亜硝酸塩とボツリヌス菌

金曜日、土曜日と飯田のお客様のところへ行って来ました。エコフィードを使って頂いている養豚農家です。豚舎も見せて頂きましたが、豚たちの状態も良さそうで嬉しい限りです。使ってよかったと言われると嬉しいですね。
帰りに三河トコ豚極め隊が豊根村の廃校で作っている生ハムの点検をしてきました。
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少しカビが生えてきています。カビが生えるのは正常だそうです。生ハムっぽい臭いになってきました。できあがりまで後半年、楽しみです。
ところで、今回の生ハムは完全に塩だけ使っています。海外の生ハムも、原料は豚肉と塩だけというものが多いですが、一部の生ハムは発色剤(亜硝酸塩)を使用しているものもあります。
「買ってはいけない」系の本には、亜硝酸塩は発がん性物質としてあげられていますが、なぜ発色剤を使用するのでしょうか?生ハムはそもそも熟成させる内に色が濃くなってくるので、発色剤なんて必要ないようにも思えます。
実は、発色剤として使われる亜硝酸塩には殺菌作用があるのです。
ボツリヌス菌という強力な食中毒原因菌があります。30年ぐらい前に辛子蓮根による食中毒事件がありましたが、あの原因菌です。(子供心に大騒ぎだったことを覚えています)この菌による食中毒が硝石という天然鉱物を添加することによって防ぐことが見いだされ、使用されるようになったのです。硝石というのは火薬の原料にもなる硝酸カリウムを主体とした鉱物です。硝酸カリウムすなわち硝酸塩というわけです。岩塩にも硝酸塩が含まれるものがありますので、岩塩を使用することによっても殺菌効果が得られます。
ハムソーセージ製造業の方に聞いたのですが、亜硝酸塩を添加することによってボツリヌス菌だけではなく、その他の細菌の繁殖を抑える効果があるそうです。
このような効果のため、ドイツではソーセージに亜硝酸塩を添加することが義務づけられています。日本でもだいたい発色剤添加のものの方が主流ですが、最近は無添加にするために「無塩せき」のハムソーセージが増えてきています。無塩せきというのは、亜硝酸塩を添加していないもののことです。
私は添加物は少ない方がいいと思い普段はなるべく低添加のものを購入するようにしていますし、合成着色料は無用なものだと思っていますが、発色剤は安全性を考えると使用した方がいいと思います。最近は衛生管理がよくなってきているので食中毒は少なくなってきていますが、発がん性の増加と食中毒のリスク、比較すると食中毒のリスクの方が大きいと判断します。そもそも、亜硝酸塩の発がん性はWHOなどの機関で認められているわけではありませんし。
私が常々おかしく思うのは、亜硝酸塩(発色剤)と書いてあると非常に危険なもののように受け止め、岩塩とかいてあると安心すると言う点です。天然物でも合成したもの化学式が同じなら同じ物質で、どちらも入っているのは同じ硝酸塩でも、印象だけで判断する人が多すぎることです。また、キャベツやホウレンソウなどの青菜にはハムソーセージ以上にたくさん硝酸塩が含まれています。
無添加を目指すことは否定しませんが、うわべだけの安心でいいのかなと疑問に思う次第です。

亜硝酸塩とボツリヌス菌” への3件のフィードバック

  1. 亜硝酸そのものの危険性というより、ソーセージなどの旨味成分アミンと結びついてニトロソアミンという発癌性物質を造る事が問題ではないか?

  2. 趣味でベーコンを自作するのですが日本のサイトなどで検索しても亜硝酸ナトリウムが一般人が買えない物資の様で手に入りません。安全の為にあった方が良いのかと思いましたが悪い噂の方が出てくるので迷っていました。
    そこでベーコンと言えばアメリカだろうと英語で海外のサイトでベーコンのレシピなどを調べると当たり前のように自家製ベーコンを作る時に亜硝酸ナトリウムを使用しているようです。ベーコン製作時に必要な亜硝酸ナトリウムの量は極めて少ないので測りで測れないレベルです。そこでアメリカでは塩と混ぜてピンクに着色した塩せき用の専門商品が売られています。名前はプラハパウダー#1やcuring saltなどの名前です。それをつけ込むときに適切に測り使用する事で安全にそして色良く獣臭も消えて特有のフレーバーを生み出すと説明されていました。
    それを使用して何回もベーコンを作っていますが無塩せきの物と比べるとやはり風味が良いように感じます。
    それを知ってからは亜硝酸ナトリウムの日本での嫌われ具合が気になっていました。食品表示で発色剤と書かれてしまうことで本当に重要な役割が見落とされ上辺だけの健康志向に流されて無塩せき品を買う事売る事は本当に大丈夫なのかとも思ったりします。
    著者様も言っている通り天然の岩塩や野菜にも含まれている成分で原来はそれを使って昔の人々が安全に肉を保存できる方法を見つけてきた物が現代の成分表示を表面的に見た事で不安になってしまい悪いものとなってしまっているのが残念です。
    現代では冷蔵管理や消毒方法が発達していると思うのでそうそうボツリヌス被害は少ないと思いますが無塩せき品を見かけると少し心配です。
    メリットデメリットをしっかり調べて判断する事が大切だと思いました。
    この著者様の文章を見つけていたく感銘を受け思わず長文駄文を書き殴ってしまいましたが同じ思いを持たれている方がいて嬉しかったです。

    1. コメントありがとうございます。無塩せきだとフレーバー(キュアリングフレーバーと言います)が出ないんですよね。
      むやみに怖がるのではなく、リスクベネフィットと味を考慮して添加物を使用すべきかと思います。

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