豚を飼ってみて思うこと

今年も暑い夏でしたが、急に秋めいてきました。

当社で豚を飼い始めて1年半が過ぎ、2回目の夏を超すことができました。まだまだ未熟ですが、経験を積み重ねて養豚業ということが多少わかってきたように思います。

当初想定したとおり家畜の飼育はいろいろと苦労することがありましたが、ここ最近生産や品質が安定してきたようでほっとしています。
今、農場の調子がよくなったのはひとえにスタッフの成長によるものです。(そもそも私はほとんど農場の管理業務は行っていません・・)飼料の設計もスタッフが行い、スタッフのスキルアップにより疾病の予防や治療も適切になってきました。成長の速度や肉質も当初の予定以上の数字が出るようになりました。

豚コレラもまだまだ安心できませんが、一応ワクチン接種もおわり少しほっとしています。
今回の豚コレラの流行で家畜飼育のリスクを痛感しました。突然他国から侵入した疾病により事業の存続が脅かされる可能性があることをあらためて認識することになりました。農場の立地等の関係もあり、結局当社の農場は都合4回も採血、検査を行っています。その度に「万一陽性だったらどうしようか」と祈る気持ちでした。

養豚事業をはじめた目的の一つは、エコフィードだけで豚を飼育し美味しい豚を作ることです。当社では非常に多くのエコフィードを扱っていますが、その中で特に肉質によいものを選択し給与しています。

主に給与しているのが
炭水化物源として ラーメン、うどん、グミ、シロップ、菓子くず
タンパク質原料として 酒粕、みりん粕、ビール酵母
などを給与しています。
飼料原料はアミノ酸のバランスが取れていること、多価不飽和脂肪酸(リノール酸など)が少ないことに気をつけています。個人的には、多価不飽和脂肪酸の量が豚肉の味の良し悪しを決める大きな要因だと思います。

肉質に関しては飼料の影響が大きいことからあまり心配はしていませんでしたが、自分で食べるだけではなく、肉質を分析した結果、また販売先の肉屋さんやレストランからの意見をフィードバックして常にエサの改良を心がけています。
おかげさまで、最近は取引先からの評価もよくなり、卸先肉屋さんからも「ブラインドで食味評価したら一番よかったよ」と言われるようになりました。

現在はブランド名「雪乃醸」として東京のレストラン中心に販売も行っています。片手間で販売していることもありまだまだ苦労していますが、今後は多くの皆様に肉を届けたいと思っています。

先日、イベント出店していたら「雪乃醸食べたらおいしかったけどどこで売っているの」とうれしいお話をいただきました。生産者冥利に尽きます。
これからもおいしい豚肉を届けていけるように努力していきたいと思います。

イベントで販売したベーコン串

食品ロスは削減できるのか

食品ロス削減法案が成立しました。毎日新聞より
「同法は、食品ロス削減の意識を高め、食品を活用する仕組み作りが狙い。政府には基本方針、自治体には推進計画の策定を求め、ロス削減に取り組む事業者の支援も義務づけた。」

当社は食品リサイクル業を営んでいますが、当社は主に食品工場の製造副産物を取り扱っており、いわゆる食品ロス(可食部位)は業界の中でも比較的取り扱いは少ないです。スーパーやコンビニなどの売れ残り商品などのリサイクルのご依頼もかなりあるのですが、当社の受け入れ能力や品質の安定を考慮し、あまり受け入れをしていません。

しかし、食品工場から廃棄されるものの中には、食べられるような商品も多く含まれており、工場見学にいらっしゃったお客様から「これはなぜ廃棄されるのか」とご質問いただくこともよくあります。

当社で取り扱っている食品廃棄物の廃棄理由は様々ですが、大別すると以下のような理由があります。

1.見た目などの規格外

お菓子類などでは焼きムラ、形状異常などで廃棄されることがよくあります。たとえば、当社ではバームクーヘンを取り扱っていますが、バームクーヘンは製造時に両端が焦げるため切り落とします。焦げが入ると異物混入としてクレームになるため、かなりの量を切り落とすため多量の廃棄品が出ます。

バームクーヘン

2.ライン切り替え時のロス

味の切り替えなどで製造ラインを切り替えたとき、味の混入を避けるためライン清掃を行い廃棄物が出ます。たとえば羊羹は釜で炊きますが、必要製造量に対しロスを考慮し必ず余分に製造する必要があります。

3.ウエイトチェッカーやX線での検品

ほとんどの商品には重量規格があり、製品検査ライン重量測定を行い重量オーバー、重量不足で廃棄されることがあります。特に、包装ゆでうどんなどは均一に充填することが難しく、重量の過不足が出やすい傾向があります。

4.不可食部位

カットフルーツ工場で発生するパイナップルの皮、豆腐工場で発生するおから、ビール工場での麦芽粕などが該当します。安定発生するため当社でも積極的にリサイクルしています。

5.異物混入・製造ミス

製造の際、原料の調合を間違えた、加工方法に不具合があったなどの理由で廃棄するものが発生することはよくあります。また、異物混入が出荷前に発覚し在庫品を含め廃棄する場合もよくあります。

食品リサイクル法での推計では2018年度食品廃棄物全体で2759万トン/年の発生があり、そのうち可食部位は643万トン発生しています。当社の取り扱いしている食品廃棄物は食品ロスに該当しないものが多いですが、不可食部位以外は人間が食べられるものばかりです。食品ロス削減法の趣旨からいえば、消費者などへの啓蒙をはかりこれらの削減をめざすべきかと思われますが、日本人の異常なまでの細かさから削減は簡単ではないと思います。

以前、ゼリー工場から「キウイフルーツの果肉入りゼリーで種がはずれてゼリー部分に入ると異物としてクレームが来るため、検査ラインで検品してはねている」というお話をお伺いしたことがあります。先のバームクーヘンでもわずかな焦げが混入していただけでクレームが入ります。あめ玉も形が悪いとお客様相談室に電話があります。おそらく大多数の人が気にしないものであっても、納品先からのクレームなどを敬遠し事前に廃棄してしまいます。

カップ麺に使用される乾麺であっても重量と形状のチェックを行い、規格に外れたものは廃棄されます。私にはカップ麺の乾麺の形状が悪いとクレームがあることが理解できませんが、実際問題としてカップ麺工場の乾麺廃棄は膨大な量です。

乾麺

異物混入で廃棄されるものも多くありますが、ほとんどの場合食品衛生上混入しても健康被害がないものばかりです。以前、砂糖を数百トン廃棄するという案件がありましたが、これは赤色シリコンパッキンが混入したというもので、万一食べても全く健康には問題ないものです。しかし、「異物が入っているとわかって販売すると会社の姿勢が問われる」という理由で廃棄されることになりました。

個人的には異物混入などの事件が起こると「食の安全」を錦の御旗としてマスコミによる食品工場のバッシングされることが食品ロスの増加につながっているように思います。健康被害があるものの回収は当然ですが、健康被害がないものまで回収を求める今の風潮はおかしいと思います。

たとえば、最近ではこんなニュースが。

J-オイルミルズ/「味の素 から揚げの日の油」40万個自主回収

「一部製品について、包装容器の接着不良により最上部からの油漏れが判明したため、対象製品を自主回収すると発表した。」「同社では、健康危害はないが、消費者が不快な思いをすることないよう、同社では本件を重く受け止め、万全を期すため、回収するとしている。」個人的にはこれで回収する風潮が不快ですw

今回の法律制定を機に過敏な消費者とそれをあおるマスコミの風潮が少しでも改善することを願ってやみません。

酵母と酵素

師走になり忙しい日々が続いています。忘年会も多く、酒を飲む機会が増えており肝臓に負担がかかる日々です。
ここ数年、飲む機会が多いのですっかり肝臓が鍛えられ、以前に比べ格段に酒に強くなった気がします。

当社は様々なお取引先がありますが、酒好きだからというわけではなく最近は醸造関係のお取引先が増えてきました。日本酒、ビール、ウィスキー、焼酎、みりん、醤油、味噌、etc.

発酵に興味がある自分としてはお客様訪問してもいろいろと現場を見せていただくのが非常に面白いです。
また、おいしいお酒にも巡り合える機会も増えたのもポイント高いです。酒蔵やウイスキー工房を営業しては酒を買う・・という本末転倒な機会も増えているのはここだけの話です(笑)

そんな中で今年から取り組んで切るのはビール酵母の飼料化です。ビール酵母自体は昔から食品や飼料として利用されており、一般的なものです。しかし、通常は乾燥させて乾燥ビール酵母として流通されており乾燥コストが高いため、かなり高価な原料でありどちらかというとサプリメント的な使用方法が主体でした。
現在、当社が取り組んでいるのはビール酵母を乾燥せず単に濃縮させ、そのまま豚のリキッドフィードのたんぱく源として利用するという取り組みです。
現在、飼料のタンパク源としては大豆粕の利用が主体です。しかし、大豆粕は近年の畜産需要の高まりにより単価が高止まりしています。これをビール酵母代替することで、コストの低減をめざしています。
愛知県農業総合試験場で試験を実施したところ、大豆粕以上の成績をあげることができ、自信をもって供給を行っています。現在は当社の豚もこのビール酵母をタンパク源としており、良い結果を残すことができています。

ところで、酵母という言葉は一般的ですが、じつはあまりよく理解されていないように思います。酵母とは単細胞の真菌(核を持つ)の総称であり、細菌とは異なります。酸素がある状態では普通に呼吸を行いますが、酸素が少ないと糖を分解し二酸化炭素とアルコールを生成するという呼吸を行い、これが酒やパンを造る際の重要な働きとなっています。飼料に使う際も菌体なのでタンパク質含量が高く、またアミノ酸のバランスが良いという特徴があります。

また、酵素と酵母の混同もよく見受けられますが、酵母と酵素は全く別のものです。酵母は生物ですが、酵素は体内でも分泌されているタンパク質の一種であり、触媒作用を持つものを指します。代表的なものにアミラーゼがありますが、これは唾液にも含まれておりデンプンを糖に分解する作用があります。カビ(これも真菌です)が多量に体外に分泌する性質があり、この性質を利用して麹などが作られています。麹はコウジカビであり、アミラーゼやプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を分泌します。この作用により、デンプンを糖化し、酒を造ることができるわけです。

流行っている酵素ジュースは糖が酵母発酵しているのであり、正確には「酵母ジュース」と言うべきものかと思います。むしろ、酵素の作用で糖ができている甘酒のほうが酵素ジュースとよぶのにふさわしいものです。個人的にはそのうちこの酵素ジュースのアルコール発酵を税務署が問題にするのではないかと危惧するところですw

飼料による食味の変化

世間はお盆休みですが、当社は絶賛営業中です。食品業界全般の傾向としてお盆は繁忙期で、業界の端くれの当社も当然ながら多忙のためなかなかお盆は休めません。私自身は年間通じて多忙なのでお盆がとりたてて繁忙期というわけでもないのですが:)

最近、エコフィードを使い始めたor使いたいという農家さんのお手伝いをする機会が増えてきました。使用するエコフィードの選定などのお手伝いもしています。
一口エコフィードと言っても千差万別であり、使用方法を誤ると肉質が低下したり増体が悪くなったりします。
豚の場合、特に注意するべき点の一つが脂肪酸組成です。
油脂、特にリノール酸が多い大豆油、菜種油などのいわゆるサラダ油を多く含む原料を使用すると、豚肉中の脂肪融点が下がることで商品価値の低下につながります。
たとえば、おからや揚げ物などを多く給与すると、脂肪融点が10度以上低下することも珍しくありません。

他方、動物性の脂肪も肉質に大きな影響を与えます。魚の油脂にはDHAやEPAなどが多く含まれています。DHAは健康によいと言われる脂肪酸ですが、酸化されやすいという特徴があり、酸化が進んだDHAは生臭い独特のにおいがあります。これが豚肉中の脂肪に移行しやすいため、魚(の油脂)を給与すると豚肉中にもDHAが含まれ、獣臭の原因となります。
従って、脂肪が少ない魚でしたら影響が出にくく、たとえば鰹節やはんぺんなどを給与しても問題はありません。

いろいろなデータを見ていると、(特に豚の場合は)飼料が肉質に与える影響が大きいと言うことを改めて感じます。輸入トウモロコシ主体の配合飼料ではなくエコフィードを使うというのは、特徴のある肉質を作る大きなポイントであり、使い方によっては肉質が良くも悪くもなりえます。それだけ難しくもあり、面白くもあります。また、同じ単胃動物である人間も食べるものによってお腹の脂の質が変わるわけであり、人間にとっても食べ物がいかに大事かと思い知られます。私はリノール酸多給してぶよぶよの脂となった枝肉の写真を見てから揚げ物は極力食べないようにしています(笑)

 

 

農場要求率と養豚経営

年の瀬が迫ってきて、慌ただしい日々を送っています。日頃からバタバタしているので普段とあまり変わらないという話もありますが(^^)

おかげで学会誌とか業界紙を読む時間が無く、出張中に飛行機やホテルの中で読む羽目になってます。ただ、勉強を継続することは当社の強みにつながっていると思っているので、そこだけは怠らないように努力しています。特に、畜産に関してはまだまだ勉強をすることが多いので、力を入れています。

出張先のホテルで業界紙を勉強
出張先のホテルにて

畜産の勉強をすると、畜産「経営」というのは非常に面白いと思います。耕種農家以上にいろいろな要因があるので、分析をすると様々なことが見えてきます。当然ながら畜種によって全く経営スタイルが異なっており、豚、牛、鶏で分析ポイントが異なるだけではなく、同じ養豚でも実はかなり経営の手法に差異があります。

豚の場合、繁殖、子豚導入による肥育、一貫経営による違いがあります。(日本ではほとんどが一貫経営ですが)一貫経営の中でも、母豚を購入しているのか、自家育成しているのか、種付けをする精液を購入するのか自家採種するのかなどの差により費目ごとのウエイトが変わってきます。経営規模、経営方針によってどこまでアウトソーシングするのかが異なり、それが指標の差となってきます。

しかし、いろいろな経営スタイルがある中、最終的な経営に影響を与えるのは農場要求率という数字です。この数字によって経営は大きく左右されます。

農場要求率というのは、農場全体の飼料の使用量/出荷した豚の生体重で計算される指標です。農場全体の飼料の量となりますので、母豚、肥育豚、子豚の全飼料を足した量となります。
この中で、一番飼料の使用量が多いのが肥育豚です。つまり、肥育豚が少ないエサで効率よく育つ(=要求率が良い)と、農場全体の要求率が良くなります。肥育豚の要求率は、品種、飼料の種類や加工方法、疾病の状況によって大きく異なります。近年の豚は改良が進むにつれて飼料の利用効率がよく、増体が良い品種特性となっています。

また、疾病が少ないと豚の成長はよくなり、逆に、疾病によっては成長が著しく遅れたりします。余談となりますが、ともすれば世間では大規模で効率を重視しているような農場は疾病が多く薬に頼っているイメージがありますが、実際は効率を重視するほど疾病コントロールは重要であり、大規模農場はむしろ衛生レベルが高く疾病も少ない傾向にあります。
肥育豚の要求率に影響が大きいものの一つに、飼料の種類があります。たとえば当社が扱っているエコフィードは、加熱処理がされているもの、微粉砕されているものなどが多くあります。パンは小麦を製粉し、焼き固めたものであり、製粉の過程で消化が悪いフスマなどは除去され加熱によりデンプンのアルファ化がおきているため、飼料としては可消化率はほぼ100%となり、非常に消化吸収がよいものとなります。これに対し、豚では一般的な配合飼料原料のトウモロコシの外皮の消化が悪いため、その分可消化率や消化速度が低くなります。エコフィードのメリットとしてはコストが注目を集めやすいですが、消化吸収がよく飼料要求率が良いことも重視すべき点です。

最近の豚の品種は1回の出生頭数が多くなっています。母豚1頭からの出荷頭数が増えると、当然増収になります。しかし、豚舎のキャパシティには限りがあります。たくさん子豚が生まれると、肥育する場所が足りなくなってしまいますので、結果として母豚の数を減らすこととなります。母豚の数が減り、食べる飼料の量が減りますので農場要求率はその分向上しますが、全体から見るとそれほど大きな効果が得られるわけではありません。近年の品種改良された豚は、たくさん子豚を産むことよりもむしろ肥育において要求率がよく、増体がいいことのほうが農場経営に寄与している場合が多いです。

一般的な養豚経営では売上に占める飼料費の割合は60%程度と言われていますが、お客さまの決算書見たり聞取りをしたりすると、要求率の差や購入単価の違いにより飼料費の割合は40%~70%程度までの大きな開きがあります。数値分析をすると養豚経営における収益構造の差がみられ、非常に面白く思います。

当社も養豚事業参入すべく奮闘していますが、参入しようと思った理由の一つが養豚の経営の幅の広さです。多様な経営戦略の選択肢がある養豚事業を経営することは、経営者の力量が問われるものでありチャレンジ精神が刺激されます。自社の強みを生かし、高い品質と低いコストを両立した畜産経営を目標にがんばりたいと思っています。

動物性タンパク質の効果

すっかり更新がご無沙汰になってしまいました。相変わらず書類の締めきりに追われる毎日です。

忙しい毎日で子供の相手もあまり出来ませんが、予定が無ければ朝食は子供と一緒に食べています。最近は好き嫌いがはっきりしてきて、キュウリやピーマンを食べさせるのに苦労しています(^^)キュウリは嫌いですが、肉や乳製品、特にチーズが好物で、ブルーチーズでもなんでももりもり食べます。

 

豚の飼料でも動物性のタンパク質を与えることがあります。ただし、昨今は動物性タンパク質をあまり使用しなくなってきています。大きな理由として動物性タンパク質原料の高騰です。魚粉は需要の増加と漁獲量の低迷が相まって高値安定状態になっています。脱脂粉乳なども需要の増加で一時はかなり国際相場が高騰しました。

また、BSE以降、動物性タンパク質の給与に関しては使用に制限がかかる原料もあることも要因のひとつです。

このような背景で、市販の配合飼料のうち特に出荷間近の豚にあたえる飼料はほとんど動物性タンパクが使用されていません。魚粉を給与すると肉ににおいが移行する傾向にあります。個人的な意見として、魚粉が原因と言うより、魚粉に含まれている脂肪の影響が大きいと思っています。したがって全国的に豚肉がにおいが少ない、あっさりとした脂のものが多くなっていいます。

一方、子豚の飼料には動物性タンパク質が使用されているものが中心です。脱脂粉乳や魚粉などが飼料原料として利用されています。理論的には飼料はアミノ酸のバランスがとれていれば問題ありませんので、大豆由来のタンパク質であってもアミノ酸のバランスを補正すれば動物性タンパク質と同等であるはずですが、実際には動物性タンパク質の方が増体がよい傾向にあります。特に子豚の段階での発育は非常に重要であるため、高価格な動物性タンパク質が原料として利用されています。動物性タンパク質が優位である理由として、嗜好性がよいこと、消化率がよいことなどがありますが、それだけでは説明できない部分があります。
当社でもゆで卵の廃棄品や脱脂粉乳(のB品)などを飼料原料として取り扱いしており、子豚の飼料として活用しています。未利用な資源は多くありますが、適材適所で有効活用していくことが必要かと思います。

ゆで卵

廃棄ゆで卵

飼料を取り扱うなかで栄養学が発展してもまだまだわからないことが多くあることを知り、生き物の奥深さを感じます。うちの子供はチーズが好きな割に身長が低めなのもどうなっているのだろうと思う今日この頃です(^^)

エコフィードの保存性

ここ数年来、東京ビッグサイトで行われる環境展に出展しています。東京で4日間の展示会は営業担当者が私一人の当社にとって結構負担も大きいのですが、ビッグサイトだけに多くの方の来場を頂けるので継続して出展しています。おかげで毎年5月は非常に忙しく過ごしており、ブログの更新も滞りがちになっています。(言い訳ですが・・)

展示内容は毎年あまり代わり映えもせず、食品工場でのオンサイト処理に関するものです。オンサイト処理とは、食品工場で食品廃棄物を処理するシステムのことです。腐敗しやすい食品廃棄物も現場で処理を行うことで、長期間の保存が可能となり、飼料としての利用が容易になります。例えば、以前も投稿しましたが当社ではビール粕のリサイクルに取り組んでいます。ビール粕も適切な処理を行わなければすぐに腐敗変性してしまいますが、処理を行うことで高品質な飼料となります。

展示会ではよく、「保存処理とはどういった処理をするのか?」というお問い合わせをいただくことがあります。食品工場から排出される食品残さは、業種によってももちろん異なりますし、工場によっても差異があります。このため、現場によって処理方法を変えることが必要です。当社はこれまでの実績でノウハウを蓄積しており、コストをできるだけかけず、品質を確保できる手法を選択しています。

たとえば、当社ではもやしをサイレージ化して飼料にする実績が多くあります。もやしは高タンパクであり、遊離アミノ酸やカルシウムを多く含むため緩衝能が高くpHが下がりにくい傾向があります。密閉保管しておけば乳酸発酵も行われますが、それだけではpHが十分に下がらないため品質が不安定になります。このためもやしの保存処理はギ酸を添加する必要があります。

他方、同じ野菜加工残さでもゴボウの場合はギ酸の添加は不要です。ゴボウは想像に反し糖含量が高いため密閉保管することで容易に乳酸発酵がおきます。このため、サイレージ化は比較的容易です。

廃棄ゴボウ
廃棄ゴボウ

無論、乾燥処理を行えば安定した品質のものができます。しかし、高水分の食品廃棄物の場合、乾燥処理のランニングコストが高くなるため乾燥処理は事業収支が厳しいケースが多いです。製造される飼料の価格も踏まえ、乾燥処理を選択することが重要になります。

また、当社では保存処理を行うだけでは無く、飼料としての有効性を確認するために各種分析も実施しています。上記のゴボウも共同研究先の大学で消化性試験を実施し、飼料価値を見いだしています。

様々な原料を扱うに当たっては、科学的なアプローチを駆使することが求められます。仮説を立て、実験し、そして実用化することで食品メーカーにも畜産農家にも喜んでもらえる飼料ができる、この一連の新たな価値を創出するプロセスはとてもやりがいがありますし、おもしろくもあります。これからも新たな価値創出をめざし取り組んでいきたいと思います。

 

エコフィードを使えば儲かるのか

ビジネス向けサイトとか見ていると、「儲かっている会社の社長はこれをやっている」みたいな記事をみることがあります。例えば、新聞を3紙以上読んでいる社長の会社の方が経常利益が高い・・と言ったようなネタです。

この手の話、いつも思うのですが、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのではないかと思います。

新聞をたくさん読むことで知識が付いて経営が良くなってきたのか、それとも経営が良いから余裕ができて新聞を読む時間が取れているのか・・。新聞を読むことが無駄になることは無いと思いますが、効果を期待しすぎるのは禁物であると思います。

ホルスタイン
 

当社では有機肥料やエコフィードの生産を行っています。当社のお客さまや知り合いは有機肥料やエコフィードを使いこなしている方がたくさんみえます。
そういった方は概して経営がよいことが多い傾向にあります。有機肥料は一概に言えませんが、エコフィードは一般に配合飼料、輸入飼料と比較して価格が安く、飼料コストが生産コストの大部分を占める畜産農家がエコフィードを使用することでコストが下がります。
当社のお客さまでエコフィードをメインにしている方は概して経営がよいのです。そういった状況を見るとコストの安い飼料をうまく使っているから経営が良くなっているという印象があります。

でも、個人的にはエコフィード使用により経営が良くなっているのはコストが下がっていることが大きな要因では無いと思っています。エコフィードは配合飼料と異なり、成分もまちまちであり自分で配合する必要があったりします。使用に際して工夫が必要ですし、購入飼料と比べ手間もかかります。こういったものをうまく使うには、技術レベルが高く、前向きで意欲がある人で無ければ難しいです。
購入飼料を使うだけでしたら飼料の成分などのことを知らなくても問題ありませんので、残念ながら畜産農家でも飼料の知識に詳しくない人が多く見えます。小規模農家であっても数千万単位で購入しているわけですから、その内容を知ろうとしないのは大きな問題です。
要は、エコフィードをうまく使いこなせる方はもともと経営が良い農家が多いのでは無いかと思います。逆に、コストが下がるからと言って知識が無い人がむやみに使用すると、生産効率がわるくなったり手間がかかったり、畜産物の品質が下がったりと言ったことが発生しかえって経営が悪化するケースも散見されます。

当社のお客さまの酪農家さんは酪農教育ファームに参加されているケースが多いです。酪農教育ファームとエコフィードは関連がありませんが、酪農教育ファームに参加されるような農家さんは前向きな方が多いので、エコフィードなどの新しい技術に積極的なのではと思います。

耕種農家でも土壌分析をしなかったり、肥料の設計をお任せにしているケースはすくなくありません。そういった農家では肥効がまちまちで取り扱いが難しい有機肥料をうまく使用できるはずがありません。有機肥料をうまく使いこなしている農家は肥料に対して知識が深く、収量が多く高品質な農産物を生産できているため経営が良くなっているのではないかと思います。なお、そういった農家は案外有機JASを取得するわけではなく、慣行栽培でありながら減農薬、減化学肥料で有機肥料をうまく使いこなしている場合が多いと感じます。有機肥料を使うのはJASを取るためでも化学肥料を危険視ししているわけでもなく、有機肥料の方がうまく使用すると効果を発揮するからではないかと推察しています。

逆に言うと、そういったハイレベルな農家はエコフィードや有機肥料を使わなくても経営がよかったりします。レベルが高い農家が使いこなすのが難しいけどうまく使うと効果を発揮する・・これがエコフィードや有機肥料ではないでしょうか。
これからの厳しい環境下では、農業生産においても高い技術レベルと前向きな姿勢が求められていくことと思います。私もそういったお客さまとお付き合いするために更に勉強と技術研鑽をしていきたいと思っています。

酒粕の成分と酒造り


最近、ホームページからのお問い合わせで酒粕の買い取り依頼が非常に増えています。食品としての需要低迷が主因のようですが、Webという媒体によって需給の状況がわかることも興味深いです。

私は酒と名前が付くものはたいがい好きですが、日本酒ももちろん愛好しています。飲むだけではなく、酒蔵見学や杜氏とお話しで酒造りの方法を聞いたりすることも好きです。日本酒の作り方は非常に複雑なプロセスを経ますが、微生物学的な知見が皆無であった江戸時代にこのような技術が確立されていることに非常に驚きを感じます。

酒粕

 

日本酒の作り方はWikipediaの記載が詳しい(異常にw)ですが、超概略として

1.米を精米し、蒸す。

2.コウジカビをふりかけ、麹を作る

3.麹、別に蒸した米、酵母を混ぜもろみをつくり、発酵させる

4. もろみを絞り、濾過して酒になる。

と言ったプロセスとなります。

一連の反応で米に含まれるデンプンがコウジカビが出すアミラーゼによりブドウ糖となります。酵母はデンプンをエサにすることはできず、ブドウ糖は使えるのでカビを使ってデンプンを糖に変えることで米を使って酒を造ることができます。ビールやウィスキーではデンプンの糖化を麦芽の持つアミラーゼを用いて行い、ワインはブドウに含まれている糖をそのまま用いていることが日本酒との違いです。

酒粕を飼料として取り扱うにあたって、成分分析を行っているのですが分析結果を見ているとびっくりするぐらい成分が異なります。一番差が出るのは粗タンパク質含量の差で、最も低いものは乾物換算で20%程度、高いものは乾物換算で60%と大きな差があります。傾向として、安い酒ほど酒粕の粗タンパク質含量が高い傾向にあるようです。

酒粕の粗タンパク質は米に8%程度含まれる粗タンパク質が濃縮されたものです。この値が大きく違う原因として

・高い酒ほど精米歩合が高い。米は表面ほど粗脂肪、粗タンパク質が高いため、精米歩合が高くなるとそもそも原料中の粗タンパク質含量が低くなる。

・安い酒は麹の活性を高め、米を良く溶かしている(=糖化反応をすすめている)糖化がすすむと糖はエタノールに変換され、酒の歩留りが上がる。その分残った粕に粗タンパク質が濃縮される。

・安い酒は酒粕を絞る際にしっかり絞るので、水溶性の糖などの割合が下がるため相対的に粗タンパク質含量が高くなる。

などが推定されます。飼料としては水分が少なく、タンパク質の含量が高いほうが好まれますので、安い酒の酒粕が飼料に向いていると言うことになります。酒粕を見ると酒造りの奥深さを感じるとともに、自分の飲む酒選びにも役立っています ^^;
こう言う仕事をしていると食品メーカーの裏事情が垣間見えてとてもおもしろいですね。

塩は買うものでない

当社では労働安全衛生法に則って健康診断を実施しています。結果は個人に配るのですが、会社にも保管用の一覧が届きます。先日もらったらうちのスタッフ引っかかりまくりで困惑です。従業員の健康が心配なだけではなく、零細企業の場合従業員の健康問題は会社経営にも影響しますので、健康管理には気をつけてほしいものです。

食品リサイクル稼業をしているとよくわかるのですが、今の日本人が食べているものはカロリー過多、塩分過多、脂肪過多です。とくに、日本人は塩分を過剰摂取していると言われており、WHOの推奨値の2倍程度摂取していると言われています。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77445710U4A920C1000000/

一方、家畜のエサにも塩分が配合されています。例えば汗腺が少ない豚では飼料中の塩分要求量はずっと少なく、だいたい0.2%程度です。肥育豚は乾燥物換算で2kgぐらいの飼料をたべますので、塩として約4gぐらいとなります。これは必要量ですので、実際はこれより若干多い塩分が飼料には配合されています。

しかし、食品廃棄物を扱っていると塩分が多いものが多くあるため、これを利用しない手はありません。品質の高い廃棄物は入手が難しくなってきていますが、塩分が多いものはまだまだ手つかずで残っています。

当社が今まで塩分が多いものとして利用してきたものの例として

・味噌RIMG0197

・醤油粕

・五平餅のたれ

・めんつゆ

・ふりかけ

・インスタントスープ

・椎茸旨煮の煮汁

等々があります。たとえば味噌は塩分10%程度あります。1日10トンのリキッドフィードを製造するとすると、乾物として約2トン、塩分0.4%とすると8kgの塩の量となり、塩分10%の味噌を80kg配合することが可能となります。なお、当社のお客さまの場合、塩分があるものを入れるため、リキッドフィードに混合する配合飼料からは塩を抜いてあります。

また、こういった高塩分のものに共通する特徴として、旨み成分であるアミノ酸を多く含むことが多いと言うことです。これらのものを配合することで、単に塩分(ナトリウム)の補給になるだけではなく、旨み成分による嗜好性向上が期待できます。

この中でもとくにめんつゆは絶大な効果がありました。めんつゆは塩分が5%程度と案外低く、かなりの量を添加できます。糖度が15度程度あり、鰹だしの旨み成分が含まれているため相当な嗜好性アップの効果が得られました。

最近はリキッドフィード原料にゆでうどんの廃棄品を利用しているため、できあがった飼料はいわば「味噌煮込み」状態です(笑)
よりよい飼料を製造するためには、いかに未利用の資源を有効に活用するかの智慧が求められています。