補助金の功罪

補助金の報告書類も提出し終わった・・と思いきや、次の補助申請の準備をしています。いつもは大変なので補助年間一件ぐらいにしているのですが、諸般の事情で今年は二件申請です。

補助金をもらっておきながらこんなことを言うのはちょっと問題があるかもしれませんが、補助金ははっきり言って税金の無駄になっているケースが多いです。

 

実際に受けている側から見た問題点を挙げてみると、

 

1.補助金のための書類が非常に多く、無駄な労力がかかる。これは補助の申請側だけの労力ではなく、審査する場合や交付する際にも労力がかかり、行政の仕事を増やしています。数千万円程度の交付金のためにほぼ一人の担当がついたりすることもあり、あきらかに補助額と比べ人件費がかかりすぎていることも多いです。

 

2.当然ながら補助金は申請した人、団体しか受け取ることができません。補助金の申請に手慣れた特定のところだけが何回も受け取ることになりがちです。このため、普遍性に欠けるものとなり、また補助金を受け取るためのコンサルティングなどの仕事を増やすことになります。

 

3.申請時期が短期間である場合が多く、補助を受け取るためにはかなり前から準備が必要となります。また、申請時期に合わせるため事業の計画などをたてにくい原因となります。

 

社会が複雑化している現代社会において補助金や助成金で社会システムを変えるという事はほぼ無理だと思います。

 

 たとえば、当社が事務局をやっている協議会では「エコフィード緊急増産事業」の補助金採択を受けています。これはエコフィードの普及により食糧自給率を向上させることを目標としています。エコフィードの使用量に応じて補助金がもらえる仕組みになっています。

しかし、採択件数が数十件の規模では到底自給率が上がるわけがありません。プールの水をひしゃくですくっているようなものです。

他方、昨今の飼料価格の高騰により当社へのエコフィード関連の問い合わせは非常に増えてきています。このことからもわかるように、社会システムの変革は経済的なインセンティブによるものが一番影響が大きいと言うことです。
配合飼料は税金も投入されている基金により価格が高騰した場合の補填があります。片方で配合飼料を安値誘導しておき、もう片方でエコフィードの普及に補助を出すというのは自己矛盾をしています。
食糧自給率を向上させるならできるだけ輸入トウモロコシを使わせないように経済誘導するのは当然であると思います。

 

同様に、飼料米に関する補助も非常に煩雑な手続きがあり、事務処理のコストがばかになりません。飼料米を作付けすると補助が出るのですが、飼料米が食品に転用されていないかいちいち証明書を出す必要があります。

個人的には飼料米は政府の備蓄米の買い上げ数量を増やし、古米の飼料分野への放出量を増やすのが合理的だと思います。

 

 

当社では雇用に関する助成も受けたことがあります。特定の条件に合致する人材を雇用すると一時金が出るというものですが、中小企業経営者の立場から言うと一時金が出るからと言って雇用が促進されるとは思えないです。

雇用に関する助成を出す一方で、社会保険料の金額は毎年上がってきており、会社負担分も増加しています。雇用を増やそうとするなら、補助に使っている同じ財源を使って社会保険の会社負担額を減らせば一番効果的かつ効率的だと思います。

税制や社会保険制度で誘導するのは、シンプルかつ効率的です。どんな事業者でも影響があるわけですから。

 

昨今は公務員バッシングを頻繁に目にしますが、私は日本の公務員はとても優秀で、熱心に働いていると思います。また、全ての補助が無駄だとも言えません。ただ、今している仕事が本当に社会のために役に立つのか、それをもう一度考えて業務の内容を見直す必要があるのではないでしょうか。

 

なお、念のために補足しますが当社への利益誘導的な政策を是としているわけではありません。もちろん当社には政策を誘導する権力があるわけではありません^^;

リキッドフィードの保存性から見た浅漬けの危険性

出張で山梨に向かっています。身延線の初めて乗りましたがスピードが遅い・・。山梨で大して滞在時間がないのですが、今日は丸1日つぶれてしまいます。

 

リキッドフィードを扱っているとよく、「製造したエサはどれくらい日持ちするのですか?」という質問を受けます。実際に試験をしてみると、25℃ぐらいの一番厳しい条件でも一ヶ月以上問題がないという結果が出ています。

試験する際には一般細菌数、大腸菌群数、サルモネラ菌数を測定します。場合によっては乳酸菌数や酵母数、カビ数も測定します。一般細菌数には乳酸菌数も含まれます。食品の場合は酸敗は問題になることが多いので、一般細菌数(含む乳酸菌数)が増加するのは嫌われますが、リキッドフィードは乳酸発酵させていますので、一般細菌数は問題にしません。問題になるのは大腸菌群数とサルモネラ菌数です。もちろん、腐敗原因になる菌はほかにもいろいろありますが、大腸菌群数を指標にすることができます。

大腸菌群を抑制するために、リキッドフィードではpHのコントロールを行います。pHを4.0程度より低くすることにより常温でも大腸菌群を抑制することができます。リキッドフィードはエサなので当然デンプンや糖、タンパク質が多く含まれており、そのままでは菌の培地状態になってしまいますが、pHをコントロールすることにより腐敗を防止することができます。

当社ではリキッドフィードを製造する際にはギ酸を添加します。ギ酸は決して安いものではなく、危険な薬品でもあるのですが、製品の品質を保持するためには無くてならないものです。ギ酸を添加してpHが3.8より低くなるように管理しています。
 

昨年末、浅漬けで食中毒が発生して死者が出るという事件がありました。上記のような試験結果を見ると、浅漬けというのはとても危険であると思います。浅漬けは漬物のように見えますが、実際は乳酸発酵させているわけではなく、生野菜を調味液に漬け込んでいるに過ぎません。塩分濃度もそれほど高いわけではなく、pHも5.0ぐらいあります。アミノ酸や糖も入った調味液は培養液のようなものです。野菜を次亜塩素酸ナトリウムで消毒していますが、でこぼこや切り口のある野菜は次亜塩素酸ナトリウムぐらいでは完全に滅菌できません。腸管出血性大腸菌などでは非常に少量の菌数でも発症してしまうので、とても危険です。
本当はこういう危険性の高い食品は保存料などの添加物を使った方が安全だと思いますが、昨今の低添加志向では添加物は嫌われますので、無添加のものが増えています。

昔は漬物というとしっかりと漬け込んで乳酸菌発酵した酸っぱいものが当たり前だったのでしょうが、最近の消費者の嗜好がこういった危険性を産んでいるとも言えると思います。

飼料や微生物を取り扱っていると、通常食べているものでも結構危ないなと思うことがよくあります。逆に、食品メーカーの人や飲食店の人も微生物学的な知識があればもっと食品の安全性って担保されるのではないかなと思う今日この頃です。

コカコーラと食の安全、安心について

近年、「食の安心、安全」が強く求められるようになってきており、皆さん念仏のように安心安全と言われています。
ただ、安心と安全は別の物であり、安全であっても安心とは限りませんし、逆もまたしかりです。

コカコーラに含まれている砂糖を表現したこんな画像がネットで出回っています。

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これを見るとコカコーラってなんて砂糖が多いのだろう、これは危険だと思わされます。でも、私は食品リサイクルに携わって普段から多くの食品の成分を見ていますので、この画像をちょっと疑問に思いました。

コカコーラの成分はWebサイトに掲載されています。それによると、100mlあたりの炭水化物量は11.3gです。原料から見て炭水化物=糖類ですので、350mlだと40g近い糖類が入っていることとなり、この画像は間違っていないことがわかります。(この画像には記載がないが、サイトによると39gを角砂糖で表現)

ところが、コカコーラ社のサイトには他の飲料の成分も掲載されています。
果汁飲料を見てみると、たとえばミニッツメイドオレンジは100mlあたりの炭水化物量は11.9g、グレープに至っては12.7gとコーラより多く含まれています。果汁の場合も炭水化物=糖類とみてほぼ間違いありませんので、コーラよりむしろ果汁飲料のほうが糖類の量が多いことになります。

逆に、スポーツ飲料などを見てみると、アクエリアスの場合は100mlあたり4.7gしか炭水化物が含まれていません。果汁飲料よりずっと低カロリーと言えると思います。

無論、糖類の過剰摂取は肥満だけではなく健康に悪影響ではありますが、そういった面で見るとコカコーラも果汁も変わらないわけです。極端な話、糖度が15度を超えるようなものもあるスイートコーンの方が糖の含有量が高かったりします。もっとも、飲料の方が摂取量が多くなりがちですし、果汁にはビタミンC等の成分も含まれていますのでそういう意味では同列では並べられませんが。

世間では「コカコーラ=健康によくない飲み物」と言ったイメージがありますので角砂糖が並んでいる画像をみると「やっぱり」と思いがちになってしまうのだと思います。
こういったセンセーショナルな画像が拡散しやすく、データを見ずに判断しがちな世間の傾向はゆゆしきものだと思います。データよりもイメージが主体となっている「安心」がいかに情緒的なものかという証左ではないかと思います。

センセーショナルなものは人々の関心を集めるものですから、マスコミに限らず耳目を集めたいがためにセンセーショナルな喧伝をする人は多くいます。個人的には、「○○の真実」のようなセンセーショナルなものこそ疑う姿勢が重要なのではないかと思っています。

ちなみに、私はコカコーラの味があまり好きでなく炭酸飲料がむしろ苦手なので基本的に飲みませんし、コカコーラを推奨しているわけではありません。念のため。

炭水化物ダイエットと栄養バランス

珍しく連投です。

最近、炭水化物ダイエットが流行っているみたいですね。
食品リサイクルに携わっていると、炭水化物ダイエットには懐疑的です。

日本人の食品栄養バランスの調査をみると、基本的に炭水化物の摂取量は減少してきており、現在の摂取量はちょうどいいぐらいになっています。

摂取カロリーが過剰なのは、ひとえに脂質とアルコールの摂取過剰にあるのはまちがいありません。

なによりの証左として、一般的な飲食店やコンビニの残飯を豚に給与するとぶよぶよの豚になってしまいます。こう言った残飯を乾燥処理すると、油分が20%程度になります。乾燥処理をしてできたエコフィードが油でべたべたしているのをみるとちょっと恐ろしくなります。

というわけで、私は「脂質ダイエット」を推奨しています。とりあえず、揚げ物と生クリームを絶てばたいていの人は痩せるはずです。

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ちなみに、我が家の食事は

朝:パン、カフェオレ、ヨーグルト、フルーツ、ソーセージor卵orチーズ、野菜、パン

昼:揚げ物以外

夜:肉or魚、野菜×2、味噌汁、ご飯、酒

といった感じです。

・各食事で必ず野菜を食べる。

・夜は肉と魚を日替わりで

・家での晩酌は1日に日本酒換算1号程度まで

・揚げ物は家では食べない、自分では注文しない

・間食は油の少ないものをできるだけ選ぶ

というルールを決めています。こういうルール決めをきちんとしていくことが栄養バランスを保つ秘訣だと思っています。きちんとポイントを押さえていれば、ダイエットしていてもご飯を普通に食べることができますし、肉だってがっつり食べても問題ありません。

栄養バランスはすべての健康の基本です。偏った考えが蔓延しているのにはちょっと危惧しますね。

展示会出展と名刺

今日、明日と浜松市で行われているはままつメッセという展示会に出展しています。当社は飛び込み営業というものを原則行っていないので、展示会とホームページは重要な営業ツールとして位置づけています。

浜松のある静岡県西部地域は食品メーカーも多く当社からの距離も近いので重要な営業エリアです。ですが、今回の展示会は来客数も少なく、正直かなり暇です。様々な展示会に出展していますが、展示会によって驚くほど客数、客層が違います。当社のような業務形態ではやはり環境関連や農業関連の展示会の方がより効率的な出展となるように思います。
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展示会に出展していると、いろんなお客さんがブースにいらっしゃいます。その中で気になるのが身分を隠して来場する人です。だいたいの展示会では名刺などをホルダーに入れて首から提げるようになっているのですが、ホルダーに名刺を入れなかったり、ホルダーを上着の中に入れたりして隠していて、こちらから名刺交換をお願いしても「名刺は切らしている」と渡していただけなかったり。どんな業種ですか?とお聞きしても「まあ、その」みたいな返答。どういう仕事をしていて、どういう分野に興味があるのかを言わなければこちらも説明のしようがありません。

わざわざ展示会に足を運んで説明を聞くならば、名刺を渡さないまでもせめてどういった業種なのかを説明した方がより有意義な情報収集になるのではないかと思います。特に、当社の取り扱う商品やサービスは非常に特殊なので相手の業務内容がわからなければ的確な説明をすることができません。食品メーカと畜産農家では説明をする内容が全く異なります。

情報が氾濫している現代社会ですが、インターネットを含め逆に的確な情報を集めることが難しくなってきているように思います。情報のアンテナをたててどういう情報を集めることができるか、その能力が問われるようになってきているように思います。

今年一年ありがとうございました。

大晦日ですが、今年は月曜日なので出勤をしています。そして、今日は決算日でした。
会計ソフトを改めて見ていると反省すべき点がたくさんあります。

売上はそれなりに進捗があったのですが、いろいろと投資がかさんだため当初目標としていた利益を確保することはあたわず。
設備投資がたくさん必要な業種ですので、どうしても投資がかさみます。投資が適正規模なのかいつも悩み、そしてぎりぎりまで投資していますのでお金が残らない(^_^)

 前にも書きましたが、基本的にものを創る事業というのは投資が大きいので脱サラして始めるのには向いていません。また、スケールメリットが求められますので、ある程度の投資規模が必要となってきます。昔は自動車メーカーもカメラメーカーもたくさんあったそうですが、いまからそういうメーカーを始めることはとても困難です。
向いていないのを無理矢理始めているので苦労しているわけです。

いわずもがな、事業規模に対しどれくらいの投資を行うかというのが経営者の判断です。そんな現在の投資規模はかなりぎりぎりだと思っているのですが、銀行の担当者はもっとお金を借りて投資をして下さいとのたまいますので、「そんなことを言ったら不良債権が増えますよ」と言ったら苦笑していました。

昨今はどこの銀行のディスクリージャーを見ても資金運用に苦労していることが伺えます。預金残高は増えているのに貸出残高が増えていません。新たな投資を行う会社が減っていますから貸出残高も増えないわけです。事業を始めて実感するのは投資回収をする難しさです。特に、ものを創る事業は投資額も大きく、その割に投資回収の効率が悪くなりがちです。そういう投資が大きい事業が減っているので当社のような小さな会社まで銀行が声をかける時代になっているわけです。当社ももう少し総資本利益率を改善しなければと反省をしています。

と言うご時世ですので、政府の経済対策で「金融緩和」と言われると、違和感を禁じ得ません。銀行にこれだけお金が余っているのに金融緩和しても景気がよくなるはずがないです。企業はお金を借りることができなかったり、金利が高いため事業が行えないわけではないのです。社会システムが高度に完成しているため、新しいビジネスを創出する余地が無い、それがポスト高度経済成長の現代社会だと思います。

というわけで、とても困難な道のりではありますが、私はものを創る事業を行っていることに誇りを持っています。士農工商ではありませんが、ものを創り出すと言うことは全ての産業の基本であります。また、もの創りというのはとてもおもしろいものです。特に、当社の事業は価値がないものから価値を創り出すという意味で「ものと価値を創る」二重のもの創りではないかと自負しています。

来年は今年以上に新しい価値を創造できることを目標にがんばりたいと思います。皆様よろしくお願い致します。

物質循環と食品リサイクル

ただいま北海道出張中です。北海道へ来て思うのが、やはりバイオマス、食料といった分野では北海道は抜きんでているということです。食料生産は広大な土地があって初めて成立しうるものなのだと改めて気づかされます。

北海道は食糧自給率100%以上あり、その中でも今回行った十勝はとくに地域での食糧自給率が非常に高い地域とのことです。カロリーベースの食糧自給率が高いということは物質の循環の観点から見ると大きな意味があります。

日本はトウモロコシを毎年1600万トン、大豆を300万トン輸入しています。食料を輸入している訳ですが、これは見方を変えると窒素、リン酸、加里などの肥料分と有機物を輸入しているということになります。
日本で使われている化成肥料由来の肥料成分と匹敵する量の肥料成分が輸入されている食物に含まれているのです。

例えば、輸入されている穀物からは60万トンの窒素成分が含まれています。これは使用されている化成肥料に含まれている窒素分とほぼ同等の量となります。つまり、家畜ふん尿を適切に利用すれば理論的には化成肥料の窒素は必要ないこととなるわけです。

逆に言うと、現時点では化成肥料がそれだけ使われているわけですから、輸入穀物由来の肥料分、すなわち家畜糞尿由来の分が過剰になっていると言うことです。日本全体としてみた場合、物質が輸入超過になっているわけです。

輸入超過になっている分はどこかで帳尻を合わせなければ行けません。そのため、排水処理を行い、窒素のなどの肥料成分=富栄養化の原因物質を除去しているわけです。極論を言えば、物質収支が取れていれば、つまり肥料成分での自給率が100%であれば排水処理は不要となる訳です。

食品リサイクルの意義とは、単に廃棄物のリサイクルという意義に留まらず、日本国内の物質収支を改善するという意味があります。輸入穀物の使用量が減ると言うことはそれだけ国内で物質循環が完結するということです。無論、家畜ふん尿を利用し国内で飼料生産を行なう事も同様の意義があります。
大量の輸入穀物に依存し、その結果として環境負荷の原因となる畜産は持続可能であるとは言えないと思います。

最初の話に戻りますが、十勝は食糧自給率が非常に高いということは、地域内循環を行うのに非常に適した環境にあるということです。逆に、適切に循環を行えば、家畜ふん尿の問題が発生しない地域でもあると言うことです。

物質収支のバランスをとるのは、まず農家レベルから始め、農家から地域、地域から地方、地方から国、国から世界全体の物質収支の釣り合いを目指していく必要があります。この、物質収支のバランスをとることが持続可能な世界の形成につながることに他なりません。

廃棄物のリサイクルは単なるゴミの処理に留まらず、人類の未来を構築する重要な鍵となるでしょう。と思ってがんばって事業を行っています。
とはいえ、零細企業たる当社を見ても人類の重要な鍵とは見えないとは思いますが(笑)

日本の未来とロストジェネレーション

もうすぐ選挙ですね。私は誰に投票すべきか、かなり迷っています。地元の選挙区は自民、民主、未来と勢揃いですが、どうも投票に値するような人はいないような気がしてなりません。

今回の選挙では景気対策が争点になってます。大学を96年に卒業して以来、景気がよかったという実感がないままずっと過ごしてきたので、「公共投資で景気対策」と言われると、非常に違和感があります。乗数効果がうんぬんとのたまう人たちがいますが、乗数効果が本当ならポストバブル時代にあれほどの公共投資をしてきたのですから、我々の世代はロストジェネレーションなどと言われなくてもすんだはずです。

公共投資の乗数効果とは、単に建築土木により建設関係に金がわたるだけではなく、インフラ整備などの効果により新たな経済価値を創出することに意義があります。たとえば、道路を作ることにより工場ができ、空港や港を整備することにより流通が盛んになり、用水を整備することにより農業が盛んになる、それが乗数効果というものです。

今のような社会情勢で道路を作っても、道路を作っている人に金が落ちるだけにとどまり、工場ができるなどそこから波及して経済が活性化していく度合い、つまり乗数効果が著しく落ちているわけです。

そもそも、現在の財政悪化の原因は社会保障費の増大によるものであるわけですから、政府支出は少なくとも国民に渡っているわけです。国民に渡った金が使われずに貯め込まれているので経済が好転しないわけで、社会保障費ではなく公共投資の形で国民に金を渡したらお金が使われるなんて事は有り得ない話です。

結局、政府の信用がないためどんな形でお金をばらまいてもみんな貯金として貯め込んでいるだけです。社会保障の信用が失墜しているから、信用をきちんと確立しない限りいくらお金を振りまいても銀行預金が増大するだけで、その預金が国債にまわるという笑えないループができるだけです。
 

企業経営をしていて思うのが、ビジョンを確立して将来像を描き、目標に向かって行程を作っていくことの重要性だと思います。50年後、100年後の国家未来像をうちたて、それに向かって戦略を立てていく、それが国家運営の基本であり、「脱官僚」「景気回復」なんてスローガンを打ち立てているのは戦略無き企業経営者が「見積数アップ」「今年度利益10%増」とか言って現場スタッフにパワハラしているようなもので、そんなことで企業体質が変わらないのと一緒で国家運営がうまくいくはずがありません。

企業でも、将来ビジョンがきちんと描けていないと従業員のモチベーションや定着率に影響します。日本の官僚は優秀ですが間違ったベクトルでその能力を発揮しているだけだと思っています。指針無き戦略が多すぎるので官僚が勝手にやってしまうのであり、将来像があれば官僚もきちんとした戦略を打ち立てていくことでしょう。
国民だって、国家像が確立できていないから将来が不安になっているわけです。

そもそも、今の選挙制度では選挙区に利益を誘導することが当選への近道である事が根本的な原因であり、またそういった政治家に投票する我々国民がこのような結果を招いている訳です。地元の選挙区でもダムを造る計画があります。国家の計画としてダムを造ることがどれくらいの意義があるのかを精査すべきところ、結局人の金(国の金)だから、作って欲しいという要望になってしまうわけです。今回の選挙公報を見ても残念ながら、国家ビジョン的なものには全くふれられておらず、「安心できる社会」「経済のたてなおし」そんなものばかり。ちょっとがっかりしてしまいますね。

ということをつらつらと書きつくっていたら誰に投票すべきかいよいよわからなくなってきました。明後日の投票日、投票箱の前で考えてしまうかもしれませんね・・。

ドラえもんとエネルギー代謝

相変わらず忙しい日々が続いています。ブログのネタが大量にたまっているのですが、他にもプレゼンの原稿を作らないといけない上に、業界紙の連載執筆依頼まで来ています。にっちもさっちもいかなくなっている今日この頃です。過去のブログの更新時間を見たらほとんど夜10時頃。この時間帯ぐらいしか時間がとれない証左の様な気がします。

不規則な生活がたたったのか、最近体脂肪率がじりじりと上がっています。40歳近くなって新陳代謝が低下してきているのも1つの原因なのは間違いありません。摂取カロリー>代謝カロリーが体脂肪率の蓄積となって現れているのだと思います。

一応、飼料を取り扱っているので、自分の食べるものの摂取カロリーと、栄養バランス(タンパク質、炭水化物、脂質のバランス)はそれなりに気にして計算しながら食事をしていますが、おそらく酒の分が余分なのではないかと推察されます ^^;

栄養計算をしていると人間は本当にいろいろなものを摂取してエネルギーに変えられることに感心します。もっとも、反芻動物は胃の中に飼っている微生物の力で人間では代謝できないセルロースなどの多糖類を分解吸収できるのでさらにすごいわけですが。

このエネルギーを吸収し体に必要な栄養素を合成していくプロセスが代謝なのですが、この代謝経路というものが非常に複雑かつ合理的にできていて感心します。

例えば、デンプンは消化管内に分泌された消化酵素でブドウ糖に変換され、それが吸収されます。ブドウ糖はTCA回路という代謝系でエネルギーに変換されます。

TCA回路について詳しく解説すると非常に長くなりますが、たくさんの酵素と反応系が複雑に絡み合って最終的にエネルギーになるわけです。大規模な化学プラントのような反応が体内で起きているのはすごいことだと思います。

生化学のすごさを人に説明するのに、ドラえもんの話をすることがあります。ドラえもんはどら焼きを食べて動きますが、現代の技術ではどら焼きをエネルギーに変えてパソコンに動かすことはできません。ガソリンやメタノールのようにエネルギー密度の高いものを利用して電力を生成しコンピューターを動かすことはできますが、どら焼きのようにエネルギー密度が低く、複合物質であるものを利用してエネルギーを生成することはまだまだできない訳です。メタン発酵などのプロセスを利用すればエネルギーは生成できますが、それとて生物の力に頼っているわけです。

技術進歩により生体についての理解や解析が深まっていますが、それでもまだまだ生物の神秘には遠く及ばない部分があると思います。それだけに勉強をしていくと無限の面白さがあるのが生物の世界だと思います。

私の取り扱っているのは「エコフィード」という1つの商品ではあるのですが、代謝系の話を抜きに取り扱うことはできません。それだけに、奥が深いものだとしみじみ思います。

ホームページセミナーと農家のSWOT分析

このところ本当に忙しい日々が続き、ブログの更新もままなりません。
忙しい理由の1つに、ホームページの大幅リニューアルを予定していてその準備をしているせいもあります。

実は当社はホームページからのお問い合わせでかなり受注を頂いております。柳の下のドジョウではないですが、ホームページをもっと強化すればもうすこし売上が増えないかなと期待してホームページの改訂を計画しました。そのためにはもっと勉強しようと思い、ホームページのセミナーも受講しました。ってやっていたら忙しくなったわけです。

ホームページのセミナーで最初に言われたのが、何を売りにするのかということです。ホームページのセミナーなのにSWOT分析をすることになるとは思いませんでした。ご存じの方が多いと思いますが、SWOT分析とはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を評価するというものです。

ホームページも漫然と作成するのではなく、自社の強みを把握し、顧客ターゲットを見据え、戦略を持って内容を構築していくことが重要だと言うことです。

と、このセミナーを受けていて農家の6次産業化のことが思い浮かびました。6次産業化がもてはやされ、農家が自ら商品開発したり、小売をしたり、といったことが増えてきています。ただ、これも「強み」、つまり農家が自ら商品開発や小売をする意義を考えなければ成功しません。

そもそも、農産物加工品や小売業務はすでに食品加工メーカーや食品スーパーで行われていることであります。これを農家がやったら成功するのか?食品加工メーカー以上の商品加工ができたり、スーパー以上の販売力があればいいのですが、そんなことはまずありません。

たとえば、養豚農家が肉の直売所を作ることが良くあります。町の肉屋さんがどんどんなくなっていくこのご時世に養豚農家が肉を売ることによりどれだけ肉屋との違いを出せるのか、そこが問題です。「農家がやること」の強みがなければ肉屋で買った方がマシと言うことになりかねません。とくに、肉は一旦と畜場でと殺して、そこから肉として商品化されるので農家と肉屋が同じ土俵に立つことになります。農家ならではの強みが出しにくいのは確かです。

思うに、農家が6次産業化をやる最大の強みは「規格にとらわれず商品化できる」ということです。どんな農産物でも規格外の商品の価格は非常にやすいものとなり、これが商品の価格の足をひっぱります。6次産業化でこう言った商品が有効に活用できれば、農業経営に大きく寄与することとなります。
残念ながら現時点では無闇に6次産業化に乗り出している農家がほとんど・・そんな気がしてなりません。

にしても、農家が6次産業化に取り組めば国内農業の活性化につながるなんて農水省の方針は甘すぎると思います。今まで販売なんて無縁だった農家がいきなりものが売れるほど商売の世界は簡単ではないです。
残念ながら農家の多くは商習慣に疎く、ビジネスの常識も持たないことが多いです。6次産業化の前に、「名刺の渡し方」「見積書の書き方」「電話の応対」なんかを学ぶことが重要ではないかと私は思います。電話の応対ができていない、というか電話にちゃんと出てくれない農家がけっこう多かったりするんですよね~。