有機肥料を使うことは難しいのか。

最近は飼料の話が多かったですが、当社では有機肥料の製造から事業をスタートしました。
大学の専攻は肥料であり、その縁もあり事業開始した頃から出身の大学の付属農場で肥料の連用試験を行っています。先日はその試験を行っている圃場で白菜の定植作業を行ってきました。試験圃場では処理区をもうけ、それぞれに同じ肥料を毎年施用しています。実験を開始したのが25年前で、私がちょうど大学に入学する前ぐらいです。長期間連用を行うことで肥料の種類による違いが顕著に現れます。

ところで、有機肥料を使っている農家では有機JASの認証を取っているケースがあります。有機JASとは、有機(オーガニック)であることを認証機関が確認を行い、認証されたものだけが「有機」の表示ができるというものです。
有機JASに関しては賛否両論がありますが、私はある基準を決め、それにのっとり表示を行うという制度自体は必要であると思います。多分、有機JASの制度がなければいい加減な表示やインチキが横行するものと思います。問題はその基準ですが、これに関しては長くなりますので別のエントリーでまた書きたいと思います。

「有機」表示で私が従来より疑問に思うのは、有機JASには農薬を使用しないことも入っているという点です。有機という言葉の定義は有機物(炭素化合物)という意味であり、肥料の定義であり農薬の使用は言葉には含まれていないと思います。ですので、有機肥料を使って農薬を使うというパターンもあっていいのではないかと考えています。
と言うのも、個人的には時期や作物にもよりますが有機肥料を使った栽培より、無農薬で栽培することの方が難しいと思うからです。逆に、誤解を恐れずに言えば有機肥料を使うことは、技術とデータがあればそれほど難しくないと思います。
有機肥料と化成肥料の違いは、成分の面から端的に言えばある特定の成分だけを抽出したものが化成肥料であり、有機肥料はそれが化合物の形になっていること、様々な成分が含まれているのが有機肥料であります。
特に、窒素成分に関しては有機肥料と化成肥料には大きな違いがあります。有機肥料の場合、窒素成分の多くはタンパク質、アミノ酸などの有機化合物の形で含まれているのに対し、化成肥料では硝酸イオンや尿素、アンモニアなどの化合物で含まれています。有機肥料に含まれる窒素成分はそのままアミノ酸などの吸収されるものもありますが、多くは土壌中の微生物などにより分解され、硝酸イオンなどの形で吸収されます。有機肥料を使うに当たって、この窒素の分解がどのように進むかがポイントです。分解は微生物反応であるため、肥料の種類、温度や環境によってその速度が大きく変わります。ざっくり言うと、分解が早いほうが窒素の肥効が出やすく、遅いと窒素が効きにくくなります。
この分解速度の予想さえできれば、有機肥料を使いこなすことは難しくありません。例えば水稲は窒素の肥効時期によって食味や倒伏などの影響があり、分解を予測することは非常に重要です。
現在は、分析手法の向上、知見の集積により分解速度の推定がよりできるようになってきています。要するに、技術を持った人なら有機肥料を使いこなすことができるってことです。

有機肥料を使用することで、土壌に有機物や様々な微量要素が持ち込まれます。これにより、土壌の微生物の菌叢が種類、量とも増えていきます。このことが土壌環境を改善し、団粒構造の発達、病原微生物の抑制につながっていく訳です。有機肥料は、「土を作る」ことができる訳です。

他方、有機JASの要件である農薬の不使用は、季節や作物によっては非常に難しいケースがあり、技術で対応出来ないケースも多くあります。例えば、愛知県では8月下旬にキャベツを定植する作型がありますが、虫害の発生が非常に多いため、無農薬で栽培することはかなりの困難を伴います。家庭菜園でしたら手で取る作戦も有効ですが、コマーシャルベースでは現実的ではありません。

日本で有機農業が普及しない理由の一つに、温暖な気候による虫害、病害、雑草発生の多さゆえの農薬の不使用の難しさがあると思います。ただ、上で書いたように、有機の要件のうち、肥料に関してはハードルが低いと思います。有機肥料の利用は、土壌をゆたかにし、場合によってはコストの削減にもつながります。技術が普及し、更なる普及が行われることを願っています。

堆肥の品質と温度

師走になり忙しい日々が続いています。 今年は暖冬の予報でしたが予想外に寒い日々が続いています。 寒くなってくると堆肥の品質が不安定になります。堆肥は有機物の分解に伴い品温が上がり、水分が低下します。有機物の分解に伴う品温上昇は気温に対し温度があがります。たとえば、夏場気温が30℃のときに80℃まで品温が上がっているものは、冬場気温が10度になると60°程度の品温上昇になります。もちろん、放熱の状況などにより大きくかわりますが、いずれにしても品温上昇が気温により大きな影響を受けることはかわりません。

発酵する堆肥
発酵する堆肥

品温が上昇しないと水分が飛ばず、通気性が悪くなります。その結果、好気発酵が進まず品温が上がらないという悪循環が進むことになります。こうして一旦状態が悪くなった堆肥はどんどん悪い方向へ進んでしまいます。水分が多い状態となり、通気性が悪いと嫌気性化します。嫌気性化すると硫化水素やアンモニア、メチルメルカプタンなどの物質が生成し、いわゆる「くさい堆肥」となってしまいます。
このような事態を防ぐため、当社では堆肥の状態について冬場は神経を尖らせています。

当社では他社の堆肥の植害試験や栽培試験の受託も行っています。さまざまな現場の堆肥を見ると、状態が悪いものが散見されます。
汚泥の場合、もともと易分解の有機物が少ないため、ただ乾燥しただけでもふつうは害が出るようなことはありません。ところが、嫌気性化すると生育阻害や発芽阻害が発生したりします。

発芽阻害を確認するのには小松菜を使用します。堆肥を水に入れて漉し、堆肥成分を抽出します。この水をシャーレに入れて小松菜の種子をまき、どれぐらい発芽するかを見ます。小松菜の種子は発芽率がよいため、発芽阻害がなければ95%~100%発芽します。これが発芽阻害があると全く発芽しないこともあります。

食品リサイクルを行っていて残念に思うのは、堆肥の品質を見ても明らかなようにまだまだ技術的に未熟な事業者が少なからずあることです。社会の中に確固たる地位を確立するために、業界全体のレベルアップが望まれるところです。

汚泥堆肥の即効性

火曜日から東京ビッグサイトで行われる環境展に出展します。
相変わらず営業が私だけなので、1週間東京貼り付けです。会社に来ても会えませんので、売り込みその他は来週以降にお願いします

だいぶ前ですが、こんな記事がありました。

http://mainichi.jp/select/news/20140430k0000e040157000c.html

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下水処理:汚泥を「うまみ」に…食料生産に利用、全国で

毎日新聞 2014年04月30日 12時03分(最終更新 04月30日 14時52分)

下水処理施設の一角で収穫期を迎えたトマト。苗の間のビニールダクト(左)から汚泥由来の二酸化炭素を送ることで収量は3割増という=愛知県豊川市の豊川浄化センターで、町田結子撮影

下水処理施設の一角で収穫期を迎えたトマト。苗の間のビニールダクト(左)から汚泥由来の二酸化炭素を送ることで収量は3割増という=愛知県豊川市の豊川浄化センターで、町田結子撮影

 

下水処理場から出る汚泥や処理水を食料生産に生かす取り組みが全国に広がっている。トマトの収穫量を増やし、ノリのうまみを増すなど新技術も目を引く。処理技術と農業利用のセットで海外への売り込みを図る国は、汚水と美食のかけ離れたイメージを逆手に取り「ビストロ(庶民的な料理店)下水道」と銘打つ。その“うまみ”やいかに。【町田結子】

◇トマト、ノリ、スッポンも…

愛知県東部の豊橋市など4市の下水を処理する県豊川浄化センターに、場違いな農業用ハウス(約500平方メートル)が建ち、トマトが丸々と育っている。普通の水耕栽培に見えるが、下水汚泥由来のガスによる発電の過程で出た二酸化炭素(CO2)を、ビニールダクトから苗に吹き付けている。苗の周囲のCO2濃度を高め、光合成を促す。世界初の試みといい、通常に比べ収量は3割増した。苗にはリンなどを含む処理水も吸わせている。

試食した大村秀章知事は「しっかりした味でおいしかったよ」。昨年からこれらの実証実験に取り組む豊橋技術科学大の大門裕之教授(48)は「複合技術として下水処理場の存在価値を高める」と自信を見せる。

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排水処理を行うと、汚泥と呼ばれるものが発生します。「汚」泥というと印象が悪いですが、基本的には微生物の菌体の固まりです。下水道や食品工場などの排水処理施設から発生する汚泥の量はとても多く、産業廃棄物の発生量の中で一番多い割合を占めています。小さな食品工場で数十㎏~数百kg、大きな食品工場だと数トン、下水道の大きな施設では数十トン単位で毎日発生します。

これを有効活用できないかと言うことで以前より様々な研究が行われており、上記のような記事は決して目新しいものではありません。以前より研究が行われていたのにもかかわらず利用が進んでいないのにはいくつかの理由があります。下水道由来の汚泥では重金属の汚染が問題になります。これは、下水道が一般家庭や食品工場だけではなく金属加工などの工場からの排水も受け入れていることが大きな要因です。

また、汚泥はそのままでは腐りやすく取り扱いがしにくいので、肥料として利用するためには一旦発酵させることが多いですが、きちんと発酵させ堆肥にするには高い技術レベルが要求されます。

また、汚泥という名前、下水道の場合屎尿が入ることなどにより印象が悪いことも利用が進まない理由の1つです。

当社でも食品工場由来の汚泥を発酵させて堆肥を製造していますが、堆肥を作って使用してみると、かなり面白い効果があることがわかってきました。

まず、汚泥は易分解性の有機物が少なく、発酵温度を維持することが難しいです。しかし、易分解性有機物が少ないと言うことは、窒素の分解が進みやすくなります。有機物が多いと窒素が微生物の菌体として利用されてしまいますが、有機物が少ないため微生物増殖が抑制されます。
また、上記記事にもあるように、リン酸含有量が非常に高く、しかもそれが非常によく効きます。果樹に施用すると開花が良くなるように思います。

ところが、汚泥堆肥の多くは木くずなどの比較的分解の遅い有機物を混合して製造しています。有機物を混合することで安定した発酵が実現できますが、汚泥由来の堆肥の特徴が薄まってしまうことも事実です。

堆肥と言っても原料のちょっとした組成で驚くほどその特性が変わってきます。それが面白くもあり、難しくもある点です。堆肥にどのような効果を期待するかによって適切な堆肥を選択する必要があると言えます。

 

というわけで、当社の堆肥も絶賛発売中です。(宣伝)

自給飼料と堆肥

当社が取り扱っているエコフィード、以前は豚向けが中心でしたが最近は牛向け飼料の取り扱いが増えています。その結果として牛屋さん(主に酪農)へ行く機会が増えています。

初めて農場へ行ったら、買っている牛の頭数、牛乳の生産量、使っているエサの種類、エサの配合をどうやって設計しているかを聞きます。

牛の頭数・・エサの飼料量がわかります。
牛乳の生産量・・1頭あたりどれぐらい牛乳が出ているかによってエサの配合が変わってきます。農場によって量はかなり異なります。
使っているエサの種類・・濃厚飼料(配合飼料)と牧草の組み合わせを聞きます。
エサの配合・・今の酪農は栄養バランスを綿密に計算してエサの組み合わせを決めています。配合設計は人間で言うと栄養士のような仕事です。農家自身が設計をしているケースは少なく、主に飼料メーカーや獣医の先生が担当することが多いです。

この配合設計をしている人がエコフィードに対して理解が無いとなかなか当社の飼料を使ってもらえないという事態が発生します。

当社は「お客様の利益が出ること」を経営理念にしていますので、当社の飼料は価格設定、品質を含め大なり小なり使用することによるメリットがあるのですが、それをうまくお伝えできないことがあるのは残念です。

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最近の営業アイテム 脱水モヤシ

と、あわせて農家でお聞きするのは自給飼料(牧草)を作っているかどうかです。「え、牛屋さんなんだから牧草を作るのは当たり前でしょ?」と思われるかたが多いかもしれませんが、実はここ愛知県では牧草を作っている農家さんの方が少ないです。多くは牧草を作らずに海外の輸入乾草を購入しています。

ここ数十年為替が円高になる傾向にあったため輸入の牧草が安くなってきたこと、現在の酪農では上記のように細かく飼料の栄養バランスを整えているため成分が不安定な自給飼料が敬遠されることが主な理由です。

ところが、牧草を育てないということは、牛舎から発生した堆肥の利用先に困ることになります。飼料を完全自給した場合、牛乳を出荷するのですからその分物質収支から見ると不足が発生します。牛糞由来の堆肥だけでは物質、すなわち肥料成分不足するため、そのため肥料を飼料畑に投入する必要が出てきます。
ところが逆に飼料を自給しないと堆肥(=肥料成分)が過剰となります。あまった肥料分を処理するために排水処理のためのエネルギーを投入する必要が出てきます。

エコフィードを使うと言うことは換言すれば日本全体での物質循環を高めるという行為です。海外からの輸入飼料を使うと言うことはそれだけ物資が過剰となります。牧草を自給すると言うことは農場内での物質循環ができるということです。

私は物質循環の不均衡を是正していくことには合理性があり、食品リサイクルも飼料の自給も合理性にもとづいた重要な存在だと考えています。農業とは本来物質循環行為そのものであるわけです。今の日本の農業、とりわけ畜産はそこから乖離していることについて自覚を持っていく必要があると思います。

施肥量と窒素含量

久々の更新になってしまいました。連載を抱えているとなかなかブログに手が回りません。
今日は久々に肥料の話を書こうかと思います。

大学は農学部の農学科で、肥料の研究室でした。普通、土壌肥料の研究室というのは農芸化学科にあることが多いのですが、所属していた研究室は耕地利用学研究室という研究室で農学科的なアプローチで土壌肥料に関わっていました。

農学部全体としては生物化学という分野となりますので農学と農芸化学に明確な線引きがあるわけではなく、それぞれオーバーラップしている分野があります。その中での違いを端的に言うと、農学は生物学的な手法が中心となり、農芸化学は化学的な手法が中心であると言うことです。

そんな耕地利用学研究室での実験は肥料の効き方を調べるという物でした。以前も少し書きましたが、さまざまな肥料を使用して栽培し、それがどれくらい植物体に吸収されるかを調べていくという物です。

そんな実験を行っていくと、肥料の違いによって肥料の効き方に差がでて、そして肥料の効き方によって植物の色がびっくりするぐらい変わるのに驚きました。窒素肥料は植物体の緑色に顕著な影響を与えます。植物の緑色は葉緑体に含まれる葉緑素の色です。葉緑素の分子には窒素が含まれていますので、窒素がすくないと葉緑素の合成が進まず、色が薄くなるわけです。

ちなみに、葉っぱの色を計る葉色計という機械があります。
http://www.konicaminolta.jp/instruments/products/color/chlorophyll/

これで色をデータ化することにより、施肥の状態が適切かがわかるわけです。

学生の時の実験では葉っぱの窒素含量を実際に分析するのですが、色が薄い物はちゃんと窒素濃度が低くなっているのにいたく感心したおぼえがあります。

窒素の量が減ると葉緑体が減少するだけではなく、植物体に含まれているアミノ酸量も減ります。つまり、旨味が減ってしまうわけです。お茶の旨味はテアニンというアミノ酸だと言われています。このため、お茶は旨味を出すために多量の窒素肥料を施肥します。

また、トマトの旨味もグルタミン酸ですので、これも窒素化合物です。

最近は飼料取り扱っているのでよく成分分析を行い、タンパク含量を調べます。改めてお茶の窒素含量が高いことに驚かされます。食品成分表によるとお茶のタンパク質含量は30%近くあり、これはおからより高い値です。
最近、輸入トウモロコシの高騰により、配合飼料の原料トウモロコシがアメリカ産から他産地にシフトしていますが、産地が変わるとタンパク質含量が大きく変わるため配合飼料メーカーは苦労していると聞きます。

肥料というのは植物の生理に大きく影響を与えることに改めて気づかされます。

ソラマメから考える無農薬栽培と食料生産

肥料の実験と趣味を兼ねてソラマメを栽培しています。昨年は冬のうちからアブラムシが大量発生し、春になったときにはすっかり株が弱ってまともに収穫できませんでした。

今年度は昨年の反省を生かし、いろいろと試験をしてみました。

まず、移植を行うと植え傷みがおきて初期生育に響くようなので、直播としました。ソラマメの種子は結構高いので余分に播種する直播は割高感がありますが、やむを得ずです。

温暖な東三河ですが、一番寒い時期には氷点下2℃ぐらいまで下がります。霜にやられるとその後の生育に響くようなので、霜よけとして寒冷紗をかけました。
寒冷紗は播種したあと発芽前にかけてありますので、アブラムシよけにもなります。

また、バンカープランツとして大麦を混播しました。大麦にはムギクビレアブラムシというアブラムシが発生します。ムギクビレアブラムシは麦類にしかつきませんが、これが増えると天敵であるヒラタアブやテントウムシが発生します。天敵を貯めておくからバンカー(銀行)という訳です。ソラマメにはマメアブラムシやソラマメヒゲナガアブラムシが発生しますが、これは麦にはつきませんので麦を植えてもソラマメにつくアブラムシが増えることはないのです。

春先に見たら大麦にみっちりとアブラムシがついていましたが、1ヶ月後には全く姿が見えなくなっていました。それだけ天敵が増えたと言うことです。今はソラマメに多少アブラムシがついていますが、この分で行くと大きな被害無く収まりそうです。

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ソラマメが増えるかどうかは環境にも依存しているような気がします。現在の畑はまわりにカラスノエンドウなどのマメ科雑草がたくさん生えており、これが悪さをしているように思います。以前、実家(長久手)の近くの畑でソラマメを作ったときはほとんどアブラムシが発生しませんでした。

というわけで、無農薬でソラマメを栽培してみたのですが、(東三河で無農薬栽培するには)けっこうな手間がかかります。家庭菜園レベルでは採算度外視でも大丈夫ですが、商業ベースでこれができるかというと疑問です。

私はもちろん農薬は少ないにこしたことは無いと思いますし、日本の農薬使用量は多すぎると思います。ただ、無農薬栽培は簡単ではないとも思いますし、できたとしても非常にコストがかかるのは事実です。現代日本では食品の価格が非常に安価になっており、無農薬栽培によるコストアップも許容できる社会環境となっています。でも、世界では多くの人が飢えています。飢えというのは食料生産の問題ではなく、貧富の問題です。日本は豊かなので食糧自給率40%であっても飢えることがないのです。

農薬を使用することにより、安価で安定した食料生産が可能となっています。享保の大飢饉では虫害により西日本の収量は平年の27%に過ぎなかったと伝えられています。
参照:ウキペディア
農薬と化学肥料が70億の人口を支えている訳であり、それを無視した無農薬栽培は金持ちの道楽のような気がしてならないです。

これから世界の食糧事情が悪化し、国内の財政が逼迫して貿易赤字が増大している中、札束で世界中の食品を買い集めるようなことがいつまでもできるとは思えません。農業とは食料生産であり、生命維持に必要な行為であるという基本をわすれてはならないと思います。

水田への堆肥の施用

会社への通勤路は田んぼが広がっています。ちょうど今稲刈りの時期です。このあたりではあいちのかおりとコシヒカリの作付けが多く、今はあいちのかおりの稲刈りが行われています。

当社で作っているゆうきのススメを今年初めて水田に使用してもらいました。一般に有機肥料は水田で使用するのが難しいです。

有機肥料に含まれている窒素成分はそのままでは植物が吸収しにくい有機態の窒素が多く含まれています。土壌の微生物の働きにより施用した有機肥料は徐々に分解され、植物が吸収できる無機態の窒素に変化していきます。水田の場合、この無機化のタイミングが悪いと悪影響が出ます。窒素が過剰に効果を発現すると、稲の倒伏が多くなりまた米のタンパク質含量が増えることにより食味が低下します。

今年使用してもらった水田では当社のゆうきのススメを10aあたり500kg施用しています。ゆうきのススメは窒素が3%程度含まれていますので、10aあたり15kgの窒素供給量です。水田で必要な窒素量は5~8kg程度ですので、それに比べると多くなっています。15kgの窒素が栽培期間中に半分ぐらい無機化すると想定して施用しました。

まだ稲刈りが終わっていないので収量などの結果は出ていませんが、途中まではほぼ順調でした。ただ、先週の台風でやや倒伏が発生してしまいました。対照区の化成肥料区と比較すると倒伏が多かったようです。想定より無機化量が多かったものと思われます。

無機化は土壌の質や微生物量、温度によって大きく変わりますので想定することが難しいです。ベンチスケールの試験もできますが、実際は施用量を少しずつ変化させて確認するのが一番確実です。
そもそも水稲はあまり窒素の要求量が多くありません。ので施肥量がシビアになるという面もあります。

ただ、農業って自然相手なので色々想定がつかない部分が多く難しいです。季節も年に一回しか巡ってこないのでテストも年に一回になりがちです。科学的アプローチでシミュレーションをして実際の試験を補足していくことが重要かと思います。

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肥料登録の植害試験

最近、ホームページから乾燥菌体肥料や汚泥発酵肥料の肥料登録のための植害試験のご依頼をよく頂いております。試験方法などについて問い合わせを頂くことも多くなってきたので、参考までに記します。
植害試験の方法については、FAMIC(農林水産消費安全技術センター)のWebサイトに記載があります。と言っても、このページ見てもよくやり方がわからないかと思います。
試験自体は施肥の基準を変えて小松菜を栽培するだけですが、これが結構難しかったりします。
まず、試験に使う鉢です。「試験容器は内径11.3センチメートル、高さ6.5センチメートルの鉢(ノイバウエルポット)を用い」とありますが、ノイバウエルポットなんてその辺では売っていません。これはプラスチックでできた植木ばちなのですが、一番の特徴は底に穴がないってことです。穴が無いのは水やりの時に肥料分が流出してしまうと影響が不正確になってしまうからなんですが、穴がなければ水やりが難しいです。試験方法には「試験容器中における土壌の水分は、水を加えて最大容水量の50~60パーセントとなるようにする。」って書かれています。つまり、適当な水分量を保つように少しずつ水をやるわけです。
ところが、土壌によって適切な水分量がかなり変わりますので、最大容水量の50~60パーセントに保っても小松菜の生育に適した水分より多かったり少なかったりするので、様子を見ながら灌水量を変えなければいけません。
試験期間は3週間ですが、その間水やりは最低1回/1日、最後の方は1日数回水やりが必要です。試験をしている間は休みが取れないことになります。人工気象機などを使用すると若干管理は楽になりますが、それでも水やりが毎日必要なのは変わりません。
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水やり以外は手順書に書いてあるやり方に従うだけでそれほど難しいことはありません。ただ、結構面倒くさいのが肥料の計量です。
通常は3連で試験をしますので、標準区、供試肥料区(4水準)、対照肥料区(4水準)×3で27個のポットが必要です。すべてに化成肥料を施肥し、しかもそれぞれ硫酸アンモニア、過りん酸石灰、塩化加里を施肥しますので都合化成肥料を81回、試験の肥料を24回計量が必要となります。
FAMICのサイトには「試験期間以外でも試験ができる」と書いてあるため、よく肥料をつくっている会社が自分で試験をして登録申請をしようとするらしいですが、ちょっと有り得ないような試験結果を持ち込んでくることもあるらしいです。
ちなみに、試験の申請があるとFAMICでも植害試験を行います。(向こうで試験をするなら試験結果を添付しなくても良いような気もするのですが)ので、試験結果を偽造して申請してもバレてしまいます。
こういう難易度の高い試験は専門性が発揮できるので当社の得意とするところです。ただ、最近試験をしていて、「ちょっと肥料の出来が悪いな~」と思うことがしばしばあります。本当なら肥料の製造から指導させてもらえればよりよいお手伝いができるのに・・と思う次第です。

石灰中和曲線

今日は恒例の名古屋大学附属農場での作業でした。よく晴れていましたが風が強くやや肌寒い感じでした。
この圃場の春作はトウモロコシです。5月に定植して7月に収穫です。
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以前の記事にも書きましたが、当社の肥料は硫黄分が多いためpHが下がりやすい傾向にあります。ので、今回は石灰の施用量をふやしてあります。
と言う話を恩師にしたところ、「石灰の中和曲線をしらべておきなさい」と言われてしまいました。土壌は緩衝能があり、土壌の種類により緩衝能が変わってくるためどれくらい石灰を入れればpHが上がるかは実際に石灰による緩衝中和曲線を調べてみないとわからないのです。
とはいえ、なんかなか実験をしている暇もないのでハテどうしたものか、どこかに分析委託しようかどうか悩んでいます。学生の頃から先生はいろんな実験を言いつけていたな~と感傷にふけりました。

飼料穀物生産と肥料コスト

この前、知り合いの稲作農家と話ししていたら、飼料米が話題に上りました。農水省の強力な補助金施策で飼料米作付けが増えています。(余談ですが、今のレベルでお金突っ込んでいたらいくら税金があっても足りなくなるのは自明だと思いますが・・)
 
その中で、飼料米の生産コスト中に占める肥料代の割合が高い・・という話がありました。具体的にどれくらいなのかちょっと計算してみました。
農林水産省の多収米栽培マニュアルによると、食用米の施肥窒素量は5~6kg/10aに対し、飼料米の場合は9~10kg/10aとなっています。15-15-15の高度化成を使用した場合、食用米の場合施肥量は40kg/10a程度ですが、飼料米の場合70kg弱の施肥量となります。
高度化成の価格は農林水産統計に従うと約3,000円/20kgです。食用米では6,000円/10aに対し、飼料米では1万円/10a程度のコスト負担になります。
一方、売上を比較してみます。食用米が500kg/10a、飼料米が800kg/10aの収量と仮定します。食用米を12,000円/60kgとすると10万円/10aとなります。飼料米が30円/kg、補助金が8万円/10aとすると売上が10万4千円となり、食料米よりも多くなるのですが、肥料代が増える分手取りは変わらないという計算になります。
もともと、米は施肥量が少ないため生産費に占める肥料コストの割合は低いのですが、昨今の肥料コストの高騰によりそれなりの割合を占めており、飼料米ではそれが顕著になると言うことです。
 
ところが、アメリカのトウモロコシでシミュレーションするともっと飼料コストの割合が高くなります。今のシカゴコーンでは600セント/ブッシェル程度で推移していますが、これは円換算すると20円/kg程度です。デントコーンの反収1トン/10aとすると、売上は10aあたりわずか2万円に過ぎません。デントコーンの施肥量を窒素で15kg/10aとすると、1万5千円が肥料コストとなり売上の3/4を占める計算となります。
アメリカの実情は不勉強のためよくわかりませんが、安価な穀物の生産において肥料コストが占める割合が高いことは間違いありません。これからは畜糞堆肥などの国内資源の重要度が増していくのは確実でしょう。また、世界の穀物相場が高騰している理由の1つに、肥料コストの高騰があることも疑いのない事実です。
日本では100年前まで屎尿が貴重な肥料として価値がある有価物として扱われていました。そんな時代に戻る日もあるかもしれませんね。