エコフィードのマーケット

年末も押し迫ってきました。今年の12月はとても忙しかったような気がします。
当社の仕事はそれほど年間を通じた仕事量の変化があるわけではないのですが、今月は出張が多かったこと、忘年会などの機会が多かったこともその原因の1つかと思います。

忙しい理由の1つにWebなどを通じて仕事のご依頼が増えていることもあります。Webからのお問い合わせで一番多いのは「食品廃棄物を飼料としてリサイクルして欲しい」というものですが、「エコフィードを購入したい」という畜産農家さんなどからのお問い合わせも増えています。

シカゴコーンの相場は昨年から見るとかなり低くなっているのですがそれでも絶対的な高値圏にあることは変わらず、また円安の影響もあり配合飼料の価格は高止まりしています。こう言った背景の元エコフィードの需要は確実に増加しているものと思います。エコフィードを使用するということは確実に一般化してきています。

このような情勢のもと、食品メーカーさんのところに営業に行きますと食品廃棄物がすでに飼料として利用されている・・・ということがよくあります。飼料として利用されていると必ず有価物として取引されていると言うわけではなく、産廃として処分費用を払っている場合もあります。飼料利用であっても処分費用を払っている場合、その費用を低減できないかということで当社へご相談をうけることが増えてきています。また、有価物として廃棄されている場合でもその価格をさらに高くしたいということでご依頼を頂くケースもあります。

エコフィードのマーケットはごく限られたものですので、すでに飼料利用されている場合その利用先はかなりの割合でお取引、お付き合いのある畜産農家だったりします。そういう原料を横取りしてしまいますと軋轢が発生することは確実です。
また、利用先がお付き合いのある先でなくても、限られた原料を取り合っていくことは相場の高騰を招き自分の首を絞めることになってしまいます。同じような手法のリサイクルでの競合は価格競争だけの勝負になってしまいます。
そもそももともと飼料利用されているものを利用しても食糧自給率向上には貢献しません。

と言うわけで、すでに飼料として利用されている原料の場合、なにか特段の理由がない限りは手を出さないようにしています。営業に行ったときには、「今はどうやって処理されていますか?」と必ず聞くようにしているわけです。

食品リサイクルに限らず、単一マーケットで同じ手法での競合というというのは必ず価格に陥ります。企業、特に中小企業ではオンリーワンの部分がなければ競争力が持てず中長期的な継続性が維持することはできません。
当社は技術分野での存在価値を見いだし事業の発展をめざしていきたいと考えています。そのためにはまだまだ勉強と研究が必要だと思う今日この頃です。

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もやしサイレージ(写真と本文は関係ありません)

リキッドフィードの嗜好性

いつまでも暑かった今年の秋ですが、この頃ようやく秋らしくなってきました。食欲の秋到来です。

食欲が増すのは人間だけではなく、豚も季候がよくなることで食欲が増します。
今の豚の飼料は栄養バランスを細かく計算しているため、成長速度は早いです。
このエサをしっかり食べさせることが存外難しいです。

当たり前ですがしっかり食べなければ豚も人間も大きくなりません。

当社で製造しているリキッドフィードは主原料がジャガイモです。豚はジャガイモを好みますが、ジャガイモは味があまりないのですこし味をつけてやった方がよく食べるようになります。今までいろいろなものを入れてみましたが、基本的には甘くした方が嗜好性が向上する傾向にあります。
また、甘いだけではなく適度な旨味と塩分があった方が嗜好性がよくなります。今まで一番嗜好性がよかった組み合わせはジャガイモにめんつゆ、あんこを入れた時です。めんつゆを受け入れして知ったのですが、ストレートのめんつゆの場合塩分は4%程度ですが、糖分は10%以上ありかなり甘いです。しかも、鰹だしが入っているのでうまみも十分あります。

先日、五平餅のタレの廃棄品を受け入れしました。これも相当な甘さと旨味があるとおもわれますので、嗜好性はかなり期待できそうです。

当社ではリキッドフィードだけではなく、乾燥したエサも作っています。乾燥したエサの1つとしてバームクーヘンがあります。当社では熱をかけずに乾燥処理を行っていおり、このため乾燥したバームクーヘンは非常に良いにおいがして、これをすこし飼料に混ぜるだけでエサをたくさん食べるようになります。

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バームクーヘンの乾燥風景

いろいろと試行錯誤していますが、豚の気持ちはまだまだわからないことが多いです。
豚に喜んでもらえるエサをがんばって作りたいと思います。

高濃度糖液の処理方法

北海道へ出張中です。飛行機の中でブログ書いています。作成しなければいけない書類がたまってしまいちょっと気が滅入っている今日この頃です。

昨年の春にリキッドフィーディングのラインを増設してから液体の飼料原料の受入を強化しています。受け入れているものの1つに糖液の廃液があります。

食品メーカーからは様々な廃棄物が発生しますが、液体の廃棄物というものも結構あります。ある程度の規模以上の食品メーカーにはほとんど排水処理設備があります。機械の洗浄や原料の処理水などを浄化するためにこういった設備があるのですが、糖液はこういう排水処理設備に放流しないで別途当社のような業者に委託しているケースが多いです。

排水処理設備は水に含まれる有機物を処理するように設計されているのですが、排水処理槽は無闇に作られているわけではなく、有機物の量に対応して計算を行い設計しています。有機物量が多くなるとその分大きな排水処理設備となります。また、当初の設計以上の負荷がかかると所定の能力を発揮できなくなったりもします。

糖液は微生物による分解性が非常に高いです。排水の汚れの程度はBOD(生物学的酸素要求量)という単位でしめします。これは排水を密閉した瓶にいれて5日間置いておいたときにどれぐらい酸素を消費するか・・という分析によって測定されます。微生物が有機物を分解するときに酸素を消費しますので、それを測定するわけです。分解性が高いということは酸素消費量も多いと言うことで、BODも高い値となります。

排水処理設備にもよりますが、だいたいBODが10,000mg/L~100,000mg/Lを越えてくると別途処理した方がコストメリットが出てきます。100,000mg/Lというと排水処理の世界では相当な高濃度なのですが、糖液では15%程度がこれに該当し、フルーツ缶詰やジュースなどが相当します。これぐらいの糖液は食品製造業ではよく使う濃度なので当社によくお引き合いがあるわけです。

糖度が15%ぐらいになってくると排水処理はかなり難しい感じなのですが、10%以下の場合は排水処理をするのか、別途外部に処理委託をするのかは微妙なラインです。最近そういうお問い合わせが増えており、当社ではお客様に濃縮装置のご提案をしています。濃縮することにより処分費用が下がったり、買取ができるようになります。また、糖度が高いと浸透圧の関係で菌の繁殖が難しくなり、保存性も向上します。

 

排水処理に流せば単なる負荷源でもうまく使えば飼料となる・・そういったものはたくさんあります。そういうモノを営業して発掘するとなんか宝探しに成功したような感じでちょっと楽しいですね ^^;

エコフィード連載7回目(最終回)

というわけで、中央畜産会発行の畜産経営情報での短期連載が無事終了しました。思ったより大変でした。

http://jlia.lin.gr.jp/cali/manage/

最終回は牛の話です。牛はまだ取り組み始めたばかりで勉強が不十分で、なんとか書き上げたという感じです。

ただ、案外いろいろな人から「読んでいるよ」と言われ、ちょっと嬉しかったです。でも、連載はしばらくは遠慮したいですね(^_^)

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エコフィードの連載(6回目)

風邪をひきました。だるいです(+o+)

中央畜産会発行の畜産経営情報 エコフィード連載の第6回目がアップされました。

今回のテーマは豚のリキッドフィーディングです。

 

リキッドフィーディングを利用したエコフィード給与について解説を行っています。

業界関係者の皆さんぜひご覧ください。

野菜くずのリサイクル

1週間の東京出張も無事終わりました。
去年は終わってからあまりに疲労困憊で家に帰ってから風呂にも入らずに寝てしまったのですが、今年は自重したので昨日の夜もまだ元気が若干残っていました。

長期出張の時は毎度毎度現場のラインでトラブルが発生したりしていたのですが、今回は何も起こらず平和な1週間でした。ホットしています。

今回の環境展でもさまざまな業種の方がブースに立ち寄られました。食品メーカーさんや農業関連の方はもちろん顧客ターゲットであるのですが、当社は機械メーカーや同業のリサイクル業、学生さんにも懇切丁寧に対応しています。そういうやり方をしているのでブースでの対応に追われてかなり忙しくなるわけです。

そういう中でお問い合わせがあったのが「野菜くずをなんとか飼料として利用できないか」というお話しです。実は、最近野菜くずのお問い合わせが非常に増えています。しかも、発生量がかなり多い場合が多いです。

野菜くずが発生するのは、サラダ工場、カット野菜工場、漬け物工場などです。私が聞いたことがある範囲では1日20トンのハクサイを廃棄している漬け物工場があるとのこと。実際に見に行った現場では1日5トンぐらいの廃棄野菜が出ているところがありました。かなり小さい町工場のようなところでも1日1トンぐらいの廃棄野菜はそれほど珍しくありません。

以前は野菜は家庭や飲食店で調理するのが普通だったのが、昨今はサラダも総菜として買ってくるケースが増え、漬物も家で漬けなくなってきているためそういった加工業が伸びてきているのが背景にあると思われます。
チェーンの焼肉屋さんでは厨房に包丁が無いそうです。アルバイトが袋に入ったカット野菜を皿に出すだけですむようになっているわけです。

 

と、お問い合わせが多くなっているのですが、野菜くずは飼料として利用することがなかなか難しいです。水分が多いため、普通の配合飼料を利用している養豚、養鶏では利用しにくいです。また、葉物野菜には硝酸態窒素が含まれており、反芻動物である牛では障害が発生するため給与できる量が限られます。

豚のリキッドフィーディングでは利用できるのですが、当社も参画した愛知県農業総合試験場の試験では野菜くずを多給すると繊維の膨満感により飼料の摂取量が減ってしまうと言う結果が得られました。野菜ダイエットというのは理にかなっていることが証明されたわけですが、豚がダイエットしては困ります。

しかし、野菜というのは実はタンパク質含量が案外高いです。たとえば、キャベツは食品成分表によると水分92.7%で100gあたりタンパク質が1.3g含まれています。乾物に換算するとタンパク質含量は17%となり、豚用の配合飼料のタンパク質含量に匹敵する量となります。タンパク質原料の高騰している中、野菜はもっと注目されるべきではないかと思います。

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というわけで、現在野菜をうまく利用できないか鋭意検討を行っています。いくつか試案もあり、今後それを実験していく予定です。
新しい手法ですのでうまくいくかはわかりませんが、新しい技術に取り組むのはとてもわくわくします。

エコフィードの連載(5回目)

告知を忘れていましたが、中央畜産会発行の畜産経営情報最新号がWebで公開されています。

私が執筆している「中小規模畜産経営のためのエコフィード給与の現状と課題」の第5回目連載が掲載されていますので、よろしければご覧ください。

今回は養豚におけるエコフィード利用のポイントおよび実例紹介です。

http://jlia.lin.gr.jp/cali/manage/

次の回はリキッドフィードについて掲載します。

養豚における管理会計的手法

今日は滋賀県に出張中です。写真は近江ちゃんぽんなる物です。自分のイメージするちゃんぽんとはやや異なりますが、おいしかったです。

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写真と本文は関係ありません

閑話休題

 

仕事柄養豚農家にお伺いしていろいろとお話を聞くことが多いのですが、この仕事を始め養豚農家さんの話を聞いて「企業経営」という視点から見て感心することがいろいろとあります。その1つは経営状態がいい養豚農家は非常にこまかく数値管理を行っているという点です。

日本では多くの養豚農家は一貫経営、すなわち繁殖-肥育を一体に行っています。一貫経営は管理するべきパラメーターが多いため、緻密に数値を追うことが求められています。
繁殖を行うためには当然母豚(ぼとん)を飼う必要があり、母豚を管理して繁殖させ子豚を産ませます。管理する指標として、1回に出産する頭数、年間の出産回数、生まれてきた子豚の体重、離乳するときの体重などがあります。こう言った数字が最終的に1年間に母豚1頭あたり何頭出荷できるかに影響してきます。母豚1頭あたりの出荷頭数が少ないと言うことは母豚に与える飼料が多く必要となり、母豚を飼う豚舎のスペースも広く必要になります。

また、日本では母豚はたいてい2種類の品種の掛け合わせです。養豚農家によってはこの雑種を自分の農場で交配して生産しているところも多くあります。この場合、2種類の品種を飼育して、母豚の更新頭数に応じた数の豚を育てなければいけません。母豚は適切な産歴で更新しなければいけないため、母豚の育成が適切に行われないと母豚の数が足りなくなったりすることもあります。

このように様々なパラメータが絡み合って養豚生産のコストが決まります。相手が生き物であるのにかかわらず、非常に緻密な原価計算をすることが要求されるわけです。一般の中小企業経営者は案外原価計算に無頓着だったり原価削減目標がなかったりします。養豚農家は経営勉強会などで集まってそれぞれの管理項目を比較したりしますので、一般の中小企業以上に経営を意識しているように見受けられます。

この前ある養豚農家さんとお話ししていたら、「養豚経営でもっとも影響が大きい項目は肥育豚の飼料要求率だ。」という話題になりました。飼料要求率とは体重が増えるのに必要な飼料の量のことです。養豚でもっともコストがかかるのは肥育豚の飼料代です。この要求率は成績がいい農家と悪い農家では1割以上異なります。
たとえば、年間出荷6000頭の農家で飼料要求率が3.0だったとすると、年間の飼料必要量は

6000頭×110kg(出荷体重)×3≒2000トン

となります。要求率が1割異なると200トン飼料必要量が変わる計算であり配合飼料が50円/kgとすると年間の飼料コストは1000万円変わってくるわけです。年間出荷6000頭というのは家族経営規模であり、そんな農家でも年間コストがこれほど変わるというのは耕種農家ではあまり無いケースだと思います。それだけ養豚経営がシビアであると言うこと証拠ではないかと思います。配合設計の重要性がよくわかるかと思います。

養豚経営はとてもシビアな数値管理が求められますが、それだけにとても面白さがあります。当社が販売している飼料もお客様の経営を大きく左右する場合もあり、それだけに慎重に販売することが必要であると感じています。

リキッドフィードの保存性から見た浅漬けの危険性

出張で山梨に向かっています。身延線の初めて乗りましたがスピードが遅い・・。山梨で大して滞在時間がないのですが、今日は丸1日つぶれてしまいます。

 

リキッドフィードを扱っているとよく、「製造したエサはどれくらい日持ちするのですか?」という質問を受けます。実際に試験をしてみると、25℃ぐらいの一番厳しい条件でも一ヶ月以上問題がないという結果が出ています。

試験する際には一般細菌数、大腸菌群数、サルモネラ菌数を測定します。場合によっては乳酸菌数や酵母数、カビ数も測定します。一般細菌数には乳酸菌数も含まれます。食品の場合は酸敗は問題になることが多いので、一般細菌数(含む乳酸菌数)が増加するのは嫌われますが、リキッドフィードは乳酸発酵させていますので、一般細菌数は問題にしません。問題になるのは大腸菌群数とサルモネラ菌数です。もちろん、腐敗原因になる菌はほかにもいろいろありますが、大腸菌群数を指標にすることができます。

大腸菌群を抑制するために、リキッドフィードではpHのコントロールを行います。pHを4.0程度より低くすることにより常温でも大腸菌群を抑制することができます。リキッドフィードはエサなので当然デンプンや糖、タンパク質が多く含まれており、そのままでは菌の培地状態になってしまいますが、pHをコントロールすることにより腐敗を防止することができます。

当社ではリキッドフィードを製造する際にはギ酸を添加します。ギ酸は決して安いものではなく、危険な薬品でもあるのですが、製品の品質を保持するためには無くてならないものです。ギ酸を添加してpHが3.8より低くなるように管理しています。
 

昨年末、浅漬けで食中毒が発生して死者が出るという事件がありました。上記のような試験結果を見ると、浅漬けというのはとても危険であると思います。浅漬けは漬物のように見えますが、実際は乳酸発酵させているわけではなく、生野菜を調味液に漬け込んでいるに過ぎません。塩分濃度もそれほど高いわけではなく、pHも5.0ぐらいあります。アミノ酸や糖も入った調味液は培養液のようなものです。野菜を次亜塩素酸ナトリウムで消毒していますが、でこぼこや切り口のある野菜は次亜塩素酸ナトリウムぐらいでは完全に滅菌できません。腸管出血性大腸菌などでは非常に少量の菌数でも発症してしまうので、とても危険です。
本当はこういう危険性の高い食品は保存料などの添加物を使った方が安全だと思いますが、昨今の低添加志向では添加物は嫌われますので、無添加のものが増えています。

昔は漬物というとしっかりと漬け込んで乳酸菌発酵した酸っぱいものが当たり前だったのでしょうが、最近の消費者の嗜好がこういった危険性を産んでいるとも言えると思います。

飼料や微生物を取り扱っていると、通常食べているものでも結構危ないなと思うことがよくあります。逆に、食品メーカーの人や飲食店の人も微生物学的な知識があればもっと食品の安全性って担保されるのではないかなと思う今日この頃です。