやすい飼料であると言えます。
今回の試験をしてみて実感したのは、分析結果は重要ではあるが実際に給与すると想定とは異なる場合があるということです。特にエコフィードは様々な原料があるため、一般的な配合飼料や牧草の分析方法での結果は単純には適用できない部分があるように思います。もちろん、分析を基に配合設計をすることは非常に重要ですが最後は実際に給与して家畜の様子を観察し、調整していくことが重要であることを思い知らされました。

なお、パイナップルの給与試験については共同研究している先生が畜産学会で発表する予定でしたが、コロナのせいで学会が中止になってしまいました。これ以上影響が広がらないことを切に願います。

エコフィードの保存性

ここ数年来、東京ビッグサイトで行われる環境展に出展しています。東京で4日間の展示会は営業担当者が私一人の当社にとって結構負担も大きいのですが、ビッグサイトだけに多くの方の来場を頂けるので継続して出展しています。おかげで毎年5月は非常に忙しく過ごしており、ブログの更新も滞りがちになっています。(言い訳ですが・・)

展示内容は毎年あまり代わり映えもせず、食品工場でのオンサイト処理に関するものです。オンサイト処理とは、食品工場で食品廃棄物を処理するシステムのことです。腐敗しやすい食品廃棄物も現場で処理を行うことで、長期間の保存が可能となり、飼料としての利用が容易になります。例えば、以前も投稿しましたが当社ではビール粕のリサイクルに取り組んでいます。ビール粕も適切な処理を行わなければすぐに腐敗変性してしまいますが、処理を行うことで高品質な飼料となります。

展示会ではよく、「保存処理とはどういった処理をするのか?」というお問い合わせをいただくことがあります。食品工場から排出される食品残さは、業種によってももちろん異なりますし、工場によっても差異があります。このため、現場によって処理方法を変えることが必要です。当社はこれまでの実績でノウハウを蓄積しており、コストをできるだけかけず、品質を確保できる手法を選択しています。

たとえば、当社ではもやしをサイレージ化して飼料にする実績が多くあります。もやしは高タンパクであり、遊離アミノ酸やカルシウムを多く含むため緩衝能が高くpHが下がりにくい傾向があります。密閉保管しておけば乳酸発酵も行われますが、それだけではpHが十分に下がらないため品質が不安定になります。このためもやしの保存処理はギ酸を添加する必要があります。

他方、同じ野菜加工残さでもゴボウの場合はギ酸の添加は不要です。ゴボウは想像に反し糖含量が高いため密閉保管することで容易に乳酸発酵がおきます。このため、サイレージ化は比較的容易です。

廃棄ゴボウ
廃棄ゴボウ

無論、乾燥処理を行えば安定した品質のものができます。しかし、高水分の食品廃棄物の場合、乾燥処理のランニングコストが高くなるため乾燥処理は事業収支が厳しいケースが多いです。製造される飼料の価格も踏まえ、乾燥処理を選択することが重要になります。

また、当社では保存処理を行うだけでは無く、飼料としての有効性を確認するために各種分析も実施しています。上記のゴボウも共同研究先の大学で消化性試験を実施し、飼料価値を見いだしています。

様々な原料を扱うに当たっては、科学的なアプローチを駆使することが求められます。仮説を立て、実験し、そして実用化することで食品メーカーにも畜産農家にも喜んでもらえる飼料ができる、この一連の新たな価値を創出するプロセスはとてもやりがいがありますし、おもしろくもあります。これからも新たな価値創出をめざし取り組んでいきたいと思います。