「アップサイクル」はエコなのか

秋は展示会出展などで出張が多く、忙しい日々が続いています。展示会に出展していると思わぬ問い合わせがいろいろあり、当社にとってマーケットニーズを捉える意味でも重要な機会です。

最近、展示会に出していて多いのが「アップサイクルしたい」というお話です。ここ数年、アップサイクルについて非常に相談される方が増えているように感じます。

たとえば、飲料工場で排出される緑茶のお茶がらを加工し、プラスチックに混合して成形することで有効利用したい・・的なお問い合わせがよくあります。
捨てられていたお茶がらがリサイクルされて、価値あるものに変換される・・イメージがいいこともありこういう取り組みが増えています。

しかし、実際のところ「捨てられている」というお茶がらもほとんどが堆肥もしくは飼料としてリサイクルされています。堆肥の価格が安いため、原料にお金がかけられず費用をもらって堆肥を作ることが一般的ではありますがリサイクルされていることには変わりません。
一方、プラスチックに混合するためにはお茶がらを乾燥させ、粉砕する必要があります。また、乾燥したお茶がらを混合成形するためには手間がかかり、それらのコストを考慮すると通常のプラスチック成形よりコストアップすることになります。廃棄費用がかからないとしても、できあがった製品を高く買うことで結局排出事業者である飲料メーカーが間接的に費用負担していることになります。

お金をかければ大抵のものがリサイクルはできますが、費用がかかるということはエネルギーが投入されているということの証左でもあります。乾燥や粉砕のためにエネルギーを投入してプラスチックの使用量を抑えるというのは矛盾した行為であり、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的には環境負荷低減できているかは微妙なところです。お茶柄を混ぜることで何らかの機能性がアップするならいざしらず、通常はただの増量剤としての機能しかありません。

さまざまなリサイクル手法がありますが、個人的には重要なのは「コスト低減できていること」だと思います。リサイクルは手段であり目的ではなく、最終的な目的は環境負荷を下げることです。当社はさまざまな食品リサイクルを行っていますが、コストアップするような場合は当初よりおすすめしないケースがほとんどです。たとえばコンビニ弁当などのように包装分別が大変なものだったり、ロットが小さく運搬にコストがかかる場合などは最初からお断りしています。逆に、資源の低投入で有効利用できるものは結果としてリサイクル製品にするための費用を抑えることができます。
企業としてCSR報告書に「アップサイクルしています」と書くためのリサイクルでは無く、環境負荷が本当に低減できる手法を採用すべきでは無いかと思います。コストも資源も抑えることで、長く継続できる取り組みとなりえます。当社はそういう社会課題の解決を通じ環境と経済で貢献できる仕組みを提供していきたいと思っています。

食品ロスは削減できるのか

食品ロス削減法案が成立しました。毎日新聞より
「同法は、食品ロス削減の意識を高め、食品を活用する仕組み作りが狙い。政府には基本方針、自治体には推進計画の策定を求め、ロス削減に取り組む事業者の支援も義務づけた。」

当社は食品リサイクル業を営んでいますが、当社は主に食品工場の製造副産物を取り扱っており、いわゆる食品ロス(可食部位)は業界の中でも比較的取り扱いは少ないです。スーパーやコンビニなどの売れ残り商品などのリサイクルのご依頼もかなりあるのですが、当社の受け入れ能力や品質の安定を考慮し、あまり受け入れをしていません。

しかし、食品工場から廃棄されるものの中には、食べられるような商品も多く含まれており、工場見学にいらっしゃったお客様から「これはなぜ廃棄されるのか」とご質問いただくこともよくあります。

当社で取り扱っている食品廃棄物の廃棄理由は様々ですが、大別すると以下のような理由があります。

1.見た目などの規格外

お菓子類などでは焼きムラ、形状異常などで廃棄されることがよくあります。たとえば、当社ではバームクーヘンを取り扱っていますが、バームクーヘンは製造時に両端が焦げるため切り落とします。焦げが入ると異物混入としてクレームになるため、かなりの量を切り落とすため多量の廃棄品が出ます。

バームクーヘン

2.ライン切り替え時のロス

味の切り替えなどで製造ラインを切り替えたとき、味の混入を避けるためライン清掃を行い廃棄物が出ます。たとえば羊羹は釜で炊きますが、必要製造量に対しロスを考慮し必ず余分に製造する必要があります。

3.ウエイトチェッカーやX線での検品

ほとんどの商品には重量規格があり、製品検査ライン重量測定を行い重量オーバー、重量不足で廃棄されることがあります。特に、包装ゆでうどんなどは均一に充填することが難しく、重量の過不足が出やすい傾向があります。

4.不可食部位

カットフルーツ工場で発生するパイナップルの皮、豆腐工場で発生するおから、ビール工場での麦芽粕などが該当します。安定発生するため当社でも積極的にリサイクルしています。

5.異物混入・製造ミス

製造の際、原料の調合を間違えた、加工方法に不具合があったなどの理由で廃棄するものが発生することはよくあります。また、異物混入が出荷前に発覚し在庫品を含め廃棄する場合もよくあります。

食品リサイクル法での推計では2018年度食品廃棄物全体で2759万トン/年の発生があり、そのうち可食部位は643万トン発生しています。当社の取り扱いしている食品廃棄物は食品ロスに該当しないものが多いですが、不可食部位以外は人間が食べられるものばかりです。食品ロス削減法の趣旨からいえば、消費者などへの啓蒙をはかりこれらの削減をめざすべきかと思われますが、日本人の異常なまでの細かさから削減は簡単ではないと思います。

以前、ゼリー工場から「キウイフルーツの果肉入りゼリーで種がはずれてゼリー部分に入ると異物としてクレームが来るため、検査ラインで検品してはねている」というお話をお伺いしたことがあります。先のバームクーヘンでもわずかな焦げが混入していただけでクレームが入ります。あめ玉も形が悪いとお客様相談室に電話があります。おそらく大多数の人が気にしないものであっても、納品先からのクレームなどを敬遠し事前に廃棄してしまいます。

カップ麺に使用される乾麺であっても重量と形状のチェックを行い、規格に外れたものは廃棄されます。私にはカップ麺の乾麺の形状が悪いとクレームがあることが理解できませんが、実際問題としてカップ麺工場の乾麺廃棄は膨大な量です。

乾麺

異物混入で廃棄されるものも多くありますが、ほとんどの場合食品衛生上混入しても健康被害がないものばかりです。以前、砂糖を数百トン廃棄するという案件がありましたが、これは赤色シリコンパッキンが混入したというもので、万一食べても全く健康には問題ないものです。しかし、「異物が入っているとわかって販売すると会社の姿勢が問われる」という理由で廃棄されることになりました。

個人的には異物混入などの事件が起こると「食の安全」を錦の御旗としてマスコミによる食品工場のバッシングされることが食品ロスの増加につながっているように思います。健康被害があるものの回収は当然ですが、健康被害がないものまで回収を求める今の風潮はおかしいと思います。

たとえば、最近ではこんなニュースが。

J-オイルミルズ/「味の素 から揚げの日の油」40万個自主回収

「一部製品について、包装容器の接着不良により最上部からの油漏れが判明したため、対象製品を自主回収すると発表した。」「同社では、健康危害はないが、消費者が不快な思いをすることないよう、同社では本件を重く受け止め、万全を期すため、回収するとしている。」個人的にはこれで回収する風潮が不快ですw

今回の法律制定を機に過敏な消費者とそれをあおるマスコミの風潮が少しでも改善することを願ってやみません。

産廃業者はブラックな存在なのか

相変わらず慌ただしい日々を送っています。常に締めきりのある書類を抱えているという状態がここ数年来続いており、少々疲れ気味です。仕事することは楽しいのですが、たまにはTODOリストが空になって欲しいと切に願う今日この頃です。

忙しい理由の一つは、カツの横流し事件をきっかけに、当社の取引先の食品メーカーの担当の方が監査のため当社に来社される機会が増えたためです。以前書いたように、お越し頂くのは歓迎なのですが予定が埋まってしまいスケジュールがタイトになっています。

しかし、立ち入り監査をしても、24時間見張っているわけに行きませんから本当に悪意を持っている業者がいた場合、今回のような事件を防ぐことは困難です。
実は、廃棄物業界は構造的にこのような犯罪がおきやすくなっています。それは、産廃業者がブラックというわけではなく、廃棄物の取引の形態に起因するものです。

一般の商取引の場合、商品やサービスの引き渡しと引き替えに対価が支払われます。つまり、商品、サービスとお金が逆方向の流れになります。ところが、廃棄物の取引の場合、商品(廃棄物)の引き渡しとあわせて対価の引き渡しが行われます。つまり、商品とお金が同じ方向に流れるわけです。

商品の流れ

一般的な商取引の場合お金を支払った側にはサービスや商品が渡されるため、もし商品に瑕疵や不正があった場合には発覚が容易ですが、廃棄物取引の場合、お金を払った時点で手元から商品(廃棄物)が無くなってしまうため仮に不正があったとしても発覚しにくいことになります。このため、不正が起こりやすい環境にはあります。
食品の産地偽装などが散発しているのも、同様に確認するすべがないため発覚しにくいことがその一因かと思います。
また、このようなものの流れがあり、品質が悪くとも排出事業者には直接的な影響がないため、とかく安ければいいという風潮になりがちです。このことも今回の事件の一つの理由かと思います。

逆に、廃棄物はこのような特色があるため、許可取得には高いハードルがあり、また不祥事を起こすと許可取り消しなどの厳しい処分があります。廃棄物業界は不正を行う=即利益という性質があるために許認可に際しては法知識を有することを求められるのはもちろん、財務内容などの審査も行われます。

また、廃棄物の処理に関しては必ず契約書を締結することが法で義務づけられています。不正が起きないように契約面でも担保しようという意味もあります。今回の横流しは廃棄物処理法での立件はかなり厳しいものがあると思いますが、契約に違反していることは明らかです。

産廃業界に足を踏み入れた頃よく、産廃業界って悪い人がいっぱいいるのでは無いか?と聞かれました。許可取得に際しては警察に暴力団関係者で無いことの照会がおこなわれますし、先に述べたように許可取得もかなりハードルが高いため世間一般の人がイメージするようなブラックな業界ではありません。今回のような事件を起こすのはごく一部の業者であることを強調しておきたいと思います。

食品廃棄物の横流しに関する業界人の意見

例によって更新を怠っているため書こうと思っているネタがたまっているのですが、世間を騒がしている廃棄カツの事件についてお問い合わせが多いので業界人の立場からすこし書いておこうと思います。

まず、世間の皆様に最初にご理解頂きたいのは、ほとんどすべての廃棄物は適正に処理されており、今回のような事件は非常にレアケースであると言うことです。日本では食品廃棄物は2000万トン弱の発生量が推定されており、その中には今回ような製品も多く含まれています。仮に横流しが横行しているようでしたら、もっと大変な量が出回っていることとなります。

また、産業廃棄物処分業は非常に厳しい規制があり、今回のような問題が発生すれば間違いなく事業を続けることができません。許認可を受けるためには法律を含んだ講習を受講することが義務づけられており、廃棄物業界の人は「なにをやったら違法なのか」ということは十分承知しています。

加えて、今回のような冷凍食品は取り扱いが難しいため、横流しすることはきわめて困難です。(廃棄物の収集運搬車で冷凍車はほとんどありません)食品として買取したいというブローカーが暗躍しているという一部報道があったようですが、少なくとも当社に食品として買い取りしたいと言って来た人間はいません。普通に考えて産廃業者からまともな「食品」が出てくるわけがありませんから、それを買おうと思う人間は相当な確信犯であり、そういう人間が多いとは思えません。

なお、産業廃棄物として受け入れたものを有価売却すること自体は法に問われるかどうかは微妙です。たとえば解体工事で出てきた鉄筋はスクラップとして販売されることが普通です。問題なのは、「食品として使えないから処分したい」という依頼に対し「堆肥として処理する」という契約を締結しているにも関わらず「食品」として転売したという点にあります。
今回の事件ではマニフェスト(産業廃棄物管理表)に虚偽記載がされていたわけですが、これは不適正な処理を行ったから正確な記載ができなかったという結果であり、原因ではありません。

なお、今回の事件で私が一番おかしいと思うのは、少なからず「法制度に不備があったからこのような事件が起きた」「監視体制が悪かったから」などの報道が行われているという点です。
なにかを委託するなどの取引の場合、どれだけ厳しく法律などで縛っても悪意ある人間がいた場合不正を100%防ぐことは困難です。

たとえば、新聞記者は記事のねつ造をしたり、マスコミがやらせをしたりすることは本当に悪意ある人間がその気になれば簡単にできてしまいます。監視やチェックだけで防ぐことは無理で、良識と常識によって担保されているに過ぎません。

日経新聞にこんな記載がありました。記者の知見があまりにお粗末なので無断転載します。

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「廃棄カツ、なぜ食卓に 自己申告悪用浮き彫り」 2016/1/20 2:02

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD18H47_Z10C16A1CN8000/

性善説で運用

ダイコーはマニフェストにうその情報を書き込んで廃棄食品を処分したように装っていた。壱番屋は処分結果をマニフェスト上で確認しただけで、実際に堆肥にしたかは確認していなかったという。ダイコーの自己申告であり、記録だけ見ても不正を見抜くことはできなかった。壱番屋の担当者は「報告通り、処分したと信じていた」としており、廃棄物を産廃業者に委託する際の対応を厳格化する再発防止策を発表した。

廃棄物処理法は、委託先が契約通りに処理したかについて、処理を発注する事業者が、立ち会い確認などすることを努力規定としている。いわば、廃棄物処理は処理業者がうそをつかないことを前提とした「性善説」で運用されているのが実情だ。愛知県の担当者は「発注元はできる限り、実地確認をしてほしいが、マニフェストには第三者のチェックが入らず、うそを見破るのは難しい」と話す。

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実地確認したって24時間張り付いているわけではないので限界がありますし、仮に24時間張り付いていたとしても本当に悪意ある人間は防げません。先に述べたようにすでに法律が厳しく運用されており、行政の立ち入り検査も頻繁にあります。一般的な商取引よりはるかに厳しく監視されている状態ですらこのような事件を行うのは相当な確信犯であり、そういった人間を規制や監視で防げると思うのがおかしいです。世の中は社会システムは基本的に性善説で運用されているわけであり、むしろ産廃業界(や食品業界)は疑われやすい業界であるが故に一般的な事業と比較し監視体制が厳しく行われています。中国ならいざ知らず、相手が不正を行うことを前提で商取引を行う業界が日本にあるのかと言う話です。先に述べたように新聞記者の記事もいわば性善説で書かれているわけですから、この事件で「性善説で運用」なんて見出しをつける日経記者の思考回路は相当一般社会常識から乖離していることは間違いないでしょう。

今回に限りませんが、食品になると鬼の首を取ったように大騒ぎするマスコミの姿勢には本当にうんざりです。そもそも廃棄品が出たのも異物混入などの事件でマスコミが繰り返しあおり立てるためむやみに廃棄品が増えているわけです。(おかげで業界及び当社の仕事は増えていますが)本来、健康被害が出る恐れがないものに関しては回収や廃棄する必要はないと思いますが、センセーショナルな報道やそれに影響された一部の消費者により異常なほど食品業界の規格が厳しくなっています。仕事を長くやっていると当たり前のようにそのような廃棄品を受け入れていますが、いまなお飢えた人がいる社会の中でほんとうにこれで本当によいのか、時々自問自答する日々です。もちろん当社では今回のように食品として流通させることはなく飼料、肥料としてリサイクルしているのですが、食べるのに全く問題無いものを家畜飼料にすることに背徳感を感じることもあります。

マスコミの皆さんは本質的になにが大事なことかよく考え報道を行っていただきたく思います。報道機関には耳目を集めることだけを考えるのでは無く、これからの社会構築に必要なことを報道することが求められています。

産業廃棄物の現地確認

1ヶ月ぶり&新ブログになって初めての更新です。相変わらず落ち着きのない日々を過ごしています。

先日、お取引のある排出事業者の担当の方が来社されました。
※「排出事業者」とは、廃棄物業界で言うところの廃棄物を出す事業者です。

廃掃法12条にはこのような記載があります。

「事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」

また、愛知県条例には現地での確認行為を義務づけしています。

「県内産業廃棄物の運搬又は処分を産業廃棄物処理業者に委託した事業者は、当該委託に係る県内産業廃棄物の 適正な処理を確保するため、当該県内産業廃棄物の処理の状況を定期的に確認しなければならない。」

このような記載があるため、排出事業者の方は定期的に当社を訪問され適切な処理が行われているかを確認するわけです。
排出事業者の方が見えると工場で説明を行います。当社のような小規模な事業所では現地確認の頻度はそれほどでもありませんが、大規模な産業廃棄物処理施設では頻繁に現地確認が行われ、工場の担当者は年中対応に追われていたりします。

ところで、県の条例で処理の状況を確認するように記載するのはおかしいのではないかと常々思っています。そもそも廃棄物処分業の許可は県が出しており、その際に適切な処理が行われることを確認しているわけです。それなのに排出事業者に現地確認をさせるということは自ら出した許可の正当性を担保してないと言うことになります。
また、廃掃法を熟知した県の担当者が適正処理しているか現地での確認を行っているのに、一般の排出事業者が確認してもあまり意味がないのではないかと思います。

個人的には排出事業者さんが来て頂けると営業に行く手間が省け、新規のお仕事につながったりするので現地確認自身はむしろ歓迎だっりしますが ^^;

 

一方、このような法や条例があるにもかかわらず、排出事業者によってはどこで廃棄物を処分しているか把握していないケースが多々あります。産業廃棄物を処分する際には最終的な処分先と契約書を締結します。また廃棄物を出す都度マニフェストを発行しますが、こちらには処分を行う事業所が書かれています。にもかかわらず、どこで処分しているかすら知らない排出事業者が珍しくありません。そういうお客様のところに新規営業で行き、「今まではどのような処分していますか」とお聞きすると「○○に委託してます」と運搬業者の名前を言われます。いつも引き取りに来てお金を払っている運搬業者=処分業者と思われている訳です。

廃棄物処理に負担をしているのですから、どのような内容で廃棄物の処理を行うか把握することは廃掃法うんぬん以前に商取引上からも当然のことではないかと思います。商取引という側面から、価格だけではなく、品質や内容も加味して委託先を選定して欲しいものだと思います。当社も品質の高いリサイクルとコストの低減を実現し、排出事業者の要求に応えていく所存です。(宣伝ですw)

廃棄物処理施設の立地と用途地域

忙しい日々が続いています。実は、当社の工場を来月移転する予定があり、そのためにばたばたしています。

一般家庭の引越はおまかせプランなどもありますが、会社、それも工場の場合は引越はかなり大変です。また、リサイクルの仕事というのは長期の休みがとれませんので、稼働させながら移転をしなければいけませんので一層大変です。

当社は飼料原料の買取も行っていますが、産業廃棄物処分業も許可を受けて事業を行っています。廃棄物処分業の許可は会社として受けている訳ではなく、施設にたいして許可を取得しています。このため、廃棄物処分業の許可は移転の際に再度取得が必要となります。当然書類なども作成しなければいけませんので、忙しさに拍車がかかるわけです。

 

廃棄物の許可を取得するためには工場の立地が問題となります。最初に問題となるのは用途地域です。用途地域というのは都市計画法によって定められており、それぞれの土地が目的に応じて区分され、その土地に建てられている建物の種類や用途などを示すものです。よく、住宅広告にある「第1種住居専用地域」と書いてあるのがそれです。

もちろん、産業廃棄物処理を住宅地で行なう事はできませんので、住居専用地域では産業廃棄物処理の許可申請を行なう事ができません。基本的には「工場地域」「工業専用地域」などで事業を営むこととなります。

用途地域には「準工業地域」という区分があります。こちらも基本的には工場を建てることのできる地域ですが、たとえば名古屋市の条例では肥料工場は設置できないと言うことになっています。このため、当社のような肥料製造事業者は工場が設置できず、当然産業廃棄物処理の許可申請もできないわけです。

 
しかし、この用途地域というのは事業者にたいして不利にできています。上記のように住居地域で工場設置をするのには制限がかかっているのですが、逆に工業地域では住居を建てることができるのです。工業地域で住居を建てるわけですから当然周りに工場があることは想定されるわけですが、実際のところ工場が稼働していると騒音や臭いで苦情が来たりします。愛知県で言うと特に名古屋市など都市化が進んでいる地域では工業地域でもかなり住宅が建っており、工場の運営がしにくい状況にあります。

当社の工場は工業団地にあり、工業地域になっているだけではなく住宅も少ないです。このため、夜中までフォークリフトを動かしている工場なども多く、事業を行うには適した環境です。本来なら工業地域というのはこうあるべきだと思います。

 

廃棄物を扱っていると言うだけで世間からはあまりよく思われないのは常です。ただ、廃棄物に限らず事業者全般に言えると思いますが、無秩序な都市計画が無用の軋轢を生んでいることは間違いありません。臭いものに蓋をする方式ではなく、きちんと計画的に国土のあり方を構想していくことが地域発展につながっていくと思います。

焼却処理施設の見学

10月が終わり今年もあと2ヶ月になってしまいました。10月は本当に忙しかったです。書類作成仕事はそれほど多くなかったのですが、とにかく出張が多かったので全然会社にいませんでした。スケジュールが埋まりすぎてやらなければいけないことが全然進みませんでした・・。

そんなスケジュールの1つに焼却処理施設の見学がありました。産業廃棄物の中間処理施設です。脱サラして静脈ビジネスに携わりまだ5年しか経っていないので、勉強のために機会があればいろいろな施設の見学を行なうようにしています。

ところで、世間では「廃棄物処理」といえば「焼却」というイメージがかなりありますが、実は焼却処分する割合はどんどん低下してきています。もちろんリサイクル推進が求められていると言うことはあるのですが、焼却というのはかなりコストがかかる処理だというのもその理由の1つです。

今の焼却炉は環境対策などのために非常に高度なシステムで構築されています。このため、焼却炉の機器コストが増えてきています。たき火をしてみるとわかりますが、ものを完全に燃やすというのは案外難しいものです。完全燃焼しなければ有害物質などの発生の原因となってしまいます。廃棄物は特に様々な種類のものが混ざっているため、これを安定的に完全燃焼させるための設計がされています。
廃棄物処理施設では機器の減価償却の比率が大きいため、このコストが大きい焼却処理はどうしてもコスト高となります。

食品廃棄物の処理はたいていは当社のようなリサイクルによって処理されているのですが、どうしてもリサイクルできないものは焼却処理されています。今回の見学はそういった焼却される食品廃棄物の状況を見ることも目的の1つでした。実際のところうまく分別ができればリサイクルできるものもかなりありそうな感じでした。

産業廃棄物の焼却炉というととかく反対運動の対象になりがちですが、今の焼却炉は安全を非常に重視して設計されていることを理解頂けたらと思います。また、無闇に焼却処理しているわけでもなく、焼却処理業者もできるだけリサイクルしていきたいという意識は常に持っています。

なによりも、実は燃やしているものはそんなに特殊なものでもなく、我々の日常生活に関連した産業から出てきている廃棄物がほとんどだったりします。

今回見学して思ったのは、本当に「どうしてこんなものを捨てるのだろう」といったものがすてられているということです。廃棄物処理施設に反対される気持ちはわからないでもないのですが、根本的な大量消費社会に生活しながら廃棄物処理に反対するというのはあまりに利己主義的ではないかと思います。大量消費社会をどう変えていくのかを1人1人がもう少し真剣に考えなければいけない時期なのではないか・・と強く思います。

逆有償に関する通達と有価偽装

リサイクル業界の人が結構このブログをご覧になっているようですが、最近はちょっと法律についてのネタが少なかった気がしますので、今日は法律論を久々に書きます。そうそう、環境省の方もたまにこのブログをご覧になっている模様です。
この前、リサイクル業界の人と話をしていて、逆有償について話題になりました。実は、このブログのアクセス解析を見ると一番多いキーワードが「逆有償」です。
逆有償については以前も書いていますが、もう一度整理してみたいと思います。
逆有償という言葉の定義は明確になっているわけではありませんが、業界において一般的には「有価物として取引されているが、販売価格より運賃が上回っている場合」です。これって、実質的には処分費用を払っているのと同じ状態じゃないの?って言う疑問が出てくるかと思います。
実は、環境省から通達が出ています。
環廃産発第050325002号
これは、先の通達、平成3年10月18日付け衛産第50号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課産業廃棄物対策室長通知の補足的な内容となっています。
ちょっと長いですが抜粋します。
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産業廃棄物の占有者(排出事業者等)がその産業廃棄物を、再生利用するために有償で譲り受ける者へ引渡す場合の収集運搬においては、引渡し側が輸送費を負担し、当該輸送費が売却代金を上回る場合等当該産業廃棄物の引渡しに係る事業全体において引渡し側に経済的損失が生じている場合には、産業廃棄物の収集運搬に当たり、法が適用されること。一方、再生利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については、廃棄物に該当しないこと。
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これ、相手に渡したときに相手がちゃんとお金払っていれば相手に渡った時点で有価物になると言うことです。
もう少し具体的に例示してみます。
A乳業から牛乳が廃棄されます。養豚農家はそれを1円/kgで購入し、A乳業へ支払ます。運賃は3円/kgかかりますが、これはA乳業が負担して、B運送へ支払います。
と言う場合です。この場合、運搬している間はA乳業が費用を支払っている、つまり経済的損失が生じているため廃棄物となり、養豚農家へついた時点で有価物として扱うと言うことです。
ところが、ここで有価偽装という問題が出てきます。有価偽装とはどういうことかというと、先の例で言うと養豚農家は代金をA乳業に支払います。ところが、裏金として実際はA乳業からお金をもらってると、それは有価偽装となります。
お金を受け取るというのがなぜ問題なのか、それは受け取っただけでお金がもらえるため受け取ったものを不法投棄などしたら簡単に儲かってしまうからです。これが一番最初の例のようにきちんとお金を払っていたら普通は捨てることはありません。お金払って買ったものは普通は簡単に捨てませんよね。
そういう疑いをもたれないように、契約書などできちんとお金の流れを把握できるようにして行政に説明できるようにしておくことが重要ですが、一番重要なのは取り扱うものがちゃんと「価値あるものとして見なされるようなものであること」です。誰がどう見てもゴミにしか見えないものを有価物として主張するのは無理があります。
 
と、つらつら書きましたが、廃棄物行政で問題なのは環境省の通達が出ているのにもかかわらず行政の担当者によっては上記のような取引を認めない(あくまでも廃棄物として取り扱うように)と言うことです。廃棄物行政は曖昧模糊としており法律に明記されていないことが多いため、どうしてもそのような事態が発生しがちです。また、都道府県の担当者も異動が多く、全ての人が法規に精通しているわけではありませんのでどうしても判断が揺れ動きやすくなります。
リサイクル関係の仕事をする以上、法律については行政担当者と同等以上に把握しておく必要があると思います。

リサイクル費用を受け取るという意味

暑い日々が続いてすっかりげっそりとなっている今日この頃です。暑いと食べ物を食べなくなるので例年痩せます。豚も一緒で暑くなると食べる量が減るため、当社の飼料出荷量もそれにともない減少します。
この前、養豚農家さんが「産業廃棄物処分業の許可がほしい」ということを言われていました。養豚は古くから残飯を受け入れていたこともあり、全国でも少なからず産業廃棄物処分業の許可がある養豚農家があります。しかし、産業廃棄物処分業の許可があるということは、「原料の受入の際に処分費用を受け取る」ということです。たしかに、お金をもらってエサを入手できるのですから、すごく儲かりそうな印象がありますが、お金をもらうと言うことはまた違った意味が出てきます。
排出事業者の立場に立つと、お金を払うと言うことはお客様になるわけです。廃棄物を確実、安定的に処理を行う対価としてお金を支払う訳なので、安定的に処理を行なう事を求められことになります。
食品工場からの廃棄物は様々な種類のものが発生し、その量も変動します。養豚農家が処分費用をもらうということは、そういったものを受け入れしなければいけないことになります。上で述べたように、豚が食べる量は年間を通じて変動がある上に、受入量が変動するためその需給調整がたいへんになります。これがエサを購入すると、必要な分だけを購入すればいいわけです。また、食品工場からの廃棄物でも飼料に向かないものもありますが、こう言ったものが発生しても引取をもとめられてしまいます。
養豚農家によっては配合飼料との併用により需給調整をうまく行っている例がないわけではありません。でも、安定的にリサイクルすると言うことは結構たいへんなことです。
当社のようなリサイクル専業業者でも需給調整は苦労しますが、当社の場合、顧客となる畜産農家の数が多くありますので、リスクをヘッジできるわけです。
飼料に向かないものは肥料としてリサイクルすることにより、飼料の品質の均質化もはかっています。
また、有価物として養豚農家が引き取りする場合もあります。この場合、購入しているわけですから必ずしも引取の義務が生じるわけではありません。ところが、こういう排出事業者から当社への引き合いが結構あります。「養豚農家さんが取りに来ていたが、時々取りに来なくて困ったのでリサイクル業者をさがしている」っていうようなお話しを頂いたりします。排出事業者は費用が発生しても安定的に処理が行われることを求められているわけです。
食品に限らず、リサイクル業界は需給調整が必要となります。そこに当社のような業者が存在する意義があるわけです。いわば、静脈ビジネスにおける商社と言うわけです。
存在意義がない事業って継続することはできません。会社の立ち位置、意義を常に考えて事業を営んでいきたいと思っています。

不法投棄と一般廃棄物

ここ数日暑さが戻ってきた東三河です。今日も本当に暑かった。だいたい朝はリフトに乗って当日出荷する物を段取りしたりしているのですが、リフトに乗っているだけなのに朝から大汗かきました。昼間の工場は更に暑くて、現場の人たちにはご苦労をかけています。

 

先日、こんな記事を見かけました。

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【8/5朝日新聞

髪の毛33キロを海岸に投棄容疑 愛知のウミガメ産卵地

アカウミガメの産卵地として知られる愛知県豊橋市の表浜海岸に、ごみ袋約10袋分(33キロ)の髪の毛を捨てたとして、豊橋署は5日、市内の美容室経営会社と、従業員の女(20)=豊川市=を廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで書類送検し、発表した。

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この手の不法投棄はちょこちょことありますが、あまり新聞紙面に載ることは無いようにも思います。表浜海岸という景勝地だったからかもしれませんね。

この中で、《女は「店長から(髪の毛を)捨てて、と言われたが、朝早く家庭ごみの収集場所に持って行くのが面倒だった」と話した
》と記事にあります。仮に家庭ゴミの収集場所に持っていくとしたら、それも実は不法投棄になります。

廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物という区別があります。産業廃棄物は事業から発生して指定されたものだけが該当します。それ以外の物は一般廃棄物になります。ここで、よく誤解があるのですが一般廃棄物の中には事業から発生するものと家庭のものがあり、事業活動から発生した物は事業者自らの負担により処理しなければいけません。豊橋市も含め多くの市町村では市町村は事業から発生した一般廃棄物の回収業務を行っておらず、発生事業者が民間の事業者に委託することがルールとなっています。このようなゴミの種類の区別に従わず処理=不法投棄という扱いになります。場合によっては逮捕者も出るような違法行為です。

同様に、産業廃棄物を一般廃棄物として処理した場合も不法投棄という扱いになる訳です。

 

本来は、市町村がこの区別について指導しなければいけません。ところが、市町村によってはこのような指導をあまり行っていないのが実情です。当社のお客様でも、相当の大企業にもかかわらず本来は産業廃棄物として扱わなければいけない廃棄物を一般廃棄物として処理していたケースがありました。これは、私が現場を見ていての想像ですが、おそらく年商1億円以下の企業では半分以上が産業廃棄物を一般廃棄物として扱っていたり、家庭ゴミの集積場に出していると思います。

最近は、自治体によってはこの区別の周知徹底を行っているケースも増えてきていますが、まだまだ少ないのが実情です。今回のような事件が起きたのは、豊橋市の指導が不十分であった証左ではないかと思います。

ちなみに、豊橋市の相場ではこの33キロを事業系一般廃棄物として民間業者に委託した場合の費用はだいたい1、2千円です。事業を営む以上、この程度の費用負担は相応かと思いますが、残念ながら中小企業ではゴミの処理費用は完全な捨て金という認識が大多数であり、少しでも安ければいいという姿勢が横行しています。行政も実体を見て見ぬふりをしているので、このような不法投棄事件を誘発することになるのだと感じますね。