アベノミクスの行方

アベノミクスの金融緩和により、円安傾向が続いています。輸出を行っていない中小企業や内需中心の食品メーカー、海外の資材に依存する畜産農家など、当社の周りでは厳しい経営環境が続いています。

金融緩和により市場に出回るお金は増えましたが、人口減少を見据えた日本社会では投資意欲が増えることは無く、金融機関は融資先の確保に苦慮しているのが実情です。

今のような政策は永続することはできず、いつかは終わらせなければいけませんが、もはや出口が見えなくなっているのが実情ではないでしょうか。

そもそも、円安誘導とは国民資産を毀損する行為です。輸出競争力が増えたり、海外投資リターンが円ベースで膨らむというのは相対的に日本国民が貧乏となっているからということに他なりません。国民を貧乏にして輸出企業だけが潤う政策を支持するのは国家に対する重大な背信行為であり、国賊であると思います。

私は、このままいくと早晩財政破綻への道を歩むのでは無いかと危惧しています。私が思う財政破綻後の社会情勢は

・国債の信任が失われ、紙切れに。

・国債の利子が高騰し、政府機能が麻痺状態になり、公共サービスが停止。

・銀行の預金は国債運用分が消える。

・円の価値が暴落し、1ドル200円を超える円安に。

ってことになりかねないと思っています。国債の残高が増えてきて国民資産を超えたとき、日本国債が海外から信認されず、さばけなくなったときが最後の時では無いかと考えます。
仮に、そのような社会情勢となったときに、当社の事業や、自分のような市井の人々の生活はどのような姿になるのか想像することは非常に困難ですが、激動する社会の中での自社と自分の立ち位置を模索し、日本社会の未来のために貢献する道を探していきたいと思います。

 

自分で生産したものを食べるということ

秋はイベントシーズンで展示会出展が続き忙しい日々が続いています。
とはいえ、子供が生まれてから家で夕食を食べることが増えました。若干家庭的になったかなと自負しています。(苦笑)

家では通常は粗食なのですが、このところ肉を食べる機会が増えています。Facebookのほうでは食べ物ネタのアップが多いため、肉ばかり食べているように思われるのことが多くやや心外です。肉を食べる機会が増えたのは、会社で飼料を取り扱ってから、お客様のところの肉を食べるようにしているためです。豚肉を食べることも多くなりましたし、今までほとんど食べなかった黒毛和牛を食べる機会も増えました。
近江牛
お客様のところの肉を食べる・・・というと普通のことに聞こえますが、実はこれが存外難しかったりします。家畜は自分でと畜してはいけないという法律がありますので、畜産農家は生産した豚や牛をと畜場に出荷します。と畜場でと殺された後、市場にかけられ、流通します。畜産農家は自分が生産したものを誰が買っているのか、どこで売られているのかを知らないことも多くあります。野菜や米でしたら生産したものを一部取り分けておくことも容易ですが、畜産農家の場合、生産物を入手するのが難しいわけです。と畜場から買い戻すこともできますが、1頭で豚で50kg、牛でしたら数百kg単位となり販売を行っていない農家が簡単に自家消費できるようなものではありません。

自分で食べなければ今生産しているものがどういう状態であるか、わかりません。逆に言うと、自分で生産したものを食べることによってより美味しい畜産物の生産を行えるようになっていくのではないかと思います。

最近お取引をしている、黒毛和牛を生産している木下さんは自分のところのお肉を食べられています。驚くべきことは種付けする牛の血統を選ぶとき、以前食べて美味しかった血統を種付けされています。日本の黒毛和牛はと畜された枝肉の状態がフィードバックされて「サシが入る」「枝肉重量が大きい」遺伝子を持った牛が選抜されています。しかし、あくまでもそれは見た目であり、味を基準に選ばれているわけではありません。
また、当社のお客様の養豚農家さんの多くは生産した豚肉を食べられていて、肉の状態を見て飼料の配合を変えたりしています。通常は配合飼料を使っていますので、飼料の組成を変えることができませんから、自分でエサを混ぜて、出荷した肉を買い戻している農家だけができることです。
こういう取り組みが継続することによって、より美味しい農産物が生産されていき、それが日本の農業の強みになるのではないかと思います。というわけで、私も取り扱っている飼料のいっそうの品質向上のため、美味しい肉をたくさん食べることにします(^_^)

 

 

低糖飲料は太るのか

朝晩めっきり冷え込むようになりました。

天高く馬肥ゆる秋というわけで、食欲旺盛になってきています。食欲旺盛なのは人間だけではなく、豚も餌をたくさん食べるようになり、当社も出荷に追われています。

エサを作る際に豚が餌をたくさん食べるように嗜好性には注意しています。いろいろと試してみた結果、豚が餌をよく食べるためには「甘いこと」「適度な塩分があること」「旨味成分(アミノ酸)があること」「香りがいいこと」などが重要であるようです。特に甘みは絶大な効果があります。甘みを出すためにジュースなどの廃棄品を飼料として利用しています。

ジュース
炭酸飲料

 

賞味期限の長いジュースとか炭酸飲料がなぜ廃棄されるのかはよくわからないところですが、ともかくたくさんのジュースが当社に入荷してきます。写真はサイダーの類ですが、炭酸はすっかり抜けてただの糖液状態です。

飲料の廃棄品は多いですが、ジュースなら何でも飼料として利用できるわけではありません。コーヒー飲料はカフェインが飼料にはあまりよくないという意見が多く、当社では受入を行っていません。また、最近はジュースも低カロリーのものが増えているため、カロリーが高いものだけを選択して利用しています。

ところで、最近「合成甘味料の飲料はかえって太りやすい」と言った論調を見かけます。

「カロリーゼロ」、太って病気まっしぐら!

これ、嘘です ^^;
合成甘味料やステビアなどは消化できなかったり砂糖より甘みが強い(=少しでも効く)ので、カロリーの絶対値は低いです。たとえば、他の全ての条件を同じにして砂糖を投与する処理区と合成甘味料を投与する処理区を設けたら、間違いなく砂糖を投与した処理区のほうが太ります。
私が思うに、合成甘味料を摂取した方が太るっているデータが出てくるのは単に「ダイエットコーラをがぶ飲みするようなやつは甘いものやジャンクフード好きが多い」って言うだけだと思います。

統計調査を行う際、一番気をつけなければいけないのは「交絡」というものです。
たとえば、缶コーヒーをよく飲む人がガンになる確立が高い・・というデータがあったとします。ところが、缶コーヒーを飲むひとはタバコを吸う傾向が高い場合、実はガンになる原因はタバコにあり缶コーヒーではない・・と言った可能性があります。交絡を防ぐためには、タバコの喫煙率が同じで缶コーヒーを飲む群と飲まない群をわけて統計処理をすればタバコの影響を排除することができます。ただ、交絡する因子を見落としてしまうと、これを排除することができません。ですので統計を用いて調査を行う場合、いかに因子を見つけるかがもっとも重要な点です。

ま、甘味料を使うとホントに太るなら配合飼料メーカーも苦労しませんし、当社も低糖飲料をもっと受け入れします。世の中そんなに「甘くありません」ちゃんちゃん。

産業廃棄物の現地確認

1ヶ月ぶり&新ブログになって初めての更新です。相変わらず落ち着きのない日々を過ごしています。

先日、お取引のある排出事業者の担当の方が来社されました。
※「排出事業者」とは、廃棄物業界で言うところの廃棄物を出す事業者です。

廃掃法12条にはこのような記載があります。

「事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」

また、愛知県条例には現地での確認行為を義務づけしています。

「県内産業廃棄物の運搬又は処分を産業廃棄物処理業者に委託した事業者は、当該委託に係る県内産業廃棄物の 適正な処理を確保するため、当該県内産業廃棄物の処理の状況を定期的に確認しなければならない。」

このような記載があるため、排出事業者の方は定期的に当社を訪問され適切な処理が行われているかを確認するわけです。
排出事業者の方が見えると工場で説明を行います。当社のような小規模な事業所では現地確認の頻度はそれほどでもありませんが、大規模な産業廃棄物処理施設では頻繁に現地確認が行われ、工場の担当者は年中対応に追われていたりします。

ところで、県の条例で処理の状況を確認するように記載するのはおかしいのではないかと常々思っています。そもそも廃棄物処分業の許可は県が出しており、その際に適切な処理が行われることを確認しているわけです。それなのに排出事業者に現地確認をさせるということは自ら出した許可の正当性を担保してないと言うことになります。
また、廃掃法を熟知した県の担当者が適正処理しているか現地での確認を行っているのに、一般の排出事業者が確認してもあまり意味がないのではないかと思います。

個人的には排出事業者さんが来て頂けると営業に行く手間が省け、新規のお仕事につながったりするので現地確認自身はむしろ歓迎だっりしますが ^^;

 

一方、このような法や条例があるにもかかわらず、排出事業者によってはどこで廃棄物を処分しているか把握していないケースが多々あります。産業廃棄物を処分する際には最終的な処分先と契約書を締結します。また廃棄物を出す都度マニフェストを発行しますが、こちらには処分を行う事業所が書かれています。にもかかわらず、どこで処分しているかすら知らない排出事業者が珍しくありません。そういうお客様のところに新規営業で行き、「今まではどのような処分していますか」とお聞きすると「○○に委託してます」と運搬業者の名前を言われます。いつも引き取りに来てお金を払っている運搬業者=処分業者と思われている訳です。

廃棄物処理に負担をしているのですから、どのような内容で廃棄物の処理を行うか把握することは廃掃法うんぬん以前に商取引上からも当然のことではないかと思います。商取引という側面から、価格だけではなく、品質や内容も加味して委託先を選定して欲しいものだと思います。当社も品質の高いリサイクルとコストの低減を実現し、排出事業者の要求に応えていく所存です。(宣伝ですw)

美味しい牛乳のためのエサ

天候不順な日々が続きます。こんなにすっきりとしない夏は20年ぶりではないでしょうか。おかげで野菜が高く、産直に行っても並んでいる野菜の数がかなり少なくなっていました。野菜が高くなると当社のお取引先であるカット野菜工場の生産数量が増えます。カット野菜は値段が変わりませんので、野菜が高いとお得感が出るわけです。天候は意外なところでリサイクル業者の仕事に影響を与えています。

当社が最近力を入れている商品の1つに「もやし」があります。もやしも野菜が高くなると販売が好調になります。
当社の取り組みはもやしを粉砕、脱水しそれをサイレージ化し、飼料として利用するというスキームです。

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脱水したもやしはほぼアルファルファーと同じような組成となり、タンパク質が多く含まれる有益な飼料として主に酪農家さんに利用して頂いています。

この脱水もやし、現在では6軒ほどの酪農家さんに供給し、好評を頂いています。ところが、先日のこと、新しい農家さんに営業に行ったところ「牛乳に臭いが移るかもしれない」との懸念の声がありました。
実は牛乳は食べたエサの臭いが移行しやすい傾向にあります。ニンニク、タマネギなどは特に移行しやすく禁忌とされているほか、リンゴジュース粕なども異臭の原因となることがあります。もやしは独特のもやし臭さがあるため、この臭いが移行するのではないかと心配された訳です。
実際は他の農家さんで特に問題が生じておらず、もやしの臭いは牛乳に影響を与えることはないと思われます。飼料は単に栄養成分に留まらない注意が必要です。

当社の取り扱うエコフィードに限らず、飼料は牛乳の風味に影響を与えます。愛知県の酪農家の多くは年間を通じて乾草を与えているため季節変動は少ないですが、放牧などで青草を給与する農家さんの牛乳は年間で風味の変化が大きくなります。

以前も書きましたが、私は日本の農業の存在意義の1つは「美味しい」ということだと思っています。牛乳に関し、美味しい牛乳を作るための研究があまり行われておらず、もっぱら乳量を増やす方向が中心なのは残念なとことだと思っています。牛乳の場合、どうしても多数の農家のブレンドとなってしまうため味に特徴を出すことが難しいこともその理由の1つかと思いますが、昨今酪農家がみずから生乳販売を行う事例が増えてきました。そういう農家さんではもっと美味しさにこだわってもいいのではないかと思っています。

そして、そういう農家さんに美味しい牛乳を生産することができる飼料を供給するというのが私の夢です。そういう取り組みを通じてびっくりするぐらい美味しい牛乳が生産できたら…と牛乳好きとして妄想しています ^^;

子供達の未来のために

私事で恐縮ですが、先日我が家に子供が生まれました。身近に子供がいないこともあり赤ちゃんとほとんどふれあうことが無く40年を過ごしてきたので改めて新生児の小ささに驚く次第です。大人の数分の1しかない体に大人と同じ器官が入っていることに感心をしています。(理系人間なので ^^;)

当社の会社案内に「子供達の未来のために」という文言を記載していたのですが、その言葉の重さに改めて感じ入る次第です。

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22世紀まで生きる可能性の高い彼女は、これからの苦難の日本社会を生き抜いていくことになるかと思います。先の見えない閉塞的な雰囲気が蔓延する時代において未来を見据えて生きていってほしい、そんなことを寝顔を見ながら思います。

次世代のために我々は一体何ができるのだろうか、企業と個人の存在意義を改めて考えさせられます。

顔の見える農産物

最近、月1更新になってしまっています。最近、広告宣伝が効きすぎて引き合いを頂く事が増えており、お問い合わせの対応に忙殺されています。メールの返信が遅いため更に督促のメールが来たりして反省しきりです。

忙しさにかまけて運動を怠っていることもあり、やや体重が増えてきているのも気になるところです。仕事柄、美味しい農産物を食べる機会も多く、それも原因の1つと思われます。

当社のお客様は技術レベルが高く、美味しい農産物を生産されている方が多くいます。ので、美味しいものには事欠かなくなりますヽ(^0^)ノ

お客様のレベルが高い理由として、有機肥料やエコフィードは使いこなしが難しいため、うまく使われている方は技術が高い場合が多いのではないかと思っています。

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そんなわけで、最近は「○○さんのところの豚肉」といった感じで生産者指名で食卓にのぼることやレストランで注文することが増えています。

ただ、私は「顔の見える農産物」というものに割と懐疑的です。農産物生産者が情報公開を積極的に行うケースはまだまだ少数派であり、情報発信をうまく行うだけでマスコミが飛びつき、有名になることも可能です。しかし、情報発信の能力は農業技術とは別であり、多くの高い農業技術を持った生産者は寡黙で朴訥です。

当たり前ですが、「誰が作ったかがわかること=美味しい」ではないと言うことです。
正直言って、当社のお客様でもあまり美味しい生産物を作られていない方も一部には見えます。そういう人の生産物は名前がわかると逆に敬遠してしまいます。

つまり、顔が見えるから美味しい、安心ではなく、美味しい生産物、しっかりと管理を行って農産物を作っているあの人のものを食べたい・・・というのが本質的な手順ではないかと思っています。当たり前と言えば当たり前の結論ですが。

消費者側の立場からは、情報ではなく、味覚判断の尖鋭度をあげることにより美味しい生産物を見分ける能力が求められていると思いますし、生産者の立場では高い技術を持っているからこそ、それをPRする能力も持ち合わせること、あわせてより技術レベルを高めていくことが必要ではないかと思います。

せっかく高い技術を持ち美味しい農産物を生産していながら埋もれている生産者がまだまだ多数いることが残念でありますし、まただからこそ消費者との接点を作るお手伝いを微力ながらできたらと考えています。そして、個人的にはそのおこぼれでもっと美味しいものを食べられたら幸いです(^_^)

 

 

 

脂肪酸組成と食味

以前からちょくちょく話題にしていますが、今年の春から愛知中小企業家同友会の経営指針講座に通っています。月一回丸1日かけて経営指針について勉強をしています。

経営指針講座で一番最初に行い、そして一番重要なものは経営理念の確立です。というわけで、いろいろと考えた結果、当社の経営理念を新たに創り直しました。

新しい経営理念は
「私たちは、有機資源循環により新たな価値を生みだし、持続可能な社会実現に貢献します。」
というものです。当社のめざすこと、やりたいことがすこし具現化できたのではないかと思っております。

実は個人的には会社の経営理念とは別にすこしやりたいことがあります。それは「美味しい食べ物を生産する手助けをしていく」というものです。当社の生産している肥料、飼料は食料生産に直結しており、生産物の品質に大きな影響を与えるものです。当社がよい製品を作ることで美味しい農産物が生産されること、そしてそれを私が食べること(笑)をめざしています。

とは言っても、「美味しさ」の定義は人それぞれです。主観的な美味しさを軽視するわけではありませんが、肥料、飼料製造の品質向上のためには客観的なデータによるPDCAサイクルを確立していくことが重要だと思っています。

最近、当社では黒毛和牛向けの飼料販売を行っています。牛の場合、肉の評価は格付け(日本食肉格付協会)により決まります。格付けは歩留りと脂肪交雑、肉色、脂肪の色などで決まり、一般的には脂肪交雑が多いほど格付けが高くなる傾向があります。

脂肪交雑が多いと肉質が柔らかくなり、食感がよくなる傾向があります。しかし、そこに含まれている脂肪の質までは格付けでは評価されません。

脂肪は脂肪酸グリセリドというものから構成されており、昨今はその脂肪酸の組成をしらべることで、美味しさを客観的に評価しようという試みが増えてきています。オレイン酸が多い牛肉をオレイン牛として売り出す試みも行われています。

ただ、脂肪酸組成でオレイン酸が多いから美味しい・・・ということが確立されているかというと実ははっきりとしたことが言えないのが現状です。

ただし、オレイン酸が増えると融点が下がることは確かです。牛脂の脂肪酸はパルミチン酸などの飽和脂肪酸が多いため、豚よりも融点が高い傾向にあります。オレイン酸などの不飽和脂肪酸が多く含まれると融点が下がります。私は脂肪酸組成以上に融点が食味に大きく影響するのではないかと考えています。

融点が36℃を上回ると、脂が口の中や胃の中で固まります。これが舌触りの悪さ、胸焼けの原因ではないかと推測しています。オレイン酸が増えることで、結果として融点が下がり食味がよくなるのではないかと考えています。

 

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今回、当社の共同研究先である京都大学の熊谷先生の協力の下、当社のお客様の木下牧場で飼料を変えて育てられた牛がどのような脂肪酸組成、融点になっているか調査をおこなうこととなりました。

先に述べたように、食味と脂肪酸組成の関連ははっきりしない部分があるため今回の結果を元にすぐに品質向上への方策が確立するわけではありませんが、このような知見を増やしていくことは将来に向けて重要な一歩であると考えています。ただ、残念ながら食味試験には参加は難しそうなのが美味しさを実感しながら実験できないという意味で心残りな点でありますヽ(^0^)ノ

ビール粕のリサイクル

多忙な日々が続いていましたが、最近ようやく山を越えたような気がします。気のせいかもしれませんがヽ(^0^)ノスケジュールを振り返って見ると昨年の9月からほぼ空き無しでした。時間の使い方を考えた方がいいかもしれません。

と、忙しかった理由の1つに、新しい取り組みを行っていたことがあります。ビール粕の飼料化というプロジェクトです。

ビールは麦芽とホップを原料として製造されます。麦芽は文字通り麦の芽です。麦芽にはアミラーゼという糖化酵素がたくさん含まれています。麦芽をお湯に浸漬すると糖化酵素が働きデンプンが糖に変化します。浸漬したお湯はちょうど甘酒のような甘みのある液体になり、これに酵母を添加し発酵させたものがビールとなります。

一方、麦芽は水を切って不要物として廃棄されます。水を切った麦芽は水分が80%ぐらい含まれており、栄養価も高いためとても腐りやすいものです。
今回のプロジェクトでは、この麦芽を脱水することにより保存性を高め飼料として利用できる形態とするものです。

大手のビール工場ではすでにほとんど飼料となっていますが、小規模の事業所ではまだまだ飼料として利用されていないケースが多くあります。今回のプロジェクトではそういった小規模事業所のリサイクルに取り組んでいます。

 

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脱水を行なうことで、水分は70%以下になります。適度な水分量となり、また上記のように糖化酵素が働くことで糖が多く残存します。このため、乳酸菌が働きやすい環境となり、pHが低下します。pHが4.0程度となると腐敗の原因となる菌の働きが抑制され、保存が利く飼料となる訳です。

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従来利用されていなかった資源をこう言った形で利用できることは非常にやりがいのある仕事です。また、食品メーカー、畜産農家双方に喜んでもらえることは仕事の意義を感じます。
また、あわせてクラフトビールのマイスターのお話しを聞くことができるは非常に興味深いです。仕事をしながら面白い話が聞けるのは役得です。発酵マニアとしては興味が尽きないですf^^;)

日本農業の存在意義

先日、三河トコ豚極め隊の打合せがありました。話題の中心となったのがTPPのことです。情報が開示されていないので今後の見通しはきわめて不透明な状況であり、今度のあり方について議論が行われました。厳しい状況の下、これからの対応策を検討することがますます重要になってきているかと思います。

以前も書きましたが、最近経営指針の勉強会に参加しています。その中で「自社の事業の存在意義」を問われる場面がありました。存在意義が無い事業は継続できない、当たり前のことではありますが、改めて考えると難しい問題です。
時代の変遷で存在意義を無くしている業種はたくさんあります。養豚は果たして存在意義はあるのでしょうか。米国産のトウモロコシを使い、米国の品種を使っていると米国の豚肉と区別が付かず、日本で養豚をする意義が問われます。

養豚に限らず、日本の農業全体が存在意義を問われる時代になっていると思います。海外の農産物と比較すると価格で競争することは難しいのは明かです。食料の安全保障の面からの存在意義を主張する旨もありますが、今の農業が海外の資源に依存していることも事実であります。食料の安全保障を主張するならば、資源投入の少ない農業へ転換することが求められていると思います。

私が考える日本農業の存在意義の1つは資源循環です。農業は言わば物質循環のを早める行為です。狩猟採取の生活では確保できる物質量が少ないため人口を増やすことが難しかったのが、農耕を始め物質循環の量を増やすことで多くの人口を養うことができるようになったわけです。

当社のビジネスは農業の物質循環を高める行為であり、そういう意味では時代の趨勢に合致し存在意義を見いだせているのではないかと考えています。

私が思う日本の農業のもう一つの存在意義は「美味しいこと」です。日本人は美味しいもの食べることに多大なエネルギーを払っており、日本には世界中の美味しいものが集まっています。東京は(お金さえ払えば)世界で一番美味しいものが食べられる街だと思います。

そういう日本人の嗜好に応えてきた日本の農産物は本当に美味しいものがたくさんあると思います。私は美味しさを追求することが日本で農業生産を続ける存在価値になるものと信じています。

ただ、残念ながら今の農業は「美味しさ」=農業所得につながっていない部分もあります。

例えば豚肉の格付けは歩留りと重量であり、美味しさの要素は考慮されておりません。味というパラメーターは評価が難しいことは事実ですが、見た目や取扱性を重視し続けることは産業自身の存在意義をスポイルする可能性が高いと思います。格付け=所得であり、所得と美味しさが異なっている結果、美味しくないけど儲かるものの生産が増えているように思います。

格付けにとらわれ美味しさの提供ができない現状に一石を投じるべく、三河トコ豚極め隊でも規格にとらわれないで美味しい豚肉を提供したいという思いから、豚肉のオーダーメードという企画を立ち上げています。

当社のリサイクル肥料、飼料もただ単にコスト低減や環境保全という意義だけではなく、美味しい農産物を作ることに貢献することで日本の農業のレゾンデートル(存在意義)に貢献できたらと思っています。そしてその結果として私自身が美味しい食品をたくさん食べることができたら望外の喜びです(^_^)