廃棄される麺

廃棄物の量

相変わらずせわしない日々を送っています。
忙しい理由の一つに、新規の案件が多いことがあります。当社は一件一件の案件に対しそれぞれ個別対応しているため、新しいお問い合わせごとに電話で聞き取りをしたり、現地に訪問して確認したり‥と言った作業が発生します。多くの案件があると電話やWEBミーティングだけでもかなりの時間が費やされます。

廃棄されるパン

新規案件で電話を頂いた場合、「どんな廃棄物が」「どれぐらい」「どのような状態で」発生するかを確認します。よくあるのが「いっぱい出るんです」というお問い合わせです。これがやっかいで、お客様によって「いっぱい」の幅が非常に広いです。一日100kgでも中小零細企業にとっては大量ではあるのですが、食品リサイクル業界では一日100kgだと量が少ない方に部類されます。逆に、一日数十トンの廃棄物が発生している現場で「いっぱい」があまりに多くて業界人である私も驚くこともあります。今まで訪問した中で一番多かったのは某飲料工場ですが、一日100トン単位でお茶ガラ、コーヒー粕などが発生しているとのことで、量の多さに圧倒されました。

他方、納品する先の畜産農家における使用量の把握が重要です。とくに酪農の場合、エサの配合を細かく設計するために使用量の変動が難しい傾向にあります。また、牛の頭数が変わるとそれに応じて使用量が変動するため、一頭に何キロ給与し今何頭牛がいるのかを聞き取りしておくことはこの業界では重要です。

発生量を細かく確認するのは、エサにした場合いかに発生したものをうまく捌けさせるかが重要だからです。食品工場からは多量の廃棄物が常に発生し、処理する先がなければすぐに滞留してしまいます。発生量が多い場合はとくにいかに安定的に引取できるかが大きなポイントとなります。

小規模な農家

最近、当社は小規模の農家さんとの取引が増えてきました。一日数十kg、数百kgの単位の発生だと業界としては量は少ないですが小規模経営の農家さんにとっては結構大きな効果がある場合もあります。たとえば、一日100kgでも年間では40トン弱であり配合飼料に換算すると数百万円になり、100万円単位のコストが下がる場合もあります。当然ながら家族経営にとって100万円単位のコスト削減は非常に大きく、当社もお客様の経営に寄与できているという実感が得られやりがいにつながります。

当社の経営スタンスは「他の会社がやらないことをやる」です。他の会社が手を出さない小さな案件も少しずつ掘り起こしていて食品メーカー、農家の経営に寄与していきたいと思います。

お客様との関わり方

先日、当社の経営指針発表会を行いました。社員だけではなく銀行などの関係者も参加していただき、現状を報告し、事業の方向性、今後の計画などをお話しました。経営の計画に関し文書を作成し発表することで、会社の進むべき方向が明確化し各々の果たすべき役割がはっきりとします。

その中へで経営理念について、また当社が大事にしていることについてお話しました。

お陰様で最近は売上がかなり増えています。もちろん業界として追い風が吹いていることも大きな要因ではありますが、当社は基本的に「お客様の経営に寄与するような事業を行う」という姿勢で事業に取り組んでいます。食品工場にとって食品廃棄費用は売上に対し大きな割合であり、飼料販売先の畜産農家にとっても売上に対し飼料コストが占める割合は高いです。当社が取引することでお客様の経営をよくすることを目標としています。このような取組の結果、売上向上につながってきたように感じます。

酪農家お客様に納品したビール粕

当社のお手伝いがどれぐらい寄与しているかは明確ではありませんが、当社のお客様の経営状態が業界水準と比べ平均的に良好な状態であるケースが多いように思います。昨今の飼料高の情勢下では当社の取り扱っているエコフィードを高く販売することもできますが、当社では基本的に価格は据置しています。高く販売すると結局お客様の経営が悪化し継続的な取引が難しくなってしまいます。お客様の身になって事業を行こなうことで中長期的な関係性を築くことを重視したビジネスを展開しています。

最近、お客様からお土産をもらったり、食事を御馳走になることがよくあります。お客様から信頼し喜ばれる関係が構築できてきたことが実感できて嬉しく思います。

今は食品廃棄物のリサイクルや飼料の販売だけではなく、お客様の経営のサポート的な仕事が増えてきています。例えば、エコフィードの利用のための設備の導入のお手伝いを行ったり、資金繰りが厳しい農家さんの決算書を分析し経営改善の相談をしたり、金融機関との交渉に同席したりと様々な経営サポートを行っています。技術的にはしっかりしている会社でも、財務や金融機関との交渉が得意でないケースは多くあります。先日も養豚農家さんが「豚を飼う技術よりも資金調達を行う能力や飼料購買の交渉技術のほうが経営的には重要だったりする」と話していました。せっかく高い技術を持ちながら資金調達が苦手なため経営が悪化しているのはもったいない話だと思います。農業振興のために技術分野のみならず経営的な立場からもお手伝いすることが当社のミッションではないかと思っています。


これからもお客様の経営のサポートを行っていくことでさらによりよい関係性を構築していきたいと思っています。結果としてお土産いただければ望外の喜びです(取引先各位<土産を要求しているわけではありませんw)

豚を飼う理由

忙しさにかまけてブログ更新できずはや数ヶ月経ってしまいました。今年も残りあとわずかとなりました。今年はお陰様で本業の食品リサイクルの仕事は増えておりまずまず順調でした。養豚事業も豚を飼ってはや4年、なんとかそれなりに安定した成績をだすことができ、出荷も順調、肉質も安定してきました。

改めてなぜ当社が豚を飼うようになったか、あらためて触れてみたいと思います。

当社はもともと食品廃棄物から肥料をつくることを目的として創業しました。しかし、創業後なかなか事業が軌道に乗らず、廃業の一歩手前まで行きました。その時、たまたま縁あってお伺いした養豚農家から「おまえ、肥料なんか作らずエサつくって俺に売れ」って言われたのが飼料製造することになったきっかけです。

その後、また縁あって地元の農協が中心となって行われたエコフィードの実証試験事業に参画することになりました。愛知県の試験場で試験を行ったのですが、エサを変えるとおどろくほど豚の状態や肉質が変わることに感心して、「養豚っておもしろい」と思ったのが豚を飼ってみたいと思うようになったきっかけです。それから10年ほど経過して実際に豚を飼うようになるとは当時は全く思っていませんでしたが。

もう一つ、豚を飼おうと思ったのはエサを扱かうようになって養豚農家に説明をするようになった時、いろいろ解説したところ「高橋くん、説明はわかったけど豚飼ったことないじゃん」と言われたこともきっかけです。そうか、豚を飼わないとわからないことが多いから豚飼ってみようと安直に思った次第です。もともと動物は好きな方ですが、大学も農学部農学科で植物や微生物相手の仕事をしてきて豚を飼うノウハウもろくにもたずよくいきなり養豚を始めたものだと我ながら思います。

飼料として利用されるパン

そういったきっかけはあるものの、現在、以下のような目的を持って豚を飼っています

・食品残さで美味しい豚が育つことの証明

 食品残さを使った養豚は以前より行われていますが、食品残さの種類によっては肉質が悪くなったり、大きくならなかったりします。食品廃棄物がこれだけたくさん発生しているのにもかかわらず、食品残さを使っている養豚場は一部にとどまっている大きな理由の一つに肉質の問題があります。
しかし、適切な原料を選択し、きちんと計算して給与すれば配合飼料と遜色ない肉質とすることもできます。また、配合飼料では価格やハンドリングで使用が難しい原料もあり、その中には肉質によいものもたくさんあります。例えば茹でうどんはとても良好な原料ですが、配合飼料には使用することが難しいです。こういった原料を使用することで、特徴のある高い品質の豚肉生産が可能となります。当社も紆余曲折がありましたが現在は肉の品質を高いレベルで維持できています。

・ちゃんと大きくなることの証明

食品残さが使われなくなったもう一つの理由として、農場成績の低下(成長の低下)があります。今の豚は成長が早く、半年で出荷されます。半年で出荷するためには栄養バランスをきちんと整えて給与することが必要となります。逆に言えば、きちんと設計さえすれば決して成長が悪くなることはなく、むしろ嗜好性や消化率が良いことから成長が良くなるケースも多々あります。

・飼料製造や給与方法のノウハウ蓄積

食品残さが使われない理由には、ハンドリングの問題もあります。スイッチひとつで給与できる配合飼料とは異なり、飼料の給与するためにはさまざまな工夫、装置が必要となります。原料の種類に応じて適切な設備を導入して給与するためのノウハウを蓄積することも自社で養豚を行う目的の一つです。これまでの経験を元に、最近はいろいろな養豚農家で飼料利用のお手伝いをできるようになってきました。

自社で養豚を行うことで、「エコフィードの良さを証明する」ことは少しずつできてきたように思います。これからのステップとして、このエコフィードの良さを全国に広めていきたい、さらには世界に普及させていきたいという大きな野望があります。今は自社の養豚での実績を元に、さまざまな農家のエコフィード利用のアドバイスをすることができるようになってきました。これをもっと広げていきたいと思っています。

当社養豚場「リンネファーム」

これまで、日本の畜産は輸入飼料に依存して発達してきました。これまでの社会の時流にのったものだったかと思いますが、世界的な人口増加を背景とした資源の逼迫により従来のモデルの継続が難しくなってきています。資源が不足する時代において、リサイクルは避けられない選択肢になるでしょう。
当社が行っている養豚は非常に小さな規模ではありますが、このような時代において、畜産業界の新しい方向性を示す道標になり、日本の畜産の存在意義の向上に貢献したい、そんな大きな夢があります。国内で資源循環することで海外の影響をうけず、そして日本にしかない美味しい畜産物ができる、そんなことが目標です。当社の小さな取り組みがどんどん広がり、大きな社会変革に繋がったら‥そんなことを考えながらエコフィードからエサを作り、豚にやっています。

少子化と経済成長

最近会うかたから「ブログ楽しみにしています」と言われることがよくあります。なかなか更新できず申し訳なく思います。

最近も書類作成と新規案件の対応に追われており多忙な日々を過ごしています。忙しい理由の一つに採用活動もあります。中小零細企業では社長自らが採用活動に携わるため、どうしも負担が大きくなります。当社が新卒採用するようになってから6年ほど経過しました。当初は採用活動のやり方もよくわからない状態からのスタートでしたが、現在は毎年優秀な新入社員が入社してくれるようになりました。来年も3名の新卒者が入社予定です。

新卒採用に取り組む理由の一つに、少子化の進行があります。私は昭和48年生まれで第二次ベビーブーム世代で出生数が211万人ですが、昨年の出生数は81万人しかありません。生産年齢人口の急激な減少は間違いなく人手不足に繋がります。また、昨今の円安で外国人労働者の採用が難しくなっています。現在300万人近くの外国人がいるわけですが、当然ながら円安になると相対的な賃金が減少し、日本で働くメリットが少なくなります。以前は技能実習生は中国人が多かったですが、相対的な賃金メリットが少なくなったため現在はベトナムやミャンマーの方が多くなっています。しかし、そういった賃金が低い国の人も日本以外で働く選択肢もある以上、いつまでも人材確保できるかは微妙です。このままいくと「人手が足りなく仕事ができない」という会社が続出するものと思います。

総務省ホームページより

他方、現在の消費低迷の原因の一つとして生産年齢人口の減少があります。以前、経済セミナーで日本の高度経済成長の要因として、急激な生産年齢人口の増加(=人口ボーナス)が大きな要因であるという話を聞き衝撃を受けました。急激な若年層の増加は消費の増加に繋がり、経済成長をもたらします。逆に言うと、人口増加だけで経済成長してきた社会は人口減少時代では成長しないということになります。実際、生産年齢人口の推移を見ると、日本の経済成長とよく合致していることがわかります。そして、生産年齢人口が減りだした96年が一つのターニングポイントとして、「失われた20年」(30年になりそうですが)が始まっているわけです。

今の経済の低迷は、生産年齢人口が急激に減少しているのにもかかわらず生産年齢人口が増加した高度経済成長時代のやり方をつづけているからではないかと思います。消費する人が減っているのに金融緩和をして資金を供給しても消費が増えるはずはありません。金融緩和により円安になることで企業収益は見かけ上向上しますが、それは未来の借金でドーピングされた収益であり問題の先送りしているに過ぎません。安倍元首相が殺害され、アベノミクスの功罪が改めて総括されていますが、アベノミクスの大きな問題は金融政策に依存し少子化という最も根本的な部分に手がつけられていないという点ではないかと思います。つまり、金融緩和により円安になりグローバル企業中心に企業業績は改善していますが、人口減少でマーケットが縮小する日本には投資が行われず、円安によりドルベースの実質賃金が低下し高齢者人口の増加により社会保険料の負担が増加することでも実質賃金が低下した‥これがこの10年ではないかと思います。
他方、日本の生産性の低さが問題視されていますが、これも為替(と購買力平価)、生産年齢人口の減少が大きな要因であり、生産年齢人口減少を加味すると決して悪い状態ではないという意見もあります。→みずほ総研のレポート
いずれにせよ早晩たちいかなくなる社会保障制度をどうしていくか、所得格差の拡大をどうしていうかを道筋つけなれば少子化に歯止めはかからないでしょう。

中小企業ができることは限られていますが、「人がいない」時代にどう事業を行っていくか難しい舵取りをすることが求められています。当社も若い人材とともにこれからの難局を立ち向かっていきたいと思います。

リキッドフィードの欠点

更新が滞っているうちに、すっかり春が過ぎ初夏になってしまいました。

例年、6月~8月ぐらいは豚肉の市場価格が高くなります。価格が上がるのには養豚生産の季節サイクルが影響しています。
豚は生後半年で出荷され、妊娠期間は4ヶ月弱です。逆算するといま出荷されている豚は1月生まれ、前年の9月頃種付けとなります。夏場は暑さのため母豚のコンディションが悪化し、繁殖成績が悪化します。逆に1月は寒いため、生まれた仔豚が調子を崩しやすくなります。そして、出荷時期は暑いためエサの食下量が低下し、大きくなりにくくなります。それに加え、夏に向けて豚肉需要は旺盛であるため、市場価格が上がります。

今年は特に全国的に6月下旬が猛暑であったため豚のコンディションが悪化しており記録的に出荷が減っています。そのため、豚肉の価格が例年以上に上がっています。

そんな中、当社の関連会社「リンネファーム」の豚「雪乃醸」は順調な出荷を維持できています。出荷頭数が多く相場がいいため、市場からの清算金額を見ると少し驚くほどです。

出荷が順調なのは飼料の嗜好性が安定していることが理由の一つです。雪乃醸はリキッドフィードと呼ばれる液状(おかゆ状)の飼料を給与しています。液状であるため、夏場などでも比較的食下量が落ちにくい傾向にあります。人間も暑いときは水っぽいものが食べたくなるように、豚も暑いときには粉のエサより液体のエサのほうを好みます。

夏場でも嗜好性が安定していることはリキッドフィードのメリットですが、最大のメリットは、様々な食品残さを使用することが容易であるということです。食品残さは高水分のものが多く、乾燥処理にはコストがかかります。液状のまま給与できるのは大きなメリットです。

一方、リキッドフィードにもデメリットはあります。夏場の嗜好性が改善することもある一方、液状であるが故に異常発酵しやすい欠点があります。特に、原料に糖が多い場合や、原料にパン生地や酒粕などの酵母を含むものを使用すると酵母発酵が進み、あふれる事故が起きたり、嗜好性が低下する傾向があります。特に、春と秋は気温が酵母の発酵に適した温度となることもあり、発酵が起きやすい傾向にあります。
この欠点を防ぐためには加熱殺菌が有効です。当社ではリキッドフィードを65℃30分間加熱殺菌しています。現在、肉を含む食品残さを飼料に用いる場合、感染症予防のために90℃1時間の加熱が義務付けられています。しかし、当社では肉を含む原料を用いていないため加熱殺菌は本来不要です。しかし、嗜好性の安定のために加熱殺菌を行っています。もちろん、殺菌温度が高いほうが殺菌は確実に行われますが、加熱に必要なエネルギー使用量が増えたり、粘性が上がる欠点があります。バランスを取って65度で加熱殺菌を行っています。
リキッドフィードには他にもいくつか欠点があります。大きな欠点として、尿量が増えることがあります。尿量が増えると排水処理の管理が大変になったり、堆肥の発酵がうまくいかなくなります。尿量が増えるのは飼料の水分含量が多い分水分摂取量が増えることもありますが、一般的に人間の食べ物は塩分(ナトリウム)が多いことが多く、また野菜などに由来するカリウム含量も多いため尿量が増えます。
また、リキッドフィードは酸性であるため、コンクリートや鉄が腐食することも大きな欠点です。コンクリートは酸性に弱く、コンクリートでできたスノコは防食塗装など行っていないと数年でぼろぼろになります。

ときどき、リキッドフィードは水分をたくさん取るので肉が水っぽくなるという人がいますが、これが技術的には誤っています。リキッドフィードの場合食品残さを使用することが多いですが、大豆油などの油脂を多く含む原料を使用すると豚肉の脂の質が変わり、脂の融点が下がることで「水っぽい」豚肉となってしまいます。逆に言うと、適切な原料を選択すればリキッドフィードも配合飼料も肉質に差は出ません。

このようにメリットとデメリットがありますが、繰り返しになりますがリキッドフィードの最大のメリットは多様な食品残さを使用することが容易である点です。現在、輸入穀物で作られている配合飼料の価格が非常に高騰しています。こんな中、リキッドフィードにより食品残さをうまく利用し飼料価格を抑制することは経営的に大きなメリットがあることは言うまでもありません。また、限りある資源を有効に活用することで、存在意義を確立し地域との共生を図ることができます。今後、社会要請に応える畜産や農業がより一層求められる時代になっていくことと思います。リキッドフィードはそういう時代に合った手法の一つであるかと思います。

再生可能エネルギーの課題

最近、さまざまな資源が高騰をしています。当社が取り扱っている食品、飼料も大変な水準になっています。また、当社もエネルギー価格の上昇にも大きな影響を受けています。そんな中、再生可能エネルギーに注目が集まっています。

当社は直接的には再生可能エネルギーに関する業務を行っていませんが、再生可能エネルギーに関する業務を行っている事業者との取引も多く、再生可能エネルギーに関する知識もついてきました。
農業では太陽光発電の親和性が高く、営農型太陽光発電という制度があります。これは農地で耕作を行いながら発電をするというものです。また、当社が取り組んでいる食品リサイクルの分野では、バイオガス発電が増えています。これは食品廃棄物をメタン発酵させ、発生したメタンガスで発電を行うというものです。
また、バイオマス発電の事業者とも取り組みを行っています。バイオマス発電は木くずなどを燃料としてボイラーで利用し、発電するというものです。

このように再生可能エネルギーは徐々に普及が進んでいますが、その大きな背景として再生エネルギー固定買取制度があります。再生可能エネルギーを利用して発電した電力を一定価格で20年にわたり買取を行うという制度です。この制度は買取価格にインセンティブをつけることで再生エネルギーの普及を促進するという制度であり、その財源は電力料金に付加することで捻出されています。

電気料金の明細を見ると、「再生エネルギー賦課金」という名目で費用が計上されています。このお金をプールしたものが再生エネルギーで発電した電気を買い取る原資となっているわけです。現在は3.45円/kwとなり、通常支払っている電気代の1割程度を占めています。毎月1万円電気代払うと1000円程度の負担になります。このあたり、詳しい制度設計は経済産業省のサイトをご覧下さい。

もともと、この固定買取制度の目的として、再生エネルギーという事業に対し国が20年間価格を保証することで事業の参入を促し再生エネルギーの普及をすすめるというものです。発電の種類によって買取価格が決められており、その価格は毎年見直しされています。太陽光発電ではパネルの値下がりにより10年前の半額以下の価格となっています。
しかし、これまではこの固定買取制度の設定金額が高いため、再生可能エネルギーの発電事業はかなり利益率がよいビジネスとなっていました。例えば太陽光発電では一時期は投資利回り10%以上も可能でした。つまり、1000万円投資して20年間で2000万円以上になります。それで山を切り開いて太陽光パネルを並べるような現場が増えている訳です。その原資はすべて我々の電気代になります。私は山を埋め尽くした太陽光パネルを見るにつけ、本当にこの再生エネルギーの買取価格が妥当なのか疑問に思います。

再生可能エネルギーの買取価格は4兆円程度となり、通常の発電に比べて割高となっている分の3兆円弱が電気料金に上乗せされ全国民の負担となっています。その制度の是非はともかくとして、発電事業に関わっている人以外はほとんどこの制度でお金を負担していることを知らないことは大きな問題だと思います。私は周りの人に「電気料金に上乗せされているのを知っているか」と尋ねるようにしていますが、たいていの人はこの制度を知らずお金を払っていることすら知りません。

これから資源価格が高止まりして再生エネルギーの重要性がますます増しますが、発電のコストが高額な発電が本当に環境負荷が低いのか、個人的には疑問です。LCA(ライフサイクルアセスメント)の算出を行い環境負荷を把握すべきですが、基本的にはコスト≒エネルギーなので本来環境に対し優しいものはコストも低いはずです。そう言う意味で、発電単価が下がって火力発電よりコストが低い今の太陽光発電は環境負荷が低い発電であると言えます。太陽光発電の場合、固定買取価格が下がったため、通常の火力発電よりコストが低くなっています。現在は電気代が高騰しており、太陽光発電は売電するよりも自家消費するほうがお得になってきています。これが本来の姿では無いかと思います。
逆に、いつまでも発電単価が下がらない発電を国民負担により支援し続ける意味があるのか、検討をすべきではないでしょうか。

環境問題に対してどう向き合って政策決定していくかは将来の日本に対し大きな影響を与えますが、世間一般の関心が薄いことに危惧の念を抱きます。環境問題は地球環境のためでもありますが、日々の生活にも関係していることでもあります。毎日の財布とも密接関係する身近な問題として向き合っていくべきでは無いでしょうか。

畑

有機肥料の可能性

資源価格の上昇や食料の需要の高まりに伴い肥料の価格が上がっています。国内の農産物価格は低迷しており、農業の生産現場は厳しい状況に置かれています。
化学肥料の値上がり当面続くか、国際的な需要高で 農家がとれる対策は?

ただ、肥料の原料であるリンとカリは天然鉱物でありその逼迫は数十年前から言われてきたことです。私は20年ほど前のサラリーマン時代に水処理の会社で研究開発に携わっていましたが、その当時からリンの枯渇と排水中に含まれるリンの回収の必要性が叫ばれていました。人口増加と食料生産の増加のトレンドは継続しており、需給のバランスが崩れるのは想定されてきたことなので、厳しい言い方かもしれませんが今になって肥料価格の上昇や肥料原料の逼迫に右往左往するのは先見性に欠けるように感じます。

このような状況のもと、有機肥料に対する注目が上がっています。日本はたくさんの食品、飼料を輸入しています。輸入されている食品や飼料に含まれている窒素、リン、カリの量は非常に多く、元素の物質収支で言うと国内で肥料として必要とされる量を超えています。つまり、理論的には日本は1kgも肥料を輸入しなくても国内の農業で必要な量を確保することができるということです。
逆に言うと、国内の循環資源で賄えるはずの肥料を輸入しているため窒素、リン、カリなどが国内で過剰となり環境負荷を引き起こしているとも言えます。

では、有機肥料をどんどん使用できるかというと簡単な話ではありません。一番の課題はどうやって散布するということです。
有機肥料は化成肥料とくらべ散布量が多くなります。まず、肥料の有効成分の量が大きくことなるため、散布量が多くなります。また化成肥料は粒状になっているものがほとんどで機械散布が容易にできますが、有機肥料は水分を含んでいたり固まり状になっているため、散布に手間がかかるものがほとんどです。たとえば、堆肥はマニアスプレッダーという機械がないと機械散布は難しいです。農業現場は人手不足が著しく、手間が増える有機肥料は敬遠されがちです。

マニアスプレッダ-(デリカ社ホームページより)

また、有機肥料はその名前の通り有機物を含んでいます。有機物が分解することで肥料として効果を発揮するため、肥料の効果がでるまでに時間がかかります。またいつどれぐらい肥料が効果がでるかが気候や土壌などの条件によって変わるため、経験が無いと予測しにくいという欠点もあります。

しかし、有機肥料をうまく使うと化成肥料だけより間違いなく収量が増えます。私は自分の出身大学で行われている肥料の試験のサポートをさせていただいており、毎年試験圃場の収量調査に参加しています。試験結果を見ると、有機肥料を使う方が顕著に収量が増加します。


これは、有機肥料には微量要素や有機炭素が含まれているため、土壌の改良や微量要素の補給効果などにより収量が増えます。また適切な使用により病害虫も減少する傾向を感じます。有機肥料の効果は非常に高いものがあります。
一方、肥料の価格を考えると実は有機肥料はそれほど安価なものではありません。たとえば一般的にホームセンターなどで安価に販売されている鶏糞も有効成分あたりで計算すると化成肥料とそれほど遜色ない価格となってしまいます。これは、有機肥料の方が有効成分含量が低く、実際に効果を発揮する肥料分が少ないため割高になるためです。
鶏糞の場合、通常は窒素が3%程度含まれています。このうち、実際に植物が利用できるのは半分程度ですので、実際は1.5%程度が有効な窒素成分と言うことになり、窒素15%の化成肥料の1/10となります。つまり、鶏糞は化成肥料の1/10の価格でないとコスト削減することができないということになります。ものの値段が安くなると相対的に運賃や容器代コストの比率が高くなり、コストの低減が難しくなります。

これからの時代、資源が安くなる要素はほぼありません。世界人口増加による食料生産の増加に伴い、肥料の使用量も確実に増加していきます。確かに有機肥料を使えない理由はたくさんありますが、できない理由を挙げるよりどうしたら使えるようになるかを考える姿勢が重要だと思います。当社は「資源循環により持続可能な社会実現に貢献する」ことを経営理念に掲げています。これからも微力ながら資源循環のお手伝いをしていきたいと思います。

ベンチャー企業の存続

早いもので2021年も終わろうとしています。年を取ったせいか毎年一年が過ぎるのがどんどん早くなっている気がします。

当社は12月末が決算で、無事17期を終えることができました。未熟な経営者にも関わらず継続できたのはひとえにお取引先やスタッフ、その他関係各位のおかげかと思います。事業を始めたときは本当によちよち歩きだったのですが、いつの間にか17年継続することができました。この頃、「長く続いているんですね」と言われることがあり改めて継続してきたことを認識した次第です。

一般的には新規創業しても事業継続することができず廃業する割合が高いと言われています。まわりの創業した例を見ていると、廃業しているのはいくつかのパターンがあるような気がします。

・経営に対して真摯に取り組んでいない

・市場性を無視した事業分野への参入

・野放図な投資

などにより事業継続できていないケースがよく見られます。

低成長でかつ高度化した現代社会において、新たなマーケットは少なく、ブルーオーシャンはすぐ新規参入者で埋め尽くされてレッドオーシャン化します。既存業者との競争に勝つためには伸びゆくマーケットをターゲットとし、適切に攻めることができなければ既存業者との競合に勝てず事業継続が難しくなっているのかと思います。
世界人口の増加と経済水準の向上により、食料の需給は間違いなく厳しくなります。当社がいままで継続できたのは当社の事業領域が食品リサイクルという伸びゆく分野であり、なおかつ既存業者の技術水準が低く、相対的に当社の技術が強みとして明確化でいたことがあるかと思います。

ビジネスをするにおいて重要なのが顧客ニーズであることは言うまでもありません。ニーズがある分野で事業を行うことが、事業の存在意義につながり事業の継続発展に結びつきます。
当社はこれからも食品リサイクルという分野で事業を行うことで、社会的ニーズに応えていきたいと思います。来年もよろしくお願いします。

堆肥の発酵促進

今年は夏過ぎてから新規案件などで大変忙しく、ブログの更新もすっかり怠っていました。
気づくとすっかり秋も深まってきています。

気温の低下に伴い、堆肥の発酵が悪くなる時期が来ました。食品残さのリサイクル方法は様々なものがありますが、そのうちの一つが堆肥によるリサイクルで飼料化が増えてきてはいますが堆肥によるリサイクルも重要な手法です。
また、家畜の糞尿はそのほとんどが堆肥としてリサイクルが行われています。

 

堆肥は微生物反応なので、外気温が低下すると反応が悪くなります。加えて微生物の呼吸により温度が上がりますので、いっそう堆肥の温度低下が発生します。
当社はエコフィードを取り扱っていますが、堆肥発酵不良の原因の一つとしてエコフィードの利用があります。エコフィードを使用すると家畜糞尿の発酵が悪くなるケースがあります。エコフィードは食品用に加工されたものが原料となりますので、消化吸収がよく粒径が細かいものが多いです。繊維分が少なく消化吸収が良いため、糞尿に混ざる有機物量が減少し、結果として糞のカロリーが下がります。たとえば、豚の場合一般的なトウモロコシ粉砕の飼料を使用した場合、糞をしらべるとトウモロコシの種子の外皮がかなり含まれていますが、エコフィードではそういった部分が含まれなくなります。カロリーが減少するだけでは無く、粒子が細かくなることで糞尿の分離が悪くなって糞の水分が増えることも堆肥発酵には悪影響があります。

そういった堆肥の発酵が悪くなる条件でもカロリー源であるものを添加することで堆肥発酵がすすみます。一般的にはよく白土が使われています。白土とは油脂を精製するときにろ過に使用する珪藻土の残さであり、油脂と珪藻土の混合物です。カロリーが高く発酵促進には有用ですが、固形分が多く堆肥の量が増えてしまうこと、自然発火する事故が多く危険性があることが欠点です。
食品残さの中には高カロリーでハンドリングが良いものがいろいろあります。たとえば当社ではチョコレートのリサイクルを行っています。チョコレートは非常に高カロリーであり、堆肥に入れることとでカロリーが上がり温度が上昇します。基本的に油脂類はカロリーが高いため堆肥の発酵促進に有用ですが、ハンドリングが悪いものが多いためハンドリングがよいチョコレートはよい原料です。
また、製粉工場から発生するダストも取り扱っています。小麦を選別したときに発生するもので小麦、トウモロコシなどの穀物とその破片が混合したもので、こういったものを混合することで通気性が改善され堆肥の発酵が進行します。

 
様々な食品廃棄物を最適な用途に仕向けていく作業はパズルをうまくはめていくようなおもしろさがあります。
適材適所のリサイクルをこれからも進めていきたいと思います。

 

理系人間

雨が続いていますが、豊川は先日より大雨が続いて全国ニュースになったりしました。気候変動が大きくなっているような実感があります。

会社の前の1号線も浸水

基本的に豊川がある東三河地方は冬は温暖で夏は名古屋などに比べると最高気温がそれほどまでに高くなく比較的過ごしやすい地域です。夏場は最高気温が名古屋より3℃ぐらい低い傾向にあります。名古屋が過酷すぎるという説もありますが‥(笑)

と言っても夏場の降水量は多く、じめじめした暑さなのは名古屋と一緒です。学生の頃はエアコンなしでがんばっていましたが、昨今はエアコンなしでは暮らせない体になっています。

エアコンを使ってるときに気になることがあります。時々、部屋が暑いときに早く冷やしたいからかエアコンの設定温度を低くする人がいます。意味が無い行為なので、理系人間的にはとても気になります。

たとえば、設定温度25℃、室温30℃だった場合、エアコンは出力全開になります。徐々に温度が下がってきて25℃に近づいてくると、エアコンは出力を落とします。今のエアコンはインバータ制御をしているので無段階で出力調整ができますので、最初は少し出力を絞り、徐々に出力を落として25℃に近づけていきます。
ここで設定温度を22℃にしたらはやく25℃まで到達するか‥と言うと出力の全開値は一緒なので当初の温度の下がり方は同じになります。厳密にいうと25℃近辺で出力を落とすので、25℃まで到達する時間は若干遅くなりますが25℃近傍まで下がる速さは変わりません。
昨今のエアコンは制御が緻密になっておりセンシング技術も優れているので、温度計を設置すると設定温度に近い値に収束することがよくわかります。逆に、断熱が悪いなどの理由でエアコンの出力全開にしても追いつかない場合、いくら温度設定を下げても温度が下がるわけではありません。

そう言う理屈を考えずに「暑いから温度設定を下げる」という行為には理系人間的にいらだちを覚えます(^^)
何事も理屈でごりごり押すので世間から疎まれることもままありますが、これまでの理系人間的生き様をこれからも貫徹していきたいと思っていますので、生暖かい目で見守りください(笑)