脂肪酸組成と食味

以前からちょくちょく話題にしていますが、今年の春から愛知中小企業家同友会の経営指針講座に通っています。月一回丸1日かけて経営指針について勉強をしています。

経営指針講座で一番最初に行い、そして一番重要なものは経営理念の確立です。というわけで、いろいろと考えた結果、当社の経営理念を新たに創り直しました。

新しい経営理念は
「私たちは、有機資源循環により新たな価値を生みだし、持続可能な社会実現に貢献します。」
というものです。当社のめざすこと、やりたいことがすこし具現化できたのではないかと思っております。

実は個人的には会社の経営理念とは別にすこしやりたいことがあります。それは「美味しい食べ物を生産する手助けをしていく」というものです。当社の生産している肥料、飼料は食料生産に直結しており、生産物の品質に大きな影響を与えるものです。当社がよい製品を作ることで美味しい農産物が生産されること、そしてそれを私が食べること(笑)をめざしています。

とは言っても、「美味しさ」の定義は人それぞれです。主観的な美味しさを軽視するわけではありませんが、肥料、飼料製造の品質向上のためには客観的なデータによるPDCAサイクルを確立していくことが重要だと思っています。

最近、当社では黒毛和牛向けの飼料販売を行っています。牛の場合、肉の評価は格付け(日本食肉格付協会)により決まります。格付けは歩留りと脂肪交雑、肉色、脂肪の色などで決まり、一般的には脂肪交雑が多いほど格付けが高くなる傾向があります。

脂肪交雑が多いと肉質が柔らかくなり、食感がよくなる傾向があります。しかし、そこに含まれている脂肪の質までは格付けでは評価されません。

脂肪は脂肪酸グリセリドというものから構成されており、昨今はその脂肪酸の組成をしらべることで、美味しさを客観的に評価しようという試みが増えてきています。オレイン酸が多い牛肉をオレイン牛として売り出す試みも行われています。

ただ、脂肪酸組成でオレイン酸が多いから美味しい・・・ということが確立されているかというと実ははっきりとしたことが言えないのが現状です。

ただし、オレイン酸が増えると融点が下がることは確かです。牛脂の脂肪酸はパルミチン酸などの飽和脂肪酸が多いため、豚よりも融点が高い傾向にあります。オレイン酸などの不飽和脂肪酸が多く含まれると融点が下がります。私は脂肪酸組成以上に融点が食味に大きく影響するのではないかと考えています。

融点が36℃を上回ると、脂が口の中や胃の中で固まります。これが舌触りの悪さ、胸焼けの原因ではないかと推測しています。オレイン酸が増えることで、結果として融点が下がり食味がよくなるのではないかと考えています。

 

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今回、当社の共同研究先である京都大学の熊谷先生の協力の下、当社のお客様の木下牧場で飼料を変えて育てられた牛がどのような脂肪酸組成、融点になっているか調査をおこなうこととなりました。

先に述べたように、食味と脂肪酸組成の関連ははっきりしない部分があるため今回の結果を元にすぐに品質向上への方策が確立するわけではありませんが、このような知見を増やしていくことは将来に向けて重要な一歩であると考えています。ただ、残念ながら食味試験には参加は難しそうなのが美味しさを実感しながら実験できないという意味で心残りな点でありますヽ(^0^)ノ

日本農業の存在意義

先日、三河トコ豚極め隊の打合せがありました。話題の中心となったのがTPPのことです。情報が開示されていないので今後の見通しはきわめて不透明な状況であり、今度のあり方について議論が行われました。厳しい状況の下、これからの対応策を検討することがますます重要になってきているかと思います。

以前も書きましたが、最近経営指針の勉強会に参加しています。その中で「自社の事業の存在意義」を問われる場面がありました。存在意義が無い事業は継続できない、当たり前のことではありますが、改めて考えると難しい問題です。
時代の変遷で存在意義を無くしている業種はたくさんあります。養豚は果たして存在意義はあるのでしょうか。米国産のトウモロコシを使い、米国の品種を使っていると米国の豚肉と区別が付かず、日本で養豚をする意義が問われます。

養豚に限らず、日本の農業全体が存在意義を問われる時代になっていると思います。海外の農産物と比較すると価格で競争することは難しいのは明かです。食料の安全保障の面からの存在意義を主張する旨もありますが、今の農業が海外の資源に依存していることも事実であります。食料の安全保障を主張するならば、資源投入の少ない農業へ転換することが求められていると思います。

私が考える日本農業の存在意義の1つは資源循環です。農業は言わば物質循環のを早める行為です。狩猟採取の生活では確保できる物質量が少ないため人口を増やすことが難しかったのが、農耕を始め物質循環の量を増やすことで多くの人口を養うことができるようになったわけです。

当社のビジネスは農業の物質循環を高める行為であり、そういう意味では時代の趨勢に合致し存在意義を見いだせているのではないかと考えています。

私が思う日本の農業のもう一つの存在意義は「美味しいこと」です。日本人は美味しいもの食べることに多大なエネルギーを払っており、日本には世界中の美味しいものが集まっています。東京は(お金さえ払えば)世界で一番美味しいものが食べられる街だと思います。

そういう日本人の嗜好に応えてきた日本の農産物は本当に美味しいものがたくさんあると思います。私は美味しさを追求することが日本で農業生産を続ける存在価値になるものと信じています。

ただ、残念ながら今の農業は「美味しさ」=農業所得につながっていない部分もあります。

例えば豚肉の格付けは歩留りと重量であり、美味しさの要素は考慮されておりません。味というパラメーターは評価が難しいことは事実ですが、見た目や取扱性を重視し続けることは産業自身の存在意義をスポイルする可能性が高いと思います。格付け=所得であり、所得と美味しさが異なっている結果、美味しくないけど儲かるものの生産が増えているように思います。

格付けにとらわれ美味しさの提供ができない現状に一石を投じるべく、三河トコ豚極め隊でも規格にとらわれないで美味しい豚肉を提供したいという思いから、豚肉のオーダーメードという企画を立ち上げています。

当社のリサイクル肥料、飼料もただ単にコスト低減や環境保全という意義だけではなく、美味しい農産物を作ることに貢献することで日本の農業のレゾンデートル(存在意義)に貢献できたらと思っています。そしてその結果として私自身が美味しい食品をたくさん食べることができたら望外の喜びです(^_^)

 

 

 

リキッドフィードの保存性

忙しいさのピークは過ぎましたが相変わらずばたばたとしています。関東で大きな仕事を頂きましたのでしばらくは出張が多くなりそうです。普段会社にいることのほうが少ないのですが、たまに会社にいると来客が多く予定がびっちり埋まります。

来社されると工場見学される場合が多く、いろいろな原料が入荷しているのをご覧になり驚かれることが多いです。

また、製造されたリキッドフィードを見て「こんな液体のエサを豚が食べるんだ」と感心されることもしばしばです。

その中でよく質問があるのは、「リキッドフィードは腐らないのか」というご質問です。水分が多く、高栄養であるため腐りやすいことは事実です。そのため、リキッドフィードでは腐敗を抑えるためpHをコントロールします。乳酸発酵や有機酸の添加によりpHを下げることにより細菌の繁殖を抑制します。
リキッドフィードには糖が多く含まれているため、嫌気性条件下に置くと比較的容易に乳酸発酵します。しかし、当社ではより安全を期するために有機酸の一種であるギ酸を添加し、pHを低下させています。
今までの経験と分析値から、pHを4.0以下にすると細菌の繁殖を抑制でき、腐敗を抑制できています。多くの文献ではpHは4.5程度でも問題無いような記載が多いですが、安全を見るとpH4.0以下に維持した方がいいようです。

一方、乳酸発酵が進みすぎてpHが3.0を下回ると嗜好性が落ちる傾向にあります。ジュースやヨーグルトがpH4程度ですから、やはりそれより低くなると豚も酸っぱさを感じるようです。

もう一つ保存性で重要なのは嫌気性下で保存すると言うことです。酸素が少ない条件では含まれているアルコールなどの働きもありカビや腐敗が起こりにくい状態になります。このため、運搬容器、保管容器は蓋を極力開けないようにしています。

pH4.0程度になったリキッドフィードは常温で2週間程度の保存が利きます。実際は最大でも1週間程度で使い切ってしまいますが、保存性を高めることは飼料としての利用の利便性を維持する上で重要です。安全性を担保するためにpHは常に計測すると共に、細菌数のチェックなども定期的に実施しています。まあ、いろいろやってみて思うのは、要するに「酸っぱければたいてい大丈夫」ってことですヽ(´▽`)/

こういう仕事をしていると、自分が食べる物のpHや細菌数が気になってしょうがないのは職業病かもしれませんね。

何のために経営をするのか

年度末、年度初めの怒濤の書類作成もおおむね終わりました。書類作成だけならいいのですが、打合せに北関東から関西まで行ったり来たりしていたので疲れました。ロングスリーパーなのに睡眠時間が短い日々が続いて辛かったです。

そんな年度初めのさなか、先週末は愛知中小企業家同友会の経営指針作成講座に泊まりがけで参加してきました。

中小企業家同友会では経営指針作成を強く求められます。中小企業家同友会では「経営理念」「経営方針」「経営計画」の三つを総称して「経営指針」と呼んでいます。
これらの計画をまとめ、従業員他のステークホルダーにたいして公表すること、それが経営の基本だと教わります。

会に入る前にはあまり意識したことがなかったのですが、周りの中小企業の経営者を見渡していると、なにを目標として、どういう戦略を立てていくかが全くなく場当たり的に経営をしているケースが多くあります。どういう会社にしていくかがはっきり見えることにより確固たる経営が初めてできる訳です。

今の日本の閉塞感も日本の政治が確固たる理念が欠落しており、目標と計画がないことが大きな原因ではないでしょうか。将来どうなるかという未来像が見えなければ安心して日々を過ごすことはできません。このことは日本全体も中小企業も同じではないかと思います。

当社はおかげさまで(利益はともかく)売上は増えていますが、今のままの個人商店では早晩行き詰まるのは目に見えていますから、今のうちに組織としての形態を確立し、将来への道筋を打ち立てる必要があると思い経営指針の講座に参加したわけです。

半年にわたる経営指針講座のうち、最初の3日間は経営理念について考える時間となっています。とくに、2日目、3日目は泊まりがけで「何のために経営するのか」ということを討議します。
2日間にわたって創業まで至る経緯、これまでやってきたこと、今後どうしたいかということを生い立ちから掘り下げて話しているうちに、自分の考えが整理できてきました。

思えば今までは日銭を稼ぐことに汲々としてきましたし、おもしろ半分のゲーム感覚で経営をしてきたようにも思います。これから企業として発展していくためには、確固たる目標をもち計画を打ち立てて進めていくことが重要である、そう気付かせてくれた2日間だったように思います。

有意義な時間でしたが、寝不足が続いていたところに朝の10時から夜中2時まで経営理念について考えるのは相当疲れました。

講座は秋まで続きます。しっかりと勉強して未来像の見える経営指針を作成し、企業発展につなげていきたいと思います。

農産物の売り方

超久々のブログ更新となりました。
年度末で大変多忙でした。補助金の申請&報告書が大量にあったので一時はどうなるかと思いましたが、なんとか山は越えました。風邪をひいたりせず乗り切れたのはよかったです。

今回は農林水産省の補助金をいくつか申請しました。農林水産省の補助事業は最近6次産業化関連のものが中心となっていますが、今回の6次産業化ではなくエコフィード関連のものを申請しました。

6次産業化とは、「第一次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、第二次産業や第三次産業にまで踏み込むこと」というもので、私の周りの農家も販売に力を入れているひとが多くいます。

そんな中、この前、近所のスーパーでお米を買ったときにちょっと気になることがありました。最近はスーパーも様々な産地、品種のお米を販売しているのですが、米の品種名は書いてあってもその品種がどんな味なのかが全く書かれていないし、どんな栽培方法をしているかも書かれていないのです。

今回買ったのは北海道産の「ゆめぴりか」。仕事でよく北海道へ行き何回か食べたことがあり印象がよかったので購入しましたが、そうでなければおそらく購入しなかったのではないかと思います。ゆめぴりかは評判がたかいようで、なんと新潟県産コシヒカリより高い価格で販売されていました。ただ、愛知県の一般消費者にそこまでの知名度があるとは思えません。もちろんスーパーがポップなどで説明を書けば一番いいのでしょうが、米袋にスペースがあるのにもかかわらずそこに書かれているのは米の炊き方などのたいして意味のない情報ばかりです。

極めつけは「北海道産米の新たなブランド形成協議会認定」という消費者にはまったく役に立たないロゴが[E:sweat02]名前をつければ売れると勘違いしているのかと思いますが、せっかくの良食味米をなぜPRしないんでしょうね。

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ちなみに、米の販売元はあいち経済連でした。優秀な人材が揃っている経済連ですらこの体たらくでは普通の農家の6次産業なんて夢のまた夢ではないかと思います。

日本の農業の強みは品質であると思います。特に、日本人は食に対してのこだわりは世界有数であると思います。そんな日本で揉まれた日本の農産物は美味しいものがたくさんありますが、伝える努力を怠っているのではないかと思います。

米はまだ品種と産地が表示されますが、そうでない農産物もたくさんあります。キャベツやタマネギで品種の名前が書かれて販売されているもの見たことがある記憶がありません。複雑な流通も原因の一端ではありますが、生産者の伝える努力が足りないのも間違いない事実であると思います。これだけ情報発信が容易になっている中、積極的に発信している農家はごく一部に留まっています。6次産業化の補助金で加工設備を作るのも結構なことですが、それ以前に消費者への目線がなければ加工も販売も茨の道となってしまうのではないでしょうか。

自給飼料と堆肥

当社が取り扱っているエコフィード、以前は豚向けが中心でしたが最近は牛向け飼料の取り扱いが増えています。その結果として牛屋さん(主に酪農)へ行く機会が増えています。

初めて農場へ行ったら、買っている牛の頭数、牛乳の生産量、使っているエサの種類、エサの配合をどうやって設計しているかを聞きます。

牛の頭数・・エサの飼料量がわかります。
牛乳の生産量・・1頭あたりどれぐらい牛乳が出ているかによってエサの配合が変わってきます。農場によって量はかなり異なります。
使っているエサの種類・・濃厚飼料(配合飼料)と牧草の組み合わせを聞きます。
エサの配合・・今の酪農は栄養バランスを綿密に計算してエサの組み合わせを決めています。配合設計は人間で言うと栄養士のような仕事です。農家自身が設計をしているケースは少なく、主に飼料メーカーや獣医の先生が担当することが多いです。

この配合設計をしている人がエコフィードに対して理解が無いとなかなか当社の飼料を使ってもらえないという事態が発生します。

当社は「お客様の利益が出ること」を経営理念にしていますので、当社の飼料は価格設定、品質を含め大なり小なり使用することによるメリットがあるのですが、それをうまくお伝えできないことがあるのは残念です。

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最近の営業アイテム 脱水モヤシ

と、あわせて農家でお聞きするのは自給飼料(牧草)を作っているかどうかです。「え、牛屋さんなんだから牧草を作るのは当たり前でしょ?」と思われるかたが多いかもしれませんが、実はここ愛知県では牧草を作っている農家さんの方が少ないです。多くは牧草を作らずに海外の輸入乾草を購入しています。

ここ数十年為替が円高になる傾向にあったため輸入の牧草が安くなってきたこと、現在の酪農では上記のように細かく飼料の栄養バランスを整えているため成分が不安定な自給飼料が敬遠されることが主な理由です。

ところが、牧草を育てないということは、牛舎から発生した堆肥の利用先に困ることになります。飼料を完全自給した場合、牛乳を出荷するのですからその分物質収支から見ると不足が発生します。牛糞由来の堆肥だけでは物質、すなわち肥料成分不足するため、そのため肥料を飼料畑に投入する必要が出てきます。
ところが逆に飼料を自給しないと堆肥(=肥料成分)が過剰となります。あまった肥料分を処理するために排水処理のためのエネルギーを投入する必要が出てきます。

エコフィードを使うと言うことは換言すれば日本全体での物質循環を高めるという行為です。海外からの輸入飼料を使うと言うことはそれだけ物資が過剰となります。牧草を自給すると言うことは農場内での物質循環ができるということです。

私は物質循環の不均衡を是正していくことには合理性があり、食品リサイクルも飼料の自給も合理性にもとづいた重要な存在だと考えています。農業とは本来物質循環行為そのものであるわけです。今の日本の農業、とりわけ畜産はそこから乖離していることについて自覚を持っていく必要があると思います。

見積合わせの重要性

遅ればせながらあけましておめでとうございます。多くの会社は今日まで年末年始の休暇かと思います。明日はたくさん電話が鳴るのではないかと予感しています。
当社はいつものように元旦以外は仕事でした。食品リサイクルは因業な商売だと思います。

会社は営業していましたが、電話もメールも無いので一生懸命書類作成などしていました。見積書の作成などもあるのですが、工場の治具や工具の図面を書く仕事もあります。
現場で使用する治具はたいてい私が図面を書いて鉄工所に頼んで作ってもらっています。

いまお付き合いしている鉄工所が数カ所あり、なにか作成するときにはそれぞれ見積もりを出してもらっています。出てきた見積をみて発注をかけています。
余程急いでいる場合、特殊なもので発注先が限られるもの以外は複数見積を取るようにしています。

見積合わせをするのは前職の上司からしつけられたたまものです。上司はトヨタ自動車出身で経営のこと、人事管理のこと、その他いろいろと教えて頂いたのですが見積合わせの重要性についてもその1つです。

見積合わせをするのは価格を競争させるという意味もあるのですが、適正な相場を知るという意味もあります。何が適正な相場かしらなければ交渉もできません。

また、安い価格を提示できるのは無理をして安値を出していることもありますが、往々にして得意なものは安くできることが多いです。
たとえば、鉄工所と行っても実は業務の幅は広く、持っている機械の種類が違い作業者の得意分野も異なります。このため、得意な分野だと安い上に仕上がりがよく短納期だったりします。

私は何かを発注するときに見積合わせを取ったら基本的には一番安い金額の会社と交渉することにしています。これは安い方がいいということももちろんありますが、安値を提示したにもかかわらず交渉ができないとことが続くと次回の見積の依頼が難しくなるということもあります。無論、価格以外の要素があればそれを加味することも行っています。なんにせよ取引先とはきちんとルール付けを行い公正な取引をすることが重要と考えています。

ビジネスを行う上でお客様との関係が大事なのは言うまでもありませんが、仕事を頼む先との関係というのもとても重要だと思っています。
と言いつつ、当社もお客様とお話ししていて「よそからも見積とっているから」というととてもドキドキするのは立場変われば・・ってやつですね ^^;

今年もありがとうございました。

今年もあと数時間で終わろうとしています。今年は私もとうとう40歳の大台になってしまいました。
事業を始めたのが32歳。ずいぶん時間が経ってしまったものだと感慨深いです。

今年は会社の移転という大きなイベントがあったためとても慌ただしい一年でした。なにか本当にあっという間に一年が過ぎ去ってしまったように思います。

そして今日は決算日です。こうして決算を無事迎えられるのも応援してくれる皆様のおかげだと感謝しています。
今年はおおむね予定していた予算は達成しましたが、新しい試みに取り組んだことがどれも道半ばになっていることがとても悔やまれます。
来年は会社の経営計画に対し更に真摯に取り組みたいと思います。

巷間ではアベノミクス効果による好景気が言われていますが、中小企業が置かれている環境はとても厳しいものです。
最近、会社経営をしていて強く思うのは会社の経営では「存在意義」がとても重要だということです。
当社の存在意義はどこにあるのか、自問自答をつねにしていきたいと思います。

来年も環境テクシスをよろしくお願いします。

為替相場とエサ屋のビジネスモデル

忙しいこともありますが、書類仕事が溜まっていてブログを書く余裕がなく更新が滞っています。飲みに行く日が多すぎるからと言う噂もありますが[E:sweat01]

為替が円安傾向になってきました。円安により株式市況は活況を呈しており、輸出関連企業の好決算が続いています。円安により輸出の価格競争力が増すことは間違いないですが、これはとりもなおさず国内の経済力を相対的に下げることにより原価が低減できていると言うことです。
つまり、円安とは労働者の賃金がグローバル基準で見て低くなっているから価格競争力が増えていると言うことです。日本人が貧乏になって輸出競争力が増えているわけですから、輸出関連企業以外で円安を礼賛している人は自分が貧乏になっていることを喜んでいることと一緒ではないでしょうか。
国内だけで資源をまかなっているのでしたら問題ありませんが、日本の経済は海外資源に依存しており円安の結果購買力が低下している=物価上昇しているのは当然の結果です。アベノミクスでは物価上昇目標が定められていますが、物価上昇は経済好転の結果で起こるべきであり、物価上昇により経済好転するというのは本末転倒ではないかと思います。

と、前置きが長くなりましたが円安の結果飼料価格が上がっています。ドルベースの海外の穀物市況は低下していますが、円安がその効果を帳消ししている格好です。逆に言うと、ドル安の結果穀物市況が低下しているのに過ぎず、為替を考慮すると穀物価格は変化していない・・という見方もできます。

飼料価格の高騰により畜産農家の経営は厳しさを増しています。日本の畜産農家は売上に占める飼料コストの比率が高く、畜種によっては売上の60%以上になることもあります。
家族経営でも売上が数億円に達して飼料を年間億単位で購入しているケースも珍しくありません。

こうした状況下、経営が悪化すると飼料購入代金の支払いができなくなり、代理店への買掛金が増加して言うケースが多く見られます。

代理店としては買掛金が滞納することによる回収リスクの増加を回避するため、販売単価を引き上げていきます。場合によっては20%以上単価が異なるケースもあります。飼料購入単価が高いとますます経営が圧迫されていき、経営が行き詰まる原因となります。畜産農家は一旦経営が悪化すると立て直しが非常に難しい訳です。

また、代理店によっては売掛が増えた場合担保を押さえることもあります。ここまで行くとほとんど金融ビジネスに近いものがあります。つまり、上限金利に縛られず金利20%での金貸しをおこなっているようなものです。

 

収益を上げるビジネスモデルとしてはとても興味深いですが、そういったやり方を続けていくことは業界の縮小を促すことにつながりかねず好ましいものではないと思います。また、農家も安易に支払を送らせることは経営圧迫の大きな要因となり得ることを知るべきだと思います。農業であっても億単位の金を扱う以上、ビジネスとしてのルールに則ることが重要なのは言うまでもありません。

売掛金の回収と六次産業化

最近、農業の6次産業化が話題になっており、農水省も力を入れて6次産業化の支援を行っています。

農水省のサイト
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika.html

6次産業化に関しては以前も少し書きましたが、早い話農家が生産物を加工販売していくというものです。

前回の記事にも書いたように、私は6次産業化には少し懐疑的な立場です。農家が6次産業化にとりくむ優位性というものがないと成功は難しいと思っています。従来流通や加工業者が行ってきたことを農家が取り組むという存在意義(レゾンデートル)がなければビジネスとして成立し得ないとと思います。

農家がやらなくてもすでに加工流通はなんらかの形で行われているわけです。それを新規にやる以上は、たとえば流通経路を通らないので新鮮なものが販売できる、規格外品の利用ができるなどの特徴がなければ存在意義はありません。どんなビジネスでも存在意義がなければ成立しないのは自明です。

もうひとつ、私が6次産業化における問題として感じているのが農家のビジネス常識の欠落です。
6次産業化を行うと言うことは一般消費者や企業の顧客と取引を行うということです。従来市場出荷や農協出荷してきた農家の場合、取引というものをしたことがないため、一般的な商習慣に関する知識やビジネスの基本が不足しているケースが多々あります。

たとえば、安易に販売先を開拓して、売上が不良債権化しているケースを聞きます。商売をやっていると売掛金の回収をいかに行うかと言うことは基本中の基本です。サラリーマン時代、新入社員研修で一番最初に習ったのは「売上回収の仕方」「倒産しそうな会社の見分け方」です。取引先の信用調査と債権回収は取引にとって最重要課題であり、「代金を回収してはじめて売買契約が成立する」というのはビジネスとしては当たり前です。これができてないと、農家でも売上が不良債権化してしまうわけです。

また、取引だけではなくビジネスとしての取り組み方が間違っているケースも散見されます。たとえば農家レストランなども増えてきていますが、立地条件を考えず、ターゲット顧客を想定できない店の作りになっていたりする例もあります。そもそも大きな投資をするのにもかかわらずろくに事業計画がなかったりすることもあります。

新しい事業をするのでしたら、最初にマーケティングを行い、事業収支をシミュレーションすることは当然だと思いますが、それができてないことが往々にしてよくあるわけです。

商売をやったこと無い人に商売を勧める農水省の施策は少々無謀すぎるのではないかと思う次第です。もしやるのでしたら、まず商売のやり方をレクチャーすることから始めた方がいいのではないでしょうか。もちろん成功している例もたくさんありますが、その影にはたくさんの失敗例があると思います。

もっとも、農水省も商売をしているわけではないのでそういう発想にはなかなか至らないのかもしれませんけど。