「アップサイクル」はエコなのか

秋は展示会出展などで出張が多く、忙しい日々が続いています。展示会に出展していると思わぬ問い合わせがいろいろあり、当社にとってマーケットニーズを捉える意味でも重要な機会です。

最近、展示会に出していて多いのが「アップサイクルしたい」というお話です。ここ数年、アップサイクルについて非常に相談される方が増えているように感じます。

たとえば、飲料工場で排出される緑茶のお茶がらを加工し、プラスチックに混合して成形することで有効利用したい・・的なお問い合わせがよくあります。
捨てられていたお茶がらがリサイクルされて、価値あるものに変換される・・イメージがいいこともありこういう取り組みが増えています。

しかし、実際のところ「捨てられている」というお茶がらもほとんどが堆肥もしくは飼料としてリサイクルされています。堆肥の価格が安いため、原料にお金がかけられず費用をもらって堆肥を作ることが一般的ではありますがリサイクルされていることには変わりません。
一方、プラスチックに混合するためにはお茶がらを乾燥させ、粉砕する必要があります。また、乾燥したお茶がらを混合成形するためには手間がかかり、それらのコストを考慮すると通常のプラスチック成形よりコストアップすることになります。廃棄費用がかからないとしても、できあがった製品を高く買うことで結局排出事業者である飲料メーカーが間接的に費用負担していることになります。

お金をかければ大抵のものがリサイクルはできますが、費用がかかるということはエネルギーが投入されているということの証左でもあります。乾燥や粉砕のためにエネルギーを投入してプラスチックの使用量を抑えるというのは矛盾した行為であり、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的には環境負荷低減できているかは微妙なところです。お茶柄を混ぜることで何らかの機能性がアップするならいざしらず、通常はただの増量剤としての機能しかありません。

さまざまなリサイクル手法がありますが、個人的には重要なのは「コスト低減できていること」だと思います。リサイクルは手段であり目的ではなく、最終的な目的は環境負荷を下げることです。当社はさまざまな食品リサイクルを行っていますが、コストアップするような場合は当初よりおすすめしないケースがほとんどです。たとえばコンビニ弁当などのように包装分別が大変なものだったり、ロットが小さく運搬にコストがかかる場合などは最初からお断りしています。逆に、資源の低投入で有効利用できるものは結果としてリサイクル製品にするための費用を抑えることができます。
企業としてCSR報告書に「アップサイクルしています」と書くためのリサイクルでは無く、環境負荷が本当に低減できる手法を採用すべきでは無いかと思います。コストも資源も抑えることで、長く継続できる取り組みとなりえます。当社はそういう社会課題の解決を通じ環境と経済で貢献できる仕組みを提供していきたいと思っています。

廃棄される麺

廃棄物の量

相変わらずせわしない日々を送っています。
忙しい理由の一つに、新規の案件が多いことがあります。当社は一件一件の案件に対しそれぞれ個別対応しているため、新しいお問い合わせごとに電話で聞き取りをしたり、現地に訪問して確認したり‥と言った作業が発生します。多くの案件があると電話やWEBミーティングだけでもかなりの時間が費やされます。

廃棄されるパン

新規案件で電話を頂いた場合、「どんな廃棄物が」「どれぐらい」「どのような状態で」発生するかを確認します。よくあるのが「いっぱい出るんです」というお問い合わせです。これがやっかいで、お客様によって「いっぱい」の幅が非常に広いです。一日100kgでも中小零細企業にとっては大量ではあるのですが、食品リサイクル業界では一日100kgだと量が少ない方に部類されます。逆に、一日数十トンの廃棄物が発生している現場で「いっぱい」があまりに多くて業界人である私も驚くこともあります。今まで訪問した中で一番多かったのは某飲料工場ですが、一日100トン単位でお茶ガラ、コーヒー粕などが発生しているとのことで、量の多さに圧倒されました。

他方、納品する先の畜産農家における使用量の把握が重要です。とくに酪農の場合、エサの配合を細かく設計するために使用量の変動が難しい傾向にあります。また、牛の頭数が変わるとそれに応じて使用量が変動するため、一頭に何キロ給与し今何頭牛がいるのかを聞き取りしておくことはこの業界では重要です。

発生量を細かく確認するのは、エサにした場合いかに発生したものをうまく捌けさせるかが重要だからです。食品工場からは多量の廃棄物が常に発生し、処理する先がなければすぐに滞留してしまいます。発生量が多い場合はとくにいかに安定的に引取できるかが大きなポイントとなります。

小規模な農家

最近、当社は小規模の農家さんとの取引が増えてきました。一日数十kg、数百kgの単位の発生だと業界としては量は少ないですが小規模経営の農家さんにとっては結構大きな効果がある場合もあります。たとえば、一日100kgでも年間では40トン弱であり配合飼料に換算すると数百万円になり、100万円単位のコストが下がる場合もあります。当然ながら家族経営にとって100万円単位のコスト削減は非常に大きく、当社もお客様の経営に寄与できているという実感が得られやりがいにつながります。

当社の経営スタンスは「他の会社がやらないことをやる」です。他の会社が手を出さない小さな案件も少しずつ掘り起こしていて食品メーカー、農家の経営に寄与していきたいと思います。

豚を飼う理由

忙しさにかまけてブログ更新できずはや数ヶ月経ってしまいました。今年も残りあとわずかとなりました。今年はお陰様で本業の食品リサイクルの仕事は増えておりまずまず順調でした。養豚事業も豚を飼ってはや4年、なんとかそれなりに安定した成績をだすことができ、出荷も順調、肉質も安定してきました。

改めてなぜ当社が豚を飼うようになったか、あらためて触れてみたいと思います。

当社はもともと食品廃棄物から肥料をつくることを目的として創業しました。しかし、創業後なかなか事業が軌道に乗らず、廃業の一歩手前まで行きました。その時、たまたま縁あってお伺いした養豚農家から「おまえ、肥料なんか作らずエサつくって俺に売れ」って言われたのが飼料製造することになったきっかけです。

その後、また縁あって地元の農協が中心となって行われたエコフィードの実証試験事業に参画することになりました。愛知県の試験場で試験を行ったのですが、エサを変えるとおどろくほど豚の状態や肉質が変わることに感心して、「養豚っておもしろい」と思ったのが豚を飼ってみたいと思うようになったきっかけです。それから10年ほど経過して実際に豚を飼うようになるとは当時は全く思っていませんでしたが。

もう一つ、豚を飼おうと思ったのはエサを扱かうようになって養豚農家に説明をするようになった時、いろいろ解説したところ「高橋くん、説明はわかったけど豚飼ったことないじゃん」と言われたこともきっかけです。そうか、豚を飼わないとわからないことが多いから豚飼ってみようと安直に思った次第です。もともと動物は好きな方ですが、大学も農学部農学科で植物や微生物相手の仕事をしてきて豚を飼うノウハウもろくにもたずよくいきなり養豚を始めたものだと我ながら思います。

飼料として利用されるパン

そういったきっかけはあるものの、現在、以下のような目的を持って豚を飼っています

・食品残さで美味しい豚が育つことの証明

 食品残さを使った養豚は以前より行われていますが、食品残さの種類によっては肉質が悪くなったり、大きくならなかったりします。食品廃棄物がこれだけたくさん発生しているのにもかかわらず、食品残さを使っている養豚場は一部にとどまっている大きな理由の一つに肉質の問題があります。
しかし、適切な原料を選択し、きちんと計算して給与すれば配合飼料と遜色ない肉質とすることもできます。また、配合飼料では価格やハンドリングで使用が難しい原料もあり、その中には肉質によいものもたくさんあります。例えば茹でうどんはとても良好な原料ですが、配合飼料には使用することが難しいです。こういった原料を使用することで、特徴のある高い品質の豚肉生産が可能となります。当社も紆余曲折がありましたが現在は肉の品質を高いレベルで維持できています。

・ちゃんと大きくなることの証明

食品残さが使われなくなったもう一つの理由として、農場成績の低下(成長の低下)があります。今の豚は成長が早く、半年で出荷されます。半年で出荷するためには栄養バランスをきちんと整えて給与することが必要となります。逆に言えば、きちんと設計さえすれば決して成長が悪くなることはなく、むしろ嗜好性や消化率が良いことから成長が良くなるケースも多々あります。

・飼料製造や給与方法のノウハウ蓄積

食品残さが使われない理由には、ハンドリングの問題もあります。スイッチひとつで給与できる配合飼料とは異なり、飼料の給与するためにはさまざまな工夫、装置が必要となります。原料の種類に応じて適切な設備を導入して給与するためのノウハウを蓄積することも自社で養豚を行う目的の一つです。これまでの経験を元に、最近はいろいろな養豚農家で飼料利用のお手伝いをできるようになってきました。

自社で養豚を行うことで、「エコフィードの良さを証明する」ことは少しずつできてきたように思います。これからのステップとして、このエコフィードの良さを全国に広めていきたい、さらには世界に普及させていきたいという大きな野望があります。今は自社の養豚での実績を元に、さまざまな農家のエコフィード利用のアドバイスをすることができるようになってきました。これをもっと広げていきたいと思っています。

当社養豚場「リンネファーム」

これまで、日本の畜産は輸入飼料に依存して発達してきました。これまでの社会の時流にのったものだったかと思いますが、世界的な人口増加を背景とした資源の逼迫により従来のモデルの継続が難しくなってきています。資源が不足する時代において、リサイクルは避けられない選択肢になるでしょう。
当社が行っている養豚は非常に小さな規模ではありますが、このような時代において、畜産業界の新しい方向性を示す道標になり、日本の畜産の存在意義の向上に貢献したい、そんな大きな夢があります。国内で資源循環することで海外の影響をうけず、そして日本にしかない美味しい畜産物ができる、そんなことが目標です。当社の小さな取り組みがどんどん広がり、大きな社会変革に繋がったら‥そんなことを考えながらエコフィードからエサを作り、豚にやっています。

リキッドフィードの欠点

更新が滞っているうちに、すっかり春が過ぎ初夏になってしまいました。

例年、6月~8月ぐらいは豚肉の市場価格が高くなります。価格が上がるのには養豚生産の季節サイクルが影響しています。
豚は生後半年で出荷され、妊娠期間は4ヶ月弱です。逆算するといま出荷されている豚は1月生まれ、前年の9月頃種付けとなります。夏場は暑さのため母豚のコンディションが悪化し、繁殖成績が悪化します。逆に1月は寒いため、生まれた仔豚が調子を崩しやすくなります。そして、出荷時期は暑いためエサの食下量が低下し、大きくなりにくくなります。それに加え、夏に向けて豚肉需要は旺盛であるため、市場価格が上がります。

今年は特に全国的に6月下旬が猛暑であったため豚のコンディションが悪化しており記録的に出荷が減っています。そのため、豚肉の価格が例年以上に上がっています。

そんな中、当社の関連会社「リンネファーム」の豚「雪乃醸」は順調な出荷を維持できています。出荷頭数が多く相場がいいため、市場からの清算金額を見ると少し驚くほどです。

出荷が順調なのは飼料の嗜好性が安定していることが理由の一つです。雪乃醸はリキッドフィードと呼ばれる液状(おかゆ状)の飼料を給与しています。液状であるため、夏場などでも比較的食下量が落ちにくい傾向にあります。人間も暑いときは水っぽいものが食べたくなるように、豚も暑いときには粉のエサより液体のエサのほうを好みます。

夏場でも嗜好性が安定していることはリキッドフィードのメリットですが、最大のメリットは、様々な食品残さを使用することが容易であるということです。食品残さは高水分のものが多く、乾燥処理にはコストがかかります。液状のまま給与できるのは大きなメリットです。

一方、リキッドフィードにもデメリットはあります。夏場の嗜好性が改善することもある一方、液状であるが故に異常発酵しやすい欠点があります。特に、原料に糖が多い場合や、原料にパン生地や酒粕などの酵母を含むものを使用すると酵母発酵が進み、あふれる事故が起きたり、嗜好性が低下する傾向があります。特に、春と秋は気温が酵母の発酵に適した温度となることもあり、発酵が起きやすい傾向にあります。
この欠点を防ぐためには加熱殺菌が有効です。当社ではリキッドフィードを65℃30分間加熱殺菌しています。現在、肉を含む食品残さを飼料に用いる場合、感染症予防のために90℃1時間の加熱が義務付けられています。しかし、当社では肉を含む原料を用いていないため加熱殺菌は本来不要です。しかし、嗜好性の安定のために加熱殺菌を行っています。もちろん、殺菌温度が高いほうが殺菌は確実に行われますが、加熱に必要なエネルギー使用量が増えたり、粘性が上がる欠点があります。バランスを取って65度で加熱殺菌を行っています。
リキッドフィードには他にもいくつか欠点があります。大きな欠点として、尿量が増えることがあります。尿量が増えると排水処理の管理が大変になったり、堆肥の発酵がうまくいかなくなります。尿量が増えるのは飼料の水分含量が多い分水分摂取量が増えることもありますが、一般的に人間の食べ物は塩分(ナトリウム)が多いことが多く、また野菜などに由来するカリウム含量も多いため尿量が増えます。
また、リキッドフィードは酸性であるため、コンクリートや鉄が腐食することも大きな欠点です。コンクリートは酸性に弱く、コンクリートでできたスノコは防食塗装など行っていないと数年でぼろぼろになります。

ときどき、リキッドフィードは水分をたくさん取るので肉が水っぽくなるという人がいますが、これが技術的には誤っています。リキッドフィードの場合食品残さを使用することが多いですが、大豆油などの油脂を多く含む原料を使用すると豚肉の脂の質が変わり、脂の融点が下がることで「水っぽい」豚肉となってしまいます。逆に言うと、適切な原料を選択すればリキッドフィードも配合飼料も肉質に差は出ません。

このようにメリットとデメリットがありますが、繰り返しになりますがリキッドフィードの最大のメリットは多様な食品残さを使用することが容易である点です。現在、輸入穀物で作られている配合飼料の価格が非常に高騰しています。こんな中、リキッドフィードにより食品残さをうまく利用し飼料価格を抑制することは経営的に大きなメリットがあることは言うまでもありません。また、限りある資源を有効に活用することで、存在意義を確立し地域との共生を図ることができます。今後、社会要請に応える畜産や農業がより一層求められる時代になっていくことと思います。リキッドフィードはそういう時代に合った手法の一つであるかと思います。

畑

有機肥料の可能性

資源価格の上昇や食料の需要の高まりに伴い肥料の価格が上がっています。国内の農産物価格は低迷しており、農業の生産現場は厳しい状況に置かれています。
化学肥料の値上がり当面続くか、国際的な需要高で 農家がとれる対策は?

ただ、肥料の原料であるリンとカリは天然鉱物でありその逼迫は数十年前から言われてきたことです。私は20年ほど前のサラリーマン時代に水処理の会社で研究開発に携わっていましたが、その当時からリンの枯渇と排水中に含まれるリンの回収の必要性が叫ばれていました。人口増加と食料生産の増加のトレンドは継続しており、需給のバランスが崩れるのは想定されてきたことなので、厳しい言い方かもしれませんが今になって肥料価格の上昇や肥料原料の逼迫に右往左往するのは先見性に欠けるように感じます。

このような状況のもと、有機肥料に対する注目が上がっています。日本はたくさんの食品、飼料を輸入しています。輸入されている食品や飼料に含まれている窒素、リン、カリの量は非常に多く、元素の物質収支で言うと国内で肥料として必要とされる量を超えています。つまり、理論的には日本は1kgも肥料を輸入しなくても国内の農業で必要な量を確保することができるということです。
逆に言うと、国内の循環資源で賄えるはずの肥料を輸入しているため窒素、リン、カリなどが国内で過剰となり環境負荷を引き起こしているとも言えます。

では、有機肥料をどんどん使用できるかというと簡単な話ではありません。一番の課題はどうやって散布するということです。
有機肥料は化成肥料とくらべ散布量が多くなります。まず、肥料の有効成分の量が大きくことなるため、散布量が多くなります。また化成肥料は粒状になっているものがほとんどで機械散布が容易にできますが、有機肥料は水分を含んでいたり固まり状になっているため、散布に手間がかかるものがほとんどです。たとえば、堆肥はマニアスプレッダーという機械がないと機械散布は難しいです。農業現場は人手不足が著しく、手間が増える有機肥料は敬遠されがちです。

マニアスプレッダ-(デリカ社ホームページより)

また、有機肥料はその名前の通り有機物を含んでいます。有機物が分解することで肥料として効果を発揮するため、肥料の効果がでるまでに時間がかかります。またいつどれぐらい肥料が効果がでるかが気候や土壌などの条件によって変わるため、経験が無いと予測しにくいという欠点もあります。

しかし、有機肥料をうまく使うと化成肥料だけより間違いなく収量が増えます。私は自分の出身大学で行われている肥料の試験のサポートをさせていただいており、毎年試験圃場の収量調査に参加しています。試験結果を見ると、有機肥料を使う方が顕著に収量が増加します。


これは、有機肥料には微量要素や有機炭素が含まれているため、土壌の改良や微量要素の補給効果などにより収量が増えます。また適切な使用により病害虫も減少する傾向を感じます。有機肥料の効果は非常に高いものがあります。
一方、肥料の価格を考えると実は有機肥料はそれほど安価なものではありません。たとえば一般的にホームセンターなどで安価に販売されている鶏糞も有効成分あたりで計算すると化成肥料とそれほど遜色ない価格となってしまいます。これは、有機肥料の方が有効成分含量が低く、実際に効果を発揮する肥料分が少ないため割高になるためです。
鶏糞の場合、通常は窒素が3%程度含まれています。このうち、実際に植物が利用できるのは半分程度ですので、実際は1.5%程度が有効な窒素成分と言うことになり、窒素15%の化成肥料の1/10となります。つまり、鶏糞は化成肥料の1/10の価格でないとコスト削減することができないということになります。ものの値段が安くなると相対的に運賃や容器代コストの比率が高くなり、コストの低減が難しくなります。

これからの時代、資源が安くなる要素はほぼありません。世界人口増加による食料生産の増加に伴い、肥料の使用量も確実に増加していきます。確かに有機肥料を使えない理由はたくさんありますが、できない理由を挙げるよりどうしたら使えるようになるかを考える姿勢が重要だと思います。当社は「資源循環により持続可能な社会実現に貢献する」ことを経営理念に掲げています。これからも微力ながら資源循環のお手伝いをしていきたいと思います。

パイナップル残さの脱水システム

遅ればせながらあけましておめでとうございます。
昨年は新型コロナウイルスに振り回された1年でした。コロナ禍の影響により展示会は軒並み中止になり、出張もままならず業務に様々な影響がありました。
しかし、当社は比較的影響を受けにくい業種であったこと、また以前よりネットを利用した営業を行ってきたことなどが功を奏してなんとか1年間を終え売上げを増やして12月末の決算を終えることができました。これも取引先、スタッフほか関係する皆様のおかげです。ありがとうございます。

パイナップル脱水システム

新しく始まった仕事の一つに、カットフルーツ工場のパイナップル残さリサイクルがあります。パイナップル残さは従来より飼料としての利用がすすんでいました。しかし、排出されるパイナップル残さはそのままの状態では取扱がしにくく、保存性が悪い欠点がありました。
今回の取り組みは、パイナップルを脱水し脱水パイナップルを袋詰めしてサイレージとして保存し牛用の飼料として供給します。脱水したときに発生する脱離液はタンクに保管してタンクローリーで運搬し、豚用の飼料として利用しています。パイナップルを脱水して脱水パイナップルと液体を両方利用するのはおそらく日本で初めての試みではないかと思います。

脱水した液体なんてエサになるのかというご質問をいただくことがよくあります。パイナップルの脱離液はほとんどパイナップルジュースで、だいたい8%ぐらいの糖液です。豚のリキッドフィードは20%強の濃度で製造することが多いです。仮にリキッドフィード製造時に使用する液体をすべてパイナップル脱離液とした場合、約1/3をパイナップルの糖分で供給することができます。保存性もよく、消化性、嗜好性もよいのでリキッドフィードの原料としては非常に有用な原料です。
計算上はパイナップル汁と酒粕(と少々のアミノ酸)だけで豚の飼料をつくることができます。

現在も多種多様なお引き合いをいただいております。今後も新しい挑戦を続けていきたいと考えています。皆様今後ともご協力のほどよろしくお願いします。

食品ロスは削減できるのか

食品ロス削減法案が成立しました。毎日新聞より
「同法は、食品ロス削減の意識を高め、食品を活用する仕組み作りが狙い。政府には基本方針、自治体には推進計画の策定を求め、ロス削減に取り組む事業者の支援も義務づけた。」

当社は食品リサイクル業を営んでいますが、当社は主に食品工場の製造副産物を取り扱っており、いわゆる食品ロス(可食部位)は業界の中でも比較的取り扱いは少ないです。スーパーやコンビニなどの売れ残り商品などのリサイクルのご依頼もかなりあるのですが、当社の受け入れ能力や品質の安定を考慮し、あまり受け入れをしていません。

しかし、食品工場から廃棄されるものの中には、食べられるような商品も多く含まれており、工場見学にいらっしゃったお客様から「これはなぜ廃棄されるのか」とご質問いただくこともよくあります。

当社で取り扱っている食品廃棄物の廃棄理由は様々ですが、大別すると以下のような理由があります。

1.見た目などの規格外

お菓子類などでは焼きムラ、形状異常などで廃棄されることがよくあります。たとえば、当社ではバームクーヘンを取り扱っていますが、バームクーヘンは製造時に両端が焦げるため切り落とします。焦げが入ると異物混入としてクレームになるため、かなりの量を切り落とすため多量の廃棄品が出ます。

バームクーヘン

2.ライン切り替え時のロス

味の切り替えなどで製造ラインを切り替えたとき、味の混入を避けるためライン清掃を行い廃棄物が出ます。たとえば羊羹は釜で炊きますが、必要製造量に対しロスを考慮し必ず余分に製造する必要があります。

3.ウエイトチェッカーやX線での検品

ほとんどの商品には重量規格があり、製品検査ライン重量測定を行い重量オーバー、重量不足で廃棄されることがあります。特に、包装ゆでうどんなどは均一に充填することが難しく、重量の過不足が出やすい傾向があります。

4.不可食部位

カットフルーツ工場で発生するパイナップルの皮、豆腐工場で発生するおから、ビール工場での麦芽粕などが該当します。安定発生するため当社でも積極的にリサイクルしています。

5.異物混入・製造ミス

製造の際、原料の調合を間違えた、加工方法に不具合があったなどの理由で廃棄するものが発生することはよくあります。また、異物混入が出荷前に発覚し在庫品を含め廃棄する場合もよくあります。

食品リサイクル法での推計では2018年度食品廃棄物全体で2759万トン/年の発生があり、そのうち可食部位は643万トン発生しています。当社の取り扱いしている食品廃棄物は食品ロスに該当しないものが多いですが、不可食部位以外は人間が食べられるものばかりです。食品ロス削減法の趣旨からいえば、消費者などへの啓蒙をはかりこれらの削減をめざすべきかと思われますが、日本人の異常なまでの細かさから削減は簡単ではないと思います。

以前、ゼリー工場から「キウイフルーツの果肉入りゼリーで種がはずれてゼリー部分に入ると異物としてクレームが来るため、検査ラインで検品してはねている」というお話をお伺いしたことがあります。先のバームクーヘンでもわずかな焦げが混入していただけでクレームが入ります。あめ玉も形が悪いとお客様相談室に電話があります。おそらく大多数の人が気にしないものであっても、納品先からのクレームなどを敬遠し事前に廃棄してしまいます。

カップ麺に使用される乾麺であっても重量と形状のチェックを行い、規格に外れたものは廃棄されます。私にはカップ麺の乾麺の形状が悪いとクレームがあることが理解できませんが、実際問題としてカップ麺工場の乾麺廃棄は膨大な量です。

乾麺

異物混入で廃棄されるものも多くありますが、ほとんどの場合食品衛生上混入しても健康被害がないものばかりです。以前、砂糖を数百トン廃棄するという案件がありましたが、これは赤色シリコンパッキンが混入したというもので、万一食べても全く健康には問題ないものです。しかし、「異物が入っているとわかって販売すると会社の姿勢が問われる」という理由で廃棄されることになりました。

個人的には異物混入などの事件が起こると「食の安全」を錦の御旗としてマスコミによる食品工場のバッシングされることが食品ロスの増加につながっているように思います。健康被害があるものの回収は当然ですが、健康被害がないものまで回収を求める今の風潮はおかしいと思います。

たとえば、最近ではこんなニュースが。

J-オイルミルズ/「味の素 から揚げの日の油」40万個自主回収

「一部製品について、包装容器の接着不良により最上部からの油漏れが判明したため、対象製品を自主回収すると発表した。」「同社では、健康危害はないが、消費者が不快な思いをすることないよう、同社では本件を重く受け止め、万全を期すため、回収するとしている。」個人的にはこれで回収する風潮が不快ですw

今回の法律制定を機に過敏な消費者とそれをあおるマスコミの風潮が少しでも改善することを願ってやみません。

食糧を巡る世界情勢

年度末なのに出張続きで、仕事がだいぶたまっています。今日は畜産学会で神戸出張、翌日の予定の関係で関東に移動しています。相変わらず慌ただしい日々を送っています。

出張をしていると、最近ホテル宿泊客は本当に外国人が増えたなぁと思います。昨日は神戸の三宮で夕食を食べたのですが、外国人目当てなのか、KOBE BEEFの看板を掲げた店が目につきました。

先日、こんなニュースがありました。

中国、豪州産牛肉の輸入制限を撤廃=李首相(ロイター)

現在、牛肉の相場が高値安定しています。その理由の一つに豪州産など海外の市場での調達が難しくなってきていることがあります。
豪州の輸出動向

もともと中国や東南アジア諸国への輸出が増え、そのあおりで日本向けの輸出量が減ってきていました。そんな中、中国が制限を撤廃することでさらに日本向けの輸出が減ってしまうとますます日本は買い負けをすることが予想されます。その一方で、和牛の輸出量は増えており、需給バランスがタイトになっています。

一方、豚肉は国内での生産量減少、牛肉、鶏肉の高騰などの原因によりこちらも高値安定しています。

牛乳でも同様の傾向があり、国際乳価が上昇をして、脱脂粉乳などの乳製品国際価格も上昇基調にあります。

このような畜産物価格の高騰により、中国などの諸外国では畜産の生産量が増加傾向にあります。その結果、飼料の需給もタイトになりつつあり、穀物や魚粉の相場もやはり高値安定の傾向が続いています。

他方、日本の一人あたりGDPは下がり続けており、かってのようにお金にものを言わせて食糧を買い集めることが難しい情勢にあります。お金にものを言わせて世界中から食糧を調達することで成り立ってきた日本社会の構造が立ちゆかなくなるような時期が早晩訪れるのではないでしょうか。

会社を営んでいて最近とくに意識しているのが事業の存在意義です。存在意義が無ければ、事業を継続していくことが困難となります。
当社は食品のリサイクルを行っていますが、このような社会情勢のなか、国内で食糧を生産することに貢献することで当社の存在意義を発揮していくことができるものと考えています。社会と時代の要請に常に応えられる会社で有り続けていたいと思っています。