対照区の重要性

恒例となった年末の北海道出張(忘年会とも言う)から戻って来ました。連日の宴会ですっかり弱った感のある胃腸を年末年始に向けて復調させる必要を痛感しておりますw

数年来毎回参加しているTHE EARTH CAFE忘年会は農業関連を中心とした様々な業種の集まりです。ともすれば異業種交流会はただの営業名刺の交換会になりがちですが、この会は崇高な目的(言い過ぎか?)の基に集まっている方が多く、非常の有意義な会話ができます。

忘年会
忘年会

忘年会の前にはプレゼンが行われます。毎年そちらもお話ししているのですが、私は汚泥発酵肥料についてというテクニカルなお話しをしました。汚泥発酵肥料は非常に面白い特性を持つ有益な肥料であり、その特性を当社が実験を行っている名古屋大学附属農場での試験の結果を交えてお話しさせていただきました。

汚泥発酵肥料の特性についてはまた改めて書かせていただこうかと思いますが、プレゼンではテクニカルなこととは別に対照区の重要性についてもすこしお話ししました。

対照区(対象区ではありません)とは、たとえば新しい肥料の実験を行う際、従来のやり方の処理区と新しい肥料の処理区を設けるような手法をいい、この場合新しい肥料の処理区は「試験区」、従来の肥料は「対照区」ということになります。

比較試験をするのはあたりまえのこと・・・と思われますが、我々の日常生活でなにか試みる際にも対照区をきちんと設けることができていないことが多々あります。例えば「ダイエット食品を食べるとやせるのか」というような疑問があったとしても、我々はダイエット食品を食べる自分と食べない自分を作ることはできません。仮にダイエット食品を食べ始めて食べる前と比べてやせたとしても、それはもしかすると一緒にライザップをはじめた効果かもしれません。つまり、我々はダイエット食品を食べる前と食べた後で他の条件が変わっていないという前提の元に判断しているのですが、その前提、「他の条件が変わっていない」という前提が崩れてしまったらその結果は何の意味も持たないことになります。

 

ひるがえって、農業の場合、天候などによる影響が非常に大きく、毎年、毎作同じような栽培を行うことは困難です。畜産分野でも疾病や環境の影響でさまざまな状況が大きく変化しますので、長期間にわたり同じ環境に維持していくことは簡単ではありません。そういった状況下で、たとえば新しい資材や肥料、飼料などを全面的に使用してしまうと、果たして効果があったかどうかは全くわからなくなってしまいます。

たとえば肥料でしたら畑の一部だけ施肥し、飼料でしたら一部の家畜だけ給与するなどの方法により比較することで、その効果がはじめて明確になります。農業は生産者の経験が非常に重要であり、熟練した農家は生産物に対し、きめ細やかな観察眼で接しその変化を見逃さないことは言うまでもありませんし、そのことを否定するつもりはありません。しかし、対照区を設け、比較試験を行なう事で観察眼がより発揮されることもまた間違いの無い事実です。特に、四季のはっきりとした日本では対照区を設けることがとても大きな意義を持ちます。

 

当社の取り扱っている肥料、飼料はその品質、内容には自信があります。ぜひ対照区を設け、試験をしてその良さを実感して欲しいものと思います。(宣伝です^_^)

エコフィードを使えば儲かるのか

ビジネス向けサイトとか見ていると、「儲かっている会社の社長はこれをやっている」みたいな記事をみることがあります。例えば、新聞を3紙以上読んでいる社長の会社の方が経常利益が高い・・と言ったようなネタです。

この手の話、いつも思うのですが、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのではないかと思います。

新聞をたくさん読むことで知識が付いて経営が良くなってきたのか、それとも経営が良いから余裕ができて新聞を読む時間が取れているのか・・。新聞を読むことが無駄になることは無いと思いますが、効果を期待しすぎるのは禁物であると思います。

ホルスタイン
 

当社では有機肥料やエコフィードの生産を行っています。当社のお客さまや知り合いは有機肥料やエコフィードを使いこなしている方がたくさんみえます。
そういった方は概して経営がよいことが多い傾向にあります。有機肥料は一概に言えませんが、エコフィードは一般に配合飼料、輸入飼料と比較して価格が安く、飼料コストが生産コストの大部分を占める畜産農家がエコフィードを使用することでコストが下がります。
当社のお客さまでエコフィードをメインにしている方は概して経営がよいのです。そういった状況を見るとコストの安い飼料をうまく使っているから経営が良くなっているという印象があります。

でも、個人的にはエコフィード使用により経営が良くなっているのはコストが下がっていることが大きな要因では無いと思っています。エコフィードは配合飼料と異なり、成分もまちまちであり自分で配合する必要があったりします。使用に際して工夫が必要ですし、購入飼料と比べ手間もかかります。こういったものをうまく使うには、技術レベルが高く、前向きで意欲がある人で無ければ難しいです。
購入飼料を使うだけでしたら飼料の成分などのことを知らなくても問題ありませんので、残念ながら畜産農家でも飼料の知識に詳しくない人が多く見えます。小規模農家であっても数千万単位で購入しているわけですから、その内容を知ろうとしないのは大きな問題です。
要は、エコフィードをうまく使いこなせる方はもともと経営が良い農家が多いのでは無いかと思います。逆に、コストが下がるからと言って知識が無い人がむやみに使用すると、生産効率がわるくなったり手間がかかったり、畜産物の品質が下がったりと言ったことが発生しかえって経営が悪化するケースも散見されます。

当社のお客さまの酪農家さんは酪農教育ファームに参加されているケースが多いです。酪農教育ファームとエコフィードは関連がありませんが、酪農教育ファームに参加されるような農家さんは前向きな方が多いので、エコフィードなどの新しい技術に積極的なのではと思います。

耕種農家でも土壌分析をしなかったり、肥料の設計をお任せにしているケースはすくなくありません。そういった農家では肥効がまちまちで取り扱いが難しい有機肥料をうまく使用できるはずがありません。有機肥料をうまく使いこなしている農家は肥料に対して知識が深く、収量が多く高品質な農産物を生産できているため経営が良くなっているのではないかと思います。なお、そういった農家は案外有機JASを取得するわけではなく、慣行栽培でありながら減農薬、減化学肥料で有機肥料をうまく使いこなしている場合が多いと感じます。有機肥料を使うのはJASを取るためでも化学肥料を危険視ししているわけでもなく、有機肥料の方がうまく使用すると効果を発揮するからではないかと推察しています。

逆に言うと、そういったハイレベルな農家はエコフィードや有機肥料を使わなくても経営がよかったりします。レベルが高い農家が使いこなすのが難しいけどうまく使うと効果を発揮する・・これがエコフィードや有機肥料ではないでしょうか。
これからの厳しい環境下では、農業生産においても高い技術レベルと前向きな姿勢が求められていくことと思います。私もそういったお客さまとお付き合いするために更に勉強と技術研鑽をしていきたいと思っています。