リキッドフィードの保存性から見た浅漬けの危険性

出張で山梨に向かっています。身延線の初めて乗りましたがスピードが遅い・・。山梨で大して滞在時間がないのですが、今日は丸1日つぶれてしまいます。

 

リキッドフィードを扱っているとよく、「製造したエサはどれくらい日持ちするのですか?」という質問を受けます。実際に試験をしてみると、25℃ぐらいの一番厳しい条件でも一ヶ月以上問題がないという結果が出ています。

試験する際には一般細菌数、大腸菌群数、サルモネラ菌数を測定します。場合によっては乳酸菌数や酵母数、カビ数も測定します。一般細菌数には乳酸菌数も含まれます。食品の場合は酸敗は問題になることが多いので、一般細菌数(含む乳酸菌数)が増加するのは嫌われますが、リキッドフィードは乳酸発酵させていますので、一般細菌数は問題にしません。問題になるのは大腸菌群数とサルモネラ菌数です。もちろん、腐敗原因になる菌はほかにもいろいろありますが、大腸菌群数を指標にすることができます。

大腸菌群を抑制するために、リキッドフィードではpHのコントロールを行います。pHを4.0程度より低くすることにより常温でも大腸菌群を抑制することができます。リキッドフィードはエサなので当然デンプンや糖、タンパク質が多く含まれており、そのままでは菌の培地状態になってしまいますが、pHをコントロールすることにより腐敗を防止することができます。

当社ではリキッドフィードを製造する際にはギ酸を添加します。ギ酸は決して安いものではなく、危険な薬品でもあるのですが、製品の品質を保持するためには無くてならないものです。ギ酸を添加してpHが3.8より低くなるように管理しています。
 

昨年末、浅漬けで食中毒が発生して死者が出るという事件がありました。上記のような試験結果を見ると、浅漬けというのはとても危険であると思います。浅漬けは漬物のように見えますが、実際は乳酸発酵させているわけではなく、生野菜を調味液に漬け込んでいるに過ぎません。塩分濃度もそれほど高いわけではなく、pHも5.0ぐらいあります。アミノ酸や糖も入った調味液は培養液のようなものです。野菜を次亜塩素酸ナトリウムで消毒していますが、でこぼこや切り口のある野菜は次亜塩素酸ナトリウムぐらいでは完全に滅菌できません。腸管出血性大腸菌などでは非常に少量の菌数でも発症してしまうので、とても危険です。
本当はこういう危険性の高い食品は保存料などの添加物を使った方が安全だと思いますが、昨今の低添加志向では添加物は嫌われますので、無添加のものが増えています。

昔は漬物というとしっかりと漬け込んで乳酸菌発酵した酸っぱいものが当たり前だったのでしょうが、最近の消費者の嗜好がこういった危険性を産んでいるとも言えると思います。

飼料や微生物を取り扱っていると、通常食べているものでも結構危ないなと思うことがよくあります。逆に、食品メーカーの人や飲食店の人も微生物学的な知識があればもっと食品の安全性って担保されるのではないかなと思う今日この頃です。

ギ酸による酵母発酵の抑制

当社ではリキッドフィーディングという液状のエサを扱っています。液状飼料はさまざまなメリットがありますが、欠点もあります。あまり知られていないのですが、実は酵母発酵しやすいというのも欠点の1つです。

そもそも酵母とはなんでしょうか。ウィキペディアによると、真核微生物で細胞壁を持ち、出芽によって増えるものをさす、とあります。単細胞の真菌であり、アルコール発酵を行う種類が含まれています。

酵母は好気的な環境では通常の呼吸を行いますが、嫌気的な環境では糖を基質としてアルコール発酵を行います。この際、二酸化炭素を放出します。パンが膨らむのはこの二酸化炭素の作用です。酵母は糖は資化できますが、デンプンなどの多糖類は資化できません。このため、日本酒では最初に麹をつかい米のデンプンを糖化させ、それから酵母発酵を行います。ビールでは麦芽の糖化酵素を使い、デンプンを糖化させ酵母発酵を行います。

当社の製造しているリキッドフィードは原料に糖質がたくさん含まれています。シロップや砂糖など糖のそのものも多く含まれています。また、ジャガイモの皮も原料として利用しており、ハンドリングを良くするため糖化酵素を利用してデンプンを分解しています。

さらにリキッドフィードは保存性をよくするために、酸素の入らないように密閉状態で保管します。このように条件が揃っているため、リキッドフィードではかなり酵母発酵が発生しやすい状態にあります。

酵母発酵が起こると、含まれている糖がアルコールと二酸化炭素に変化します。つまり、有機物の一部が二酸化炭素として放出されてしまい、エネルギーのロスが発生します。その量はすさまじく、固形分の10%以上がロスすることもあります。

もう一つの重大な問題は発泡です。二酸化炭素の放出により発泡がおき、タンクなどからのあふれが発生しやすくなります。あふれるだけならいいのですが、発酵によりガスが発生し圧力が高まったため、当社ではタンクを何個か壊しています。

当社ではリキッドフィードにギ酸を添加しています。これはpHを低下させることにより保存性を向上させることが第一の目的ですが、ギ酸を添加することにより酵母発酵を抑制することができます。ギ酸には静菌作用があるため、酵母やカビの増殖を抑制することができるわけです。この前文献を見ていて知ったのですが、同じpHであっても有機酸の種類によりかなり静菌作用に差が出ます。酢酸やクエン酸では代わりにならないのです。

しかし、微生物というのはコントロールが本当に難しいです。エサを作るときも、杜氏になった気分で仕事していますw

含水率のワナ

忙しさにかまけてすっかり更新を怠っています。反省です。

最近、野菜のリサイクルの話をよく頂きます。この仕事を始めてから知ったのですが、世の中にはカット野菜工場というものがたくさんあり、そこから野菜の切れ端がたくさん廃棄されています。

ご存じのように、野菜というものは水分が多いです。キャベツなどの野菜では90%以上水分です。
しかし、水分というものはくせもので、見た目では水分量がわからないです。

キャベツは92%ぐらい水分です。ということは、固形分が8%ぐらいしかないわけです。固形分が8%だと完全に液体になるものもあります。りんごジュースは固形分が10%以上ありますが、液体です。液体になるかどうかは水分量だけではなく、組織がしっかりしているなど分子構造が強固であったり、溶解度が低かったりすると固体になります。
キャベツもジューサーなどで完全に粉砕するとスラリーになるのは水分が多い証左です。

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野菜の粉砕作業

例えば、こんにゃく。こんにゃくは水分が97%もありますが、あれだけの機械強度があります。当社では寒天ゼリーを飼料原料として扱っていますが、こちらは逆に固形分が90%もあります。これが増粘多糖類を使ったゼリーですと固形分が15%ぐらいしかないこともあります。

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甘酒

甘酒も飼料原料として取り扱っていますが、こちらは固形分が60%ぐらいありますが、スラリー状です。これは、甘酒の主成分がブドウ糖であり、溶解度が高いからです。

飼料の価値は固形分の量で大きく変わります。見た目で判断できないところが難しい部分です。様々な原料をうまく調合して狙いの含水率にするのが当社の腕の見せ所です。

エコフィードに関する連載(2回目)

このところ忙しい状態がひどくなっており、にっちもさっちもいかない感じです。
たまっている書類、案件を考えると気が重いです・・。

そんな中、中央畜産会発行の畜産経営情報に連載しているエコフィードに関する記事2回目が掲載されました。
 

 

2回目が掲載されたと思ったら3回目の締め切りが近づいていて、かなり焦っております。

連載は大変です。

養豚農家と経営方針

以前も書きましたが、一昨年より愛知中小企業家同友会という中小企業の経営者の集まりに入っています。

この会では経営指針を重視しており、そういったものを作成する講座があったりします。また、経営者と使用者という対峙する関係ではなく、従業員と共に育つ会社を目指すことを基本としています。

サラリーマン時代の経験から、経営指針の重要性については感じていましたので、そういう方針に共感を覚え入会した次第です。
やはり、経営者が目指すべき方針をしっかり打ち立てなければ従業員は不安になってしまいますし、自分が行っている仕事の意味が理解できなくなります。仕事の意義が感じられることが何よりも高い仕事に対するモチベーションになると思います。

また、会では経営指針の1つとして経営理念、経営戦略も位置づけられています。自社の強みを十分に把握し、次なる戦略を構築することが経営者には求められています。

養豚農家さんとお話ししていて思うのが、農業であってもこういった経営に対する取り組みが必要であると言うことです。養豚農家は特にこの経営指針が重要であるように感じます。

養豚は外部へ支払うお金が多く、付加価値率が非常に低い農業です。また、一般的には販売価格は安いのですが、逆に言うと販売手法によっては通常の価格と大きな差額で販売ができるポテンシャルを秘めています。

飼料も配合飼料を選択すればあまり差はありませんが、当社の取り扱うようなエコフィードの場合、選択によって肉質や成長に大きな差が出ますし、当然価格にもかなりの幅があります。
農場の施設に対する投資も大きく、また投資の多寡は農場の成績に大きな影響を与えます。

このように、パラメーターが大きく投資が多く、なおかつ付加価値率が低い場合、農業の技術だけではなく経営の手腕が問われます。利益が出たときに適切な投資を怠ると農場の成績に影響しますし、無用に投資をすると短期間に経営に対する影響を与えます。経営者はどれぐらいの投資をし、どういった農場にしていくかという方針をきちんと打ち立てることが必要です。

また、特にエサは短期間に影響が出ます。コストだけを重視すると1月で肉質が悪くなってしまいます。一度評判を落とすとそれを取り返すのは大変です。
どれくらいのコストをかけ、どれくらいの肉質を求めるのか、それをきちんと方針として決めておくことがとても重要です。たまに、「とにかく低コストで、でもブランド豚を作りたい」と言われる方が見えますが、それは相反する要求で実現は厳しいです。とにかく安いエサでそれなりの豚肉を作るのか、それとも肉質を求めるのかめざすものをしっかりと決めることがとても重要です。

昔の農家はよい農産物さえ作ればよかったのですが、良くも悪くも今の農家は経営者としての資質が求められる時代になってきている、そんな気がします。

 

忙しい日々

1月は本当に忙しくてブログの更新もままなりませんでした。ちょっと疲れ気味です。

忙しかった理由の1つとして、業界団体である中央畜産会の発行している雑誌に寄稿する原稿を作成していた・・というのもあります。

こちらにアップされています。

エコフィードについての連載です。

これ、恐ろしいことに6回連載なのであと5回原稿を作らなければいけません。

しばらくは忙しい日々が続きそうです。

ドラえもんとエネルギー代謝

相変わらず忙しい日々が続いています。ブログのネタが大量にたまっているのですが、他にもプレゼンの原稿を作らないといけない上に、業界紙の連載執筆依頼まで来ています。にっちもさっちもいかなくなっている今日この頃です。過去のブログの更新時間を見たらほとんど夜10時頃。この時間帯ぐらいしか時間がとれない証左の様な気がします。

不規則な生活がたたったのか、最近体脂肪率がじりじりと上がっています。40歳近くなって新陳代謝が低下してきているのも1つの原因なのは間違いありません。摂取カロリー>代謝カロリーが体脂肪率の蓄積となって現れているのだと思います。

一応、飼料を取り扱っているので、自分の食べるものの摂取カロリーと、栄養バランス(タンパク質、炭水化物、脂質のバランス)はそれなりに気にして計算しながら食事をしていますが、おそらく酒の分が余分なのではないかと推察されます ^^;

栄養計算をしていると人間は本当にいろいろなものを摂取してエネルギーに変えられることに感心します。もっとも、反芻動物は胃の中に飼っている微生物の力で人間では代謝できないセルロースなどの多糖類を分解吸収できるのでさらにすごいわけですが。

このエネルギーを吸収し体に必要な栄養素を合成していくプロセスが代謝なのですが、この代謝経路というものが非常に複雑かつ合理的にできていて感心します。

例えば、デンプンは消化管内に分泌された消化酵素でブドウ糖に変換され、それが吸収されます。ブドウ糖はTCA回路という代謝系でエネルギーに変換されます。

TCA回路について詳しく解説すると非常に長くなりますが、たくさんの酵素と反応系が複雑に絡み合って最終的にエネルギーになるわけです。大規模な化学プラントのような反応が体内で起きているのはすごいことだと思います。

生化学のすごさを人に説明するのに、ドラえもんの話をすることがあります。ドラえもんはどら焼きを食べて動きますが、現代の技術ではどら焼きをエネルギーに変えてパソコンに動かすことはできません。ガソリンやメタノールのようにエネルギー密度の高いものを利用して電力を生成しコンピューターを動かすことはできますが、どら焼きのようにエネルギー密度が低く、複合物質であるものを利用してエネルギーを生成することはまだまだできない訳です。メタン発酵などのプロセスを利用すればエネルギーは生成できますが、それとて生物の力に頼っているわけです。

技術進歩により生体についての理解や解析が深まっていますが、それでもまだまだ生物の神秘には遠く及ばない部分があると思います。それだけに勉強をしていくと無限の面白さがあるのが生物の世界だと思います。

私の取り扱っているのは「エコフィード」という1つの商品ではあるのですが、代謝系の話を抜きに取り扱うことはできません。それだけに、奥が深いものだとしみじみ思います。

エコフィードと刑務所の食事

今日まで4日間ポートメッセ名古屋で行われた展示会「メッセナゴヤ」出展でした。
展示会に出展していると必ず聞かれるのが、「コンビニ弁当とかレストランの残飯はリサイクルしていないのですか」という質問です。
当社は現時点でこう言ったものはリサイクル原料として受け入れていません。

受け入れしない理由はいくつかあります。

1.許可の問題

 

コンビニなどから廃棄される食品は「一般廃棄物」に分類されます。
当社は今年の春一般廃棄物処分の許可を得ましたが、それまでは許可がなかったため受入できませんでした。

 

2.分別の問題

 

コンビニ弁当など容器入りの食品は容器との分別が難しいです。当社には分別する機械があり、包装入りのお菓子などはきれいに分別できますがコンビニ弁当は分別することが難しいです。特に、飼料にする際にはプラスチックが混入すると問題になります。手作業で分けることは可能ですが、コストがかかりすぎます。

3.コストの問題

 

食品廃棄物を排出する事業者の方は「リサイクルを推進したい」と言われますが、それには条件があります。「コストアップしないこと」です。
一般廃棄物は通常は市町村の処理施設で焼却処理します。豊川市の一般廃棄物処理単価は1kg12円です。当社が処理を行う場合、この単価以下で処理をする必要がありますが、上記に述べたように分別が必要なものですとコストがかかりこの価格で行なう事は難しいです。

4.成分の問題

一般廃棄物処分業の許可は飼料化施設で取得しています。飼料化の原料としてみた場合、コンビニ弁当やレストランの残飯は油脂が多すぎます。油分が多いため豚に給与すると肉質に悪影響が出ます。

 

いろいろ食品廃棄物を見ていると、現代日本人がいかに高脂肪、高カロリーな食品を摂取しているかがわかります。一般廃棄物を受け入れしている乾燥処理プラントを見学するとだいたい最後の工程で機械を使って油を搾っているのですが、油が大量に出てくるのを見るとちょっとぞっとしますね。

というわけで、一般廃棄物、とりわけ食べ残し系はあまり受入ができないのですが、そんななかで比較的内容が良好な一般廃棄物があります。刑務所と学校給食、病院食の残飯です。どれもキチンと栄養計算されているのは伊達ではなく、残飯も比較的ヘルシーです。分別も比較的されているのでリサイクルしやすいです。

ところが、これらの事業所は食品リサイクル法の適用外になっています。このため、食品リサイクルを行う意識が非常に低いのが現状です。結局営業に行っても、「安くなるなら」で終わってしまいます・・。

当社もできるだけ低コストなリサイクルを目指していますが、税金が大量に補填されている市町村の焼却と価格競争するのはいろいろと大変です。市町村の焼却単価の問題は食品リサイクル行政の一番の矛盾点と言えるかとおもいます。

脂肪酸組成とカポック

久しぶりにエコフィードネタです。飼料と脂肪酸組成についての話題ですが、あらためてこのブログを検索してみると脂肪酸組成のことをたくさん書いています。それだけエサと脂肪酸は切っても切り離せないものなのでご容赦を。
前から何回も書きましたが、豚(というか単胃動物=反芻をしない動物)の場合食べた脂がそのまま体の中性脂肪となります。ので、飼料の脂肪酸組成は非常に重要です。
ところが、飼料中の脂肪だけではなく、体内でも脂肪が合成されます。体内では
デンプン(炭水化物)

グルコース

パルミチン酸(C16:0)

ステアリン酸(C18:0)

オレイン酸(C18:1)
と合成が進みます。
つまり、食べ物から脂肪を摂取しなかった場合、中性脂肪の脂肪酸組成は上記の脂肪酸だけになるわけです。実際は飼料にリノール酸などの不飽和脂肪酸が含まれているため、中性脂肪にはリノール酸も含まれます。
逆に言うと、リノール酸は合成できないのでかならず食物から摂取する必要があるわけです。
脂肪酸のリノール酸比率が上がると、脂肪の融点が下がってきます。融点が低いほうが食べると口当たりがよく美味しいのですが、スライスしにくいなど取り扱いがしにくいため肉屋さんからは嫌われる傾向にあります。融点を上げるためには飼料からの脂肪の吸収や蓄積を防げばいいのですが、なかなかよい方法はありません。その代わりに使われるのが「カポック」という植物です。
カポックには環状脂肪酸であるシクロプロベノイ ド脂肪酸という物質が含まれています。これが非常に強力に代謝系に作用します。カポック油を飼料に0.1%程度添加すると上記の合成系のうちステアリン酸→オレイン酸の合成が阻害されます。その結果、ステアリン酸の割合が高い脂となります。
不飽和脂肪酸たるオレイン酸よりステアリン酸のほうが融点が高いため、ステアリン酸の比率が高まることにより脂肪の融点が上がります。(肉屋さんによると触ってわかるぐらいだそうです)脂肪酸の分析を行うと、カポックを使用していることは一発でわかります。
ただ、オレイン酸含量が高いことは食味の向上にも寄与するため、カポックを添加しすぎると逆に評価が下がってしまいます。このあたりが難しいところです。
ところで、私はサプリメントとか○○を食べると健康にみたいな話は嫌いなのですが、このカポックの驚くべき効果を知るにつけサプリメントでも効果があるものがあるかもしれないなと思うようになりました。なにせ食べ物に0.1%添加しただけで体の脂の質が変わってしまうわけですからすごい効果です。
もっとも、一番重要なのは食べ物のバランスですのでできていない人がサプリメントに頼っても意味はないと思いますが。いずれにせよ、食べ物って当たり前ですけど豚でも人でも体に対する影響が大きいです。人間も何を食べるかってことはもっと注意を払うべきなんでしょうね。

エコフィードと発育、アミノ酸

最近、養豚農家向けのセミナーを行う機会が何回かありました。いろいろな話題を提供しているのですが、注目度が高いのが「増体」についてです。
豚はだいたい110kgぐらいの体重になったら出荷してと畜されます。それまで、どれくらいの日数がかかり、どれくらいのエサを食べて大きくなったかが養豚経営を大きく左右しますので、いろいろな研究や調査が行われています。
1日に大きくなる量を日増体量、DG(Daily Gain)と言い、1kg体重が増えるのに必要なエサの量(kg)を要求率と言います。これがエサの組成がちょっと変わるだけで相当変化します。
当社は地元のひまわり農協が実施していた研究会に参加していたのですが、その時比較試験をしてあまりに変化が大きいので驚きました。
一般的な配合飼料を使用して一般的な品種での養豚では、だいたい出荷までの日数は180日ぐらいです。出荷近くなると、だいたい1日に3kgのエサを食べて1kg大きくなります。つまり、要求率は3ぐらい、DGは1kgということです。ところが、全く同じ飼料をリキッドフィーディングとして与えると、要求率が0.4ポイント、つまり1割程度向上し、出荷までの日数も2週間ぐらい早くなりました。
これは、リキッドフィーディングが液状で消化がいいためです。リキッドフィーディングはそれなりの設備投資が必要なのですが、計算をするとこの要求率の向上だけでリキッドフィーディングの減価償却しておつりがでるぐらいになります。
ところが、食品残さ由来のエコフィードを給与すると、それ以上に変化します。配合飼料は含まれる栄養成分を細かく計算し、しかもかなりコストの制約にとらわれています。エコフィードを給与する場合、細かい計算をしなかったりすると栄養バランスがくずれて増体が非常に悪くなるケースもあります。逆に、配合飼料ではコスト制約で使えないような高品位なものが使えたりするので、配合飼料以上に増体がよくなることがあります。
ので、私はエコフィードの使用をしている養豚農家にお伺いしたときには出荷日齢を聞くことにしています。きちんと飼料の栄養成分の計算ができているかどうかは出荷日齢をきけばほぼ判断できるわけです。
通常180日程度の出荷日齢が、当社のお客様で一番短いところでは130日で出荷できているケースがあります。逆に、新規参入で養豚を始めたケースでは、240日かかっている例がありました。
この違いはおもにタンパク質の摂取量、アミノ酸のバランスに起因しています。エコフィードは一般的にカロリーが高くなりやすいです。(日本人の食事が高カロリーと言うことことですね)これに対し、タンパク質の量が不足しがちになります。また、タンパク質の量が足りていてもアミノ酸のバランスが悪ければ増体は悪くなります。エコフィードでは一般的にリジン、メチオニンなどの必須アミノ酸が不足しますので、これらのアミノ酸を単体で補給しなければ成長がわるくなってしまいます。
逆に、エコフィードはかなりカロリーが高く、可消化率も高いものが多いので、適切なアミノ酸バランスが達成できれば配合飼料以上に増体がよくなります。一般的な配合飼料ではコスト制約のためトウモロコシを主体としているのですが、エコフィードは粉末や加熱処理がしてある小麦粉や米などの原料が多く、このため消化吸収に優れているわけです。
エコフィードを取り扱うようになって、食べ物の栄養バランスが生物にとっていかに重要なのかを実感します。また、日本人の食生活のバランスが崩れていることも強く感じます。人間も本当に食事のバランスは気をつけなればいけませんよね。