エコフィードの保存性

ここ数年来、東京ビッグサイトで行われる環境展に出展しています。東京で4日間の展示会は営業担当者が私一人の当社にとって結構負担も大きいのですが、ビッグサイトだけに多くの方の来場を頂けるので継続して出展しています。おかげで毎年5月は非常に忙しく過ごしており、ブログの更新も滞りがちになっています。(言い訳ですが・・)

展示内容は毎年あまり代わり映えもせず、食品工場でのオンサイト処理に関するものです。オンサイト処理とは、食品工場で食品廃棄物を処理するシステムのことです。腐敗しやすい食品廃棄物も現場で処理を行うことで、長期間の保存が可能となり、飼料としての利用が容易になります。例えば、以前も投稿しましたが当社ではビール粕のリサイクルに取り組んでいます。ビール粕も適切な処理を行わなければすぐに腐敗変性してしまいますが、処理を行うことで高品質な飼料となります。

展示会ではよく、「保存処理とはどういった処理をするのか?」というお問い合わせをいただくことがあります。食品工場から排出される食品残さは、業種によってももちろん異なりますし、工場によっても差異があります。このため、現場によって処理方法を変えることが必要です。当社はこれまでの実績でノウハウを蓄積しており、コストをできるだけかけず、品質を確保できる手法を選択しています。

たとえば、当社ではもやしをサイレージ化して飼料にする実績が多くあります。もやしは高タンパクであり、遊離アミノ酸やカルシウムを多く含むため緩衝能が高くpHが下がりにくい傾向があります。密閉保管しておけば乳酸発酵も行われますが、それだけではpHが十分に下がらないため品質が不安定になります。このためもやしの保存処理はギ酸を添加する必要があります。

他方、同じ野菜加工残さでもゴボウの場合はギ酸の添加は不要です。ゴボウは想像に反し糖含量が高いため密閉保管することで容易に乳酸発酵がおきます。このため、サイレージ化は比較的容易です。

廃棄ゴボウ
廃棄ゴボウ

無論、乾燥処理を行えば安定した品質のものができます。しかし、高水分の食品廃棄物の場合、乾燥処理のランニングコストが高くなるため乾燥処理は事業収支が厳しいケースが多いです。製造される飼料の価格も踏まえ、乾燥処理を選択することが重要になります。

また、当社では保存処理を行うだけでは無く、飼料としての有効性を確認するために各種分析も実施しています。上記のゴボウも共同研究先の大学で消化性試験を実施し、飼料価値を見いだしています。

様々な原料を扱うに当たっては、科学的なアプローチを駆使することが求められます。仮説を立て、実験し、そして実用化することで食品メーカーにも畜産農家にも喜んでもらえる飼料ができる、この一連の新たな価値を創出するプロセスはとてもやりがいがありますし、おもしろくもあります。これからも新たな価値創出をめざし取り組んでいきたいと思います。

 

エコフィードを使えば儲かるのか

ビジネス向けサイトとか見ていると、「儲かっている会社の社長はこれをやっている」みたいな記事をみることがあります。例えば、新聞を3紙以上読んでいる社長の会社の方が経常利益が高い・・と言ったようなネタです。

この手の話、いつも思うのですが、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのではないかと思います。

新聞をたくさん読むことで知識が付いて経営が良くなってきたのか、それとも経営が良いから余裕ができて新聞を読む時間が取れているのか・・。新聞を読むことが無駄になることは無いと思いますが、効果を期待しすぎるのは禁物であると思います。

ホルスタイン
 

当社では有機肥料やエコフィードの生産を行っています。当社のお客さまや知り合いは有機肥料やエコフィードを使いこなしている方がたくさんみえます。
そういった方は概して経営がよいことが多い傾向にあります。有機肥料は一概に言えませんが、エコフィードは一般に配合飼料、輸入飼料と比較して価格が安く、飼料コストが生産コストの大部分を占める畜産農家がエコフィードを使用することでコストが下がります。
当社のお客さまでエコフィードをメインにしている方は概して経営がよいのです。そういった状況を見るとコストの安い飼料をうまく使っているから経営が良くなっているという印象があります。

でも、個人的にはエコフィード使用により経営が良くなっているのはコストが下がっていることが大きな要因では無いと思っています。エコフィードは配合飼料と異なり、成分もまちまちであり自分で配合する必要があったりします。使用に際して工夫が必要ですし、購入飼料と比べ手間もかかります。こういったものをうまく使うには、技術レベルが高く、前向きで意欲がある人で無ければ難しいです。
購入飼料を使うだけでしたら飼料の成分などのことを知らなくても問題ありませんので、残念ながら畜産農家でも飼料の知識に詳しくない人が多く見えます。小規模農家であっても数千万単位で購入しているわけですから、その内容を知ろうとしないのは大きな問題です。
要は、エコフィードをうまく使いこなせる方はもともと経営が良い農家が多いのでは無いかと思います。逆に、コストが下がるからと言って知識が無い人がむやみに使用すると、生産効率がわるくなったり手間がかかったり、畜産物の品質が下がったりと言ったことが発生しかえって経営が悪化するケースも散見されます。

当社のお客さまの酪農家さんは酪農教育ファームに参加されているケースが多いです。酪農教育ファームとエコフィードは関連がありませんが、酪農教育ファームに参加されるような農家さんは前向きな方が多いので、エコフィードなどの新しい技術に積極的なのではと思います。

耕種農家でも土壌分析をしなかったり、肥料の設計をお任せにしているケースはすくなくありません。そういった農家では肥効がまちまちで取り扱いが難しい有機肥料をうまく使用できるはずがありません。有機肥料をうまく使いこなしている農家は肥料に対して知識が深く、収量が多く高品質な農産物を生産できているため経営が良くなっているのではないかと思います。なお、そういった農家は案外有機JASを取得するわけではなく、慣行栽培でありながら減農薬、減化学肥料で有機肥料をうまく使いこなしている場合が多いと感じます。有機肥料を使うのはJASを取るためでも化学肥料を危険視ししているわけでもなく、有機肥料の方がうまく使用すると効果を発揮するからではないかと推察しています。

逆に言うと、そういったハイレベルな農家はエコフィードや有機肥料を使わなくても経営がよかったりします。レベルが高い農家が使いこなすのが難しいけどうまく使うと効果を発揮する・・これがエコフィードや有機肥料ではないでしょうか。
これからの厳しい環境下では、農業生産においても高い技術レベルと前向きな姿勢が求められていくことと思います。私もそういったお客さまとお付き合いするために更に勉強と技術研鑽をしていきたいと思っています。

酒粕の成分と酒造り


最近、ホームページからのお問い合わせで酒粕の買い取り依頼が非常に増えています。食品としての需要低迷が主因のようですが、Webという媒体によって需給の状況がわかることも興味深いです。

私は酒と名前が付くものはたいがい好きですが、日本酒ももちろん愛好しています。飲むだけではなく、酒蔵見学や杜氏とお話しで酒造りの方法を聞いたりすることも好きです。日本酒の作り方は非常に複雑なプロセスを経ますが、微生物学的な知見が皆無であった江戸時代にこのような技術が確立されていることに非常に驚きを感じます。

酒粕

 

日本酒の作り方はWikipediaの記載が詳しい(異常にw)ですが、超概略として

1.米を精米し、蒸す。

2.コウジカビをふりかけ、麹を作る

3.麹、別に蒸した米、酵母を混ぜもろみをつくり、発酵させる

4. もろみを絞り、濾過して酒になる。

と言ったプロセスとなります。

一連の反応で米に含まれるデンプンがコウジカビが出すアミラーゼによりブドウ糖となります。酵母はデンプンをエサにすることはできず、ブドウ糖は使えるのでカビを使ってデンプンを糖に変えることで米を使って酒を造ることができます。ビールやウィスキーではデンプンの糖化を麦芽の持つアミラーゼを用いて行い、ワインはブドウに含まれている糖をそのまま用いていることが日本酒との違いです。

酒粕を飼料として取り扱うにあたって、成分分析を行っているのですが分析結果を見ているとびっくりするぐらい成分が異なります。一番差が出るのは粗タンパク質含量の差で、最も低いものは乾物換算で20%程度、高いものは乾物換算で60%と大きな差があります。傾向として、安い酒ほど酒粕の粗タンパク質含量が高い傾向にあるようです。

酒粕の粗タンパク質は米に8%程度含まれる粗タンパク質が濃縮されたものです。この値が大きく違う原因として

・高い酒ほど精米歩合が高い。米は表面ほど粗脂肪、粗タンパク質が高いため、精米歩合が高くなるとそもそも原料中の粗タンパク質含量が低くなる。

・安い酒は麹の活性を高め、米を良く溶かしている(=糖化反応をすすめている)糖化がすすむと糖はエタノールに変換され、酒の歩留りが上がる。その分残った粕に粗タンパク質が濃縮される。

・安い酒は酒粕を絞る際にしっかり絞るので、水溶性の糖などの割合が下がるため相対的に粗タンパク質含量が高くなる。

などが推定されます。飼料としては水分が少なく、タンパク質の含量が高いほうが好まれますので、安い酒の酒粕が飼料に向いていると言うことになります。酒粕を見ると酒造りの奥深さを感じるとともに、自分の飲む酒選びにも役立っています ^^;
こう言う仕事をしていると食品メーカーの裏事情が垣間見えてとてもおもしろいですね。

塩は買うものでない

当社では労働安全衛生法に則って健康診断を実施しています。結果は個人に配るのですが、会社にも保管用の一覧が届きます。先日もらったらうちのスタッフ引っかかりまくりで困惑です。従業員の健康が心配なだけではなく、零細企業の場合従業員の健康問題は会社経営にも影響しますので、健康管理には気をつけてほしいものです。

食品リサイクル稼業をしているとよくわかるのですが、今の日本人が食べているものはカロリー過多、塩分過多、脂肪過多です。とくに、日本人は塩分を過剰摂取していると言われており、WHOの推奨値の2倍程度摂取していると言われています。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77445710U4A920C1000000/

一方、家畜のエサにも塩分が配合されています。例えば汗腺が少ない豚では飼料中の塩分要求量はずっと少なく、だいたい0.2%程度です。肥育豚は乾燥物換算で2kgぐらいの飼料をたべますので、塩として約4gぐらいとなります。これは必要量ですので、実際はこれより若干多い塩分が飼料には配合されています。

しかし、食品廃棄物を扱っていると塩分が多いものが多くあるため、これを利用しない手はありません。品質の高い廃棄物は入手が難しくなってきていますが、塩分が多いものはまだまだ手つかずで残っています。

当社が今まで塩分が多いものとして利用してきたものの例として

・味噌RIMG0197

・醤油粕

・五平餅のたれ

・めんつゆ

・ふりかけ

・インスタントスープ

・椎茸旨煮の煮汁

等々があります。たとえば味噌は塩分10%程度あります。1日10トンのリキッドフィードを製造するとすると、乾物として約2トン、塩分0.4%とすると8kgの塩の量となり、塩分10%の味噌を80kg配合することが可能となります。なお、当社のお客さまの場合、塩分があるものを入れるため、リキッドフィードに混合する配合飼料からは塩を抜いてあります。

また、こういった高塩分のものに共通する特徴として、旨み成分であるアミノ酸を多く含むことが多いと言うことです。これらのものを配合することで、単に塩分(ナトリウム)の補給になるだけではなく、旨み成分による嗜好性向上が期待できます。

この中でもとくにめんつゆは絶大な効果がありました。めんつゆは塩分が5%程度と案外低く、かなりの量を添加できます。糖度が15度程度あり、鰹だしの旨み成分が含まれているため相当な嗜好性アップの効果が得られました。

最近はリキッドフィード原料にゆでうどんの廃棄品を利用しているため、できあがった飼料はいわば「味噌煮込み」状態です(笑)
よりよい飼料を製造するためには、いかに未利用の資源を有効に活用するかの智慧が求められています。

自分で生産したものを食べるということ

秋はイベントシーズンで展示会出展が続き忙しい日々が続いています。
とはいえ、子供が生まれてから家で夕食を食べることが増えました。若干家庭的になったかなと自負しています。(苦笑)

家では通常は粗食なのですが、このところ肉を食べる機会が増えています。Facebookのほうでは食べ物ネタのアップが多いため、肉ばかり食べているように思われるのことが多くやや心外です。肉を食べる機会が増えたのは、会社で飼料を取り扱ってから、お客様のところの肉を食べるようにしているためです。豚肉を食べることも多くなりましたし、今までほとんど食べなかった黒毛和牛を食べる機会も増えました。
近江牛
お客様のところの肉を食べる・・・というと普通のことに聞こえますが、実はこれが存外難しかったりします。家畜は自分でと畜してはいけないという法律がありますので、畜産農家は生産した豚や牛をと畜場に出荷します。と畜場でと殺された後、市場にかけられ、流通します。畜産農家は自分が生産したものを誰が買っているのか、どこで売られているのかを知らないことも多くあります。野菜や米でしたら生産したものを一部取り分けておくことも容易ですが、畜産農家の場合、生産物を入手するのが難しいわけです。と畜場から買い戻すこともできますが、1頭で豚で50kg、牛でしたら数百kg単位となり販売を行っていない農家が簡単に自家消費できるようなものではありません。

自分で食べなければ今生産しているものがどういう状態であるか、わかりません。逆に言うと、自分で生産したものを食べることによってより美味しい畜産物の生産を行えるようになっていくのではないかと思います。

最近お取引をしている、黒毛和牛を生産している木下さんは自分のところのお肉を食べられています。驚くべきことは種付けする牛の血統を選ぶとき、以前食べて美味しかった血統を種付けされています。日本の黒毛和牛はと畜された枝肉の状態がフィードバックされて「サシが入る」「枝肉重量が大きい」遺伝子を持った牛が選抜されています。しかし、あくまでもそれは見た目であり、味を基準に選ばれているわけではありません。
また、当社のお客様の養豚農家さんの多くは生産した豚肉を食べられていて、肉の状態を見て飼料の配合を変えたりしています。通常は配合飼料を使っていますので、飼料の組成を変えることができませんから、自分でエサを混ぜて、出荷した肉を買い戻している農家だけができることです。
こういう取り組みが継続することによって、より美味しい農産物が生産されていき、それが日本の農業の強みになるのではないかと思います。というわけで、私も取り扱っている飼料のいっそうの品質向上のため、美味しい肉をたくさん食べることにします(^_^)

 

 

低糖飲料は太るのか

朝晩めっきり冷え込むようになりました。

天高く馬肥ゆる秋というわけで、食欲旺盛になってきています。食欲旺盛なのは人間だけではなく、豚も餌をたくさん食べるようになり、当社も出荷に追われています。

エサを作る際に豚が餌をたくさん食べるように嗜好性には注意しています。いろいろと試してみた結果、豚が餌をよく食べるためには「甘いこと」「適度な塩分があること」「旨味成分(アミノ酸)があること」「香りがいいこと」などが重要であるようです。特に甘みは絶大な効果があります。甘みを出すためにジュースなどの廃棄品を飼料として利用しています。

ジュース
炭酸飲料

 

賞味期限の長いジュースとか炭酸飲料がなぜ廃棄されるのかはよくわからないところですが、ともかくたくさんのジュースが当社に入荷してきます。写真はサイダーの類ですが、炭酸はすっかり抜けてただの糖液状態です。

飲料の廃棄品は多いですが、ジュースなら何でも飼料として利用できるわけではありません。コーヒー飲料はカフェインが飼料にはあまりよくないという意見が多く、当社では受入を行っていません。また、最近はジュースも低カロリーのものが増えているため、カロリーが高いものだけを選択して利用しています。

ところで、最近「合成甘味料の飲料はかえって太りやすい」と言った論調を見かけます。

「カロリーゼロ」、太って病気まっしぐら!

これ、嘘です ^^;
合成甘味料やステビアなどは消化できなかったり砂糖より甘みが強い(=少しでも効く)ので、カロリーの絶対値は低いです。たとえば、他の全ての条件を同じにして砂糖を投与する処理区と合成甘味料を投与する処理区を設けたら、間違いなく砂糖を投与した処理区のほうが太ります。
私が思うに、合成甘味料を摂取した方が太るっているデータが出てくるのは単に「ダイエットコーラをがぶ飲みするようなやつは甘いものやジャンクフード好きが多い」って言うだけだと思います。

統計調査を行う際、一番気をつけなければいけないのは「交絡」というものです。
たとえば、缶コーヒーをよく飲む人がガンになる確立が高い・・というデータがあったとします。ところが、缶コーヒーを飲むひとはタバコを吸う傾向が高い場合、実はガンになる原因はタバコにあり缶コーヒーではない・・と言った可能性があります。交絡を防ぐためには、タバコの喫煙率が同じで缶コーヒーを飲む群と飲まない群をわけて統計処理をすればタバコの影響を排除することができます。ただ、交絡する因子を見落としてしまうと、これを排除することができません。ですので統計を用いて調査を行う場合、いかに因子を見つけるかがもっとも重要な点です。

ま、甘味料を使うとホントに太るなら配合飼料メーカーも苦労しませんし、当社も低糖飲料をもっと受け入れします。世の中そんなに「甘くありません」ちゃんちゃん。

美味しい牛乳のためのエサ

天候不順な日々が続きます。こんなにすっきりとしない夏は20年ぶりではないでしょうか。おかげで野菜が高く、産直に行っても並んでいる野菜の数がかなり少なくなっていました。野菜が高くなると当社のお取引先であるカット野菜工場の生産数量が増えます。カット野菜は値段が変わりませんので、野菜が高いとお得感が出るわけです。天候は意外なところでリサイクル業者の仕事に影響を与えています。

当社が最近力を入れている商品の1つに「もやし」があります。もやしも野菜が高くなると販売が好調になります。
当社の取り組みはもやしを粉砕、脱水しそれをサイレージ化し、飼料として利用するというスキームです。

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脱水したもやしはほぼアルファルファーと同じような組成となり、タンパク質が多く含まれる有益な飼料として主に酪農家さんに利用して頂いています。

この脱水もやし、現在では6軒ほどの酪農家さんに供給し、好評を頂いています。ところが、先日のこと、新しい農家さんに営業に行ったところ「牛乳に臭いが移るかもしれない」との懸念の声がありました。
実は牛乳は食べたエサの臭いが移行しやすい傾向にあります。ニンニク、タマネギなどは特に移行しやすく禁忌とされているほか、リンゴジュース粕なども異臭の原因となることがあります。もやしは独特のもやし臭さがあるため、この臭いが移行するのではないかと心配された訳です。
実際は他の農家さんで特に問題が生じておらず、もやしの臭いは牛乳に影響を与えることはないと思われます。飼料は単に栄養成分に留まらない注意が必要です。

当社の取り扱うエコフィードに限らず、飼料は牛乳の風味に影響を与えます。愛知県の酪農家の多くは年間を通じて乾草を与えているため季節変動は少ないですが、放牧などで青草を給与する農家さんの牛乳は年間で風味の変化が大きくなります。

以前も書きましたが、私は日本の農業の存在意義の1つは「美味しい」ということだと思っています。牛乳に関し、美味しい牛乳を作るための研究があまり行われておらず、もっぱら乳量を増やす方向が中心なのは残念なとことだと思っています。牛乳の場合、どうしても多数の農家のブレンドとなってしまうため味に特徴を出すことが難しいこともその理由の1つかと思いますが、昨今酪農家がみずから生乳販売を行う事例が増えてきました。そういう農家さんではもっと美味しさにこだわってもいいのではないかと思っています。

そして、そういう農家さんに美味しい牛乳を生産することができる飼料を供給するというのが私の夢です。そういう取り組みを通じてびっくりするぐらい美味しい牛乳が生産できたら…と牛乳好きとして妄想しています ^^;

ビール粕のリサイクル

多忙な日々が続いていましたが、最近ようやく山を越えたような気がします。気のせいかもしれませんがヽ(^0^)ノスケジュールを振り返って見ると昨年の9月からほぼ空き無しでした。時間の使い方を考えた方がいいかもしれません。

と、忙しかった理由の1つに、新しい取り組みを行っていたことがあります。ビール粕の飼料化というプロジェクトです。

ビールは麦芽とホップを原料として製造されます。麦芽は文字通り麦の芽です。麦芽にはアミラーゼという糖化酵素がたくさん含まれています。麦芽をお湯に浸漬すると糖化酵素が働きデンプンが糖に変化します。浸漬したお湯はちょうど甘酒のような甘みのある液体になり、これに酵母を添加し発酵させたものがビールとなります。

一方、麦芽は水を切って不要物として廃棄されます。水を切った麦芽は水分が80%ぐらい含まれており、栄養価も高いためとても腐りやすいものです。
今回のプロジェクトでは、この麦芽を脱水することにより保存性を高め飼料として利用できる形態とするものです。

大手のビール工場ではすでにほとんど飼料となっていますが、小規模の事業所ではまだまだ飼料として利用されていないケースが多くあります。今回のプロジェクトではそういった小規模事業所のリサイクルに取り組んでいます。

 

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脱水を行なうことで、水分は70%以下になります。適度な水分量となり、また上記のように糖化酵素が働くことで糖が多く残存します。このため、乳酸菌が働きやすい環境となり、pHが低下します。pHが4.0程度となると腐敗の原因となる菌の働きが抑制され、保存が利く飼料となる訳です。

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従来利用されていなかった資源をこう言った形で利用できることは非常にやりがいのある仕事です。また、食品メーカー、畜産農家双方に喜んでもらえることは仕事の意義を感じます。
また、あわせてクラフトビールのマイスターのお話しを聞くことができるは非常に興味深いです。仕事をしながら面白い話が聞けるのは役得です。発酵マニアとしては興味が尽きないですf^^;)

リキッドフィードの保存性

忙しいさのピークは過ぎましたが相変わらずばたばたとしています。関東で大きな仕事を頂きましたのでしばらくは出張が多くなりそうです。普段会社にいることのほうが少ないのですが、たまに会社にいると来客が多く予定がびっちり埋まります。

来社されると工場見学される場合が多く、いろいろな原料が入荷しているのをご覧になり驚かれることが多いです。

また、製造されたリキッドフィードを見て「こんな液体のエサを豚が食べるんだ」と感心されることもしばしばです。

その中でよく質問があるのは、「リキッドフィードは腐らないのか」というご質問です。水分が多く、高栄養であるため腐りやすいことは事実です。そのため、リキッドフィードでは腐敗を抑えるためpHをコントロールします。乳酸発酵や有機酸の添加によりpHを下げることにより細菌の繁殖を抑制します。
リキッドフィードには糖が多く含まれているため、嫌気性条件下に置くと比較的容易に乳酸発酵します。しかし、当社ではより安全を期するために有機酸の一種であるギ酸を添加し、pHを低下させています。
今までの経験と分析値から、pHを4.0以下にすると細菌の繁殖を抑制でき、腐敗を抑制できています。多くの文献ではpHは4.5程度でも問題無いような記載が多いですが、安全を見るとpH4.0以下に維持した方がいいようです。

一方、乳酸発酵が進みすぎてpHが3.0を下回ると嗜好性が落ちる傾向にあります。ジュースやヨーグルトがpH4程度ですから、やはりそれより低くなると豚も酸っぱさを感じるようです。

もう一つ保存性で重要なのは嫌気性下で保存すると言うことです。酸素が少ない条件では含まれているアルコールなどの働きもありカビや腐敗が起こりにくい状態になります。このため、運搬容器、保管容器は蓋を極力開けないようにしています。

pH4.0程度になったリキッドフィードは常温で2週間程度の保存が利きます。実際は最大でも1週間程度で使い切ってしまいますが、保存性を高めることは飼料としての利用の利便性を維持する上で重要です。安全性を担保するためにpHは常に計測すると共に、細菌数のチェックなども定期的に実施しています。まあ、いろいろやってみて思うのは、要するに「酸っぱければたいてい大丈夫」ってことですヽ(´▽`)/

こういう仕事をしていると、自分が食べる物のpHや細菌数が気になってしょうがないのは職業病かもしれませんね。

エコフィードによる特徴のある畜産物の生産

飼料と肥料を製造するという仕事を生業にしているため、お客様から農産物を頂く機会が多くあります。美味しい農産物を食べることができるのは役得だと思います。

そんな中、飼料は豚向けが多いため豚肉を食べる機会が多くあります。当社のお客様は銘柄豚として美味しい豚肉を生産し販売している方が多く見えます。
実を言うと、私はこの仕事を始めるまで豚肉の味なんてどれもあんまり差がないと思っていました。それが美味しい豚肉を食べ、豚肉の味には大きな差があることを知りました。

当社のお客様はエコフィードを使用しているため、様々な原料を飼料として利用しています。当社が供給しているものとしてはじゃがいも、酒粕、ラーメンくず、小麦粉などがあり、その他にもお客様が調達したパンやうどんなども飼料として利用されています。

豚肉の味を決める大きな要因として飼料の組成があります。もちろん品種や育て方も重要ですが、飼料が与える影響はもっと大きいものです。おなじ血統の豚でも飼料を変えると全く違う肉質になります。農水省の補助事業の実証試験で飼料の変化による肉質の違いを調査したのですが、驚くほどの肉質の変化でした。

逆に言うと、おなじ飼料を使っている限り同じような肉質になってしまうと言うことです。配合飼料は多くはトウモロコシを主体としているため、どうしても肉質に差がつきにくい状況にあります。一部の配合飼料では芋や麦を配合することで肉質の向上を図っているものもありますが、そういった種類はごく一部に留まっています。

エコフィードを使用すると、配合飼料とは原料配合が大きく変わっていくため肉質も大きく変化します。一歩間違えば肉質が悪化することもありますが、逆に上手く使えばコストも下げつつ肉質の向上や特徴のある肉質とすることもできます。

ブランドをつけて販売する以上、特徴のある味であることは当然ながら重要なことです。エコフィードを使用する意義はそんなところにもあると思います。

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